虚無の先の魔法少女   作:おおは

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零級魔法少女

市街地に位置する高級ホテルの高層ビル。

 

魔法省が使用するために貸切られていたそれは、深夜最上階で大爆発を起こした。

 

地を揺らすような爆発と共に、爆風が辺りを包む。

 

しかし事前に避難勧告が出ていたからか、周囲に巻き込まれるような一般人はいない。

 

爆発を引き起こしたのは、一人の魔法少女だ。

 

「まさかこんなんでくたばってないよなぁ?!組織長さんよぉ!!」

 

爆発の固有魔法を持つアンチマギカの魔法少女、ピュロボロス。

 

爆風で彼岸花のアクセサリを月光に輝かせながら、空中で不敵に笑う。

 

今彼女が相手にしているのは、魔法省の組織長。

 

古き魔法少女ヴェニタール。

 

何の固有魔法を持っているか、極限魔法が何なのか、ほとんど分からない。

 

未知の相手だ。

 

だがそれはピュロボロスには何の関係もない。

 

分かろうと分かるまいと、全て吹っ飛ばせばいい。

 

それがピュロボロスの考え方であり、プライドでもあった。

 

「――――アハハ、君こそ今すぐ身を守った方がいいんじゃないかい?」

 

「――――ッ?!」

 

気づけば、右下すぐに無傷の黒一色の魔法少女の姿があった。

 

闇夜に溶け込み、堕落した魔法少女のように見える。

 

そして同時に脇腹に走る激痛。

 

「……いった。いつの間に切りやがったよ」

 

脇腹が裂け、血が溢れ出ていた。

 

いつ切られたかも分からない恐怖に、しかしピュロボロスは笑った。

 

「面白くなってきた。これでなくちゃ殺しがいがないものな」

 

ピュロボロスが魔法の言葉を紡ぐ。

 

「固有魔法、隕石落下(メテオライト)」

 

次の瞬間、闇で覆われていた空が閃光のように明るくなる。

 

見上げると、上空から恐ろしい速度で光る物体が落ちてきていた。

 

ピュロボロスの魔法は全て、防御を捨てた攻撃特化。

 

単純な威力と範囲では現代の魔法少女でも上澄みだろう。

 

しかし敵であるヴェニタールは焦りもしなかった。

 

「へぇ……ここまでの威力の固有魔法は中々見ないね」

 

感嘆したのだ。

 

「感動してる暇があったら防いでみろよ、組織長さんよ」

 

こうしている間にも、隕石達は閃光をまき散らしながら地上へと迫っている。

 

衝突すればこの辺りは全てが吹き飛ぶだろう。

 

ピュロボロスがかなりの魔力を込めたのだ。

 

「確かにそうかもしれないね……一度衝突するところを見てみたい気もするけれど、流石によくないね」

 

そう言って不気味に笑うヴェニタール。

 

そしてゆっくりと、言葉を紡いだ。

 

「固有魔法 虚無反転(ニヒルインヴェルシオ)」

 

何も起こらないような感覚。

 

しかし、何か得体の知れないドロドロとした感覚が走る。

 

変化は如実に表れた。

 

今の今まで煌々と地上を照らしていた隕石が、姿を消した。

 

パッと消えたのだ。

 

最初からなかったかのように。

 

「……は?」

 

ピュロボロスは理解が追い付かなかった。

 

馬鹿な、と思った。

 

少なくともⅦ級魔法少女でも防御に手こずるレベルだと思っていた。

 

「狐につままれたような表情をしているね。思わず笑ってしまいそうになるよ」

 

ヴェニタールはピュロボロスを見下しながら、笑う。

 

「何しやがったんだよ、クソ」

 

「さっきまで殺す殺すと調子づいていたのに、どうしたんだい?僕を殺すんじゃないのかい?」

 

ヴェニタールのモノクル越しの漆黒の目と視線が合う。

 

背中がゾクッとした。

 

「……クソ。やっぱこうなることを分かってて単独で挑ませやがったな、あのフード」

 

「……まだこないのかい?」

 

ヴェニタールが首を傾げる。

 

ピュロボロスは心の中で仲間に毒づきながら、口を開く。

 

「……お前、本当に何者だよ」

 

その問いかけに、ヴェニタールは不敵に笑った。

 

「僕は零級魔法少女ヴェニタール。固有魔法は虚無。全てを反転し、戻し、ゼロに帰す存在さ。自己紹介したのなんて久しぶりだよ」

 

虚無。

 

何だそれは、とピュロボロスは思った。

 

概念魔法、しかも理解にさえ苦しむレベルのもの。

 

馬鹿だ、とやはりピュロボロスは思った。

 

だが自身の役割を理解している。

 

それに、逃がして貰えるとはハナから思っちゃいない。

 

「……分からないんなら、使うだけ使ってお暇させてもらおうか」

 

「そんなに僕を足止めしたいのかい?」

 

「やっぱ目的もバレてるか……なら猶更私を無視してもらっちゃ困るってわけだ。さぁネクストステージといこう」

 

ピュロボロスの体に圧倒的な魔力、そして熱が迸る。

 

「精々抵抗させて貰うとするわ、組織長サマ。極限魔法 核力爆発(ニュークリアエクスプロード)」

 

カッ――――

 

辺りは真っ白に染まった。

 

 




●補足

虚無というのは理解が中々難しく、まぁ端的に言えば「空集合」ですね。
そこで私の勝手なる解釈を加え、数直線で無理やり虚無を表現することにしました。
簡単に言えば、ヴェニタールの虚無の能力は数直線上で無理やり零に収束させる能力です。
つまり、この世界は+とすると、数直線的に零にしようとする場合、-の世界があればいい、ということです。
自分でも何言ってるかわかりません。そもそも虚無は数直線で表現できる数値以外も含んでいるので、前提崩壊です。あくまでこういう解釈なんだなーと適当にお流しください。
謝謝。

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