虚無の先の魔法少女   作:おおは

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組織長は秘密主義

「あなた、大丈夫だった?」

 

タイラントと名乗った少女が僕に問いかける。

 

「ああ、問題ない」

 

「魔獣は退治した。もう心配しなくていい」

 

イマジネーションも僕の方を見る。

 

「ありがとう。助かるよ」

 

そう言う僕。

 

しかし、頭の中では目の前の二人について考えていた。

 

Ⅳ級までは試験がない。

 

つまり、Ⅴ級とは明確な差が存在する。

 

Ⅳ級は世界に何万もいるが(魔法省は常任理事国のみに本部直下の支部が存在する)

 

Ⅴ級は言った通り、100人である。

 

だが、彼女達はⅤ級の実力がある。

 

試験に行っていないのだろうか。少しカマかけてみよう。

 

「随分強いんだね、二人とも」

 

僕がそう言うと、タイラントが薄い胸を張った。

 

「そうよ!私はⅣ級には収まらないのよ!」

 

「ならどうしてⅣ級のままなの?」

 

「試験が難しいからよ!なんでここだけあんなに難しいのよ!」

 

彼女が頬を膨らませながら叫ぶ。隣ではイマジネーションも頷いていた。

 

「そうなんだ……」

 

いい情報を得た。そして、僕はい(・)い(・)こ(・)と(・)を閃いた。

 

と、ふと視線を彼女達の奥へやると、背後から生き残った魔獣が飛び掛かった。

 

―――――邪魔だ。

 

指先に気づかれないレベルの魔力を走らせる。

 

次の瞬間――魔(・)獣(・)は(・)も(・)う(・)そ(・)こ(・)に(・)は(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

音も、臭いも。全てが魔獣の存在を否定する。

 

魔力の動きに気づいた彼女達が振り返るが、勿論魔獣はいない。

 

「あれ……?今、魔獣がいた気がするのだけど……」

 

「いた気がする。……見てない?」

 

イマジネーションが首を傾げながら僕を見る。

 

僕は答えた。

 

「さぁ?そんなの存(・)在(・)し(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)よ(・)?」

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

―――タイラント視点

 

魔獣退治が終わり、私とイマジネーションは魔法省大阪支部へと戻った。

 

魔法省の紋章が目立つモダンなドアが、私たちを迎え入れる。

 

「失礼します」

 

私は支部長室の扉をノックし、了承をもらってから中へと入る。

 

「魔獣退治完了しました」

 

私がそう言うと、支部長の初老の男―――柏田さんは柔和な笑みを浮かべた。

 

質素なデスク脇の観葉植物とよく合う、優しい微笑みだった。

 

「無事に退治できたようで何よりだ」

 

「ありがとうございます」

 

「イマジネーションの方も元気かね?」

 

「はい。イジー……イマジネーションも元気ですよ」

 

柏田さんは見た目通り、非常に優しい人だ。

 

いつも私たちのことを気にかけてくれる。

 

「私としても、魔法省としても君たちの働きを評価しているよ。ありがとう」

 

「いえ! 私はやりたいからやってるんです! お気になさらず!」

 

「そんな謙遜しなくていいよ。君たちの働きで日本はまだ安定しているんだ」

 

私は率直に誉め言葉に、少し恥ずかしく感じた。

 

別に、そういうつもりでやってるんじゃないのに……

 

「そうだ、魔法省から報酬と本部から君たちに手紙が届いているよ」

 

「手紙、ですか……?」

 

不思議だ。東京にある魔法省本部が態々私に手紙を送ってくるなんて。

 

本部は由緒ある所だ。

 

50年も前に、古き魔法少女達によって設立・建造された。

 

現在も世界最高峰の魔法少女達が集結している、魔法省――――世界防衛の要。

 

”組織長”がそこで魔法省を統括しているが、正(・)体(・)不(・)明(・)。メディアにも一切出ていないらしい。

 

しかし、魔法省のおかげで現代の魔法少女達が魔法少女であり続けられる。

 

私達魔法少女にとっては感謝の対象だった。

 

「そう。私も中身を確認していない。最初に君が確認しろ、と言われてしまってね」

 

「いえ、ご心配なさらず。これでも私はここじゃ上位ですので!」

 

「はっはっは。なら安心だね。それじゃあ気を付けてね」

 

柏田さんが柔和な笑みのまま私を送り出す。

 

扉の外ではイジーが突っ立っていた。

 

「手紙の中身は?」

 

どうやら会話を聞いていたようで、右手に持つ手紙を開けるようせがんできた。

 

その姿は会った時からずっと変わらない。

 

「わかった、わかったわよ。今読んでほしいのね」

 

彼女がコクリと頷く。

 

しょうがないなぁ、と思いつつも手紙を両手に持つ。

 

手紙は今では滅多に見かけない蝋の印鑑で封をされていた。

 

蝋の紋章は「魔法省本部」を示す、二本の杖と龍のマーク。

 

蝋の印鑑をそっと剝がし、中身を取り出す。

 

「えっと……何々……ん??」

 

「どうしたの……」

 

覗いてきたイジーまでもが普段動かない表情を僅かに動かし固まった。

 

「私達、何かマズい事でもしたかしら……?」

 

手紙の文面を見つめる私の指先が、わずかに震えた。

 

「魔法少女:タイラント・イマジネーションを本部へ招集する。

           魔法省管理部組織長より」

 

文字が、やけに冷たく見えた。

 




他者視点から主人公見るの、イイですよね〜\(^o^)/
魔法省管理部というのは、魔法省の運営等の統括を行う所です。内閣みたいな。

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