虚無の先の魔法少女   作:おおは

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本体

魔獣達の肉体が、逆再生するように巻き戻っていく。

 

ばきばき、と不快な音が響き、黒い霧が触手のように蠢き肉体を纏う。

 

「ッ――――! どうなってんのよ?!」

 

思わず背筋が凍る。

 

そうしている間にも、魔獣達は再び最初の姿に戻った。

 

まるで何事もなかったかのように。

 

だが、私達の疲労がそうではないことを物語っている。

 

「うっそっ……」

 

アローも呆けたような、震える声を発する。

 

隣ではイマジネーションも不動の眉を吊り上げ、驚愕していた。

 

その様子を見ていたローが静かに一升瓶を傾けた。

 

「なるほどっぴ……これが”永遠”の効果範囲……生の永遠だっぴね」

 

思わず息が詰まった。喉の奥が乾く音が聞こえる。

 

同時に、岩塊に潰れたはずの強敵もまた立っていた。

 

窪んだ眼が、ぎょろりと私達を見渡す。

 

「こコニいレばナ、何度デモ殺シ合エる……ナラ、楽しイ」

 

口のようなものが大きく吊り上げられる。

 

「サア、モう一回ダ」

 

また魔獣の殺気が辺りを襲う。

 

「……チッ」

 

隣で、オルテクトが忌々し気に舌打ちする。

 

再び聖杖を構えていた。

 

私も構えようと、ハンマーを握る。

 

だが気づいた。

 

私も、イマジネーションも、そしてアローもそうだ。

 

明らか動きが鈍くなっている。

 

一方で魔獣は全快。興奮気味に涎を地面へと垂らす。

 

再び体が強張った。

 

魔獣達は今にも飛びかからんとばかりの体制だ。

 

動け動け、と自身に迫るように反芻するが、依然として私の体は鉛のようだった。

 

オルテクトだけがまだ余裕があるというだけ。

 

不利も不利。負けるのだろうかという考えが脳裡を過った。

 

だが。

 

遠くから張り上げる声――――勇気付けられる声が飛んできた。

 

「皆!下がるな!あと少しで破れる!だから案ずるな!!」

 

その声は私の心に真っすぐに飛んできた。

 

奥歯を噛む。

 

そうだ、考えずに立つんだ。

 

「あーもう!やってやるわよ!!」

 

私が叫びながらハンマーを構えると、オルテクトが鼻で笑った。

 

「威勢はいいですね。ま、今回はそれでも十分です」

 

鼓舞されるように、アローが弓をつがえ、イマジネーションが”想像”を発動する。

 

「では時間稼ぎといきましょう」

 

満足気に頷いた彼女が聖杖を空へと突き上げた。

 

「固有魔法―――――太陽の光線(サン・ライト)

 

瞬間、何処からか現れた極大の光線が辺りを焼き薙ぎ払った。

 

熱波が辺りを襲う。

 

「こっからは私も本気です。極限魔法が使えないのが残念で仕方がない」

 

そう呟きながらも彼女は、一気に魔獣を焼き殺していく。

 

だが、またもや熱幕を突き破って鞭が飛んできた。

 

聖杖でそれを弾く。

 

鞭の主は勿論、あの魔獣だろう。

 

だが、熱幕の先でその姿を見た時違和感を抱いた。

 

やつが地面に全部の手をついていた。

 

「いったい何を……いや、まさか」

 

オルテクトが何かに気づいたようで、聖杖を前に構えている。

 

「オ、おレが触レたモノは自在」

 

そう魔獣が言い放った瞬間、周辺の地面が地響きと共にうねりを上げた。

 

波打つように胎動し――――――

 

次の瞬間、それは凄まじい速度で迫ってきていた。

 

あの質量の波が私達に当たればどうなるか、そんなものは分かり切っていた。

 

視界がチカチカとする感覚。

 

私の額を一筋の汗が走った。

 

「イマジネーション!!援護して!」

 

オルテクトが聖杖を青く光らせながら叫ぶ。

 

呼ばれたイマジネーションは汗を流しながらも固有魔法を発動する。

 

「固有魔法――――――聖なる城壁(ホーリー・クリフ)

 

「固有魔法――――――想像力実現(イマジナリー・ビー・リアル)!」

 

青白い祝福の光が辺りを結界のように包み、岩壁がその周りを囲う。

 

それらが地面の波と激突する。

 

瞬間、辺りを圧倒的な衝撃と爆音が襲った。

 

思わず腕を前に出してしまう。

 

収まった時、視界に入ったのは粉々になった岩壁と罅の入った結界だった。

 

オルテクトが苦汁をなめたような表情をする。

 

一方で、地面の波は未だ留まることを知らない。

 

魔獣の意思に従い、またうねりをあげる。

 

迫ってくる数々の圧倒的質量の波。

 

「これ以上守るのは無理!」

 

結界で必死に守るオルテクトが悲鳴を上げる。

 

私達も他の魔獣の相手で精一杯。

 

更には、疲労のせいで上手く攻撃が避けられず、所々に深い傷を負っている。

 

一体の魔獣を突き飛ばしている時、突如として終わりが告げた。

 

結界の割れる音が辺りに響いた。

 

隙とばかりに、高き波が迫る。

 

私は思わず襲う衝撃に目を瞑った。

 

――――――だが、果たして一向に何も起きなかった。

 

目を開いて見ると、何かが崩れている破片が視界に入った。

 

――――――パキン

 

それは大きな結界の割れる音だった。

 

”永遠”の効果が切れると同時に、魔獣達も黒い霧となって消えていった。

 

主を失った波は静まり、結界が壊れていくのと同時に薄くなって消えていった。

 

そして、私達はいつの間にか大きな社へ続く階段の上に立っていた。

 

「何とか破壊が間に合って良かった!!」

 

タイラントが額を拭いながらそう声を張り上げた。

 

どうやら、ギリギリで結界が破壊できたらしい。

 

私達は足の力が抜けて、思わず地面にへたり込んだ。

 

「もう疲れて動けないわ……」

 

「もう大分へとへとですっ」

 

「あー疲れた」

 

オルテクトも疲れたという表情をしている。

 

私は自身の体を見る。

 

輝かしいドレスは汚れて、一部が血で染まっている。

 

ケガをした所が魔法少女の鈍感な痛覚まで届き、ズキズキと痛む。

 

他の面々もインテリタスを除いて同じようなものだった。

 

「お前達、ご苦労だった。これであとは本体を探して討伐すれば――――――」

 

インテリタスが労おうと言葉を掛けた時だった。

 

――――――シャリン

 

いつもよりも近く神楽鈴の音が聞こえると同時。

 

背後から見間違いかと思うほどの魔力が押し寄せた。

 

反射的に振り返る。

 

そこには、社を背景に鳥居の真下に佇む巫女服を着た人型の”何か”がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔法は唱えた方が威力が上がるんです!
唱えた方がロマンかもしれない!!

そしてやっとⅥ級がでてきた!!長かった!!
あと少しで一区切り!お楽しみに!

今日はここまでm(__)m

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