母港の設定、指揮官の設定、他諸々を異世界航路からガラリと変えての再スタートです
相変わらずプロットなんて一切無い見切り発車ですのでどうなるかも、果たして続くのかも私自身分かりません
ですが勢いが続く限り書いて行きますので、どうかこちらもよろしくお願いします!
朝の冷たい空気の中、『クワ・トイネ公国』の竜騎士『マールパティマ』は公国の経済都市『マイハーク』の沖合を相棒であるワイバーンに跨って哨戒飛行を行っていた。
「今日も…明日も明後日も何事も無ければいいんだがな…」
現在、クワ・トイネ公国は同じ『ロデニウス大陸』に存在する西の大国『ロウリア王国』との緊張が高まっていた。
ロウリア王国はエルフやドワーフ、獣人といったヒト族以外の種族を排斥し、それらの種族が共存するクワ・トイネ公国とドワーフを中心とした『クイラ王国』とは古くから対立している。
加えて近年のロウリア王国は急速な軍拡を進めており、このままでは戦争となるだろう。
しかし、ロウリア王国は周辺諸国…『第三文明圏外』と呼ばれる地域の中では屈指の大国であり、クワ・トイネ公国とクイラ王国が束になっても敵わない。
「……ん?」
もし戦争になればどうなるだろうか。
そんな事を考えながら哨戒ルートを飛んでいたマールパティマであったが、視界に何やら妙な物を捉えた。
もしやロウリアのワイバーンか?いや、この辺りはワイバーンの飛行距離では到達出来ないだろう。
より技術が発展した『文明圏』の国々には『竜母』なるワイバーンを離着陸させられる船があるらしいが、ロウリアがそんな代物を持っているとは思えない。
「こちらマールパティマ、未確認騎を発見した。これより確認に向かう」
《了解、くれぐれも注意してくれ》
ワイバーンの鞍に取り付けた『魔法通信機』通称『魔信』を用いて基地に報告すると、拍車でワイバーンの脇腹を突いて針路を変更させた。
「なんだあれは?」
暫く飛んでいたマールパティマはハッキリと見える未確認騎の姿に驚愕した。
その未確認騎は
少なくともワイバーンではないようだが…
しかも羽ばたかない翼には国籍識別章が描かれているが、直線で構成された青い猛禽が描かれている。
マールパティマが記憶している限り、このような識別章の国は見覚えが無い。
「こちらマールパティマ。未確認騎を視認したが…ワイバーンではない。なんだこれは…」
《マールパティマ、ワイバーンではないとはどういう事だ。詳しく説明しろ》
「詳しくと言っても…あっ!み、未確認騎増速!速い…ダメだ!ワイバーンでは追いつけない!未確認騎1騎がマイハーク方面に向かっている!」
ワイバーンは最高で時速235kmもの速度で飛行出来るが、未確認騎はクイラで湧く『燃える水』のようなニオイを撒き散らしながら増速すると、マールパティマを振り切ってしまった。
《なんだと!?防衛騎士団、出撃!マールパティマ、君は他の未確認騎が飛来しないか現空域で警戒を継続せよ!》
「りょ、了解!」
日常は突如として非日常へと変わり、この世界に新たな風が吹き…それはやがて大きな嵐となる。
これは正にその前触れであった。
マイハークの防衛騎士団本部、その櫓の上では騎士団長の女騎士『イーネ』が空を睨んでいた。
「……来たぞ!」
北東の空に現れた黒点は徐々にその姿を鮮明にし、奇っ怪な姿を露わにした。
マールパティマが言った未確認騎とは
先程からいくら魔信で呼びかけても応答が無い…敵か味方かも分からないが、万が一敵ならばマイハークの人々に危害を加えるかもしれない。
そう考えたイーネは魔信を手に取ると上空で旋回して待機する竜騎士達へと命令を下した。
「各騎へ、未確認騎は此方の呼び掛けに一切応じずマイハーク上空へ侵入しようとしている。よって我々は未確認騎を敵と見做し、攻撃を許可する!」
イーネの言葉を受け、竜騎士達は横並びになるとワイバーン最大の攻撃である『導力火炎弾』の構えを取った。
「なっ…!?」
しかし、未確認騎は突如として上昇。
みるみる内に高度を上げると、ワイバーンの限界高度である3000mより更に高い4000m以上まで上昇すると大回りで旋回して来たルートを辿るように戻って行ってしまった。
「…な、何だったのだ?」
見たことも無い飛行物体の不可解過ぎる行動…それにイーネは疑問符を浮かべる事しか出来なかった。
未確認騎がマイハークに飛来する騒ぎから数日後、クワ・トイネ公国の政治の中枢である『蓮の庭園』では閣僚が集まって未確認騎について議論していた。
「なんだこれは?」
未確認騎のスケッチ片手にお手上げと言った様子の首相『カナタ』は隣に座る将軍『ハンキ』にスケッチを渡した。
「遥か西の第二文明圏、その盟主である『ムー』は飛行機と呼ばれる羽ばたかず、高速で回る風車を持った乗り物を開発していると聞きます。未確認騎の特徴はこれに一致しているようですが…」
「しかしハンキ将軍、ムーは温厚な国ですし通告も無く領空侵犯してくるとは思えません。なにより我が国とムーは遠過ぎます。わざわざ第三文明圏外まで来るとは考え難いのでは?」
ハンキにそう返したカナタの言葉に議論は何度目かの振り出しに戻った。
現状、分からない事だらけ…正にお手上げだが、市民にも未確認騎の目撃者が多数居る以上、闇に葬る訳にもいかない。
そんな時、官僚の一人が慌てた様子でやって来た。
「たっ…大変です!マイハーク沖に300mを超える巨大船が現れました!」
「何だと!?」
「海軍が臨検を行ったところ素直に応じ、『スイートバン』なる島から来た事、また我が国への領空侵犯の謝罪と可能であれば食料や鉱物資源の調達を行いたいとの事でして…」
官僚の言葉にハンキと同じように立ち上がるカナタ。
「それではスイートバンなる島の者がこの未確認騎を我が国に?」
「はい。敵対を意図したものではなく、なんでも異世界からこの世界に転移したため状況を把握すべくやむなく行ったとの事でして…」
「異世界からの転移?何をバカな事を…」
「いや、待って下さい。どうやら込み入った事情があるようです。今スイートバンの者には誰が対応していますか?」
「はい、現在は偶然マイハークの親戚の葬儀に参列されていたリンスイ外務卿が対応されています」
官僚からの言葉を聞いてカナタはほっとした様子だった。
外交のトップが偶然居合わせて対応しているとなればこれ以上の事は無い。
「分かりました。では不幸の後で申し訳ありませんが、この件はリンスイ殿に任せましょう。それと…一応我々が用意出来る食料や資源の種類と量を取りまとめて下さい。もしかしたら資源と引き換えにこの未確認騎を手に入れる事が出来るかもしれません」
この時の事を後年、カナタはこう語った。
─ある種の予感がしたからそれに従ったまでだ─と…
ちゃんと異世界航路も連載しますのでご心配なく!