虚無の先の魔法少女   作:おおは

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Ⅵ級魔獣:永遠の命

シャリン――――――

 

透き通った静かな波のような鈴音が響いた。

 

これが伏見稲荷大社に踏み入れて初めての異変だった。

 

「そろそろだ!気を引き締めていくぞ!」

 

異変に気付いたインテリタスが声を張り上げる。

 

シャリン――――――

 

また聞こえる。

 

完全な静寂の中響くそれは、美しくも異質だった。

 

本能が拒否するような、そんな異質さ。

 

踏み入れた少女達が表情を引き締める。

 

シャリン――――――

 

シャリン――――――

 

シャリン――――――

 

何処からか響き続ける神楽鈴の音色。

 

それは何処か世界から離脱しているようで――――――

 

少女達が気づいた時には事態は変化していた。

 

鳥居の赤が、音の波の溶けた。

 

本殿から続いていたはずの道は、地平線の彼方まで延び。

 

いつかは終わるはずの真っ赤の鳥居は、永遠に続く。

 

シャリン――――――

 

鳴り終わった時には、静かに世界は変革していた。

 

”永遠”を魔法で体現する魔獣。

 

続く世界は、止まることを知らない。

 

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

 

「ヒック……流石はⅥ級魔獣だっぴね。能力の規模が桁違いっぴ」

 

ローが一升瓶をラッパ飲みしながらしみじみとした様子で呟いた。

 

「あなた、Ⅵ級魔獣と会ったことあるの?」

 

張り詰める空気の中、私はローに耳打ちする。

 

「そりゃ勿論だっぴ。ヒック……これでも伊達に長くは生きてないっぴ」

 

ウザったらしく胸を張るロー。

 

「どんなやつだったの?」

 

「ヒック……例えば全てを凍らせるやつとか、滅茶苦茶デカいのもいるっぴ」

 

「それは凄いな!!私は勝て無さそうだ!!ハハハ!!」

 

いつの間にか傍に居たインテリタスが軽快に笑う。

 

「だからここの魔獣は凄いっぴけど、ヒック……Ⅵ級としてはまだ弱い方っぴ」

 

「でも、ここからどうやって出るの?明らか出口がないじゃない」

 

「でもそれだけっぴ。この魔獣は戦闘力自体はあまりないっぴ」

 

ローが余裕のある笑みで私を見る。

 

「魔法は相性が重要っぴ。ヒック……氷は炎に弱い、結界は破壊に弱い……相性次第で強さというのは大きく変化するっぴ。ヒック……」

 

「その通りだ! だから今回私が呼ばれたのだ! 私は”破壊”が得意だからな!!」

 

「つまり、ここは結界で作られてるってこと?」

 

私の解釈に、インテリタスが大きく頷く。

 

「そういうことだ!」

 

「なるほど……」

 

感心していると、二つの気配が近づいてくるのが分かった。

 

「リーダー。行方不明だった魔法少女が見つかりました」

 

「それは朗報だ!生きているか?」

 

「いえ……既に……」

 

「そうか……」

 

インテリタスが一瞬視線を下げたが、再び声を張り上げた。

 

「ならば!せめて手を合わせることはしておこう!!案内してくれ!」

 

離れていく二人に従って、インテリタスが歩き出す。

 

「タイラント・イマジネーション。君達はどうする?待っていてくれても構わないが!」

 

「いえ、お気になさらず。慣れているので……」

 

私の脳裏を、去っていく魔法少女達が横切った。

 

昔の先輩、同期……。

 

目の当たりにする度に、視界の奥が霞んだ。

 

「そうか。なら行こう!」

 

やがて、ある茂の中についた。

 

そこには、横たわる二人の魔法少女。

 

”永遠”の効果で果てることのない体は、まるで眠っているかのようだった。

 

また、霞む感覚が視界の奥を占める。

 

隣では、インテリタス達が手を合わせていた。

 

ローは静かに一升瓶を傾け、イマジネーションはインテリタスに従って手を合わせている。

 

私も手を合わせた。

 

せめて、この先は幸せでありますように。

 

少しの静寂。インテリタスが静かに口を開いた。

 

「魔法の相性というのは重要なのだ。だからこそ、私が呼ばれた」

 

決意の目をした表情の彼女が振り返る。

 

「背負って、討伐するぞ。Ⅵ級魔獣を」

 

辺りを風が包む。

 

揺れる髪の中での声は、どこか威厳があるようにも感じた。

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