【完結】うお……貞操逆転世界魔法少女物はちょっと盛りすぎ……   作:しゅないだー

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#7「逆見(さかみ)(さえ)は見定めたい」

 

 

 

 ドアベルの涼やかな音で、逆見(さかみ)(さえ)は瞑想するように閉じていた目を開いた。

 入り口に視線をやれば、若い男が上着を丁寧に畳んでいる。

 

 

 柊木朔、自分の担当の魔法少女を何故か世話している男子大学生。

 清楚、という謎の信条に基づいて行動している。言動だけ見れば、狂人にも近いかもしれない。

 

 

 しかし氷織から聞く話では、あまりに女性にとって都合が良過ぎる。

 逆見の目からしても優れた容姿の男が食事を作り、事細かく世話を焼く。表では礼儀正しいが、自分といる時だけはぶっきらぼうになる。しかし優しい。

 まるで出来の悪い中学生の妄想の産物、不審だ。

 

 担当の願いを極力叶えるのが魔法少女付きの務めだが、それを精査するのもまた彼女の仕事だった。

 逆見は手招きし、朔を自分の目の前に座らせる。

 

「なんかいきなり呼び出されたと思ったら、洒落た喫茶店ですね」

 

「ここは魔法少女付きがよく折衝に使う場所でな。今日は貸し切っているから、是非とも楽にしてくれ」

 

 通路を歩くウェイター達は、一般的な審美眼からして美青年と言える。

 この男女比に偏りがある世界では、交渉事に使用する場をそういった貴重な人員で固めるのはある種の示威行為でもある。

 逆見がわざわざ目の前の相手を自分のホームとも呼べる場所に引き込んだのは、その本質を知りたかったからだ。

 

「あ、マジですか。それならそうさせてもらいます」

 

 周囲に気を使わなくていいと知るやいなや、伸ばしていた背筋から力を抜き、彼は背もたれに寄り掛かった。

 控えめながらも快活な先程までの印象とは違う、ある種のふてぶてしさすら感じる気怠さ。香水を軽く付けているのか、金木犀のような香りがふわりと辺りに漂った。

 一度会った事はあるが、改めてこちらが素なのだろうと確信を得る。

 

「ここって吸っていいんです?」

 

「あいにく全席禁煙だ。喉も渇いているだろう、好きな物を頼むといい」

 

 そう鷹揚な態度を取るのは懐柔の意味もあるが、この場でのイニシアチブを自分が握っている事を暗に示しているつもりだった。

 

「ちぇっ、どこもかしこも喫煙者には肩身が狭い事で……じゃあチョコレートパフェを1つ、大盛りとかできます?」

 

 そんな事を意にも介さず、相手はウェイターを呼び付けてそんな注文をしていたが。

 逆見に怪訝な眼差しを向けられている事に気付いたのか、彼は照れもせずに真顔で呟いた。

 

「人前じゃなかなかこんな物食べられないですからね」

 

「何故だ?チョコレートパフェは清楚じゃないのか?」

 

 目の前の男が語る『清楚』というものが、逆見にはよく分からなかった。

 いや、清楚という単語自体は知っているが、自分の把握している意味とあまりにも乖離している。

 

「俺はですね、『柊木くんって清楚だな……』と言われたいのであって『柊木くんってかわいい〜♡』って言われたい訳じゃないんですよ。あざと過ぎあざと過ぎ、清楚じゃなくなっちゃうって」

 

 やれやれ、とでも言わんばかりに彼は肩をすくめる。

 逆見は改めて、自分の大事な担当をこんな男に任せていて大丈夫なのかと至極当然の疑問を持った。

 しかし実際に氷織の実力、戦績は彼と出会う前に比べて確かに伸びている。それは正当に評価すべきだろう。

 彼女は小切手を取り出すと、目の前に座る朔に差し出した。

 

「なんか冗談みたいな額が書いてありますけど」

 

「それは受け取ってもらう。君が氷織に食事を提供している事は知っているからな、正当な報酬だ」

 

 胡散臭そうに小切手を透かし眺めながらも、朔はそれを鞄に放り込んだ。

 

「報酬って言い方はやめてもらいたいですけどね、好きでやってるんで。じゃあ俺の生活費と分けた上で実費だけ使わせてもらいます。実際エンゲル係数がちょっとね、いや家計簿が2冊になるじゃん……面倒臭えな……仕方ないか……」

 

 少し不満そうではあるが、相手と思ったよりもスムーズに話が進んだ事に逆見は違和感を覚えた。

 

「嫌に飲み込みが早いな。金銭の収受は君が言う『清楚』にはあまりそぐわないかと思っていたが」

 

 チョコレートパフェに舌鼓を打ちながら、彼はスプーンで逆見を指す。

 

「察しがいいですね、受け取る代わりに一つ条件があります。魔法少女の事について聞きたいんですよ」

 

 想定外の質問に一瞬動揺しかけたが、おくびにも出さない。

 

「聞きたいも何も、君が知っている以上の事はないよ」

 

 そう首を振ってみせる。

 

「いや、今の魔法少女って表に出てるのはなんつーかこう、編集されたキラキラした物でしょ?それこそアイドルみたいな」

 

 自分の思っている事を上手く伝えられないのか、もどかしそうに首筋を搔きながら朔はゆっくりと言葉を選んでいた。

 

「でも俺は、氷織がたまに怪我をして帰ってくるのを知ってる。あれで隠してるつもりなんだろうけど」

 

 何かを思い出すような彼の瞳には、憤りと悲しみの色が見える。

 

「見ないふりをしていれば、気付かなければ、それは存在しないのと一緒かもしれないですけど。お隣さんなんで、どうしても見えちゃうんだよな」

 

 でももしかして機密事項だったりすんのかな、と首を傾げる仕草に邪な意図はなさそうだった。

 ただ純粋に、自分の隣人の事を少しでも知りたい。そんな風に見えた。

 

「……こうも仕事仕事だと、疲れが溜まって仕方ない。独り言が少し大きくなるかもしれないな」

 

 指を鳴らして人を払うと、逆見は少しぬるくなったコーヒーに口を付けた。

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

 魔法少女とは、生贄だ。

 そして自分達は、その生贄の羊を管理する牧羊犬のようなものだ。

 

 かねてから逆見は、己の内で自分の仕事をそう卑下していた。

 

 

 

 

 

「柊木君。君は、子供が一番欲する物とは何だと思う?」

 

「……月並みだけど愛情、とか」

 

 それを否定も肯定もせず、彼女は言葉を続けた。

 

「魔法が発現する年齢は様々だが、一般的には7,8歳頃。大抵は両親からの情報提供で見つかる、そして約5年の訓練を経て実戦で通用するまで育て上げる訳だ。両親には莫大な口止め料と守秘義務を課してな」

 

 子供に魔法が発現したら国に連絡を、といったCMは定期的に流されている。"支援金"という名目で一生を暮らすに困らない大金が手に入る、という噂話もあながち間違いではない。手切れ金と呼ぶ方が相応なだけで。

 

 

 もしインターネットなどを通じてそういった情報を流布しようとしてもすぐに削除され、相応の"処置"をされる。

 仮に名誉ある魔法少女に選ばれたとして、自分の子供と強制的に引き離されると分かっていてそれを馬鹿正直に伝える親がどれくらいいるだろうか。

 

 

「7,8歳の本来であれば小学校に通い始め、くらいの子供をだ。両親と強制的に引き離し、学校という社会性を学ぶ場を奪い、玩具と菓子で宥め透かし、常人であればなす術無く殺される妄獣と戦わせる。君たちにしかできないんだ、と幼い自尊心を擽ってな。私達はそういう仕事をしている」

 

 淡々と言葉を吐く逆見を、じっと朔は見つめていた。

 

「20歳で魔法少女は終わりなんですよね。じゃあそれ以降は?毎月それなりの金を渡してるって話は聞きますけど」

 

「ああ。魔法少女のピークは18歳頃、20歳になる頃には魔法も出涸らしに近い。ただ戦闘には耐えられないだけで、その後も数年は使う事ができる。そんな状態の彼女達を放置するのはあまりにリスクが高過ぎる、個人差は勿論あるがな」

 

 実際はそれでも、任を解かれた元魔法少女達による問題行為は頻発している。それに対処する者もいるが、どうしても後手に回らざるを得ない。

 

「その後の進路は様々だ。"施設"で新しい魔法少女を導く者もいれば、魔法少女として活動しながらも大学で学び、引退と共に普通の社会人になろうとする者もいる」

 

 必ずしも不幸になる訳ではないんだ、と呟いたのは。どちらかと言えば自分自身に言い聞かせたのかもしれない。

 

「魔法少女として得た人脈や名声を使って事業を興す者もいるが、正直上手くいくケースは殆ど無い。かと言って、私達には彼女達をそうさせてしまった責任がある」

 

 金を与えて貴重な青春を捧げさせた彼女達に、結局のところ自分達が与えてやれるのはどこまで行っても金しかないのだ。

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

「……氷織の話をしよう。まず魔法少女とは生まれ持った魔法の性能と、後天的な魔力量でその実力が決まる」

 

 "氷雨"、"花火"。

 魔法には似た系統の物こそあれど、基本的にその個人オリジナルの物となる。

 今までの序列(ランキング)上位、いわゆる一桁(シングル)台の魔法少女の中には"永遠"、"記憶"、"鮮血"などがいた。

 

「"氷雨"の魔法は優秀だ。氷織に引き出す力がないだけで、理論上あれはある種の概念すら凍結できる」

 

「ごめんなさい、俺文系なんでちょっとよく分かんないです」

 

 文系は関係無いだろう。

 そうツッコみかけたが、逆見はそれよりも分かりやすい例えを探す事に注力した。

 

「氷織はスーパーカーだが、それを動かすガソリンが乏しいという事だ」

 

 納得したように頷く相手を見て、話を続ける。大事なのはここからだった。

 

「ただ油脈はある筈だ。あの子は自覚していないだけで、ずっと飢えている。ただ一度満たされなければ、その飢えには気付く事ができない」

 

 君にはその役割を担ってもらう、と言外に伝えている。

 

「飢えている、って他人事みたいですね」

 

 その事に気付いているのかは分からない。ただ今まで冷静に話を聞いていた朔が、その言葉にぴくりと眉を動かした。

 

あんた達()が、あの子をそういう状況に追い込んでる訳ですよね。ちゃんと愛してくれるような里親に繋ぐ事だってできた、でも魔法少女として戦わせたいからそうしなかった。それだけの話じゃないですか」

 

 逆見にとって、それは耳の痛くなる言葉だった。

 仕事とはいえ、8年近く同じ少女を見てきた。本当はもっと良い人生があったんじゃないか、といつも己の中で問う。

 

 もし両親がいれば、魔法が発現しなければ、担当が私でなければ、あの子が優し過ぎなければ。

 もっと守名氷織は、幸せになれていたのではないかと。

 

「だったら、どうする。蔑むか?それとも声高々にマスコミにでもリークするのか?無駄だし、何より氷織が悲しむような事にはしたくない」

 

 その嘲るような声色は段々とトーンダウンしていき、最後には溜息へと変わった。

 

「"顔付き"と呼ばれる妄獣が、稀に出現する」

 

 それでも私達は魔法少女を"作り出す"事を止められない。

 

「見た事もあるだろうが、通常の妄獣には顔が無い。異形の獣の頭部には、吸い込まれそうな暗闇が広がっている。だがたまに現れるんだ、目や鼻が付いた奴らが」

 

 

 顔付きは通常の妄獣とは一線を画す膂力、そして魔法を思わせるような異能を所持している。

 複数人の魔法少女でようやく五分。そんな存在だった。

 

 

「数十年前に完全な顔付きが現れた時。一晩で街が消えた。10人以上の魔法少女が犠牲になって、それでも尚止まらなかった。"一桁(シングル)"の魔法少女が複数人投入され、やっと事態が収束した。それも討伐ではない、撃退だ」

 

 今もその傷を癒やしている途中で、何処かへ潜伏している可能性も否めない。

 

「魔法少女の質は確かに上がっている。だが、妄獣にもそういったイレギュラーは発生する」

 

 妄獣の大半は上位の魔法少女一人で制圧できる。

 だがもし顔付きが現れた時、奴らの異能とその魔法少女の相性が悪ければもう手が付けられなくなる。切れる手札が多いに越したことはない。

 

「私達にとって戦える魔法少女の数は手札に等しい、だから決して減らす訳にはいかない。彼女達を見つけ、より強く飢えさせる為なら私達は手段を選ばない」

 

 そこまで一息で喋ったせいか、逆見は肩で息をしていた。グラスの水を口に含みながら、相手の出方を待つ。

 

 ちらりと時計を見た後、彼は大欠伸をした。

 

「知らねえよ、そんなの。ガキを物で釣って戦わせてる連中が偉そうな事言うなよ……って前の俺なら、言ってましたけど」

 

 眼鏡のレンズを拭きながら、つまらなさそうに言い放つ。

 

「別にあんたらが好きでそんな事やってるとは思ってないし。俺だって人様の事を偉そうに責められるほどできた人間でもないから」

 

「……」

 

「一番後ろめたく思ってるのはあんたなんだろ、そうでもなきゃそんなに言い訳がましくべらべら理屈こねないでしょ」

 

 何も言えなかった。

 

「それに氷織自身は魔法少女である事を自分の存在価値だって思ってる。ならそれを否定するのはあの子自身を否定するみたいなものじゃないですか。少なくとも、今の俺にはその資格ないですよ」

 

「じゃあ、君はどうするんだ」

 

 漸く、絞り出すようにそう問う。

 

「……そうだな、氷織は玉ねぎが嫌いなんですよ。でもそんな事ない振りをする、好き嫌いしたら俺に嫌われるとでも思ってるんじゃないですか?」

 

 何の話をしているのか逆見は分からず、首を捻った。

 

「けど、この間ハンバーグに細かくして混ぜたら『美味しい!』って夢中で食べててさ」

 

 まだ分かんないかな、と朔は微かに笑った。

 

あんた(・・・)が、本当は氷織にしてやりたいけどできない事。全部俺がやるって言ってるんですよ」

 

 全てを見透かされたような気がして、唇を噛み締める。

 

「……柊木君。君は何が目的なんだ?金を欲しがる訳でもない、魔法少女の特権に縋ろうとする訳でもない。まるで保護でもするような口振りだ、守護者たる魔法少女を」

 

 まるで異物だ。

 そんな印象を目の前の男から受けた。

 

「俺は『女だから、魔法少女だから』って価値観に生きてないんですよ。『か弱い男は愛でられなきゃ』なんてまっぴらだ」

 

「確かに、君は愛でるには向いていないかもしれないな」

 

「寧ろ『男なら女子供を守ってなんぼ』くらいに思ってるんですけどね」

 

「……ふっ。それじゃ、逆じゃないか」

 

 困ったように、朔も「本当に逆なんだよな」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 まあ聞きたかった事は大体聞けました、と相手が帰り支度を始めたのを見て逆見は「最後に一つだけ教えてくれ」と引き止める。

 

「君は氷織と最初に出会った時に、何故放っておかなかったんだ?」

 

「そんなもん、俺が清楚なお兄さんだからに決まってるでしょ」

 

「そうか。そうだな……君は実に清楚だ。パフェでもどうだ、もう一つ」

 

「いや、もう腹一杯なんで。なんかテイクアウトできる物でおすすめありますか」

 

 メニューに目を通す彼へ、咳払いを一つする。

 

「……氷織はここのチーズケーキを気に入っているぞ」

 

「へえ、初めて知りました。じゃあそれをホールでもらおっかな」

 

 少年と青年の境目のような、悪戯っぽい表情で彼は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 逆見が朔を見送って数分後、再びドアベルの音が鳴り響く。

 

「お疲れー、逆見ちゃん。私、アイスココアね」

 

「グレンフレアか。息災そうで何よりだ」

 

 ウェイターにウインクしながら、自分の目の前に座る者が一人。

 

「ねえねえ。さっきいた男、誰?」

 

「……彼は民間の協力者だ」

 

 魔法少女グレンフレア、花城舞。守名氷織の数少ない友人である。

 しかし彼女の言葉に何かざらりとしたものを感じ、逆見は言葉を濁した。

 

「あれがひーちゃんのお隣さんなんだよね。何処に住んでるの?知りたいなあ、私。こないだひーちゃんと会った時は討伐の方が忙しくって結局聞けなかったから」

 

 逆見の答えなど関係ない、と言わんばかりに楽しげに言葉を投げ付ける。

 

「……悪いが、それを明かす事はできない」

 

 そう逆見が答えた瞬間、周囲の温度が上がった。

 

「ねえ。私は魔法少女だよ?魔法少女の私が知りたいって言ってるんだよ?逆見ちゃんはひーちゃんの単なるお付きに過ぎないよね?なのに、私に意見するの?」

 

 彼女は穏やかに、しかし抑揚のない声で逆見の耳元へ囁いた。熱風のような吐息が触れる度、痛みにも似た熱さを感じる。

 

「最初はね、ひーちゃんが楽しそうならいいやって思ってたんだよ。もうあの事気にしてないんだろうな、って安心もしたし」

 

 楽しげだった声が、底冷えのするようなトーンへ落ちる。

 

「でもよくよく考えたらさ。ひーちゃんって優し過ぎるからまた騙されてるんじゃない?って思って。逆見ちゃんはどう思う?ねえ、どう思うかって聞いてんの」

 

 舞のボルテージが上がるのと連動するように、ますます部屋の温度が高くなっていく。もう耐えられない、と逆見の意識が飛びそうになった時。

 

「やめた。逆見ちゃん怪我させたら、ひーちゃんが悲しむし」

 

 肌を焦がすような熱が、ふっと消えた。

 自分が緊張のあまり呼吸を忘れていた事にようやく気付きながら、逆見は深く息を吸った。

 

「男なんてさ。所詮、私達の人形でしょ?ぺこぺこして、ご機嫌伺って、ちょっと数が少ないからってレア物気取り。あんなに弱っちいのに」

 

 心の底から蔑んだような声でそう吐き捨てる。

 

「今度は何?お金?それとも特権?私達(魔法少女)に媚び売ってくる奴らなんて、どうせ私達の事は見えてないでしょ」

 

 言い返す事はできなかった。

 

「それでまたひーちゃんが傷付くなんて、私はそんなの許さない」

 

 堪りかねて逆見は口を開こうとする。

 

「グレンフレア、いや花城君。彼は……」

 

「────それ以上喋るなら、どうなっても知らないよ?」

 

 瞬間、舞の目の前に置かれていたアイスココアが突如沸騰する。グラスの割れる音と、ウェイター達が出した「ひぃ」と怯えたような声が静かな店内に響いた。

 

「私も期末試験で忙しいから。別にすぐにどうこうしないから、安心していいよ?」

 

 無邪気な正義感と独りよがりの庇護欲をその目に浮かべながら、魔法少女は笑っていた。

 

 

 

 

 

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