虚無の先の魔法少女   作:おおは

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今回は他者視点多めです。


魔法省管理部組織長の少女

僕は足音をコツコツと鳴らしながら、無言で暗い空間を歩む。

 

ここは――魔法省 地下室。

 

地下室は魔法省の中でも取り分け情報機密度が高い。

 

組織長室や他重要なものがある最上階の次に重要と言っても差支えが無く、

 

”魔法省 情報部”

 

魔法省の情報が全て集約される場所でもある。

 

そして、そのさらに深部に保管しているもの。

 

僕は組織長ゆえに簡単に入れるが、Ⅶ級でもそう簡単には入れない――――

 

僕が足を止めた先には、分厚い鋼鉄の扉が聳え立っていた。

 

”魔力核保管庫”。

 

扉前で、淡い蒼光のパネルが静かに点滅している。

 

魔力核とは、Ⅵ級以上の魔獣が討伐されたときにのみ生成される純粋な魔力の塊だ。

 

純粋な魔力であるが故に、莫大な可能性とエネルギーを秘めている。

 

これを巡って争ったことも過去にはあったため、現在は魔法省で全て管理している。

 

国連が煩かったが、それ以上の行動をするような国はなかった。

 

する勇気もなければ、したとしても勝ち目がないからだ。

 

魔法省も随分と大きくなった、と思いながら、鋼鉄の扉を見上げる。

 

「……さてさて、ようやく出番が来たというわけだ。魔力核君」

 

扉前の電子画面に自身のICチップをかざす。

 

ピッ、と乾いた音。

 

”ALL GREEN”

 

鋼鉄の扉が鈍い音を立てながらゆっくりと開く。

 

流石は金が湯水のように消えただけあり、そこらの銀行の金庫よりはるかに堅牢だ。

 

――――ま、金を払っているのは大部分国連だがね。

 

開いたのを確認し、中へと足を踏み入れる。

 

その瞬間、空気が一変する。

 

肌を刺すような魔力の奔流が、辺りを突き抜ける。

 

少し進んだ部屋の中央。

 

綺麗なガラスケースにそれは入っていた。

 

澄んだ空のような色を纏った5個の魔力核。

 

直径30センチほどのそれは、まるで珠玉の宝石のごとき美しさを放っていた。

 

しかし、その美しさとは裏腹に、そこから僕の感覚が禍々しい魔力を感じ取った。

 

「まだたったの5個だなんてね……」

 

そのうちの一つをガラスケースを外し手に取る。

 

ひんやりとした重みが、全身へと伝わる。

 

「今度追加でⅥ級を討伐しないといけないね……さて、お一つ貰おうか」

 

手に持つ魔力核を”収納魔法”で異空間へと送る。

 

「さて……次は”彼女達”のことだね。あの子達にはいい経験になるだろう。()()()()()()()()……」

 

僕は足音を鳴らしながら扉をくぐり、地下の暗闇へと混じっていく。

 

その後ろでは、重い扉が苦しい音と共に閉まった。

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

―――魔法少女タイラント視点

 

 

「では、付いてきてください」

 

朱の髪を揺らしながら、魔法少女フルフレイムが私達を一瞥した後、背を向けてそう言った。

 

「あの……どこに?」

 

キビキビと歩き出したその背中を追いながら問いかける。

 

「勿論、組織長室です。今回、組織長ご本人から直接の御指名です」

 

「組織長が……? 何故私達を?」

 

「それは私にも分かりかねます」

 

淡々と答えながらも、フルフレイムは歩みを緩めない。

 

やがて、フルフレイムがエレベーターの前で立ち止まる。

 

「ここからは口外禁止。そして、他の物にも触らないで頂きます」

 

フルフレイムが振り返えらずも、オーラの滲みだした声音を発する。

 

私とイジーは、思わず姿勢を正す。

 

「わ、わかりました」

 

やがて扉の開いたエレベーターに乗り込むと、フルフレイムが電子画面にICチップらしきものを翳した。

 

ピピ、という電子音が響くと同時に、エレベーターがゴウンと唸りながら稼働した。

 

―――――チーン。

 

音と共に、扉が静かに開く。

 

その先は、絨毯の敷かれた廊下。

 

壁は純白で、ガラスで仕切られたモダンなデザイン。

 

しかし、先ほどまでの喧騒が嘘のように、空気が静まり返っていた。

 

「この階です。……くれぐれも、お願いしますね」

 

フルフレイムが廊下を進みだす。

 

私達もそれに従って再び歩みを進める。

 

この階が何階なのかは分からない。だが、まるでグリーンマイルのような異質さを孕んでいた。

 

魔法少女の気配もない。

 

所々に扉があったが、フルフレイムは見向きもせず一番奥へと進んだ。

 

廊下の奥、一際華やかな扉。

 

その横に、黒い影をまとった魔法少女が静かに立っていた。

 

漆黒のコート。

 

右目には白の眼帯。

 

無駄のない姿勢で煙のような軽さで立つその姿。

 

それは、漆黒の狙撃魔法少女。

 

――――――フルフレイムと同じⅦ級魔法少女 スナイプだった。

 

「おう、そいつらか。師匠が話したいと言ってたのは」

 

「そうです。中に入っても?」

 

「勿論構わねぇぜ」

 

スナイプは不敵な笑みを浮かべると、隣の扉に手をかける。

 

魔法少女にとっては軽いその扉が、ゆっくりと開いていく。

 

「さ、組織長が中で待ってるぜ」

 

彼女が顎をしゃくって示す。

 

私達は顔を見合わせ、緊張を押し込めて一歩を踏み出した。

 

組織長室の中。

 

柔らかな今では珍しい白熱電球。

 

中央から広がる、模様のある重厚な絨毯。

 

そして、視線の先――奥のデスクに、その姿はあった。

 

黒を基調とした軍服。

 

コートを袖に手を通さず、肩に掛けたその姿。

 

灰と黒の王冠を戴き、右目にモノクルを光らせる少女。

 

「やぁ魔法少女タイラントにイマジネーション。僕が魔法省管理部組織長、ヴェニタールだ。よろしく頼むよ」

 

漆黒の瞳を鋭く光らせ――――魔法少女として圧倒的なオーラと共にそう言った。

 

 

 

 

 

 

 




ヴェニタールだとウーリン!ウーリン!だった件

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