虚無の先の魔法少女   作:おおは

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呼び覚まし

「調子はどうだい?昔から酒ばかり飲んでいるけど」

 

僕がそう問いかけると、ローは隣に座った。

 

ぬいぐるみのような見た目なので、冷えたベンチでも映えている。

 

「僕は人間と違って酒ごときでは健康を害さないっぴ」

 

「そうか」

 

簡素な返事をすると、ローは異空間から一升瓶を取り出し栓を開けた。

 

夜風に紛れて、チャプリと酒の音が鳴る。

 

「それで、タイラントとイマジネーションはどうだったかな?」

 

「僕が見える時点で素質があるに決まってるっぴ」

 

「そりゃ違いないね。二人の調子はどうだった?」

 

「起きてからは落ち込んでいるみたいっぴ」

 

「まぁそうだろうね」

 

僕が白々しく答えると、ローがジーっと僕を見てきた。

 

「……なるべくしてなったって顔っぴね」

 

「……それも違いないね」

 

僕が軽く笑うと、ローもクスリと笑った。

 

違和感のある少し低い声と、ソプラノが混ざり合う。

 

「やっとこそだよ。今、全てが動き出した」

 

僕は星の見えない夜空を仰ぎながら呟いた。

 

「そうだっぴね。僕も暇じゃなくなるかもしれないっぴね」

 

「言っている間さ。直ぐに忙しくなるさ、酒が飲めなくなるほどには」

 

「それは勘弁願いたいっぴ」

 

僕らは再び笑った。

 

夜風がそれを祝福するかのように冷たく揺れる。

 

「今度少し付き合ってくれないかい?」

 

「……? 何だっぴか?」

 

ローが円らな瞳で僕を見る。

 

僕はそれを一瞥した後、懐かしい感覚で空を見上げた。

 

「なに、旧友がそろそろ目覚めるから、久しぶりに会いたいと思ってね」

 

夜風がひと際強く吹き抜ける。

 

「旧友?同じ零級の魔法少女だった子っぴか?」

 

「そうだよ。名前は――――――」

 

僕がある種の回顧と共に言いかけた時、不意に屋上の扉が開いた。

 

「――おや? まさか、こんな所に人がいるとは思いませんでした」

 

暗い中、目立つ紅色の衣を纏う魔法少女、フルフレイムが此方を見る。

 

隣に座っていたローは既に消えていた。

 

「どうも、フルフレイムさん」

 

「初めましてですよね。あなたは?」

 

フルフレイムが初対面とばかりに問いかけてくる。

 

それもそのはず、今は変身を解いているから魔法少女とはほぼ確実に気づけない。

 

性別も異なれば。外見も全然違う。

 

「僕ですか?僕は石田渚です。魔法省でバイトさせてもらってます」

 

僕が”普通”の笑顔でそう言うと、彼女は納得したように頷いた。

 

「そうなんですね。いつも働いていただきありがとうございます」

 

フルフレイムが軽くお辞儀をする。

 

誰に対してもその態度なのか。最早生真面目を通り越し始めている気がする。

 

「いえ、お気になさらず。では僕はこれで」

 

「もう行かれるんですか?」

 

「ええ。元々ちょっとした休憩で寄っただけですし。では」

 

僕が屋上の扉の取っ手に手をかけながら、振り返って手を振る。

 

彼女もそれに倣って手を振り返した。

 

「ええ。また」

 

僕は扉を閉めて、その場を後にした。

 

またいつの間にかローが隣に浮いている。

 

「それじゃまた来るっぴ」

 

「そうだね」

 

ローは嬉し気な表情をした後、空気に溶けるようにして消えていった。

 

残されたのは僕一人。

 

「……そろそろ魔法祭か……」

 

あぁ、また仕事がまわってくる。

 

実に憂鬱な気分だ――――――。

 

 

 

 

 

 

渚が去った屋上で、フルフレイムは先ほどの少年を思い出し首を傾げた。

 

「ここに一般人の方は入れましたか……?」

 

夜風が答えるように、吹き通った。




そろそろ魔法祭。メインディッシュですね
ということで、改稿等も兼ねて少しの間お休みさせていただきます。
ここからちょっとした報告書とスレを載せた後、来月の上旬くらいまで休載します。
また再開した際には読んでいただけると幸いです(o^―^o)ニコ

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