虚無の先の魔法少女   作:おおは

9 / 49
Ⅶ級の実力

僕の案内に従って、二人の少女――――――タイラントとフルフレイムが模擬戦場に入る。

 

ここは魔法省模擬戦闘場。

 

2階に設置されている施設で、魔法少女なら誰でも利用できる。

 

その一番奥の部屋。

 

最も耐魔法性が高い特別なフィールド。

 

空間が魔法で拡張され、辺りは平らな草原が広がっていた。

 

僕はその中央に立ち、今回の主役の二人を見やる。

 

「さて―――Ⅶ級魔法少女フルフレイムとⅣ級魔法少女タイラントの模擬戦を始める。

 今回、戦闘開始後からは他の魔法少女達の観戦を許可している。

 ……準備はいいかい?」

 

「問題ありません」

 

フルフレイムが固い言葉で短くそう言う。

 

「私も問題ないわ……です」

 

タイラントが一瞬漏れ出た素の口調を伴って返事をする。

 

緊張か。

 

はたまた目標と戦える興奮か。

 

僕が片腕を上へと高く上げる。

 

「さぁ、では両者とも適度な距離まで離れて」

 

二人が離れたことを確認する。

 

そして、僕は腕を振り下ろした。

 

「――――――模擬戦、始め!」

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

僕は腕を振り下ろすと同時に観戦室のVIPルームに転移する。

 

ここはⅦ級魔法少女しか入れない場所だ。僕の正体が露見すること無く観戦できる。

 

「―――さて、二人はどんな戦いを見せてくれるのかな」

 

気配的に、観戦室にはそこそこの魔法少女達が集まっている。

 

楽しめそうだ。

 

そう思っていると、背後に気配を感じ部屋のドアの開閉音が聞こえた。

 

「……こきげんよう組織長。今日もご機嫌麗しく?」

 

振り返って見ると、これまた珍しい。

 

Ⅶ級魔法少女が二人もいた。

 

「ここでⅦ級とⅣ級が戦うと聞きましたので、見に来ましたの」

 

お嬢様らしく風格を纏って(実際にお嬢様らしい)そう言うのは、深海のような青色のドレスを纏う少女。

 

―――――Ⅶ級魔法少女 ウィンドウ。

 

「……Ⅳ級がⅦ級と戦いに?ましてや姉と?」

 

氷のように冷たい声で言うもう一人は、薄水色の所々が凍り付いているドレスを纏う少女。

 

―――――Ⅶ級 エターナルフローズン。

 

どちらも魔法省が誇る魔法少女で、特にエターナルフローズンはフルフレイムと姉妹であり、同時にフルフレイムに次ぐ強さだった。

 

エターナルフローズンの得意魔法である”氷”の影響を受け、部屋の温度が下がる感覚があった。

 

「いや……今回この戦いを設けたのは戦いが目的ではないよ」

 

少しの肌寒さを気にせず答えてやると、ウィンドウが怪訝な顔をした。

 

「どういうことですの? 戦いは目的のための手段ということですの?」

 

「そうだよ。ま、だからといって戦いを楽しまない手はないけどね」

 

僕が肩を竦める。ウィンドウはさらに怪訝な表情をしていた。

 

「では、組織長の本当の目的は何ですの?」

 

「本当の目的? そりゃ勿論、負けさせることさ」

 

「負けさせる……?」

 

「そう。タイラントには是非とも成長してほしいと思ってね」

 

話していると、試合が開始して以来ずっと睨み合っていた主役達が動き出した様子が視界に入った。

 

「っと、始まったようだね。さ、取り敢えず見ようじゃないか」

 

僕は椅子に深く腰を下ろし、注目の試合へと視線を戻した。

 

 

◇     ◇     ◇     ◇

 

 

タイラントが雷のように踏み込んだ。

 

爆ぜた土が舞った瞬間、二人の距離は消えていた。

 

「――ッ。思ったより早いようですね」

 

一瞬驚くフルフレイム。

 

「はぁぁぁああ!!!」

 

タイラントが声を張りながら、手に持つ巨大ハンマーに力を込める。

 

ハンマーが唸りを上げて振り下ろされる。

 

が、紙一重で。

 

フルフレイムは滑るように躱し、振り下ろす体制のタイラントへ肉薄する。

 

地面へ走るハンマーの強烈な衝撃。

 

同時に、タイラントの体にも衝撃が走った。

 

反撃の右腕がタイラントの腹部に強くめり込む。

 

「――――がッッ」

 

空気の破裂音とともに、タイラントはハンマーと共にゴムボールのように弾きとんだ。

 

ハンマーが地面にめり込み、砂埃が舞う。

 

「魔法少女は素で膂力がありますからね。工夫するだけで魔法がなくともこれくらいは」

 

フルフレイムは悠然と立ったままそう言い放つ。

 

そこから少し離れ、タイラントは地面に倒れていた。

 

「まさか、これで終わりとはいいませんよね?」

 

「勿論よ!そんな訳ないじゃない!」

 

タイラントが汚れと痛みなど関係ないとばかりに勢いよく立つ。

 

そして、再びハンマーを構える。

 

「それはそれは。では、今度はこちらから行きますよ――――――」

 

次の刹那。

 

土が舞いあがることなく、自然に。

 

フルフレイムは炎を纏いながらタイラントの懐に移動していた。

 

「なッ!早ッ――――」

 

フルフレイムからの熱気に怯みながらも、タイラントがハンマーを叩きつける。

 

が、またもや避けられる。

 

「同じ手が通じるとお思いで?」

 

しかし

 

「――――同じ手を繰り返す訳ないでしょ!」

 

ハンマーが小手返しのように地面から跳ね返された。

 

流石のフルフレイムも少し驚く。

 

地面に叩きつけたせいで地面に埋まっていたハンマーが目の前に来ているのだ。

 

辺りはハンマーを無理やり引き抜いたことによって、土が舞う。

 

舞う土を被りながら、ハンマーはフルフレイムへ向かっていく。

 

その時だった。

 

フルフレイムが僅かに口角を上げた。

 

瞬間、燃え上がる爆炎。

 

「――ッ!」

 

熱波の勢いに負け、タイラントとハンマーが勢いを失う。

 

「中々面白いものを見せていただいたお礼です。

 

――――――本気でお相手して差し上げます」

 

膨れ上がる炎。

 

焦がされたタイラントは思わず距離を置く。

 

「恐ろしいほど熱いわね……」

 

タイラントは目線の先にいるフルフレイムを見る。

 

20メートルはある天井に届くほどの火柱が、世界を呑みこむようだった。

 

草原は今や焼け焦げ、魔王を迎える死の土地へと化していた。

 

熱波がタイラントの全身を突き抜ける。

 

そんな中、彼女は決意した目でハンマーを握りなおす。

 

痛みだけで、歩みを止める理由にはならなかった。

 

「でもね!こんな程度で負ける私じゃないわ!!!」

 

全力でハンマーに力と魔力を込める。

 

タイラントの得意魔法

――――――「超強化」

 

その強化の対象は人だけではない。

 

強化の定義も肉体的なだけではない。

 

その意味するところは。

 

ハンマーがどんどんと巨大化していく。

 

やがてそれは天井に届く大きさになった。

 

「これでも食らえやぁぁぁぁああ!」

 

タイラントはそれを炎の中心地へ振り下ろす。

 

天を衝く巨槌が激しい勢いと衝撃を撒き散らしながら向かっていく。

 

対するフルフレイムは、炎から僅かに両手を前に突き出した。

 

「――――融解せよ(メルティング)

 

その瞬間。

 

炎が圧倒的熱量・勢いで指向性を持ち放たれた。

 

世界が白に塗り潰される。

 

ドォォォォオ!!!!!――――――

 

激しい轟音。

 

激しい衝撃波。

 

タイラントは思わず目をつむった。

 

光が収まった時、目を開いたタイラントの目に映ったのは果たして。

 

弾き返され、落ちるはずの場所から大きくズレた巨大ハンマー。

 

それと、未だ炎を噴き出しながら悠然と立つフルフレイムだった。

 

「まさか、私の炎でも弾き返す程度しかできないとは……」

 

炎を纏いながらフルフレイムが静かな声で言う。

 

「確かに、あなたはⅤ級――――場合によってはⅥ級の実力がありますね」

 

フルフレイムが炎の翼を広げ、空中へと舞い上がる。

 

まるでフェニックスのようだった。

 

「極限魔法が使えるようにならば、あなたはもっと飛躍するでしょう」

 

フルフレイムが更なる炎を噴き出す。

 

それは最早太陽のような明るさに達していた。

 

「最後に、見せてあげましょう。私の極限魔法を」

 

太陽からの灼熱が世界を包む。

 

「極限魔法――」

 

辺りが熱波で自然発火する。魔法の炎は場所を選ばない。空中でも。

 

「―――融解炎々炉(メルティング・エンド・リアクター)

 

白光。

 

極熱。

 

今、全てが、融けた―――――

 

 

 

 

 

 

 




〇タイラントのハンマー
なんと重さが一定だが自由に変更できるのだ!
それに膂力が魔法で強化されているタイラントが振れば、あらま。
恐ろしい破壊兵器となるのだ!
サイズも得意魔法で変えられる!やっぱり強い気がするぞ!

閑話欲しい?

  • 欲しい!
  • 本文書け
  • 他者支店閑話だ!
  • 何それおいしいの?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。