これはもう1話要りますね
スイートバンの各種施設を視察し、ホテルにて1泊したクワ・トイネ使節団は最大の目玉とも言える食料輸出の対価である輸出兵器を検分するため、スイートバンにあるいくつかの飛行場のうちの一つへとやって来た。
飛行場といっても使節団の面々が知る地面を平らに均し、必要な長さを確保したワイバーン用の物とは全く異なり、防波堤のように海に突き出た浮体の上にアスファルト舗装された滑走路は陸軍の大部隊が隊列を組んで行進できる程広く、両端には船が係留出来るようになっている。
広いとは言えないスイートバンでスペースを有効活用する為の措置なのだろう。
しかし、使節団の意識はそういった建築技術よりも目の前に置かれた兵器に向けられていた。
「それでは皆さん、貴国から食料を輸入するにあたり我々が用意した防衛兵器がこちらとなります。とは言ってもこちらにあるのは主要な物であり補助的な兵器は後日ご紹介します」
「ほほぅ…」
高野の言葉に目を輝かせたのは、やはり将軍ハンキだ。
鉄の筒と松葉杖を組み合わせたような武器、2本の鉄製ベルトを下側に並べた鉄の箱、鼻先に小さな風車を備えた上下2枚の翼を持つ乗り物、舷側に大きな鉄の筒をいくつも並べた船…詳しくは分からないが、ハンキは独自に収集した各国、特に列強国の兵器の断片的な情報からそれが何なのかをある程度予想している。
「まずはこちら…鉄血公国で作られた『Kar98k』と言う銃です」
「銃!それはあの火薬と呼ばれる物の力で鉛の塊を飛ばすというアレか?」
「はい、よくご存知で。こちらはこのようにボルトと呼ばれる部品を操作し、一発ずつ装填と排莢を行う『ボルトアクションライフル』という形式ですね」
「ほう、確か遥か西方のムーの銃はそのような物と聞いたが…まさか我々が列強国と同じ銃を使えるとは。これはどれほどの数を輸出出来るのかね?」
「はい、現状は本島警備部隊の予備品倉庫にあった物の内、状態が良かった500丁と弾薬10万発を即時納入可能です。今後は整備した銃や新規生産の銃と弾薬を追加納入する予定となっております」
「500人分か…とりあえず手始めとしてはまずまずか」
納得したように頷くハンキ。
それを見て高野は次に移った。
「続いてこちらは同じく鉄血公国で作られた『Ⅱ号戦車』という戦う為の乗り物です。先程ご紹介したKar98kの弾薬を連射出来る『MG34』とより強力な弾薬を連射出来る20mm機関砲を装備している他、凹凸の激しい地面を走り、歩兵が持つ銃ぐらいなら弾ける装甲を備えています」
「戦車…ムーにそんな兵器があるとは聞いたが、このような物なのか。しかし、銃より強力な兵器と装甲を持ちながら不整地を走れるとなれば陸戦においてコレに勝てる兵器は存在しないのではないか?因みにこれはどれほどの数が?」
「こちらは20輛ですね。もちろん本車も整備や新規生産で数は増えるでしょう」
「ほうほう…ではこちらは?噂に聞くムーの飛行機械やミリシアルの『天の浮舟』に似ているが…」
ハンキが指差したのは鼻先に小さな風車を備えた上下2枚の翼を持つ乗り物…航空機だった。
知識がある者が見れば、レシプロエンジン搭載の複葉機だと一目で分かるが、よくよく見て見れば1機はもう1機よりも一回り大きいのが分かる。
「こちらはロイヤルで開発された戦闘機『シーグラディエーター』と雷撃機『ソードフィッシュ』です」
「戦闘機…?雷撃機…?」
多少の知識はあったとしてもハンキとしてはちんぷんかんぷんだ。
名前が違う事から役割が違うという事は何となく分かるが、それ以上は想像もつかない。
それを察したのか、高野はシーグラディエーターの前に立ち解説を始めた。
「まずこちら、戦闘機ですが敵航空戦力…貴国で言うところのワイバーンを撃墜する事を任務とする航空機となります。本機は最大で時速400km以上を発揮する事が出来、航続距離は約700km、高度1万m近くまで上昇出来る他、非常に高い運動性と4丁の機関銃によりワイバーンを圧倒出来る筈です」
「時速400km!?しかも高度1万mまで上昇可能とは…それと装備する機関銃はⅡ号戦車の物と同じで?」
「あー…いえ、正確には違うのですが、Ⅱ号戦車とKar98kの輸出に伴いこれらの弾薬と同じ物を使う航空機用機関銃に換装してあります」
「ほう、機関銃と言っても使う弾薬とやらが違うのですな。同じ物に揃えてくれたのなら有り難い」
「次に此方、ソードフィッシュですが…」
そこで高野は少し考える。
雷撃機は魚雷による攻撃が主任務だが、ハンキ達はおそらく魚雷の概念すら知らないだろう。
故に可能な限り噛み砕いて説明する事とした。
「雷撃機とは魚雷と呼ばれる水中を泳いで敵艦船の喫水線下を直接攻撃する為の兵器を運用する為の航空機です」
「水中を泳ぐ兵器!?そ、それは無人衝角船のような物か?」
「無人衝角船とは…?」
「うむ。我が国は以前、ロウリアとの小競り合いの際に古くなった船に頑丈な衝角を取り付けて追い風となったタイミングで帆を張り、無人の船をロウリア艦隊に突っ込ませたのだ」
「なるほど…確かに似ているかもしれませんが、威力は段違いでしょう。あそこに見える平たい甲板の艦…『フランクリン』と言うのですが、彼女は魚雷の直撃を受けてああなりました」
高野が指差した方向に目を向けるハンキ達。
そこには200mを優に超える巨艦が右舷に巨大な破孔を作った状態で波止場に係留されていた。
あれほど巨大な鋼鉄船にあれほど巨大な破孔を作るとは…まだ見ぬ魚雷の破壊力にハンキ達は思わず身震いした。
「それでソードフィッシュ自体は時速200km強、航続距離は800km程度、上昇限度は4000mに届かない程度ですね」
「ふむ…その性能ならばワイバーンにも撃墜されかねん。先に制空権を確保した上で運用せねばならんな」
「ハンキ将軍の仰る通りです。一応は防御用に機首と後席に1丁ずつ機関銃を装備してはいますが、本機の武装はあくまでも対地・対艦兵装です」
「つまり、魚雷とやらか」
ハンキの言葉に高野は首を横に振った。
「申し訳ありませんが、今回の輸出品リストに魚雷は入っていません。というのも貴国やクイラ王国の軍事技術から両国の仮想敵国の艦船に対しては魚雷は威力過剰かつ、高価過ぎるのです。加えて対艦兵器ですから地上に対しては使い物になりませんし…」
「ならば雷撃機の意味が無いではないか」
「ですので代わりに爆弾とロケット弾を用意致しました」
「爆弾と…ロケット弾?」
「はい。爆弾は鉄製の殻の中に火薬を詰め込んだ物でして、爆発すると爆風と殻の破片で周囲を破壊・殺傷します。ソードフィッシュには
「ほう…効果的であるならば高くて威力過剰な魚雷を使う事は無いな。よく分かった」
「ご理解頂けて何よりです。では次は此方の…」
次に高野は滑走路の脇に係留してある帆船に歩み寄る。
とここで帆船から彼に対して朗らかで可愛らしい声が投げかけられた。
「もぉ〜っ!指揮官ってば遅いよっ!待ちくたびれちゃったんだから!」
帆船の舳先に立ち、腕を組んで膨れっ面を見せる三角帽を被った少女の姿に高野は困ったような笑顔を浮かべるのだった。
皆さんはイベントの進捗如何ですか?
私は旧式重火砲の設計図があと1枚出たら撤退するつもりです