虚無の先の魔法少女   作:おおは

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魔法省の人の受難:②

イマジネーション・タイラントを呼び出してから早一時間。

 

俺のデスクの前には既に二人が立っていた。

 

「さて、形式だけの自己紹介からしよう。俺は魔法省情報部部長 村重葵だ」

 

「Ⅳ級魔法少女タイラントです」

 

「Ⅳ級魔法少女イマジネーション……です」

 

挨拶する二人を見る。

 

緑を基調とした華美ではないフリルドレスを纏い、一方は薄青色のエプソンドレスを纏っている。

 

そして感じる魔力のプレッシャー。

 

なるほど確かに素質はあるらしい。

 

Ⅶ級を近くで見続けた故に審美眼は鍛えられている。

 

「今回君達を組織長からの指示でⅥ級魔獣の討伐に追従させることにした。詳しい話は今回の指揮を担当する”Ⅵ級魔法少女 インテリタス”に聞いてくれ」

 

「分かりました」

 

タイラントが決意のある目で俺を見る。

 

隣のイマジネーションも俺とは目を合わせてくれないが、決意しているのだろう。

 

「……本来なら許可できるものではない。Ⅵ級とは化け物だ。過去に一体のⅦ級を除けば現状最上級だ。だからこそ我々情報部は厳密な情報による管理をしている。……組織長が言うようにいい経験にはなるだろうが、ま、死ぬ気で頑張れ」

 

俺が言いきり、喉を潤すためコーヒーを啜っていると、二人は確りと頷いた。

 

「では俺からは以上だ。二日後本部の3階に集まるように」

 

そう伝え、俺は二人を見送った。

 

直ぐして、金村がノックと共に入ってきた。

 

「どうでしたっすか?」

 

「ま、見た限り問題ないだろう。幸い今回のⅥ級は直接的な戦闘力はあまりないしな」

 

「”永遠の命”でしたっけ?」

 

「いのち、じゃなくてミコトな。あいつは京都に出現したんだがな、如何せん能力が地味に厄介でな」

 

「厄介っすか?」

 

「そうだ。やつは自身の領域に入れたやつを恒久的に閉じ込める。これまでで何人も魔法少女が巻き込まれて音信不通のままだ」

 

「マジっすか?!それ倒せるんすか?!」

 

「魔法は結局、相性の問題が一番大きいもんさ。インテリタスはやつと極めて相性がいいからな」

 

「そういうもんなんっすか」

 

金村がスンとしたように肩を落とす。どうやら魔法は現実的らしい。

 

新しいコーヒー缶を開けながら、俺は金村を睨む。

 

「そういうもんだ。それよりもお前は目の前の事件をやれ」

 

「魔法少女の失踪のやつっすか……? あれ全然情報がまわってこないんすよ……」

 

「だが先日ついにⅤ級まで一人突如失踪しただろう?大分きな臭くなってきたな」

 

俺はデスクの紙束から分厚いものを取り出し、金村へ放り投げる。

 

金村はそれを慌てて受け取った。

 

「な、なんすかこれ」

 

「”アンチマギカ"の資料だ。フルフレイムから送られてきた」

 

一枚一枚と捲りながら金村が首を傾げる。

 

「……んん? この組織、結構ヤバ気っすね」

 

「最近また生き返ったんだ。ゴキブリよりしつこいかもな」

 

「ゴキブリ……それで、この組織が原因ってことっすか」

 

「まぁそうだろう」

 

コーヒー缶を啜りながら、天井を見る。

 

強い苦味の余韻。

 

いつもと変わらないが、どこか不安を感じさせてくる。

 

俺は決意して金村の方を見やった。

 

「取り敢えず魔法少女に対して注意喚起を促そう」

 

「それだけっすか?」

 

「やつらはどうせ向こうからやってくるだろうからな。そのとき確実に殺虫すればいいさ」

 

俺の本能はやつらに警鐘を鳴らしている。

 

……早めに対処する方がいいかもしれんな。

 

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

「――――こんにちは」

 

ある部屋、暗闇から少女が姿を現した。

 

大きなフードを被り、冷徹な声を響かせる。

 

その声が異常に目立つ、静かな部屋だった。

 

「なんだ?私は今、サンプルの調整中だ。用がないならとっとと失せろ」

 

その奥の男が、何かを触りながら言い放つ。

 

男が手を動かす度、何かはビクビクと小刻みに痙攣した。

 

独特な麻酔と薬の臭いが鼻を刺す。

 

フードの少女は平然としたまま肩を竦めた。

 

「なら新しく捕獲した彼女達は不必要?」

 

少女が後ろを見やる。

 

そこには、蠢く魔獣達と、それに捕らえられた魔法少女達の姿があった。

 

魔法少女の象徴たるドレスは原型を留めず、露わになっている体からは血が止めどなく流れていた。

 

涙目の一人、動かない一人、焦点が合っていない一人……。

 

「サンプルは大歓迎だ。特に魔法少女はな」

 

「それは何より。態々ここから遠い日本から捕ってきた甲斐がある。変身解除もできないようにした」

 

「それは朗報だ。だが、折角の魔法少女をこんな状態にしていいとは言っていない。私は新鮮なサンプルが欲しいんだ」

 

男が振り返らないまま強く言う。

 

「なら丁度いい。今回は生きのいいのが入った」

 

「ほう?」

 

初めて、男が振り返った。

 

「Ⅴ級の魔法少女。生け捕りは苦労した」

 

「おお!それは素晴らしい!! Ⅴ級ならいいサンプルになる!!」

 

男は喜ばしげに声を張り上げる。

 

「それで、Ⅴ級魔法少女(サンプル)はどこに?」

 

フードの少女が軽く手を振ると、影が蠢き一匹の魔獣が出てきた。

 

人型に近いその魔獣は、片手に手と足があらぬ方向に向いた一人の魔法少女を持っていた。

 

その魔法少女は二人を認識するなり、精一杯睨んだ。

 

「……こんなこと、して……ッ!」

 

痛みを堪え、未だ折れない心で必死に叫ぶ。

 

Ⅴ級としての矜持でもあった。

 

だが、それは男にとって愉悦の足しでしかなかった。

 

「いい!!!いい!!! 素晴らしいい!!!これだけ元気があるなら私の改造にも耐えれるだろう!!!」

 

満面の笑みで叫ぶ男に、吊るされたままの魔法少女は思わず顔を顰めた。

 

「さて……では強い強い強化手術(魔獣化)をしようか」

 

男は麻酔を手に歪んだ表情の魔法少女へ触れる。

 

魔法少女達には最早成す術もなかった――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――次は魔力核の回収を頼むよ。更なる高みのために」

 

部屋から出てきた男が、血の付いた手袋を脱ぎ捨てながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとずつ暗くなる、、、かも

掲示板が欲しいかい?(by nihil)

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