身体から大量に金属製のバッタが出てしまう女の子   作:鳥松

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今回は入学前の話なので短いです。次は個性把握テストです。


三話

三話

 

 朝、コガネはなんの飾り気のない無機質な自室で目覚める。

 コガネは公安委員会に保護され、個性の訓練と実験を開始してから公安委員会の局内に直接住み込んで暮らしている。この部屋も局内の最上階の使われなくなった狭い会議室にベッドやタンスなどのを置いただけで年頃の少女とは思えない部屋となっている。なにしろコガネには物欲という物欲がなく、公安委員会にも局内に住みたいという要望しかしていない。

 

「ふっ……〜〜〜〜っ!」

 

 軽く伸びをしてベッドから起きあがる。

 そうして手のひらから一匹の飛蝗を出し、いつも勉強などをしている机の引き出しからエネルギーバーを取り出し、コガネの手のひらに戻る。朝食はいつもこれだけである。口の中の水分が全部持っていかれるようなエネルギーバーを食べながら今日の予定を考える。

 

 (……雄英の合格通知が来るのいつなんだろう……中学校ももう休みだし、今日も個性訓練かな)

 

 雄英高校の入試から二週間が経過し、入試を終えた学生にとっては暇な時期であった。元々暇な時間があれば個性の訓練に当てていたコガネだったため、もう毎日同じような日々を過ごしている。そろそろ博士に会うたびに引き留められるのも面倒だからから早く引越しの準備をさせてほしい。

 そんなことを考えながら部屋着から着替えると博士のいる研究室へ向かう。エレベーターまでの廊下は誰も居らず、自分の足音だけが響いていた。

 

「おや、おはよう。早速だが届いていたぞ」

 

「……おはよう。何が?」

 

「雄英の合格通知だ」

 

「!!」

 

 いつも感情の起伏が少ないコガネに明らかな感情の動きが見られた。

 

「見せて、早く」

 

「おっと、ここまで食いつくとは。これをダシに近場の高校に入学させることも可能かも――」

 

「可能じゃないから」

 

 そう言ってコガネは博士の手から封筒を奪い去ると研究室を後にし、自室の方へ歩いていった。いつになく早歩きのコガネに博士は背中を見ることしか出来ず、肩をすくめた。

 

 

 ◇

 

 自室で机に向かい、椅子に座ると早速封筒を開封する。中に入っていたのは数枚の書類と、

 

(灰皿……?)

 

 灰皿のような形をした物体が封筒から出現し、その物体が何なのかを確認するため物体の至るところを触っていると何かボタンのようなところを触ってしまう。

 

 ガチッ

 

《私が投影された!!!!!》

 

物体から投影された映像とやたら大きい音声に身体が跳ねる。しかも映像にいるのはあのオールマイト、コガネが動揺を見せるのは当然だった。

 

《HAHAHA!驚いているかい?実は今年度の春から雄英で教師をする事になってね!おっと。この事はまだ世にでまわっていないから広めないでくれよ?》

 

「オール、マイト……」

 

 

《そして気になる結果だが…。まずは筆記試験!!理数系の成績はトップクラスの成績だが……国語はもう少し頑張ろうな!》

 

 

《そして実技試験は70ポイント!素晴らしい成績だな!!!》

 

 

《――だけどそれだけじゃない!》

 

 

《なにも我々が見ていたのはヴィランポイントだけじゃあない!ヒーローの本質は人を助ける事!そこも審査に入っていたのさ!……その名も、レスキューポイント!!》

 

 

《確かに、ヴィランを捕まえる事も大事な事だ。だからといって、人助けという基本的な部分を疎かにしちゃあいけない!理想論?上等さ!その理想論を実現するのがヒーローなのだから!》

 

《そんな虫明少女のレスキューポイントは20ポイント!人命救助のためヴィランと戦いながら救助する姿や落下する参加者を安全に着地させたことなどが評価されたぞ!合計で90ポイント!1位通過で合格だ!!》

 

 《さあ、来いよ!虫明少女!ここが君のヒーローアカデミアだ!!!!》

 

 映像のオールマイトはそう言い残し、ぶつりと映像が終わった。

 コガネはしばらくその場から動かず、ようやく口を少しだけ開くとボソっと呟いた。

 

「オールマイトが……いるんだ……学校に……」

 

 コガネは期待の感情かそれとも別の感情なのかもわからない心のざわつきを感じる。心臓がドクドクと鼓動し続け、落ち着かない1日を過ごした。

 

 ◇

 

「これは驚いたな。救助ポイントゼロで2位とは」

 

 

白髪の大柄な男性が言った。

 

 

「1ポイント、2ポイントは標的を補足して動く習性がある。後半、動きが鈍っている中あれだけ動けたのはタフネスの賜物だな」

 

 

ガンマンのような見た目の男が言った。

 

 

「反対にこっちの生徒はヴィランポイント0で7位……」

 

 

宇宙服のような物を装着している人物が言った。

 

 

「アレに立ち向かったのは過去にも見たけど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

 

「思わず俺もYEAH!って言っちまったからなー!」

 

 

「しかし、自身の衝撃で甚大な負傷……まるで個性が発現したての幼児だ。妙な奴だよ、最後以外は典型的な不合格者だったからな」

 

 

「けどさ、イレイザー!俺はアイツを気に入っちまったよ!」

 

 

「………まあ、緑谷の合否は要相談だな。」

 

 

 雄英高校の教師陣は全員プロヒーローでその全員がヒーローコスチュームを着ながら業務を行っている。そんな統一感のカケラもない空間で入試の合否が話し合われていた。

 

 

「それで……今年の一位は虫明コガネ。ヴィランポイントは70ポイントで救助ポイントは20ポイントで合計90ポイントか。身体からバッタを出す珍しい個性だな。バッタとの視覚共有、形を変えて武器を作ったり、盾を作ったりできるらしい」

 

「聞けば聞く程異質な個性だな。強力なのには変わりないがコガネが公安に保護されてるのを見ると裏を感じざるを得ないな」

 

「更に謎の多い10年前の霧島町襲撃事件の生き残り……」

 

「まああまり気にすることではないさ!虫明さんのことについては公安から話を聞いているし、他人との関わりが少ないことを除けば素行にも問題ないようだし、何より入試成績一位を見逃すようなことはしないさ!」

 

「校長の言う通りだ!試験中にほぼ動かずに成績1位とか今まで見たことないぜ!」

 

 金髪の男、試験の説明をしていたプレゼントマイクがそう言うと他の雄英高校の教師陣も納得した。

 

「複数の場所でバッタを操作し、撃破……公安の指示だったかもしれんがかなりの訓練を積んでいるらしい」

 

「しかも視覚を共有してるなら複数の視覚情報を同時に処理しないといけないですから負担は相当なものでしょう」

 

「だろうな、終了と同時にふらついている」

 

「伸び代もあるのか……末恐ろしいなこの子は」

 

「まあいくら公安に指導を受けてて、個性が強力だとしても他の生徒と同様に扱う。無論、ヒーローとして見込みが無ければ除籍処分も行うつもりだ」

 

 通算除籍指導数154回のイレイザーヘッド。その言葉の中に嘘はなく、それは雄英高校の教師全員が知っていることだ。彼の言葉に教師として、プロヒーローとして在籍する皆の顔が引き締まった。

 とはいえ、会議は続いていく。他の合格者も一癖も二癖もある生徒たち、彼らがどんな学生生活を送るのかは教師陣の立ち回りに掛かっている。




コスチュームってどうやって考えればいいんだろう
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