転生魔女のもう一度   作:蓋然性生存戦略

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EP3:敵意

つけられている。

ミサオに匿われてからひと月ほど。

どうにも、ここ数日は見つかり次第マークされている気がする。

潜伏先がバレても困るのでテキトーに撒いているが。

認識阻害も付けるべきか。

買い出しなどに支障が出る。

 

それとも、一つ打って出るべきか。

その方が良いかもしれない。

 

私は人気のない場所まで誘導して、追跡者に呼びかける。

 

「あのさ。いい加減ストーキングするのやめてくれない?」

「……やはり今日も気付かれていたか」

「ひぃふぅみぃ、ざっと五十人?それも、色々と武装してるわね。そんなに覚醒者が怖い?」

「……っ」

「覚醒者だからって十把一絡げに捕まえればそりゃ反感が出るに決まってるじゃない、バカなの?それに、たかが五十人ぽっちでどうにかできると?」

 

私は、目の前に現れた男の足元に、境界線を引く。

地面を抉り、深い切れ込みを作って。

 

「ッ!?」

「あんたらが私個人を無視するなら私だってあんたらの都合を無視するだけ。害虫は念入りに駆除しないとね」

「……覚醒者は危険すぎる。収容する必要がある。分かるはずだ」

「知ったこっちゃないわよ。推定無罪を収容する法があって堪るかっての」

「……」

「私は私が法によって守られないなら法なんていらない。私を捕まえる前にまず自分たちを見つめ直したら?」

「それでも、それが我々の職務だ」

「辛いわね~、国家の犬は」

 

まあ、知ったことではない。

私やソラに手を出すのなら。

私は、私たちの自由を守るために戦う。

 

「でも、相手を間違えたわね」

 

だから。

生半可に手を出したらどうなるか。

分からせてやる。

 

「ねえ、手っ取り早く強くなるためにはどうしたらいいと思う?」

「……?」

「正解はね、人間をやめることよ」

 

人間は弱い。

だから私は、人間の成長性を残して、人間をやめた。

まあ、昔からの習慣ではある。

 

「今日のところは全員気絶で終わらせてあげる」

 

三分。

人間が酸素を失っても生きていられる限界値だ。

私は二分ほど襲撃者たちの酸素を奪い、昏倒させる。

ただの人間が、魔女である私に敵うはずもないのだ。

敵うとすればそれは。

 

「へぇ。サボろうかと思ったけど来て正解だったかも」

「……覚醒者か」

「そ。政府に協力してる覚醒者狩りの覚醒者。よろしくね?」

 

同じ覚醒者だけである。

尤も、私と他者では、天と地の差があることではあろうが。

 

「でもおっかしいねぇ?体を強化するタイプだって聞いたんだけど?」

「帰ってくれるなら私も楽なんだけど」

「ダメダメ♪お仕事だしぃ、何より楽しいからねぇ!」

「なら、ぶちのめす」

 

踏み込み、構え、殴る。

相手を殺すのに、複雑な工程は本来必要ない。

殴れば死ぬ、斬れば死ぬ、貫けば死ぬ。

たったそれだけでいいのだ。

 

「残念だけど私に攻撃hごふっ!?」

「さっきので気絶してないなら、呼吸が必要無い体になってるってことでしょ?そしてその余裕ぶり。ハッ、種なんかすぐに割れたわ」

「んな、デタラメな……かふっ……」

「もう1発」

「あがっ!?」

 

能力に胡座を掻いていただけの雑魚が、まあ粋がっちゃって。

自然現象等に体を変化させるタイプの能力者なんて、前世で腐るほど見て来た。

最初は対応する魔法を使わないといけなかったので面倒くさかったが、一括で殴れるようになってからは楽な獲物だ。

大抵の場合、殴られると思ってなくてあっさり殴れる。

 

「これでおしまい」

「ひぃ!?ま、まっで!?」

「待たない」

 

顔面に拳を叩き付け、黙らせた。

前歯とか鼻の骨が折れてるかもしれないけど、まあ死にはしないでしょ。

手加減はしてあげた。

 

しかし、今日は来客が多い。

まだいるとはね。

それにこの気配は……。

 

()()()()使()()。生きてたんだ」

「死にましたよ。輪廻を潜り、再び現世に生を受けただけです」

 

時の魔法使い。

前世では最後に殺した、厄介な相手だったか。

時の魔法で幾度も妨害を受けたっけ。

流石に厄介だから対策をしたけど。

 

「あっそ。で?何しに来たのさ」

「貴女を消しに」

「できると思ってんの?」

「覚醒したばかりの貴女なら」

「チッ……」

 

やはり面倒な女だ。

私の力が戻り切ってないことを察知して出てきたか。

 

「私、今回はソラを守る以外何もするつもりないんだけど」

「かつて世界を滅ぼした魔女の言葉なんて、信じると思いますか?」

「母さんを犠牲にのうのうと生きてたくせによく言うよ」

「それは……」

 

何言葉に詰まってんの?

まさか今更悔いてるわけ?

 

「そんな世界滅びてしまえ。一人を犠牲に生きながらえる世界なんて、最初から破綻している」

「それでも、間違ったままでも、あの世界はまだ生きていたのです」

「だから壊して、新しく創った」

「……」

「そもそもお前の世代の魔法使いのせいでしょ。自分たちでケジメ付けられなかったくせに、人にイチャモンつけないでくれる?後から生まれた母さんに責任押し付けてる時点で、お前も人のこと言えないじゃん」

「そ、れは……」

「それでも邪魔するって言うなら、死ね」

 

首狙い。

魔力の刃を放って命を狙う。

無論、当たるわけがない。

相手は時を操る魔法使い。

 

「そこ」

「うっ!?」

 

現れる場所は、変幻自在なのだから。

狙うはカウンター。

攻撃の瞬間だけは、時を動かさないといけない。

だから、私は時間の歪みを察知して反撃を繰り出す。

 

「相変わらずデタラメな……!」

「時間を遅くしようが、早めようが、それより速く動けばいいだけ」

「それができれば苦労はしません……!!」

 

尤も、今の私にこいつを仕留めきるだけの力はない。

一瞬命を奪ったところで、こいつは時間を巻き戻して生きながらえる。

とはいっても、逃げられるわけでもないのが厄介だが。

はてさて、どうしようか。

魔力が尽きる前に何とかしたいが……。

 

「ヒジリちゃん!!」

「ソラ!?」

 

ちょっと待って、なんでここに!?

留守番を任せていたはずなのに。

マズい、奴の攻撃がもうすぐ来る。

 

障壁、展開、強度が足りない。

走れ、割り込め、自分を盾にしろ。

 

「ソラっ!!」

「ぁ……」

 

容赦ない攻撃の雨。

流石に、きつい。

 

「ヒジリちゃん!!」

「なんで来たッ!!」

「っ……!!ヒジリちゃんが、遅くて……」

「……ゴメン。大丈夫、だから」

「うそ、そんなのが大丈夫なわけない」

「そうですよ。大人しく終わってください」

「黙れクソアマ……ソラを巻き込んだくせに……所詮クズはクズか……!」

「……遺言はそれでいいですね?」

 

くそ、意識がもうろうとする。

畜生、こんなところで終われない。

まだ、私は、ソラに何も……。

 

「そこまでですよ、刻未(キザミ)

 

死に際だからだろうか。

母上の声がした気がした。

 

 

 


 

 

 

何が何だか分からなかった。

ヒジリちゃんが私のせいでボロボロになって。

殺されちゃうと思ったら、もう一人知らない人が出て来て。

その人は、私そっくりだった。

背格好も雰囲気も違うのに。

私だった。

 

「間に合ったようですね」

 

その人は、穏やかに私に微笑んで、ヒジリちゃんを守るように前に立った。

 

「ヒジリは殺させませんよ」

「……その魔女を守るつもりですか、天理(アマリ)

「もちろん。私の大事な可愛い娘ですから」

 

え?

ヒジリちゃんの、おかあさん……?

 

「再創世を起こした張本人だとしてもですか?」

「私も再創世を望んだわけではありませんが、ヒジリの言うことも一理あるでしょう。やり方は性急でしたが、間違ってはいなかったと思いますよ」

「無辜の民を多く犠牲にしても、ですか」

「民が無辜であったかは議論の余地がありますね。ヒジリは恐らく、等しく罪人と思っているでしょうし」

 

なんの、何の話をしているの?

ヒジリちゃんが、何をしたっていうの?

分からない事ばっかり話さないでよ。

 

「私の同位体も我慢の限界のようですし……どうです?一度退いてはくれませんか?お互い、こんなところでぶつかっても不毛なだけでしょう?」

「……」

「他に古の魔法使いもいないのです。まだまだ不安定なこの世界ですから、今度は私たちが再創世をする羽目になりますよ?」

「……良いでしょう。今回は退いてあげます」

「ええ、お願いしますね」

 

ヒジリちゃんに酷いことをした人は、どこかに行った。

それと同時に、私そっくりな人は、振り返ってヒジリちゃんに手をかざすと、ヒジリちゃんの傷がみるみる治って行った。

これが、覚醒者というものなの?

 

「さて、自己紹介をしておきましょう。私はアマリリス=エソラリエ。今は天理と呼ばれています。ヒジリの母親のようなモノです」

「あの、えっと……大國ソラ、です……ヒジリちゃんの、お姉ちゃんをしてます……」

「とりあえず、こちらへ寄ってくれませんか?今の潜伏先に飛びます」

「……?」

 

多分、悪い人じゃない。

だから、言葉に従った。

アマリと名乗った人はヒジリちゃんを抱えて、私がくっつくと同時に、何かをしたんだと思う。

次の瞬間には、ミサオさんの家だった。

 

「はい、着きました。ベッドはどちらですか?」

「あ……こっち、です……」

 

ヒジリちゃんをベッドに寝かせて、お話しする準備をした。

 

「ふぅ……疲れました」

「あの……ありがとうございます……」

「いえいえ。私としても、ヒジリが死ぬのは忍びないですからね」

「ヒジリちゃんのおかあさん、なんですか?」

「厳密には違いますが、ヒジリが母と呼ぶのは私だけでしょうね」

「そう、ですか」

「それはそれとして、色々と説明をしなければなりません。大事な話ですので、よく聞いてくださいね」

 

アマリさんはそういって、語り出した。

 

「まず最初に、ヒジリは狙われています」

「それは、覚醒者だからですか?」

「いいえ。魔女だからです」

「魔女……?」

 

覚醒者と魔女。

どう違うのだろうか。

分からない。

けど、覚醒者である以上に、魔女であることの方が恐ろしいというニュアンスを含んでいる気がする。

 

「そう。かつて世界を滅ぼした魔女。その転生体が、大國ヒジリという人物です」

「てんせいたい?」

 

世界を、滅ぼした……?

 

「生まれ変わり、という奴です。今までは記憶を失い、力の使い方も失っていたので気付かれていませんでしたが、目覚めてしまったが故に、狙われています」

「でも、ヒジリちゃんは優しい子です……!」

「ええ。とても優しい子です。知っています。以前の世界では、とてもお世話になりました」

「なら、どうして……」

「その優しさゆえに、世界を滅ぼしたからです。この子は天才ですから、できると思ったことは全て成し遂げてしまいます。世界を滅ぼすことでさえ、それは例外ではありませんでした。それゆえに、先ほどの魔法使い、刻未は、ヒジリを亡き者にしようとしたのでしょう」

 

優しいから、世界を滅ぼした?

訳が分からないよ。

それに、だから殺されるの?

分からない。

優しいヒジリちゃんが、どうしてそうなるのか、全然分からない。

 

「たった一人を救うために、間違った世界を滅ぼす。そんな魔女が、ヒジリ=エソラリエ。大國ヒジリの前世、私の娘。ヒジリは、私を救うために、世界を滅ぼし、新たな今の世界を作り上げたのです」

 

そう言って、アマリさんは悲しそうに微笑み……。

 

「そして、大國ソラ。貴女は、私の半身。人としての私であり、私は魔法使いとしての貴女です」

 

更に言葉を紡いだのだった。

そして。

 

「……へぇ」

 

そのタイミングで、ヒジリちゃんは目を覚ました。

 

「久しぶり。自由にしてる?」

「ヒジリ……」

 

もう少し。

もう少しヒジリちゃんが目覚めるのが遅ければ。

あんなことにはならなかったのかもしれない。

そう思うと、この間の悪さを、私は恨むしかなかった。




・大國ヒジリ
前世は世界を滅ぼした魔女。
母の犠牲の上に成り立つ世界を間違いだと断じ、世界を滅ぼして再創世した。
前世を思い出すまでは文武両道なだけの普通の女の子だったが、覚醒してからはクソデカ矢印で全てを破壊しかねない危険人物。
願いはただ一つ、アマリリス=エソラリエの自由だけ。
他は何も要らず、自分の命でさえ捨てる。
人間はとっくにやめた。

・大國ソラ
アマリリス=エソラリエの人としての生まれ変わり。
何も知らない、何の力もない。
ただヒジリの家族として在る存在。
ヒジリを繋ぎとめる楔、日常に戻るための命綱。

・天理
アマリリス=エソラリエの魔法使いとしての転生体。
全て覚えている、力を引き継いでいる。
ただヒジリを守るために生きている存在。
ヒジリを追い返す抑止力、日常に戻すための杭。

・刻未
ヒジリ=エソラリエにコテンパンにされ続けても最後まで抗っている女。
他の古の魔法使いは心が折れて転生も叶わない。
また世界を壊すんじゃないかと危険視してヒジリを殺そうとしている。
天理とは、とある組織の同僚だが、それはそれとしてヒジリの扱いでぶつかる。
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