Fate/GrandOrder ホーリー・グレイル・ウォー・ターミナル(リメイク) 作:アレア
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FGO、Fate Grand Order
日本のみならず世界でも人気のソーシャルゲームだ。
このゲームはコマンドを選んでサーヴァントと呼ばれる使い魔を使って敵を倒していくノベルタイプのゲームだ、バトルはめんどくさく感じるけどストーリーが面白いからちょくちょくやってる。
慣れるまで敵が強く感じるけどサポート、他のプレイヤーのサーヴァントに任せつつ慣れればこっちのもんだったりする。
元々のFateは設定では7人のマスターと呼ばれてる魔術師と、その魔術師が召喚した7人の使い魔……通称サーヴァントを、聖杯と呼ばれる願望器を巡って戦わせてるものだけど、FGOは7騎どころかほぼ全てのサーヴァントを仲間に出来る。
しかも原作や外伝以外にもFGOから登場したサーヴァントもめちゃくちゃ存在するから150以上のキャラ数になってたり、スマホゲームなだけはある。
明日から新しいストーリーも始まるみたいで楽しみだ。
ゲームの簡単な説明も終わったしそろそろ今の状況を語ろうか。
2017年12月25日。
世間はクリスマスだってのに僕は1人で、ある有名なカフェのテラスでココアを飲みながらFGOをしていた。
外は寒いから店内で飲みたかったけど、生憎と満席だったのでアイスココアが飲みたかったのを諦め、外で震えながらホットココアを飲んでいる。
暖房の効いた店内で飲むアイスココアが美味いのにな。
カフェなのにコーヒーじゃねぇのかって言われるかもだが僕はコーヒーが苦手な甘党だ。
そのカフェで手を震わせながらいつものように種火周回をしていると、急にFGOのアプリが落ちたんだ。
「容量ほんと重いなこのアプリ……」
種火周回を再開する為にもう一度FGOのアプリを起動する。
タイトル画面からロードし、お知らせのポップがいつものように開いた。
そこで僕はあることに気付いた。
「ここの色変わってた事あったか……?」
本来藍色の背景に白文字だったお知らせが赤い文字で表示されていたのだ。
僕は思わずその赤い文字をタップする。
しばらくロードが続き、1分経つか経たないかくらいでスマホに自動的に別のアプリがインストールされ、何も触っていないのにアプリがFGOからインストールされた方に切り替わった。
「やべ、スマホ乗っ取られたか!?」
インストールされたアプリはFGOにそっくりな画面でFGOイベント時のサーヴァントが喋っているかのような字幕を言峰綺礼が何故かボイス付きで喋っていた。
『私は言峰綺礼、知っているマスターも居れば初めましてのマスターもいるかね?まぁ私の事を知っていようがいまいが今は関係無い……私がこうして話しているのは選ばれたカルデアのマスターのみ、そう、喜べ選ばれしマスター諸君、君たちに聖杯戦争をする機会が訪れた、さぁ……本物の聖杯戦争を始めようではないか』
締めくくられた言葉、『本物の聖杯戦争』
これの意味する事を僕はすぐに気付かされた。
言峰綺礼のボイス読み上げを終わると同時に『ますたぁ!』と聞き覚えのある声が聞こえた。
聞き覚えはあるが実際に会った事は無い、何故ならその声の主はスマホの中にいたのだから……。
『ますたぁ、私です、いつも一緒に戦ってる清姫です!』
「えっと……えっ……いや清姫は清姫だけど……えっ」
『はい!ますたぁの清姫です!』
外だからと音を消してたスマホから声が聞こえるのに驚きつつ、スマホを隠すように手で覆う。
有難いことに周りのお客さんはほとんどコーヒーを飲み終わって退店していた。
FGOで絆レベルを10にして、ずっとお気に入り登録してるほど好きな清姫だ、けどなんで喋ってるんだ?しかも会話出来てる……?
「ほんとに清姫?どうやって喋ってんの?中の人と話してる感じ?」
一応小声でスマホに向かって話しかける。
『中の人……?ますたぁは何を仰っているのですか?私は私ですわよ』
ほんと、何がどうなってるんだか……。
「……それで清姫、君が本物なのは一旦分かった……事にしておく、それで本物の聖杯戦争?って神父が言ってたけどこれから何をどうすればいいんだ?」
僕がスマホの中にいる清姫に尋ねる。
『ますたぁは聖杯戦争の参加者に選ばれたマスターですわ、これから私と共に他のサーヴァントと戦うのです』
「ごめん、やっぱ理解が追いつかない、僕がマスター?嘘だ、僕を騙そうと……てか何、いくら金掛けてんのこれ……」
『あっますたぁ、そろそ……』
「ん?清姫?どうした?」
清姫の口は動いている、けど声が聞こえなくなった。
清姫の声だけじゃない、車の排気音や人の声、さっき目の前を通り過ぎたばかりのパトカーのサイレンすら聞こえない。
「どうなって……」
呟いた瞬間目の前が真っ暗になった。
と思ったら青い光が渦を巻き、目の前に現れる。
僕は先が見えない暗闇へと飛ばされていく、感覚的には無限に吸い込まれるようだった。
この時は理解出来なかったが、僕はこの光景を過去に何度も見ていた。
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アレから何分経ったんだろうか、もしかしたら1秒も過ぎてないかもしれないし100年経ってるかもしれない、そんな感覚になった。
『……ぁ』
若干の吐き気と何かの音で目が覚めた。
『……たぁ……ま……た……ますたぁ!』
なんだ清姫の声だったか。
「って清姫!?夢じゃなかったのか……!」
『はい!ますたぁ!貴方様の清姫です!』
スマホの中の清姫がピョンピョンしてる、元気かよ。
「清姫、無事か?……ってスマホの中にいるから関係ないか……スマホは壊れて……ないよな、うん」
『あの……ますたぁ、その事なのですが』
「ん?あ、そういや清姫さっきなんか言いかけて」
『はいっ!そろそろレイシフトが開始されるので、ますたぁをお守りする為にここから出していただきたかったのです!』
僕が喋ってる上から清姫が喋り出す。
というかレイシフト?ここから出る?
「ここからって、スマホから出てくるって事か……?」
『えぇ、そうでないと私はますたぁの為に戦えませんので』
「そういうシステムか、すげぇな……ってレイシフト!?」
僕はバカだから人の話は聞いてても理解するのに時間がかかる、今回もそれが原因でレイシフトというリアルで聞くと凄いパワーワードに反応が遅れたのだ。
「レイシフトって……えっ、あのレイシフト??」
理解できずに何度もおなじ言葉を発するバカになってしまった。
けど言われてみればあの空間はレイシフトの時の背景画像に似ていた。
既視感の正体が判明し、少しスッキリした……吐き気は残ってるけど。
「じゃあここってどこだ?いつの時代なんだ!?」
『ますたぁ、落ち着いてくださいまし、場所はほとんど変わってませんから』
「じゃあ今は何年?元々は2017年だけど……仮面戦隊エグゼイダーやってる?」
『……かめん、なんとかは分かりませんが、ここの世界は2025年ですわね……ちなみにここは大阪城の中、4階辺りですわ』
3秒くらい思考が止まった。3秒で済んで良かった。
未来ににレイシフトしてる……のか。
レイシフトですら意味がわからないのになんで大阪城の中にいるの?僕はカフェテラスにいたし清姫の聖地は和歌山の寺だから全く関係ないよね??
「てか外暗くないか?さっき昼間だったよね?そんな時間経ったの?夏みたいに暑いし……」
上着を腰に巻き、服の袖を捲りながら清姫に質問攻めする。
『レイシフトして特異点に来てるからですわ、この世界は7月ですし……それよりますたぁ、私を召喚してくださいまし!』
「夏なのか……てか召喚?もう清姫は僕のカルデアにいるだろ?オルレアン攻略後の報酬で」
『そうではありませんわ、ここから出てますたぁのお傍へ行きたいのです』
「あっさっき言ってたヤツ?ごめんそっちか忘れて……そんなのどうやんの?!」
『私が入っている端末を手前に差し出して私の名前を呼ぶと出来ますわ、他に同じクラスのサーヴァントが居なければクラス名でも可能ですわ』
スマホから出なきゃ戦えないって言ってたもんな、いっちょやってみっか。
スマホを目前に掲げる
「サーヴァント召喚、来い!清姫!」
それっぽいセリフと共に清姫の名を叫ぶ。
スマホが青白く光り、目の前の空間にガチャでサーヴァントを召喚した時のような三本の青白い線が現れた。
そしてすぐにその線は消え、人影が姿を現す。
『ますたぁ!』
さっきよりも大きく清姫の声が聞こえる。
シルエットしか見えなかった清姫の姿を見ようとした時、何故か僕の体は倒れかけていた。
何が起きたか全く理解出来ない。
そして清姫もいない。
というか真っ暗で何も見えなくなった、パクモグバトルで負けたみたいだ。
「さっきの光が眩し過ぎて失明したか?これ」
「大丈夫ですわ、ますたぁ」
清姫の声と共に布のような物が僕の体を包む。
「清姫、これどうなってんの?」
「ようやくますたぁの前に出てこれたので夜這いでもしようかと抱きついてみました」
「……何やってんだバカー!」
勢い良く布を押す。
察した通り清姫が僕の上に乗ってたから思ったより重い、いや、年齢的には中学生の女の子だから軽いんだけどね、うん。
「ふぅ……」
「むぅ……」
なんとか不貞腐れてる清姫を避けて立ち上がる。
お腹の辺りを押したつもりだったけど柔らか……女の子柔らか……。
「おぉ、ほんとに清姫だ……視力生きててよかった、こうして清姫を目の前で見れる訳だし!」
「えぇ、清姫はここにいますわ」
それにしても召喚と同時に飛びついてくるとは思わなかった。
理性蒸発しなくて良かった、うん。
「ますたぁ……」
「なんだ?」
「さっきの続きをしませんか?」
「キミハナニヲイッテイルンダイ?」
「ですから……っ!」
清姫が喋りながら僕に再び?襲いかかろうとしたがすぐさま辺りを確認する。
多分僕ら以外周り人いないと思いますよ?清姫さん。
まぁそういう問題じゃないんですがね!
「っますたぁ!伏せて!」
「えっ」
言われた通りにしゃがむ。
「どなたですか……私とますたぁの愛を邪魔するイケないお方は……?」
清姫さんめちゃくちゃ怒ってる、髪の色が白くなりそうなレベル。
というか僕の後ろの柱が切れてる気がするんですけど。
……あれ、これもしかしてしゃがんでなかったら首飛んでた?
「くっ、外しましたか……」
「まっ!沖田の事だから是非もないよネっ!」
「ノッブは黙って!というか援護射撃してくださいよ!」
「えぇ〜……めんどい」
「ノッブ!」
えっ僕今、沖田総司に首切られかけたの??
というかノッブまで一緒って何この胸熱展開!!ぐだぐだ、してきてはないけど良い〜!
「いけね、ついテンション上がってしまった……」
「ますたぁ下がってくださいまし!」
清姫が僕の前に出る。
「バーサーカーのマスターさん、すみませんが……私のマスターの為に死んでいただけますか?」
「おぉ、沖田お前意外と怖いとこあるんじゃな!」
場の空気を壊すノッブ……ノッブらしいなぁ。
「毎回テンション上がってる場合じゃないって!清姫、逃げるぞ!」
自分の心の声にツッコミを入れつつ清姫の手を引っ張り、沖田さんとノッブとは反対側に向けて走りだす。
「はぁ……めんどうじゃが仕事するかの」
後ろでノッブが呟いたのを走りながら振り向くと同時に微かに頬が熱くなった。
僕の頬から血が流れる。
織田信長の火縄銃が頬を掠めたからだ。
「んーこれ……マジで死ぬくね?」
ハタチで死ぬとか絶対嫌だ。
なんとしても逃げ切ってやる。
「どうするか……清姫、宝具って撃てるか?NP足りる?」
「はい、ますたぁの魔力を少しいただけますか?」
「魔力?NPじゃなくて?そんなもん持って無いよ!どうすればいいの!?」
「私に力を渡すよう考えていただくだけで結構ですわ……」
「なるほど!念じればいいんだな!」
清姫の宝具でなんとかなるかもしれない、そんな浅い考えしかこの状況では思いつかないのだ。
なんたって本家FGOではうちのカルデアの切り札だからネッ!
絆礼装延焼火傷コンビは強いヨッ!
とりあえず走りながら念じる。
みょんみょんみょん。
「ますたぁ……受け取りましたわ、貴方の愛……!」
清姫が僕の手を離し立ち止まる。
「愛はあげてな」
『転身火生三昧!』
ツッコミを入れる前に宝具を発動してしまった。
後、タイミングを逃したので心の中で「やっちゃえバーサーカー!」と言っておいた。
清姫が持っている扇子を掲げ扇ぐと同時に青い炎が渦を巻きながら現れた。
やがてその炎は龍のような見た目になり沖田さんとノッブの元へ向かって行った。
「綺麗だな……」
青色と火属性が好きな僕に取っては宝具も清姫の物が1番好きなのだ。
「おろ?ここ本能寺じゃったか?」
「ノッブ!ふざけてないでさっさと降りますよ!」
2人の声が青い炎の向こうから聞こえた。
「ますたぁ、私達も外へ」
「あ、うん、暑いしね、ただでさえ長袖脱ぎたいのに」
自分で宝具を使わせておいてこの言いようである。
というか大阪城が清姫の宝具で燃やされる日が来るとは思わなかったなぁ。
まぁ日本刀で切り殺されかけたり火縄銃で撃ち殺されそうになる日が来るとも、もちろん思わなかったが。
そんな事を考えながら階段を下る。
元の世界へ無事に帰れたらゆっくり大阪城の中入ってみるか、入れるのかな、大阪に住んでるのに知らねぇや。
そんなことを考えながら。1つ下の階に降りた。
「おっここの窓から外が見えるぞ、清姫」
「えぇ、ますたぁ」
「貴方達を外へ出す訳には行きませんよ……!」
「ますたぁ!」
一瞬の出来事で何が起こったか分からなかった。
僕の真横に何か、水色の物が見えた。
水色、袴、沖田総司か。
「いってぇ!」
切られた感覚がない、腹を蹴られたか。
物凄い音と共に壁に背中を打った。
ぶつかった衝撃で壁が崩壊する。
沖田さんの「力を入れすぎましたか」と呟く声が微かに聞こえた。
「ところでこれ、落ちてるよな……」
崩壊した壁と共に僕は落下していた。
さっきの清姫の言葉通りなら1度階段を降りていたから、今は3階から落ちてるわけだ。
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何分経ったか、地面に落ちた時のショックで気絶していたようだ。
「背中もお腹も痛過ぎる……清姫は無事か?」
そばに居ない。
どうやら僕だけ城の外に蹴り飛ばされたようだ。
というか人間に向けた蹴りの威力じゃないよこれ、内蔵破裂してる気がする……。
「清姫はまだ城の中か」
体を無理やり動かして座り込んでから城の方へ目を向ける。
僕が突き破った場所を見てみる。
ここからじゃ角度が悪くて清姫の姿は見えなかった。
その代わりに、僕の隣に気配を感じた。
「動けば撃つぞ?」
「動けるもんなら動いてますよ……いてて」
腹に蹴りを入れられた上に3階から落ちたんだ、身体はまともに動くはずがない。
というか火縄銃を頭に突きつけられてるのに僕はどうしてこんなに冷静に話してるんだ?
ノッブは好きだが正直嫌いになりそうなレベルの怖さがある。
「ネタキャラにされてるしそのイメージ強いけど、あの織田信長だもんなぁ……」
「おぬし、次喋っても撃つぞ?」
「黙ります」
狙いが僕ならそのまま撃てばいいものを……もしかして何かを待ってる?
「ノッブ」
「なんじゃ?」
「なんか待ってたりします?」
「喋ると撃つとワシは言ったんじゃがの?」
「申し訳ありませんでした」
そこからお互い喋らなくなってから2分ほど経った。
「はぁ?こやつは殺すな?……殺しにいけと言ったのはマスターじゃぞ?はぁ……良かったな、バーサーカーのマスター」
許された??
というか殺すなってマスターの命令か?
てか銃、頭からよけて?もう殺す必要ないんだよね?
「清姫無事かな……」
「沖田はセイバー、お主のサーヴァントは遠距離型バーサーカー、懐に入れば沖田の勝利は間違いなしじゃ、諦めるんじゃなっフハハハッ!」
「確かにな……でも僕の清姫ならなんとかしてくれる……清姫!沖田総司なんてやっちまえ!」
城の中にいる清姫に聞こえるように大きな声で叫んだ。
最優のクラスと呼ばれるほどのセイバーである沖田さんに清姫は勝てるか分からない。
でも僕は清姫を信じる、必ず帰ってくると。
「清姫!」
「うるさいぞお主、マスターの命令など関係なく撃つぞ?」
ノッブの発言に少し怯えつつも燃え盛る大阪城を見ながら叫ぶ。
その声に答えるかのように大阪城の1部が爆発した。
瓦礫が降ってくるがなんとか当たらずに済んだ。
「ますたぁ!」
「清姫!」
さらに降ってきた瓦礫と共に大阪城の上の方から清姫が降って来る。
あれ、履いてな
「ギャフ」
降ってきた清姫が僕の顔に墜落した。
そしてそのまま倒れ込んだ。
僕はすでに重症なんだ、これ以上ダメージを与えないでください……。
「は、鼻血……」
「ますたぁ、申し訳ありません……」
謝りながら清姫が僕の顔から立ち上がる。
「まさかノッブとか沖田さんだけじゃなく清姫にも踏み殺されそうになるとは思わなかったぜ……」
「……沖田のやつ、なんでバーサーカーを倒してないんじゃ!?」
理由は分からないが沖田さんは城から出てこない。
「あ、てか清姫、無事か?」
「えぇ、ますたぁ……ますたぁの方こそ無事ですか……?」
「良かった……僕は大丈夫だ、色々やばいけど大丈夫……」
清姫は顔や腕に切り傷があり服も何ヶ所か破けていた。
セイバーとやり合ったんだ、仕方ないのかもしれない、聖杯戦争なら。
胸が痛む……よくこんなの耐えてたな、士郎達は。
「さて、次はわしの番じゃな」
ノッブが僕の頭に付けていた火縄銃を避けて少し離れる。
「気分が変わった、バーサーカーとそのマスター、覚悟じゃ!」
「僕は殺さないんじゃ……仕方ない、清姫!なんとか凌いでくれ!」
「えぇ、ますたぁ、私はますたぁの愛があれば戦えますわ!」
「っあーもうなんでもいい!愛でもなんでもくれてやる!早くノッブをなんとかしてくれ!?」
「愛受け取りましたわますたぁ……きゃっ」
ノッブの火縄銃が清姫を掠める。
「大丈夫か!?清姫!」
「お城の中でだいぶ魔力を消耗しましたわ……ますたぁの為にまだ頑張らないと……」
清姫が扇を掲げる。
「僕に出来ることは……あ、令呪、確かスマホに令呪のマークがあったはず!」
今まで存在すら忘れていたスマホをポケットから取り出す。
あれだけ吹き飛ばされてて、よくポケットから出てこなかったなとちょっと思ったりした。
そして常に起動しているアプリから令呪の項目を選ぶ。
なんとも分かりやすいなこれ。
「こんな時にチュートリアル出すな」
「ますたぁ?」
「清姫……令呪をもって」
『そこまでだ!』
「誰じゃ!?」
謎の声と共にノッブの火縄銃と僕が同じ方を見る。
「おやおや?2対1とは卑怯じゃあないかな?」
「マーリン!……後マスター?っぽい人の横にいるのは静謐のハサンと……茶々か?」
「ご名答、清姫のマスター君、友人のピンチとあれば駆けつけない訳にはいかない、そうだろう?マスター」
「まぁ、ますたぁったら人望も厚いのですね」
なんだが少し照れくさいが今ピンチなのは変わりない、誰であろうと援軍は助かる。
「おい、マーリン喋り過ぎだ、俺にもちょっとは喋らせろ」
「はいはい、マスター少しだけだよ、敵の前なのだからね」
あのマスター、ガリガリで弱そうなのにサーヴァントを3体も……
敵になったら確実に終わりだこれ。
「久しぶりだな、覚えてなければ覚えてないでいいけど加勢に来たぜ、偶然通りかかっただけだが……」
「……ユースケさん、か?」
さっきまで暗闇で顔が見えなかったが、近づいてきた事で城を燃やす炎で見えるようになった。
彼は何度か会ったことがある友人だった。
「覚えてたか、それは話が早い、えぇと……ツナグ!こっちであの二人を抑えるから早く逃げな!」
「……ユースケさん、ありがと!清姫、行くよ」
「はいっ!ますたぁ!」
「よし、行ったか……それじゃ茶々はノッブ、マーリンとハサンは城の中を見てくれ」
「伯母上覚悟するのじゃ!」
「了解だよマスター、少しは頑張るとしようか」
「了解しました」
後ろから聞こえてくる指示を聞きながら、ユースケさんとそのサーヴァント達にノッブを抑えてもらってるうちに、僕らは全速力で逃げた。
正直さっきのダメージが残ってるから全速力と言っても足を引き摺るレベルだが。
エミヤみたいにお姫様抱っこしてもらった方が早い気もするが……いくらサーヴァントといえ13歳くらいの女の子にお姫様抱っこされる20歳は見た目が悪い。
そもそもお姫様抱っこは本来女の子が抱っこされる側だと思ってるし。
という事で全身筋肉痛みたいな状態の僕はゼェゼェ言いながら走った。
お腹や背中の痛みを感じながら爆走した。
ていうか僕の名前はツナグじゃねぇ……。
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「公園を抜けたか……」
大阪城公園を抜け街に出た。
辺りを見回しながら走っていたがここは元の世界とさほど変わりない街並みが並んでいた。
ここら辺は久々に来るがほとんど何も変わってない気がするな。
「人通りがある方がいいかもしれないな……清姫、ノッブ達はついて来てるか?」
「いいえ、反応はありませんわ、ますたぁ」
「ユースケさんが上手くやってくれてるか……」
ユースケさんは僕の知り合いだ。
といっても最近、趣味のプラモ仲間のオフ会ってヤツでネットで知り合った人達と集まった時に知り合った人だ。
そこから何度か会ってはいるが友達と言えるかは微妙なところだ。
まさかこんなとこで会うとは思わなかった。
にしてもなんでレイシフト直後にサーヴァントを2体持ってるマスターと3体持ってるマスターがいるんだ?
チートかなんかか?
「清姫、サーヴァントを増やす事って可能なのか?」
「えぇ、それなら……」
「清姫?おい、清姫!」
清姫がしゃがみこむ。
「大丈夫ですわ、ますたぁ……少し魔力が足りなくなっただけですから」
「ま、魔力?あ、そうか宝具も使ったもんな……何か供給する方法はあるのか?」
「あるにはありますわ…例えばますたぁと接吻……とか」
「……へ?」
「ですから、キス、ですわ」
うーん。
これは。
していいものなのか?
「一応聞いていいか?清姫」
「はい、なんでしょう」
「……他に方法無い?」
「ありますけれど……接吻が1番魔力供給量が多いですわよ?」
なかなか引いてくれないなこの子……
「一応言っておくが絆レベル15とはいえ僕と清姫は実質今日会ったばっかなんだよ?それでいきなりは……その……心の準備というものが……」
だんだん恥ずかしくなって小声になる。
「……はぁ、わかりましたわ、では私をその端末内に戻してください」
「端末に戻す……?」
「えぇ、サーヴァントの名前と共に、召喚と同じく戻るように念じていただければそれだけで結構ですわ」
ポケ○モンみたいだな。
とりあえずやってみるか。
「清姫、戻れ!」
ついそれっぽく声に出てしまった。
僕の声と共に清姫が霊体化と同じように光となり、スマホの画面に吸い込まれるように光が集まってくる。
スマホに入れると霊体化とほぼ同じ状態になるって事かな。
『ますたぁ』
「おぉ、もう戻ったのか」
スマホに清姫が戻り、画面に表示されていた。
「戦闘中以外は基本スマホの中で待機って感じか?」
「そうですわね、端末の中で魔力供給も出来ますしサーヴァントの気配も薄く出来ますわ」
なるほど、気配を隠せば敵の目の前で奇襲に近い事も出来るかもな。
「もしかしてアサシンは気配消すの得意だったりする?」
「えぇ、気配遮断のスキルを持っているアサシンは特に」
あ、これアサシン持ちのマスターとすれ違ったらほぼ確実に死ぬじゃん。
「人気が多い方がいいとも思ったが、街の人を巻き込むのも申し訳ないし……どっか隠れられる場所探すか、まだこの"ゲーム"の進め方とかわかんないしな」
清姫をスマホに戻す事に成功した僕は隠れ場所を探す事にした。
戦うための清姫なんだろうけど今の僕には清姫に的確な指示を出せる余裕はない。
歩きながらも周りの警戒はしておく、何人のマスターが選ばれているか分からないからだ。
「サーヴァント全員分だったらヤバイよな……150人、いやそれ以上か……?」
自分で言っておいてゾクッとした。
1度家に帰ろう、と思ったが歩いてくにはかなり遠いし、未来にレイシフトしてる訳だからそもそも元の世界と完全に同じかは分からないわけだ。
家が存在してるかすら……。
「僕の家、駐車場とかだったらヤダなぁ……」
しばらく清姫とも喋りつつ歩いていると堺筋本町駅に着いた。
だいぶ体の痛みはマシになってきている。
元の世界に居た時より回復が早いのは気のせいか?
なんて考えつつ、歩きながら携帯を調べてみたがホームボタンは反応無し、一応ロックは出来るけど……起動してるアプリで令呪の他に地図、このアプリ内でフレンドになったマスターとの通話機能と思われるもの、メッセージ機能などが搭載されていた。
このアプリ以外触れないから通話機能を付けたのかな。
「まぁこれだけあればいいか、流石に聖杯戦争が長く続くなら母親に連絡しておきたいけどそれも無理そうだなぁ」
メッセージ機能でユースケさんにお礼を言おうとしたけどフレンド登録する暇なんて無かったな。
それと若干方向音痴なとこあるから地図は助かる。
20年間大阪に住んでるくせに地理の弱さから普段移動に使う道以外全くと言っていいほど知らないからだ。
梅田の駅は何度行っても分からん。
「さて、色々分からないことだらけだが、どこに行くべきかねぇ……」
『ますたぁ、サーヴァントの反応ですわ』
「な、なんだってぇー!?」
調子に乗ってる場合じゃないか、また戦いになるかもしれないしな。
「清姫、魔力は?」
『まだ少し足りませんが……戦えますわ』
「そうか」
このまま戦かうか逃げるか……悩んだが今の現状だと逃げ続ける事になる、それなら仲間を集めた方がいいかもしれない。
ユースケさんみたいに助けてくれる人がいるかも……仲間がいた方が何かと楽だし、僕はゲームとかでも仲間と一緒に戦うゲームの方が好きだからな。
……ヤンキーとかじゃなければいいなぁ。
「清姫、出てこい」
「はい!貴方の清姫、参上です!」
「相変わらずテンションが高いな……いつもか……」
「ますたぁ、来ましたわ」
「……女の人か、コミュ症発動しませんようにっ!」
目の前のビルから女の人とサーヴァントが現れ、こちらへ向けて歩いてくる。
「エリザベートバートリーか……」
「ますたぁ下がって」
「いや、交渉してみる、清姫はもしもの為に動けるようにしておいてくれ」
「ますたぁ?危険ですわ……」
「大丈夫だ、なんとかする」
こちらも女マスターとエリちゃんへ向けて歩く。
「やぁお姉さん、いい天気ですね」
「あんた誰」
▼僕は心に深い傷を負った!
END……
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