おいでよ!アビドスの砂漠
散らかしたものを片付けながら、現在の問題点を挙げていく
1、急に生徒達は先生を拒絶し、攻撃してくること
2、先生の精神状態について
3、俺の残り時間について
3については、現段階ではどうでも良い。2は俺自身への罰でもある、どんなことをしてでも治す。問題は1だ。1については原因も何も分かっていない。その時、薬が入っていた瓶が転がってきた。
「あいつに頼るしかないかぁ…」
スマホを取り出し、電話をかける。何度目かの受信音のあと、ヤツの声が聞こえた
「───おや、貴方から電話してくるとは、珍しいですね」
「そうかよ、俺はお前の迷惑電話に困っているんだけどな」
「おっと、それはすみません。こちらとしては、貴方とは友好な関係でありたいものですから。」
「それは、お前の生徒達の皆んなの認識を変えるなら考えてやるよ。お前には無理だろうがな」
「おやおや、とても手厳しいですね」
そいつは偽ではない、そして、真でもない。味方のようで敵でもある。どちらにもつかないような不思議な存在、黒服だ。ここに来てから長い付き合いだが、未だに人物像を掴めていない。
「今はそんな事は良い。お前に一つ聞きたいことがある。」
「シャーレの先生のことについてですね?」
黒服の言葉を聞いた瞬間、今まで考えた予想が崩れる。
この正体不明の怪奇現象はキヴォトス住民で起こっていると思っていたが、生徒だけに起こったものなのか?
「どうしましたか?」
「…お前は先生のことをどう思っている?」
「そうですね、ハッキリいいますと…」
「嫌いですかね」
黒服は淡々と感情を乗せずに言った。しかし、その言葉が真実であることは直感的にわかった。
「なんとも不思議な感覚です。数日前から、この感情は生まれた時は驚きましたよ?私が人物に好感をもつことをありますが、人にここまで嫌悪感を持つということは思っていませんでした」
「そして、先生のデータを振り返ってみました。普段の私なら、興味を持つはずの彼女の存在、経歴、その全てに嫌悪感を抱きました、その事実は新たな興味へと変わり、今の現状を調べつくし、突拍子もない一つの結論に至りました」
「…先生への好感度が逆転してるってことか」
「そうです、そこで一つ疑問が残ります、何故、貴方だけはその影響を受けていないのいないのか?単純に考えるのなら、キヴォトスの外へ出ていたからでしょう、しかし、この代物をそんな簡単に防ぐ事が出来るとは考えられない、もっと遠くの場所…」
「例えば、貴方のような別の世界の住民だったのなら可能ですよね」
「…いつから気づいてた?」
自分の全てを見られた気分だ。今まで隠してきた事実があっさりとばれてしまった。何とも言えないものが心に纏わりつく。
「いつからですか…、つい最近とでも言いましょうか」
「心配はいりませんよ、この事はあなたの病気と同様で誰にも言いませんから」
「…そうか」
信頼はできないが、信用できるこいつのことだ。先生や生徒の皆んなに言うことはないだろう。長年付き合ってきた仲だ。そのぐらいは分かっているつもりだ。
「さて、少し話が脱線してしまいましたね、はっきり申し上げますとなぜこのような状況になった原因は、こちらとしても確認できていません」
「あぁ、その事だが、多分一つの飲み物だと思う」
「飲み物ですか…?」
「先生から聞いた話だが、それを飲んだ後、生徒の皆んながおかしくなったらしい」
昨日の夜、先生との何とか聞き出した情報を聞き出した。思い出しただけども、顔が熱くなっていく。落ち着かせるためとはいえ、あんな事を自分がするとは…駄目だ、黒服と話している時でさえ、こんな状態とは末期だな。
「その飲み物の名前はYOSTERBlUEというエナジードリンクらしい」
何処かで聞いたことがある名前だが、今は気にする必要はないだろう。それを聞いた黒服はパソコンを触り始めたのか、スマホの先からカタカタとキーボードの打つ音が聞こえた。
「どうやら、そのエナジードリンクですが、もう廃盤となったようですね。カフェインが過剰に入っており、飲んだ人物がカフェイン中毒になって搬送される事態が多数あったようですね」
さすがはキヴォトスと言うべきだろう。そんな商品を発売以前に開発すんなという意見は野暮なのだろう。
生徒が飲んで倒れるものを飲んで、問題ない先生は何なんだろうか…?
「成分を調べることすら、出来ないのかぁ…」
「一つ方法をあげるとすれば、ホームページにのっている具材を自ら調達し、作り上げる事です」
黒服はそう言って、成分表の画像をモモトークに送ってきた。アビドスニンジン、トリニティ糖、ゲヘナン酸などなど、キヴォトスの様々な場所の高級食材が使われているらしい
「分かった、後何をすれば良い」
「残りを上げるとすれば、各学園の生徒の体液、主に血などが必要ですか
ね」
「…了承した」
分かっている、各学園や神秘の変化、それ以外にも体液でしか分からないものがあるのだろう。
「ご理解がはやく助かります」
「ただし、一つだけ約束しろ、それを今回以外のことで使うなよ」
「了解いたしました」
先生を助けるためとはいえ、生徒の皆を傷つけなければならない。罪悪感が体を突き刺してくる。
「後、薬を新しく頼みたい」
「…もう、使い切ったんですか?分かりました、すぐ送ります」
「ありがとう」
「最後に一つ伝えたいことがあります」
「なんだ?」
「残り三ヶ月というのは、無理をしなかった場合ですので、ご理解のほどを…」
「あぁ…分かっている」
それは一番、自分が分かっている。体の限界がもうすぐ、そこまで迫っていることをもう覚悟は済んでいる。どんなことをしようとも、残りの時間を全部使おうとも、先生を救ってみせる。
ツーツーと電話が切れた音が聞きながら、スマホを握りしめていた。
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目が覚めた。昨日の自分のした行いや出来事を思い出し、顔が赤くなっているのを感じる。ま、まさか、トオルがあんな情熱的なことをするなんて…嬉しくもありながらも、恥ずかしくて、むず痒さ同時に体を駆け巡った。あまりの恥ずかしさに悶えていると、良い匂いがしてきた
「…あっ、先生起きましたか!朝ごはんありますよ!」
エプロンをつけたトオルが2つの食器をダイニングテーブルの上においている所だった。トオルはあんなことがあった後でも、いつも通りの様子だった。目玉焼きにほかほかのご飯、ソーセージにハム、その誰もが朝の空きっ腹に丁度良いものだ。そして極めつけは山盛りのキャベツ───山盛りのキャベツ…!?
「作ってもらって悪いだけど、こ、この山盛りのキャベツは何なの…?」
「何言ってんすか、先生?ご機嫌な朝食には山盛りのキャベツは必須でしょ」
訂正しよう、トオルはいつも通り様子がおかしかった。呆気にとられながら、席につきご飯を食べる。目玉焼きにソースをかけようとテーブルの上を探すが、醤油しかなかった。
「トオル、ソースってある?」
「一応ありますけど、何に使うつもりですか?」
「えっ、普通に目玉焼きだけど…?」
「えっ?」
「えっ?」
トオルはこちらを信じられない目をこちらに向けていた。
「何言ってるんですか先生?目玉焼きには醤油でしょ?」
「それはこっちのセリフだよ、どう考えても目玉焼きにはソースだよ」
それから、どちらも譲らず目玉焼きには醤油かソースかという論争は激化していった。平和の世でも些細なことで戦争が始まってしまう。そんな世の中に憂いを感じながら、売り言葉に買い言葉を発しているとご飯を食べ終えた。
どう考えても普通に目玉焼きにはソースだと思うだけどなぁ…
食べ終えた食器を洗い場へと持っていき、自分の分だけでも洗おうとするが、トオルが洗い場を陣取りながら先生は休んでくださいの一点張りでさせてもらえなく、何もやることがなく、仕方なくソファでくつろいでいる。
「あっ、先生ついてくるなら、準備しててください」
「え?何の準備?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?アビドスに行く準備ですよ?」
いきなりすぎて体が固まってしまう。
「先生?どうかしましたか?どうしてもって場合は家にいて良いですけど…」
申し訳なさそうな様子をしながら、トオルは言った。
「行く!絶対にいく!」
外に出る恐怖があるかないかで言えば、確実にあると言える。でも、そんなものより、今はトオルと離れてしまうという事の方が怖かった。一分一秒でも、離れてしまったら、昨日の夜のような状態に陥ってしまうことは直感的に分かってしまう。
暑い日差しが体を照らす。汗が水分が体の外へ追い出していく。初めて来た時は、コンパスも持ってこず、何日も彷徨ってしまい、仕事で遅れてやってきたトオルとライディング中だったシロコに助けてもらったんだけか…?暑さを誤魔化すため思い出に浸るが変わらず暑いまんまだった。
「先生、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だよ、前から思ってたんだけど、アビドス生でもないのに、トオルは平気なの?」
「まぁ…昔、住んでたからですかね」
微笑みながら、何処か別の場所を見るその姿に私の知らないトオルの姿を見た。私はトオルのことをどこまで知っているのだろうか?彼が喜ぶ姿、悲しむ姿、怒る姿、その全てを知っているはずだ。それでも、きっと私の知らない彼は彼の中に存在している。
私じゃない誰かに向ける顔、感情、そんなものは認めたくない。彼をトオルをわたしのものにしたい。わたしだけを見て欲しい。わたしだけを愛してほしい。
そうやって、頭の中で囁く自分がいる。自分の中で頭の整理が追いつかず、黙ってしまう。トオルも喋る事はなかった。静寂が訪れてながらも、確実に彼の言っていた食材の群生地へと向かっていった。
その静寂を終わらせたのは私でも彼でもなく、一つの弾丸だった
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それが見えた瞬間体が動いた、先生をこちらに引き寄せ、自分を全く気にせず先生の方向へとんでいく弾丸を刀で弾く。前に視線向けると、砂漠の上に一人の少女が立っていた。
「きゃ…」
「よぉ、ホシノ、随分と熱い歓迎だな…?」
「うへぇ〜、トオルこそ随分と大きなお土産だねぇ、こっちに渡してくれる?」
「それは無理だな、先生はお土産じゃないんでな」
「そっかぁ〜じゃあ、はっきりと言うね?トオルどいてくれなきゃ、そいつを殺せない」
強烈な殺気が彼女から発せられた。運が悪いってもんじゃない。バレないようにわざわざ砂漠を通っていたのに、いきなりラスボスと遭遇なんて、最悪だ。焦ったことを相手バレないようにする為平然を装うが無駄だった。すぐに先生を抱えたまま、逃走する。
「先生、これ持ってて下さい!」
「これって、トオルのタブレット…?」
「はい、シッテムの箱ほどではないですが、瓦礫ぐらいなら守れます!」
「追いかけっこはおしまい?おじさん、長すぎたら疲れちゃうよ〜」
先生に自分もタブレットを預けてる。結構、距離を取ったはずなのに、すぐそこまで彼女が追いついていた。逃げても意味はないらしい。彼女に視線を向ける。
「うへぇ〜、そんな真剣な目で見られたら、照れちゃうよ」
「ホシノ、話を聞いてくれ!」
「トオルが、その女と離れてくれたら、考えるかな〜?」
「ねぇ、トオルなんでその女を庇うの?どうして、あの時一緒にいてくれなかったの?どうして私を一人にしたの?」
オッドアイのはずのその目は濁っていた。光なんてない。俺のことを真っ直ぐ見つめていた。いつの間にか口調は昔に戻っていた。
「アビドスよりもその女が大切?その女のせいで戻ってきてくれないの?」
「そんな事はない!アビドスのことも大切に思ってる!戻らないのは先生のせいなんかじゃない!」
「…分かった、その女がトオルを何かで洗脳したんだ、その女を殺したらトオルは戻ってきてくれる」
まったく話が通じてない。体が感情に操られている。このままだと、先生が殺されてしまう。ホシノに罪を背負わせてしまう。
覚悟を決めろ。自分に言い聞かせながら目を閉じながら、イメージをする。生憎、背中にかけた刀は使えない。
神秘は実体を持たない未知の物質だ。キヴォトスの発展した科学力を持ったとしても、何一つとして分からない。だが、確かなことがある、神秘は確かにそこに存在している。生徒達の異常なほどの力と
つまり、一点に集められた神秘は実態もち始めるという事だ。
銃なんて高度なものを作り出せるほどの技術なんてない。思い浮かべるのは、一本の刀。玉鋼の匂い、鉄をも溶かす炉の熱、鍛錬により鍛え上げられた万もの層。作る過程、その全てをイメージをする。
手には確かな感触。己の視覚に入る一本の逆刃刀。
「…行くぞ、ホシノ」
一週間以内ギリギリセーフって事で良いかな…?何とか投稿できました。これから、独自解釈や独自設定が多くなりそうなので、一応タグにつけときます。先生とトオルはギリギリAでとどまりました
食材を探すために各地を巡るとか、ほぼ某ト◯コですねぇ…、それに主人公が剣や刀をコピーするのは、某無限の◯製ですねぇ、これってやっぱりオマージュでもタグつけた方が良いですか?アニメ見て、カッコよくて参考にしてしまいました。
読んで頂きありがとうございます!コメント、評価とても励みになります!
見なくても情報
YOSTERBlUE
CMで翼を授ける魔材と紹介され発売前から人気だったが、体が丈夫なキヴォトス人でも、一本飲むとカフェイン中毒で病院送りなってしまうことが分かり、さすがのキヴォトスでもすぐに廃盤となってしまった幻の商品。間違えて天国へ行く翼を授けてしまった。名前の由来は2本のエナジードリンクや某会社名