図書館 総記の階
これから招待状を発行しようと準備万端のアンジェラに対して、ローランの顔は少し疲れているようだった。
「ローラン?大丈夫かしら?」
「ああ、大丈夫だ。・・・ちょっとだけ夢見が悪かったんだよ。」
「そう。あなたが夢を見るなんて、珍しいわね?」
「そういえば、俺が見た夢の話はあまりすることはなかったな。」
ローランは見た夢を話す。だが、話していても気分はあまり良く無い様だ。
「自分が死ぬ夢を見たんだよ。知らん奴らに囲まれて、言おうと思ってないことを口にして。」
「なんていうか・・・まるでそう言うことが自然、という感じの夢だったな。」
「不思議な夢ね。」
「まぁ、それはそれで、これはこれだ。今回から、向こうの世界へ招待状を発行するんだろ?」
「そうね。向こうの世界・・・便宜上、『魔術世界』と呼びましょう。恐らくだけど、最初のゲストはそこまで強くはないだろうから、気楽にしていなさい。」
「それは良かった。こんな気分で、本気の接待をしろとか、実力出せなさそうだからなぁ。」
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「・・・よし、今日もなんとかとれた・・・」
魔術世界、とある都市の裏路地にて、一人の少年が盗んだものであろう財布を持って歩いていた。
その路地は薄汚く、外の明るい街とは別世界と言っても差し支えないほど雰囲気が変わっている。
「これで今日も生きれる・・・」
そういいながら少年はほかの複数人の少年少女が集まった裏路地の中でも少し開けた場所へ集まる。
「おお、ライト!今日も盗れたのか!さすが俺たちのリーダーだな!」
仲間と思われる一人の少年が、ライトと呼ばれた少年の肩を叩く。
だが、ライトは喜んでいるとはいいがたい雰囲気だ。
「・・・ここ最近、警備が厳しくなってきているんだ・・・」
その一言で、周囲は静まり返る。
「今日盗れたのだって、偶然なんだ。次も盗れるとは思わない・・・」
「じゃあ、どうするのよ!私たちは魔術も使えなかったネズミ以下の存在なのよ!」
少女の一人が、ライトに詰め寄る。
「とりあえず、今日どれだけ取れたかを確認しよう・・・」
一人の少年が、財布を取って開ける。その中には
「っち、しけてんな・・・何だこれ・・・招待状?」
「・・・図書館で、本を手に入れられるってさ。」
「馬鹿げてるわよ。捨てたら?」
「いや、行こう。」
「何を言っているのライト!得体のしれないものに従うって、死にに行こうと思ってるの?」
「でも、盗みを行うのは今後はどんどん警備が厳しくなっていく。なら、藁にでもすがる思いで行った方が良いかもしれない。」
「・・・僕は行く。行きたくないなら、ここで待機してくれ。」
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「ネズミ、かぁ・・・あっちの世界でも、そういう自虐は使われるんだな。」
「それよりも、気になるわね。魔術も使えなかったって。」
「多分、才能とかが関わってくるんじゃないか?でもって、魔術が使えなくて、親に捨てられた、とか。」
「・・・向こうの世界も、案外こっちと変わらないかもしれないな。」
「一部分だけ切り取ったらそうなるのは当然でしょう。」
「・・・魔術についてより詳しく知れるのは、もうちょっと先になりそうね。」
「ま、仕方ないよ。重要な情報に迫るなら、ちょっとずつの方が良いかもしれないしな?」
「それもそうね。ローラン、準備しておいて。」
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「ここが図書館・・・不思議な場所だ。」
「歓迎します、ゲストの皆様。ここは図書館。」
「私は図書館の館長兼司書、アンジェラと申します。」
「ここではあなたが望むものを見つけることができますが、同時にあなたの大事なものを手放すことになるかもしれません。」
「あなたが・・・館長。」
「なぁ、おい!本ってやつを手に入れれば、金を儲けられるんだよな!」
「もしかしたら、魔術を使えるようになるかも・・・!」
「落ち着いてくれ、みんな!・・・すいません、館長様。」
「大丈夫です。あなた方の質問に答えますが、手に入れた本によっては、金を手に入れたり、魔術を撃変えるようになるかもしれませんね。」
「そうですか。・・・ありがとうございます。・・・行こう、みんな」
「覚悟は決まったようですね。」
「それでは、どうかあなたの本が見つかりますように。」
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舞台1 ネズミ
参加階層 総記の階 参加可能人数 1
参加司書 ローラン 使用コアページ 黒い沈黙
「ゆるーくやっていきましょっか。考えすぎないのが一番だろうし。」
ローランはいつもの黒い手袋をはめて、軽く深呼吸する。
「・・・みんな、気を付けて。相手は一人だけど、おそらく・・・」
ライトが言い終わる前に、ネズミの一人が走り出す。
「相手は一人なんだ!数で・・・」
「何とかなる、て思っていたのか?」
ネズミがめちゃくちゃに繰り出した拳を回避し、
「そんな隙だらけじゃ、殺してくださいって言っているようなもんだ。」
ローランが黒い手袋から取り出した双剣【クリスタルアトリエ】にで全身を切り裂かれ・・・
本になった。
言葉に表すだけなら単純だが、普通はあまりにも異常な光景であり・・・
「う、うわああああああああ!」
「私は、私はああなりたくない!」
「なあ、嘘だろ・・・死んだのか・・・?」
半狂乱になってローランに襲い掛かるもの無理はないものだった。
そして、ただめちゃくちゃに襲い掛かるだけじゃ勝てるはずもなく・・・
「ああ・・・みんな・・・」
ライトを残して、本になっていた。
「よくも・・・みんなを・・・!」
さすがのライトとは言え、仲間を皆殺しにされて黙ってはいられなかった。恐らく、冷静さを保つことができれば、一撃だけでも与えられたかもしれない。だが、所詮それはたらればの話であり、
「ああ・・・ごめん、みんな。」
ローランの斬撃を回避することは叶わず、本となった。
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「アンジェラの言う通り、なんてことはない奴らだったな。」
「仲間を殺されて発狂する・・・早速、都市との違いを見せられた気がするわね。」
「少なくとも今まで、ゲストが仲間を殺されて怒ることはあれど、発狂することはなかったから。」
「それだけ、あっちの世界が優しいってことだろ。」
「あいつらだって、してきたことは盗みだけだったようだし。」
「人を傷つける覚悟もないようじゃ、図書館に来たって無駄だったってことだな。」
ローラン君・・・淡々としすぎだよ・・・
都市の価値観にまだ引っ張られているようだね!