非公式ペルソナ6妄想   作:らたぬ

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③理館学園高等部

 街並みの普通ぶりとは一転して、今日から通うことになる理館学園高等部は最先端の名に恥じない設備に溢れていた。廊下を走る掃除用ロボット。教室に入って立たされた背後の電子黒板に名前が書かれると、やっと最先端都市の雰囲気が肌で感じ取れた。ストレッチ素材でできているというファスナー式の学ランもこわばって感じられる。

 

「クラスが変わって早々だが、今日から仲間入りすることになる『要一吹』だ」

「……要一吹です。よろしくお願いします」

「席は……瀬戸(せと)の隣だな」

 

 担任教師が顎で最後尾を指し示す。会釈して一吹は席についた。

 

「教科書はまだ届いていなかったな。今日いっぱいは瀬戸に見せてもらってくれ」

 

 瀬戸と呼ばれた女子生徒は、「はーい!」と明るく返事をする。前髪をリボンバレッタで分けた、セミロングのブラウンヘアが揺れた。

 

「要くん、よろしくね」

 

 少し寄せた首元から、制汗剤の清潔な石鹸の匂いがかすかにする。ブラウスの代わりにマスタードイエローのカレッジロゴトレーナーをインナーにしているのが印象的だった。

 

「私は『瀬戸(せと)明日佳(あすか)』」

「よろしく、瀬戸さん」

「購買部とか、場所が分からないことがあっても気軽に聞いてね。これでも一年ここの生徒やってきてるから」

 

 ……そうしていくつかの連絡事項を伝え終えてホームルームが終わると、明日佳が言っていた意味がよく分かった。一限目は現国だったが、先んじて担任からの案内があったように、担当教員の自宅と映像で繋いだリモート授業だった。電子黒板の右上に顔を映しながら近代文学を解説する姿はどこかシュールだったが、黒板上で小さく動いているカメラで教室の様子は自由自在に見られるらしく、「そこ、山本! 寝てるとテストに出すぞ!」と注意が飛ぶなど、普通の授業と変わりない光景がそこにあった。電子教科書を見せてくれていた明日佳も気を配って、著者写真を見やすいように拡大してくれるなどしてくれた。

 授業終了を知らせるチャイムが鳴ると、緊張の糸がほぐれてどっと疲れが溢れ返った。

 

「大丈夫? 結構慣れてないとノート取ったりするのも大変だと思うけど」

「うん……ちょっと疲れた」

「――要ー! いるかー!」

 

 声のする先を見れば、初樹が立っていた。昨晩とは打って変わって、学ランの代わりに赤いトラックジャケットを羽織ったスポーティな姿だった。まくり上げた右手首にはリストバンドが見える。しかし足元はワークブーツで、スポーツ少年とは異なった印象を与えた。

 

「小野寺、別のクラスだったんだね」

「おうよ! 隣のクラスから転入生の話が聞こえてきたから、もしやって思ったんだよ。そしたら的中……って、」

「なに、小野寺と知り合いだったの?」

「わー……瀬戸の隣かよ……要が不憫だ……」

「はぁ⁉ 懇切丁寧に説明してあげてるんだけど⁉」

「どうだかなー。教科書に落書きとかしてなかったか?」

「してないわよ!」

 

 明日佳の反論に一吹もうなずく。

 

「瀬戸さんは親切に教科書も見せてくれてるし、案内もしてくれるって言ってくれてるよ」

「ほら!」

「まあ悪い奴じゃないのは保証できるか……」

「それより、二人って知り合いだったの?」

「知り合いっていうか、単なる元クラスメイト。それより転校してきたばっかりの要くんが小野寺と知り合いな方がビックリしたけど」

「同じ学生寮で、昨日の夜案内してくれたんだ」

「ああ、なるほどね。少なからずいるもんね、寮生」

「俺も来たばっかりの頃は全然分かんなかったな……あ、そうだ!」

 

 初樹がポンと大きく手を叩く。

 

「放課後、俺が街を案内するよ! あと歓迎のしるしに駅前のコーヒーショップの期間限定新商品の……なんだっけ? 桜ラテチョコマウンテンとかいう奴! あれ奢るよ!」

「あ、ずるっ! 私もあれ飲みたかったのよ! しかも小野寺だけだと不安だから、私もついていっていい?」

「うん、勿論。一緒の方が楽しいだろうしね」

「うし! そんじゃ決まりな!」

 

 タイミングよく、そこでチャイムが鳴り響いた。

 

「じゃあ俺行くから! あ、そういえば弁当持ってきてないんなら購買部か食堂案内しようか?」

「あんたがそこまでやらんでも、必要なら私がやるわよ。過保護ねー」

「うっせ。それじゃあなー!」

 

 嵐のような慌ただしさを連れて、そうして初樹は去っていった。

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