スイートバン召喚   作:サモアオランウータン

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急に冷え込んできましたね
寒さに耐えきれず、コタツとストーブを出しました


3.視察

スイートバン代表高野とクワ・トイネ公国首相カナタとの会談は恙無く、なんとも和やかな雰囲気で幕を閉じた。

今回の会談でスイートバン側の領空侵犯に対する謝罪をクワ・トイネ側は受け入れ、同時に行われた物資調達に関しての交渉においてもスイートバン側が提示した食料をクワ・トイネ側は十分に供給出来ると判断し、その対価としてスイートバン側が持つ技術によって輸送インフラを整備し、安定的な食料供給を実現する為には防衛力強化が望ましいという事で陸海空の兵器を輸出する事で合意となった。

 

「ふぅ…」

 

《お疲れ様です、指揮官。異世界で初めての外交交渉でしたが、問題なく終えられたのは素晴らしい事です》

 

凡そ一ヶ月ぶりに母港へ戻ってきた高野は執務室で寛いでいた。

そんな彼に労いの言葉をかけたのはタブレット端末にインストールされた支援AI『TB』である。

 

「いや、それはクワ・トイネの人々が温厚だったからだよ。もし領空侵犯の件を盾に此方に過剰な要求をしてくるようだったら、私では交渉を纏められなかったよ。それにしても食料だけじゃなく、石油や鉱物資源まで手に入るとは予想外だったね」

 

TBの賛辞に対し謙遜する高野は、木箱に詰められた質の悪いガラス瓶の一つを手に取る。

それはクワ・トイネの学者から借り受けた物であり、隣国『クイラ王国』で採れた『燃える水』なる代物なのだが…まさかと思い高野は同行していた科学者に分析を頼んだところ、なんとそれは原油、しかも特に質が良い物だと判明したのだ。

他にもクイラ王国で採れた鉱物の標本を分析したところ、石炭や鉄鉱石はもちろん、銅鉱石やボーキサイト、果てはコバルトやニッケルのような希少金属の鉱石だと判明したのである。

これを受けて高野は急遽クイラとの交渉を決断し、クワ・トイネの仲介でクイラと地下資源の輸入に関する交渉を纏めたのだった。

 

《はい、話によればクイラ王国では鉱石が多く採掘出来るようですから、どうにか損傷KAN-SEN達の修理は行えそうですね》

 

「そうだけど、先ずはクワ・トイネとクイラ両国にインフラを整備するところからだね。TB、それらを建設する為に必要な物資はあるかな?」

 

《鉄道敷設の為のレール及び車両、石油精製施設、金属精錬施設を建設するとなると母港の備蓄資源は現在から90%減少します》

 

「…ならある(・・)と言う事だね。TB、資源調達の為の各種施設を建設する為の各種マニュアルを準備してほしい。リーダークラスはうちから出すけど、作業員は人手が足りないし雇用の確保と技術教育になるから現地住民を使うからなるべく分かりやすいやつでね」

 

《了承しました》

 

「それじゃあ私はこれからやってくるクワ・トイネからの使節団の対応があるから行ってくるよ」

 

《はい、お気を付けて》

 


 

「おぉ…これは…」

 

クワ・トイネ公国使節団の一員である外務局員『ヤゴウ』は目の前に広がる光景に驚愕していた。

空を突かんばかりの高層建築は歪みも厚みのムラも無い高品質なガラスで一面を覆われており、それらの間に張り巡らされた道路は繋ぎ目の無い黒い物体で舗装されている。

そしてその道路には馬も無く走る馬車や、2本の金属製らしき細い道の上を走る長方形の乗り物らしき物まである。

遥か遠く『第二文明圏』の列強国である『ムー』には『自動車』や『列車』といった物があるらしいが…目の前で走っているそれらは断片的ながらも手に入れた情報と合致している。

つまり、スイートバンにはムーに匹敵するような技術力を持っている可能性が高い。

有り余る程ある食料と引き換えにこれらの技術を手にする事が出来る…正にいい買い物だ。

しかし、不安が無いと言えば嘘になる。

それこそが彼らの背後に広がる光景だった。

 

「こんな鋼鉄の船がまるで獣に食い千切られたかのようだ…いったいどのような攻撃でこんな事に…」

 

振り向いてみれば使節団の一員である軍務局の将軍『ハンキ』が港に係留されている船を見て興味と恐怖が入り混じった表情でそう呟いていた。

話によればスイートバンは信じ難い事に人の手で作り出した人工島らしく、その港は確かに多数の船が停泊出来るような作りとなっている。

そしてその港に停泊している船は驚いた事に殆どが鋼鉄製かつ小さな物でも100m、大きな物は300mを超えているだろう。

しかし、それらの多くは船体に巨大な穴が開いていたり、櫓のような構造物がもぎ取れていたり、大火に襲われたように黒焦げとなっていた。

 

「すごいですね、ハンキ将軍」

 

「うむ、我々ではこのような鋼鉄船をこのように破壊する事は出来ない。いったい彼らは…いや、彼女達(・・・)はどんな激戦を潜り抜けたというのだ」

 

確かに所々には殆ど無傷の船もあるが、それでもこれほどの被害を齎した戦いを経験しているスイートバンに他国へ輸出する程の品物が残っているのだろうか?あったとしても、とんでもない低性能な代物を送りつけられるのではないか?

という不安がヤゴウ達にはあったのだ。

 

「皆さん、お待たせしまして申し訳ありません」

 

そんな時、高野が馬が居ない馬車こと自動車に乗ってやって来た。

他の自動車よりも大きく、内部には多数の座席があるためおそらくは大勢の人を乗せる為の物なのだろう。

感心しながらヤゴウ達は案内に従って自動車(バス)に乗り込み、高野から説明を受けた。

 

「それでは今一度確認致しますが、今回は皆さんに我々がどのような存在なのかをこのスイートバンを巡りながら説明させて頂きます。そして皆さんには此方が用意した宿泊所に宿泊して頂き、明日はクワ・トイネ公国が我々に食料等を輸出して頂ける事に対する対価…つまりはこういった自動車や鉄道、防衛兵器に関しての説明を行います。何かご質問は?」

 

高野の言葉に対し、ヤゴウが手を上げた。

 

「高野殿、先程から気になっていたのだがこの自動車とやらはどれほどの速度が出るのだ?この島はさほど大きくはなさそうだが、視察の時間が一日しか無いとなると速度によってはあまり見て回れそうではないが…」

 

「この自動車…バスと言うのですが、この手の車両は最低でも時速60kmで長時間走る事が出来ます。安全面や経済性を無視すればその倍の速度で走る事は出来ますが…しかし、時速40〜60kmで走ってもスイートバンの主要施設を十分な時間をかけて視察する事が出来ますよ」

 

「時速60km!?確かここまで我々が乗ってきた『オリンピック』という客船が21ノット、時速に換算すると40km弱であったから、それより速いのか!」

 

ヤゴウの驚愕に高野は何度か頷いて見せた。

 

「理解が早くて助かります。それにしてもまさかこの世界でもメートル法や12進数式時刻が使われてるとは思いませんでしたよ。お陰で我々としては大助かりですが。…最初の目的地である資料館への到着まではもうしばらく時間があります。他に質問はございますか?」

 

そうやって高野と使節団は移動中の質疑応答とスイートバンの各種施設の視察で一日を終えたのだった。

 




そういえば異世界でもメートル法が使われてるのってやっぱり太陽神の使いこと旧日本軍由来だったりするんですかね?
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