黒い沈黙と魔術世界   作:まぬたかゆ

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初投稿です。


プロローグ:理論化された特異点

図書館・・・総記の階

 

外郭へと追放されてまだ間もない・・・まだどのようにして新たな道を歩むか決まっておらず、図書館長、アンジェラは思考を巡らせていた。

都市への復讐、苦痛の連鎖を断ち切る方法。目的は決まっているが、手段がない。・・・まだ大した時間が経っていない故、仕方のないことではあるが。

 

「・・・あの人のことを少しだけ見直した気がするわね。」

 

あの人(アイン)は理想を叶えるために、あらゆるものを犠牲に、自分さえも使い倒して進んできた。アンジェラとは目的が大きく違うが、そこだけは尊敬できる点だろう。

 

しかし、その罪が消えるわけではない・・・一度彼のことは考えずに今後を考える。

復讐を果たすためには何よりも情報が必要だ。都市のすべてを、ただのフィクサーから頭に至るまで。すべてを知らなくてはならない。

そうなると、都市の人々を本にし、情報を得なくてはならない。しかし、本を光として都市に還元した以上、現在図書館にはまともな本がない。そして、図書館の力はアンジェラの手を離れたことで大きく制限されている。

ならばどのようにしてゲストを呼ぶか・・・

 

「アンジェラ。消えた本をリスト化して整理していたら変な本が見つかったんだけどー?」

 

召使から友達へとグレードアップしたローランがアンジェラへ声をかける。その手には本当に知らない本が三冊あった。

 

その本は・・・

 

「魔術の本」

 

 

 

「・・・ローランはその本に見覚えはある?」

 

「全くだな。そもそも、魔術ってのがわかんねえし・・・こんな名前の形式なんざ、都市で聞いたことがない。」

 

「・・・そうね。ローランは一回戻ってくれるかしら。ひとまず、魔術の本について読んでみることにするから。」

 

「わかったよ、アンジェラ。気分が悪くなったらすぐに呼んでくれよ。」

 

 

 

ローランが退出したことを確認してからアンジェラは本を読み進める。

 

「魔術・・・この世界にはないものと考えた方がよさそうね。それに・・・この本を読みだしてから図書館に光が戻ってきているわね。これも図書館の意志ということなのかしら。」

 

図書館に光が戻り始めている。それは図書館がかつてのように、招待状でゲストを呼べるようになったということ。そして、本を集めることが可能になったということ。

だが、アンジェラはそのことを気にしつつも、本を読み進める。魔術というものを、別世界の技術を知るために。

 

 

 

「なぁ、読み終わったらしいから来たが・・・なんでビナーもいるんだ?」

 

「それについては私が説明するわ。」

 

アンジェラはローランに一つの紙を手渡す。そこに書かれていたのは・・・

 

「≪雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ≫・・・何だこの文章?」

 

「それは魔術の呪文というものよ。そして、この呪文は黒魔【ショックボルト】と呼ばれる物みたいね。」

 

「魔術・・・【ショックボルト】、ねぇ。電気でも出せたりするのか?」

 

「それを今からローランに体感してもらうのよ。・・・ビナー。」

 

「嗚呼、任せなさい。≪雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ≫」

 

ビナーがローランに指を向け紙に書かれていたものをそのまま口にする。その瞬間、ビナーの手が一瞬光ったかと思えば

 

「いってぇ!マジで電気が発生するのか!?しかし、なんていうか・・・」

 

「特異点に似ているとは、思わないか?」

 

ビナーが口を開く。その目は新たなる玩具を見つけたように、好奇心に満ち溢れていた。

 

「特異点とは、もとより単純に人の言語では表せない現象・・・W社の『原状復帰』然り、R社の『複製』然り。」

 

「しかし、この魔術というものは、特異点のようで在りながら、人の言語により完全な制御を可能にしている。」

 

「果たしてこれは特異点と呼べるものであろうか。」

 

ビナーの問。それに対しての二人の回答は

 

「言えないな。」「言えないでしょうね。」

 

一致したものであった。

 

「ほぅ・・・理由はなんだ?」

 

「まぁ、俺は特異点には疎いから何とも言えないけど。これはビナーの妖精と比べて本当に弱く感じたんだ。これだけ弱いってことは、子供が使っても問題ないように普及しているんじゃないか?俺はそれを特異点と呼ぶ気にはならないな。」

 

「魔術というのは、特異点に近しいものではあるけど、多くの人がわかるように理論化されている時点で私は特異点ではないと思うわ。」

 

「成程な。お前たちがそう云う様に、私も同じように思っている。」

 

ビナーは満足そうにうなずいた。二人の答えが都市の物のようでありながら、また違ったものであったから。

 

「ここからが本題よ。魔術というのは、この世界の技術ではないわ。そして、この本を通じて、この技術が使われている世界を確認したの。」

 

そういい、アンジェラは空中に映像を映し出す。いつその技術を手に入れのかはもはやどうでもよくなるほど、その世界は衝撃的なものだった。

 

 

 

空が明るい。待ちゆく人々の顔は明るく、明日への不安などまるで無い。魔術は至る所で日常的に用いられている。

場面は変わる。そこはまるで学校のようで、子供たちが魔術について知識を深めている。そして、そこに立つ大人も楽しそうに子供の成長を眺めている。

・・・都市とは似てもつかないほど、明るく、素晴らしい世界だった。

 

 

 

ローランは言葉を失い、ビナーもまた興味深く世界を眺めている。

 

「・・・これはすごいな。見たところ頭や翼もないだろうから、平和な世界なんだな。」

 

「面白いな。また別の魔術も、其れを転用する知恵も。」

 

「ええ、そしてこれから再びゲストを招待することになるけど、あちらの世界のゲストになるわ。そのことを入念に頭に入れておきなさい。」

 

「・・・また、骨の折れる日々が始まりそうだな。」




こんな感じでやっていきます。
よろしくお願いします。
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