身体から大量に金属製のバッタが出てしまう女の子   作:鳥松

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本編に入ります。雄英入試です


二話 入試編

二話

 ヒーローになるにはいくつかの手段がある。

 定番はヒーロー養成校に入学し、ヒーロー免許を取得するというものである。

 

 そうしてコガネは兼ねてより目指していた国内最難関、倍率にして実に300倍という超名門、雄英高校を受験するため東京からはるばる静岡県までやってきた。

 そして現在、彼女は雄英高校の校門をくぐるところだった。

 

「大きい……」

 

 ただでさえ大きい校門をくぐったと思ったらお次はそこらの建物とは比べ物にもならない大きさの校舎だった。

 といっても高さはそこまで大きい訳ではない(それでも他と比べると大きいが)問題はその広さである。辺りを見回すとどこまでも続くのではないかと錯覚する程広い敷地がコガネの視界には広がっていた。

 

 これまで見たことのない広さの建物に目眩がしそうになるのを抑えながらコガネは試験会場へと向かう。

 試験は主に2つに分かれている。

 一つは筆記試験。雄英高校は偏差値70を超える超難関校、一筋縄ではいかない。コガネの学力でいえば理数系は問題ないが国語に関してはかなり時間勉強した。コガネは友達がいないから中学生の同級生には頼れないし、唯一気軽に話せる博士は人の気持ちなんて理解できる訳がないろくでなしだったため、教員に頼るしかなかった。最もその教員ですらかなり苦労したらしいが。

 

 試験会場に入り、指定された席に座るとあと十分ほどで試験が始まる。

 

 (よし、頑張ろう。国語は6割が目標……落ち着いて想像力を働かせてながら文章を読む……)

 

「それでは試験を初めてください」

 

 問題用紙を裏返し、ペース配分を計算する。最大級の集中を身にまとい、コガネは試験に臨む――!

 

 

 ◇

 

 

「はぁ……」

 

 全ての筆記試験が終了し、コガネは一息ついた。

 理数系は言わずもがな、英語や社会も手応えがあった。国語はというと……

 

 (……正直、自信ない。良いとこ5割って感じかも)

 

 目標の6割には届かないと感じる手応えであった。それでも以前とは比べ物にならない成長があった。勉強に付き合ってくれた教員に感謝しつつ、次の実技試験の説明を聞く。

 

 

「受験生のリスナー。今日は俺のライブにようこそ!エヴリバディセイヘイ!!!!!」

 

 壇上に突然現れた金髪の天をつくような髪型が特徴的な男が拡声器もなしに会場全体に響く声をあげる。

 

 しーん……

 

「こいつはシヴィー」

 

「なら受験生のリスナーに実技試験の概要をサクッと説明するぜ。Are you ready!?」

 

しーん……

 

 金髪の男はテンション高めに受験生たちに話しかけるが、緊張からか受験生たちに反応はない。当然コガネも反応せず――

 

 (誰……?どういう人?)

 

 説明役とすら認識していなかった。

 彼の名前はプレゼントマイク。プロヒーローであり、この雄英高校の講師でもある。プレゼントマイクは会場のほとんどの人を置いてけぼりにしながら説明を始めた。試験の内容はこうである。

 

  それぞれポイントが割り振られたロボットを広大なフィールドから探しだし、行動不能にするというもの。行動不能なので必ずしもロボットを破壊する必要はなく、動けなくした時点でポイントが加算される。

 非常にシンプルで分かりやすいが、受験者の戦闘能力や索敵能力、機動力などが試される試験になっている。

 しかし当然最難関高校、受験者を篩いにかける試練をしっかりと用意している。

 

 その試練とはお邪魔虫、0ポイントのロボットの存在である。このロボットはフィールドを常に徘徊し、他のロボットとは比べ物にもならない強度と大きさを誇っているロボットである。0ポイントであるため戦う意味は一切なく、大体は逃げ一択で破壊してもメリットは一切ない。

 

「それではリスナー!プルスウルトラァ!」

 

 (あの人、説明役だったんだ……)

 

 本当に試験内容をわかっているのか不安なことを考えているが、コガネも周りに合わせて実技試験の会場へと歩き出した。

 

 ◇

 

 試験会場に向かう前に動きやすいジャージへと着替え、バスに乗り込む。しばらくバスに揺られているとビルが立ち並ぶ市街地へとたどり着いた。その後プレゼントマイクの案内に従い、受験者全員がスタート位置に着く。

 受験者の中には緊張しているのかぶつぶつと何かを呟く者や精神統一をする者など様々な人間がいた。因みに先程の緑髪の少年は真面目そうなメガネの少年に何かを注意されていた。その様子を見て多数の人間が自分より下を見て安心したいのか陰口をしている。

 

 (見通し、よくない……まずは索敵……)

 

 コガネは周りのことは気にせず、作戦を練ることに集中する。

 プレゼントマイクも静かになっていて周りには試験には思えない雰囲気が流れる。

 

「はいスタート」

 

「「「「!?」」」」

 

 この場にいる全員がアナウンスの音声に驚き、硬直した。

 

「どうしたどうしたァ!もう賽は投げられてんぞ!」

 

「「「「「「ええええ!!??!?」」」」」

 

 (やば)

 

 突然のスタートの合図にコガネも対応できず、本来の作戦なら飛蝗を変化させ、足に纏った状態で脚力を強化したうえでスタートダッシュを決める予定だったのだが、対応できなかったせいで普通に走ることしかできなかった。他の受験生よりも早くスタートすることはできたものの好調なスタートとは言えなかった。

 

 一足早くスタートし、孤立したコガネにロボットたちが集まる。

 

「ニンゲン、コロス!」

 

 (小型……1ポイントか)

 

 1ポイントロボットはキャタピラの脚でコガネに近づく。

 それをコガネは飛蝗を脚に纏い、金属製のブーツを作成。そのまま脚をロボットの頸部に横蹴りを打ち込む。するとロボットの頭は勢いよく吹き飛び、まるでだるま落としの積み木を木槌で打ったときのように飛んでいき、奥にいたもう一体のロボットの頭部に命中する。

 

「お」

 

 (思ってたより脆い、1ポイントだからこんなものか。にしてもすごいミラクル)

 

 偶然にも2ポイントをゲットした勢いに乗り、身体から数えきれないほどの飛蝗を放出する。飛蝗は周囲に散開し、会場全体に行き渡り、周りを探索する。

 

「視覚共有――」

 

 コガネの瞳が黄色く光る。

 飛蝗の視界は人間とは異なり、個々の映像が粗いスケッチのように見える「モザイク視」が特徴であり、「複眼」とも呼ばれる。これにより飛蝗は広い視界を見ることができるようになっている。

 そしてコガネは自分が出す飛蝗と視界を共有することが可能であり、これにより広範囲の索敵と遠隔での飛蝗の操作が可能となっている。今回の試験ではこの能力を存分に活かせる。

 

「……見つけた」

 

 遠隔で飛蝗を棘に変化させ、ロボットの身体を突き刺す。

 試験用に脆く作られたロボットの身体は少ない飛蝗でも十分に破壊できる。最初は小手調べとして直接破壊したがいちいちやるまでもない。このまま一歩も動かずとも複数箇所で飛蝗を平行して操作すれば合格点数まで届くだろう。

 

 (40…41……42……45ポイント……時間はあと半分、合格点がわからない以上取れる分はとろう)

 

 コガネは飛蝗の視界と操作に集中する。

 

 ◇

 

 試験終了まで残り僅か、ロボットの数も少なくなってきたころ――

 

 試験会場に響きわたる轟音がコガネの集中を乱した。

 音の鳴る方向に飛蝗の視界を向けると純然たる脅威がそこにはいた。

 

「でか……」

 

 思わず声を漏らす程のデカさ。周りのビルと大きさは殆ど遜色がなく、その一歩一歩が地響きを発生させていた。0ポイントのロボット、戦うメリットは一切なく、避けるべきステージギミックとして用意されたもの。コガネも飛蝗にこの場から離れるように操作しようと思ったその時、

 

「痛ったあ……」

 

 茶髪の受験者が0ポイントの足元に倒れているのを発見した。

 

「あの子――!」

 

 踏み潰される――そう思ったその時、0ポイントロボットの頭部から破壊音が鳴り響く。

 

「SMASH!!!」

 

「うそ……」

 

 飛蝗の視界の情報からは先ほどまで何度か視界に映っていた怯えきった目でロボットを見ていた緑髪の少年がロボットの頭部に高く跳躍し、ロボットの頭を殴り壊すのが見えた。

 あれほどの跳躍、殴り壊すパワー、その姿はまるで――

 

「オール、マイト……」

 

 コガネの目標に似た存在がそこにいた。

 

「もしかして――」

 

 もの思いに耽っていると違和感に気づく。緑髪の少年の様子がおかしい。高く跳躍したのであれば着地姿勢をとるはずなのだが少年はそんな素振りを見せず、力なく落下していくだけだ。

 

(受け止めないと、でもこの距離じゃ――)

 

 周りの飛蝗を総動員しても遠すぎる。少年が落下するまでには間に合うかわからない。

 そんなとき救いの手が少年に与えられる。

 

 ――パチン!

 

 先ほど0ポイントロボットの足元に倒れていた茶髪の少女がロボットの瓦礫とともに宙に浮き、少年の頬を叩く。

 すると落下速度は緩やかになり、勢いが緩まる。

 

「解、除……!」

 

 少女は両手の五指を合わせると浮いていたものが全て落下する。その時、コガネの飛蝗が間に合い、飛蝗の大群が落下する少女と少年を受け止める。そのまま2人を地面に優しく置くと、コガネは一息ついた。

 

「間に、合った……」

 

 それと同時に――

 

「終了〜〜〜〜〜!!!!!」

 

 終了の合図が会場全体に響きわたる。

 コガネはその合図を聞いて視覚共有を解除し、散らばっていた飛蝗を身体の中に戻すと足元がふらついた。

 

「ん……さすがに疲れた、かも……」

 

 汗がどっと吹き出して目が霞む。頭の中で無数の情報を処理する、これにはかなりのエネルギーを消費し、習得にもかなりの年月を要した。

 このままプレゼントマイクの指示に従い、バスに乗り込み、本日はこのまま解散ということになった。

 

「ぅぐ……帰れるかな、これ……」

 

 疲労感を引きづりながら雄英高校をあとにし、駅へと向かった。

 疲労は残ったもののコガネの雄英高校入学試験は幕を閉じることになった。

 

 




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