虚無の先の魔法少女   作:おおは

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魔法少女に痺れて 後編(※完全他者視点)

変身。

 

俺は聞こえた言葉に思わず振り返る。

 

そこにいたのは先ほどの少女ではなかった。

 

黒で統一された服装。

 

モノクルを右目につける少女。

 

そして、溢れる魔力のプレッシャー。

 

嘗て画面越しに見た魔法少女だった。

 

しかし、俺はその容貌に見覚えがない。

 

ということは強いとは言えないのかもしれない。

 

思わず俺は叫んだ。

 

「お前、あいつに勝てるのか?!」

 

すると、彼女は肩を竦めた。

 

「あれくらいなら何の問題もない。どうせ生まれたてだろうしね」

 

「本当なのか!」

 

「あぁ勿論。これでも僕は結構強いんだ」

 

俺は無意識に安堵した。

 

先ほどまで海に飛び込みたい自分が何を言っているのか、今、俺は不思議な感覚になった。

 

だが、目の前の少女を見た時俺は確信した。

 

彼女の瞳は自信に溢れている。

 

何も悩んでいないのだろうか。

 

何も悩まないようにしているのだろうか。

 

俺は思わずまた口を開いた。

 

「なぁ、お前の名前は何なんだ?」

 

「本来秘密なんだが、まぁいいか。―――――僕の名前はヴェニタールだよ。魔法少女ヴェニタール」

 

「なぁ、お前は――――――」

 

俺は情けないことを聞こうと口を開きかけた時、俺は空に浮いていた。

 

「は……?」

 

「君は暫く大人しくしておいてくれ。戦いの邪魔になりそうだ」

 

ヴェニタールに抱えられて、俺は空を飛んでいた。

 

地面が離れて見える違和感。

 

俺の額を一筋の汗が通る。

 

下を見ると、俺達がいた場所に魔獣がいた。

 

地面に大きなクレーターを作っている。

 

「さて、客もいることだ。華々しく終わらせよう」

 

ヴェニタールが至近距離でそういう。

 

至近で見るほど、彼女の顔は整っていた。

 

きめ細やかで絹のような肌。美麗な睫毛。

 

幻想はより重なっていく。

 

「魔法武器:魔法ステッキ」

 

彼女は俺を片手で支えながら、もう片方で魔法武器というものを持つ。

 

「これは魔力を込めれば込めるほど威力が比例するからね。一回きりだが便利なんだ」

 

彼女がステッキを下の魔獣へと振り下ろす。

 

その瞬間、また視界がくらりと反転する。

 

続いて耳を劈く爆音と爆風。

 

「ほら、もう終わったじゃないか」

 

目を閉じている俺に彼女の声が聞こえた。

 

ゆっくりと目を開く。

 

俺達の下。

 

地面には非常に巨大なクレーターができていた。

 

先ほどの魔獣のクレーターなど比ではない。

 

直径100メートルを超えんばかりのそこに、海水がなだれ込む。

 

焼ける塩を香と、磯の香が混じる。

 

「これが……魔法少女の力かよ……」

 

やがて地面に降ろされた俺は、ヴェニタールから目が離せなかった。

 

「さて、初めての経験はどうだったかな?」

 

「凄かった……」

 

同時に、俺の心は荒む。

 

申し訳ないと思う。

 

これは俺の、俺自身のエゴなのだ。

 

「でも、俺は守られっぱなしなんだな……」

 

そう呟く。

 

ヴェニタールは少し驚いたような表情を浮かべていたが、やがて笑った。

 

大きな声で笑った。

 

「ククク……全く……若年がそんな事を考える必要はないんだ」

 

「……何故だ?」

 

「守るもなにも、僕達は守りたいから守ってるんじゃないんだ」

 

「どういうことだ……?」

 

「なに、直に分かるようになるさ」

 

ヴェニタールが背を向ける。

 

俺は思わず呼び止めた。

 

「なぁ、ヴェニタール」

 

「なんだい?まだ何かあるのかな?」

 

「お前はなんの為に生きてるんだ?」

 

彼女は数舜考えた後、言った。

 

「そりゃ勿論、自分のためさ」

 

俺はハッとした。

 

波の音がよく聞こえる。

 

ザザーン――――――。

 

ヴェニタールは再び背を向けた。

 

「それじゃあね。そろそろ面倒なのが来そうだからお暇するよ」

 

瞬間、彼女は光と共に消えた。

 

俺は横の波を見る。

 

今度は入る気にはならなかった。

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

その夜。

 

「んで、今日放った魔獣はどうなったんよ?」

 

ビーチ近くの路地で、異質な少女が言った。

 

耳に付ける彼岸花のアクセサリが月光に反射する。

 

赤く輝くそれは、血を想起させる。

 

「一瞬で殺されたことを確認した」

 

答えるのはまたも少女。壁の上に座り、黒の大きなフードによって顔は隠れていた。

 

だが、両者ともが持つ圧倒的な魔力が彼女達が何者かを物語っていた。

 

「はぁ? Ⅴ級じゃなかったっけ? なんで一瞬なんよ」

 

「不明。ビーチに行こうとしたが、現地にフルフレイムがいた」

 

「フルフレイム? あんの本部のお嬢サマがなんでここなんかにいんだよ」

 

最初の少女が苛立ち気に壁を叩く。

 

壁は一瞬にして縦横に罅が入った。

 

「それも不明。だから貴女に命令が入った」

 

「あっそ。だから呼ばれたんね私」

 

フードの少女が地面に降り立つ。

 

「詳細は追って連絡する。上は貴女の活躍に期待している」

 

「分かってまーすよ」

 

「では任せる。――――魔法少女 ピュロボロス。」

 

フードの少女はそう言い残し、霧のようにして姿を消した。

 

残った少女は大きく溜息を吐いた。

 

「はーッ……めんどいねぇ。でも……」

 

少女は獰猛な笑みを浮かべる。

 

「楽しめそうだぁ」

 

彼岸花のアクセサリが月光で再び不気味に輝く。

 

最終的に、その場には誰もいなかった。

 

 




名もなき青年よ。
主人公の視点ではやりにくいところを補ってくれて有難う!!
モブなのに!すごい出世だ!!

掲示板が欲しいかい?(by nihil)

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