スイートバン召喚   作:サモアオランウータン

5 / 5
異世界航路の方の筆が進んでたので少々遅れました


5.交換条件

帆船の舳先に立つ少女からの言葉に高野は困ったような笑顔を浮かべ、その少女へ言葉を返した。

 

「ごめんよ、『ロイヤル・フォーチュン』。色々と話したい事があってね」

 

「まったく…指揮官ってばこっちが止めないと長話しちゃうんだから」

 

頬を膨らませたロイヤル・フォーチュンと呼ばれた少女はなんと驚いた事に、舳先から波止場へと飛び降りてそのまま事も無さげに着地してしまった。

その様を目撃したハンキ達は驚きによりざわめくが、それは直ぐに治まった。

何故なら彼らはロイヤル・フォーチュンの正体に心当たりがあったからだ。

 

「高野殿、もしや彼女も…」

 

「はい、彼女もKAN-SENです。この帆船が彼女の艤装なんですよ」

 

KAN-SENについては資源調達交渉の際、あらかじめクワ・トイネ及びクイラ両国に対して説明してある。

当初は一人の女性の姿に変身出来る軍艦という存在に懐疑的だった両国だったが、同行していたアマゾンとクイーン・メリーが目の前で艦を消したり出現させたりを繰り返すというデモンストレーションを行った結果、これはもう信じざるを得ないという結論となったのだ。

 

「ほう…KAN-SENは鋼鉄の船ばかりだと思いましたが、我々が知るような船に近い者も存在するのですな」

 

「基本的にはそうですが、彼女達は少々特殊な出自でして…」

 

「そちらにはそちらの事情があるのでしょう、深くは聞きますまい。それでもしや彼女を…?」

 

ハンキの言葉に高野は首を横に振る。

 

「彼女達は私の大切な仲間です。どれほど金銭を積まれても手放したりはしませんよ」

 

「やだも〜、指揮官ったら〜。そんなんだから皆に狙われちゃうんだよ〜?」

 

高野の答えにロイヤル・フォーチュンが照れ笑いしながら、肘で高野の脇腹を小突く。

それを見たハンキ達は微笑ましい物を見るような視線でそんなやり取りを見届けると、気持ちを切り替えるようにハンキが咳払いをした。

 

「おほんっ…となると彼女のような船を…という事に?」

 

「はい。ですが船を建造する技術を貴国は既に持っているようですので、搭載する兵器そのものと弾薬の輸出…そしてそれらの製造技術指導を行います」

 

「ほう…となると"アレ"ですかな?」

 

ハンキが指差した先にはロイヤル・フォーチュンの舷側から突き出た太い金属の筒…大砲の姿があった。

 

「その通りです。アレは『カルバリン砲』…我々は『旧式重火砲』と呼んでいるものです。原理としては先程の銃と同じく、金属の塊を火薬の力で発射するものです。しかし、形態としてはとても古く、先程の銃よりも200年以上前の技術水準で製造されたものとなります」

 

「200年以上前!?そんな物が…」

 

「もちろん、我々としてももっと新しい形態の大砲をお渡ししたかったのですが、そういった大砲の運用が可能な船の建造や運用法の確立には非常に時間がかかるのです。なのであくまでも繋ぎとして、大砲を使った海戦の基本を学ぶ為の教材としてこの大砲を輸出する事にしたんです」

 

「なるほど…確かに銃に戦車、飛行機械といった物に加えてアマゾン殿のような船の取り扱いまでとなると軍を丸ごと作り替える程の労力となってしまうか…因みにこの大砲の能力はいかほどか?」

 

「それについては…ロイヤル・フォーチュン、お願い出来るかな?」

 

「まっかせて!」

 

ハンキからの質問を高野から回されたロイヤル・フォーチュンは拳をグッと握って元気よく応えた。

 

「とりあえずさっき指揮官が紹介したカルバリン砲から説明するね」

 

そう言ったロイヤル・フォーチュンが指をパチンッと鳴らすと、彼女の側で光の旋風が巻き起こり、気付いた時には車輪が付いた台座に据えられた金属の細長い筒が鎮座していた。

それにハンキ達はざわめくが、おそらくそれもKAN-SENの力なのだろうと解釈し、ざわめきは直ぐに落ち着いた。

 

「重さ8kgぐらいの金属の塊を最大で6kmぐらい飛ばせるのがこの大砲だよ。でも一番当てやすいのは500m以下…腕のいい砲手でも1.5kmでどうにか当てれるってところかな〜」

 

「なんと!?それは噂に聞く『パーパルディア皇国』の魔導砲に近い性能ではないか!確かパーパルディアの魔導砲の射程は2kmと…」

 

「あ〜…それは多分、一番成績が良かった大砲と砲手を選抜したんじゃないかな?そのパーパルディア皇国って国がどんな大砲を使ってるか知らないけど、この手の大砲ならカルバリン砲が一番射程が長いよ。ね、指揮官?」

 

「そうだね、ロイヤル・フォーチュン。この世界の技術レベルなら多分パーパルディア皇国が使っている大砲は『テンペスタ』の皆と似たような物だろうし、射程2kmっていうのは好条件での話かな」

 

「な、なるほど…しかし、我々が列強国と同じ兵器を使えるとは…」

 

ボルトアクションライフルや戦車、航空機に関しては現実味が無く何となく"スゴイ代物"という認識だったが、近隣の大国と類似の兵器を導入出来るという事実はハンキをより深く驚嘆させた。

 

「しかし…我が国にはこれらを扱う為のノウハウがありません。どう扱えば良いのか、どう整備すれば良いのか…如何に強力な兵器があったとしても上手く活用出来なければ宝の持ち腐れです」

 

眉を下げてそう述べるハンキに対し、高野は打算的な笑みを浮かべて応えた。

 

「無論、それに関しては我々も考えています。これらの兵器の取り扱いを指導する為の教官を派遣します。ただし、教官派遣の対価として貴国からは食料を始めとした物資を提供していただきたいのです。また、将来的にはこれらの兵器を貴国で生産出来るように、貴国の技術者を我が国に留学させては如何でしょう?」

 

「ほう…」

 

高野はお人好しで騙されやすい正直者だとハンキは考えていたが、それは改めねばならないようだ。

指導教官派遣の対価と称して継続的な資源提供を求め、留学と称して万が一の際には人質とする…中々に強かな面もあるらしい。

そして、高野が示した条件はハンキ達使節団に与えられた権限で返答出来るものだった。

 

「よし、では高野殿の条件を飲もうではないか。我が国は食料を始めとした物資を貴殿らの給与として提供し、将来的には我が国でもこれらの兵器を生産出来るようになる事を目指し、工廠の技師を貴殿らに預ける事としよう」

 

クワ・トイネとしては食料なぞ有り余る程にあるし、現状で十分満たされているのだからわざわざ敵を作るような行為をするつもりもない。

言ってしまえば高野が示した条件はクワ・トイネ側にとっては正にノーリスク・ハイリターンなこの上ない好条件だ。

これを断ったとなれば、歴史上稀に見る愚か者として名を刻む事となるだろう。

 

「では後ほど正式な契約書を作りましょう。良かったですよ、貴方達のような良き隣人に恵まれて」

 

「こちらこそ、貴殿らのような来訪者ならいつでも大歓迎だ」

 

そう言葉を交わした高野とハンキは力強い握手を交わすのだった。

 




そういえば先日、結婚2周年となりました
時が経つのは早いですねぇ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。