チェシャ猫が大きな鳴き声を上げながら突進する。
勿論その向かう先は、敵であるロロック。
そして大きく腕を振りかぶった。
ロロックはそれを紙一重で交わす。
「ッ掠っただけで頬が切れるとかどんなんやねん!」
風圧でロロックの短し髪が暴れ、煙が舞う。
反撃とばかりに槍の形をした鉱石がチェシャ猫を襲う。
だがチェシャ猫が腕を振るだけで粉々になった。
「一応ダイヤモンドよりも固いはずやねんけどなッ!」
魔力を巡らし、地面を隆起させる。
それを波のようにうねらし、チェシャ猫へとぶつける。
チェシャ猫は吹き飛んだものの、再び無傷で立ち上がった。
「うわぁ……マジかいな」
ロロックの額を冷や汗が流れる。
「―――――――私を忘れないで」
「ッ分かっとるわ!」
いつの間にか背後に立つイマジネーションへロロックが裏拳をかます。
だが当たったはずの裏拳は空を切り、イマジネーションは霧のように溶けた。
驚いて振り返ると、前からチェシャ猫。
そして、上から”本物の”イマジネーション。
「不味いな、態勢が悪いわ……」
驚愕の表情を浮かべるロロックを二人の攻撃が襲った。
「……やった?」
隣にいるチェシャ猫を撫でながら、煙の先を見やる。
イマジネーションのチェシャ猫は圧倒的なフィジカルが強みだ。
魔法に弱いという難点があるが、物理派であるロロックにとっては相性が悪い。
攻撃を与えた時の、感触は確かだ。
煙が晴れていく。
「――――ハハハッ。やっぱ流石やん」
立っていた。
あちこちから血を流しているものの、立っていた。
「そのチェシャ猫とは相性悪いなぁ。まぁでももっとギアあげていこうや」
ギラギラと輝く目がイマジネーションを射貫く。
その圧に、イマジネーションは一瞬体が痺れた。
「まだまだいこうや!」
ロロックが大地を波のように動かし、飛び出す。
イマジネーションも迎え撃とうと魔法を準備する。
その時だった。
ズズン、と闘技場全体が揺れ始めた。
「……?何や」
攻撃の手を止め、周囲を見渡すロロック。
次の瞬間、闘技場の一部が凄まじい音と共に弾け飛んだ。
瓦礫が闘技場に散らばる。
「何が起きとるんや……」
ロロックとイマジネーションが煙の舞う方へ視線を向ける。
そこから、何かが姿を現した。
「……お邪魔する」
それはフードを被った少女だった。
その隣には、筋骨隆々とした大きな人型の魔獣が付き添っていた。
魔法少女。ロロックの頭をある言葉がよぎる。
「まさかあんた……アンチマギカか」
「その通り」
あっけからんとした返答に、ロロックの表情が険しくなる。
「わざわざ捕まりに来たんか?それやと嬉しいんやけどなぁ」
「そんなわけない。あくまで私は任務を遂行するだけ」
「それこんな場所で遂行できる思てるん?」
ロロックが魔力を迸らせる。
「……Ⅶ級一人で何ができる。その上疲労困憊だろう」
「そのⅦ級一人にあんたは負けるんや」
次の瞬間、辺りの台地がまるで水のごとく盛り上がった。
「……愚か。我が魔獣の力を見せてやろう」
フードをはためかせながら、少女が右手を振る。
それに従って人型の魔獣が今、唸りを上げた。
◇ ◇ ◇
同時刻。闘技場から場所は移り。
一人の少女が、暗い道を進んでいた。
歩く度にイヤーアクセサリがカランと鳴る。
やがて少女は広い部屋に出た。
「……初めまして、だよな?」
少女は不敵な笑みを浮かべながら、部屋の奥へ視線を向ける。
「……そうだね。僕に何か用かな?」
座っていたのは、黒を纏った魔法少女。
モノクルを光らせ、支配者たるオーラをその身に纏う。
少女は愉快そうに笑い、イヤーアクセサリをカランと鳴らす。
「なに、ちょっと死んで貰おうと思っただけ。組織長さんよ?」
その発言に、黒の魔法少女――――ヴァニタールは不気味に笑った。
「いいよ。明日の観戦の余興として遊んであげる。けど―――簡単に死んでは困るよ?」
ちょっと急展開ですが、ご容赦を
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