ザ――――――ッ
窓越しの雨の風景が、音と共に伝わってくる。
白い線が、瞬間瞬間視界に映る。
湿り気を感じながら、受け取ったホットミルクを一口飲む。
口内に、特有の甘さが広がる。
「ん~。昔から変わらないいい味だ」
窓に当たる雨粒のリズムを聞きながら僕は浮いた足をブラブラと動かす。
チクタクチクタク。
喫茶店内で、雨の音に交じって時計の音が鳴る。
今時中々聞けない音だ。
「マスター。ここは中々良いところだね。数日来ていただけだけど」
そう言ってやるとマスターは丁寧で静かなお辞儀をし、また作業へ戻る。
豆を挽く音が、静かに響く。
同時に淡い香りが鼻腔を擽る。
カランカラン……。
トリオの合奏の中、また音が鳴る。
ドアの開閉ベルの音だ。
僕が視線だけを向けると、見慣れた魔法少女が立っていた。
「探しましたよ、組織長」
彼女は一息つくと、そのまま隣の座席に座った。
雨の中来たはずだが、服は一切濡れていなかった。
それが何処か異質さを感じさせる。
「カフェオレをお願いします」
マスターが静かに頷く。
「君はカフェオレ派なのかい?」
「私は何でも飲めますし、好きでもあります」
「ふーん」
「そういう組織長はミルクがお好きなんですか?」
「そうだね。ミルクは長年味が変化しない。何故なら牛が変化しないから。だから好きなんだ」
僕はコーヒーカップの中に収まる白い液体を見る。
昔馴染みだ。コーヒーもそうだが、もっと馴染みがある。
やがてマスターが、フルフレイムの前にカフェオレの入ったカップを置く。
「ありがとうございます」
フルフレイムが一口、静かに飲む。
「美味しいですね」
「だろう? ここ数日通っているんだ」
「その数日の間に色々ありましたが」
「それはすまない。だが、僕は知らなかったから仕方ない」
僕が白々しくそう言うと、フルフレイムはカフェオレを飲み一息吐いて淡々と告げた。
「”例の場所”に侵入者がいたそうです」
「――何だって?」
「恐らく”アンチマギカ”かと」
流石に僕も驚いた。
「あそこ、警備ちゃんと配置してたよね?」
「はい。Ⅵ級を二人常に配置してました。あくまで周囲ですが」
「そりゃ中は無理か……にしても。相手も思ったより優秀なようだ」
「なので、魔法省としては本腰を入れたいという意見が相次いでいます」
「なるほど……それで態々僕を追いかけてきたってわけね……」
ホットミルクを啜る。今度は少し甘ったるく感じる。
「でもまだ僕は戻りたくないね。ここにもう数日は居たい」
「しかし、そろそろⅥ級魔獣の討伐実施日では?」
「あぁそれね。あれは情報部の彼に投げといて」
僕は頭の中で、額に手を置き大きな溜息をつく彼の姿を想像した。
実に愉快な気分だ。
「村重部長ですか? 彼にこれ以上仕事を投げるのは不憫なのですが」
「知らん。部長についた時にはそれを知っていたはずだからね」
「はぁ……分かりました。もう一ついいですか?」
飲み終えたカップをマスターに返しながらフルフレイムが冷徹な雰囲気を纏う。
それは、魔法少女としての闘気だった。
「先ほどから感じる、不躾な視線はどうするんですか?」
「あぁそれ……。どうでもいいんじゃない?」
僕は鼻で笑ってやった。どうやら相手は隠しているつもりでいるらしい。
感じる魔獣の気配。そして―――――仄かに感じる魔法少女の気配。
「所詮、見つかる程度さ。僕らを害せやしないさ」
「……ッ、畏まりました。では、私はこれで」
「おや、もう行くのかい?」
席を立ったフルフレイムに視線を向ける。
「私は仕事がありますので」
そう言い残し、彼女は喫茶店を後にした。
中々痛い皮肉だね。
再び静けさと雨粒の微かな音が聞こえだす。
僕は、ふと思い出したように呟いた。
「そういえば……マスコットの彼は今どこにいるのかな。暫く会ってなかったね―――――」
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