タイラントとイマジネーションを見送った僕は、久しぶりに自宅に戻った。
といっても、質素な部屋だ。飾り気もない。ほとんど使っていないからだろう。
僕はそこで一度、変身を解いた。
部屋の鏡に映ったのは黒髪の少女ではなく、だからといって、年老いたおじさんでもない。
パッとしない青年だった。
薄黒髪が目にかかり、猫背のどこにでもいるような青年。
その姿に懐かしさを覚え、鏡の縁を指先でなぞる。
いつまでも変わらない、”例外”の姿。
「――――そう。いつまでも、ね」
いつもと違う、僅かに低くなった音色。
僕と僕。
例外と例外。
魔法少女という存在も、大概だ。
昔と今では魔法少女の誕生の仕方は異なっている。
今は昔よりもより特殊化している。
僕は再び魔法少女に戻る。
鏡の前に立つのは黒髪の少女―――――魔法少女ヴェニタール。
「世界は変わり続ける。だけども、僕は変わらず動き続けるのか」
呟き、僕は鏡に背を向けた。
同時に、スマホが鳴る。
例の”彼女”からだった。
―――そろそろ会って話がしたい、と。
僕は直ぐに決断し、部屋を後にした。
残ったのは、誰も映らない鏡だった。
◇ ◇ ◇ ◇
月夜の中、ある廃墟地に彼らは集まっていた。
『今度こそ!!! 魔法少女のない清き世界を!!!』
彼らが一斉に叫ぶ。
その中央で、白いローブの男が仰々しく腕を掲げた。
「魔法少女のない清き世界のために!我らは進まねばならないのです!!」
その隣には、少女が立っていた。
月光で輝く灰色のドレスを纏う――――――魔法少女だった。
しかし、その瞳は沈着の奥に熱狂を秘めていた。
「そのために!我らは実行しなければなりません!!!!!」
中央の男が更に声を張り上げる。
「――――Ⅶ級魔獣の解放を!!!!!」
彼らが一斉に叫ぶ。
歓声。熱狂。狂気。
魔法少女であるはずの彼女もまた、熱狂の中で微笑んだ。
今、滅びたはずの組織が動き出す。
その組織の名は、アンチマギカ。
――――――反魔法少女主義に染められた者達の集まりだった。
◇ ◇ ◇ ◇
――――――タイラント視点
大阪支部に戻り、夕暮れのいつもの道を歩く。
イジーとも別れ、ひとり、伸びた影を伴って歩いていた。
ふと、視界の端に何かが映る。
路傍の隅。
「ん? これは――――――」
目を凝らして見る。
白くて柔らかそうな体をした、奇妙な生き物が眠っていた。
しかし、普通ではなかった。
その生き物はちょっぴり突き出したかわいらしい右手に酒瓶を持っていた。
――――一升瓶だった。
(……え??)
見間違いですの?と、思わず私が凝視していると、その生き物はゆっくりと目を開けた。
円らな瞳に私の姿が反射する。
「……何か用だっぴ? ―――ヒック……今酔ってるから、邪魔しないでほしいっぴ」
かわいらしい声で小さな酔っ払いは言った。
かの生物のイメージ。
ある魔法少女のアニメに出てくるインチキ白饅頭が2足歩行している感じ。
手は短くてかわいらしいぞ!酒を持つとはなんというギャップなんだ!
ということで、第一章完結です。
明日からは閑話・掲示板形式を載せようかと思ってます。
やっぱり閑話と掲示板はロマン。なくてはならないものです。
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