「はぁ……はぁ……、っ……!」
一吹は荒く息をつき、大きくくずおれた。力の爆発の手綱を握りきれず、振り回された証拠だった。燃え尽きたようにスーツが溶けて消えていく。パープルグレーの瞳をしていたシャドウも正気を取り戻したようで、会釈するとそそくさとその場を離れていった。
「大丈夫ですか⁉」
叩きつけられていたサニタスだったが、怪我などはないようだ。そこに一吹は少しの安堵を得る。
「大丈夫、かな。怪我もしてないし……ただ、ちょっと疲れた」
「当たり前です。初めて『ペルソナ』の力を使えば、どんなに健康体でも負荷がかかります」
「『ペルソナ』……?」
「はい。ひとまず脅威は去ったことですし、一休みも兼ねて簡単な説明だけしましょうか」
座り直した一吹の隣に、サニタスはちょこんと腰かける。
「『ペルソナ』とは心の力……ラテン語で『仮面』を表し、本来は心理学用語で人間の外的側面を示す言葉です。ですが、先の例は違います」
言われずともなんとなく分かる。自らの内から生じた荒ぶる力の形――あれは明確な『戦うための力』だ。
「『ネガウイルス』に感染したシャドウ――『感染シャドウ』を打倒し、治療し得る心の免疫能力。それが『ペルソナ』の力です」
「さっきも聞いたけど、『ネガウイルス』ってなに?」
「昨今このウラリカンで流行しているウイルス、もとい感染症の総称ですね。感染するとああしてパーブルグレーの瞳になって狂暴化し、酷いと更に手ごわくなります」
あれ以上強くなるということだろうか……一吹はあまり考えたくなかった。丸腰の人間などまるで意に介さない力を持つのだから、神魔の姿をして暮らしているというシャドウといえど、まともに抵抗できるかどうか。先程の逃げ惑っていた姿が想起される。
「またシャドウに感染するということは、対応している人間にも影響が出ます。心を病んだり、自暴自棄になったり……最悪の場合、死を選ぶこともあり得るでしょう」
「そんな……!」
「今後のためにも、その更に手ごわくなったパターンの解説もしたいですが、呼吸が整ったようなので次回に後回しにしましょうか」
「次回……」
戦わなければならないのだろうか。それはまだ分からない。そこまで気が回らないのが正直なところだった。
「とにもかくにも、今は現実世界に帰還する方が先決です。こちらへどうぞ」
立ち上がったサニタスがぴょんと跳ね、一吹を先導する。駅へと戻ると、「さあ、どうぞ」と改札へと促した。
「『
「はあ……」
半信半疑に陥りつつも、一吹はスマホをかざして通り抜ける――。
――すると、世界が一変した。
突然の変化にたたらを踏む。先を歩いていた初樹と明日佳が足を止めた。
「……って、あれ、大丈夫か⁉」
「めまい? それとも貧血? どっちにしても引っ越してきたばっかりで疲れてたのかしら……」
どうやら、あれから時間はほとんど経っていなかったようだ。不吉なパーブルグレーの色が視界から抜けきり、現実に戻ってきたのだと実感する。
「と、とりあえず、今日はゲーセンなしにしようぜ!」
「そうね。私も一緒に寮まで送るわ」
「おう。頼むわ!」
二人に寄り添われ、改札を引き返す。添えられた手のあたたかさが心地よく、まぶたが落ちる寸前だった。
目を閉じる瞬間――手にしたままだったスマホにはやはり、『