塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
崩れたプラントの塔の真下。
そこで群れを成していたスクラップどもを、
照射時間は短い。群れ全体を撫でただけだから、大半の奴は小破程度に留まったはずだ。
エネルギー総量的には、
節約はしたつもりではあったが、元々充填量は不足していた。正直仕方がない。
だが
どのみち他機体が前衛に出てない一番乗りのこの状況でしか、砲撃するタイミングはなかった。
出せるだけの最大火力を、一番最初に敵群にぶち込む最適解を繰り出しただけだ。
この先制攻撃により戦場のスペースを広く取ることに成功した。
俺達が暴れるにふさわしい戦闘フィールドの構築に成功できたと考えよう。
「【ヒュドラ】を近接モードに移行します。両横の首を防御用に貰いますね!」
──任せた! 俺は近づいてくるやつをひたすら迎撃する!
セレネはそこら辺に転がっているスクラップどもの残骸を漁り、即席の盾を作り出した。
意気揚々と一番乗りをして、逆に集中砲火を食らって
だから道中でぶっ倒した甲殻型の装甲を盾代わりとする算段はなんとなく付けていた。
回転移動に巻き込んで、ありとあらゆるものをひたすら前方に投げた甲斐があったな。
どのみち既に砲を撃った首は戦闘に使用できるエネルギー残量は少なめだ。
だから防御用で専念させることとする。膂力そのものは充分だろう。
それを承知なのか、セレネは自分の役割を防御だと考えて動き出したのだろう。
指示しなくても判断が出来るのは助かるな。頭が良い。
あまり戦闘経験は無いと聞いていたが、流石タコ野郎の妹だな。
俺は足回りを四首、プラントの床面部に噛みつかせ固定させた。
加速が乗り切った後ならともかく、瞬発性に関しては【ヒュドラ】は極めて鈍足だ。
だから変に動かそうとせず、コアフィールドの効果を最大限に移動するように防御に回す。
海洋に多く生息している魚型や蛇型、各種虫型、甲殻型のスクラップがこちらに向かってきた。
大型の陸戦機は後衛に属しており、射撃武器での攻撃のみに留まるだろう。
──楽しくなってきたな! 後続どもに戦果は渡さねぇぞ!
「待っても! 良かったと! 思いますけど!?」
セレネの突っ込みが入った。いやそうなんだけどさ。
あまりにも【ガトリングヒュドラ】が大雑把な機体すぎて、連携が本当に取りづらい。
撃てば暴発、止まれば鈍足、動く姿は暴走車輪。どないせいっちゅうねん。
そんな状況だから、さっさと移動して足場を確保した後は暴れるだけ暴れるのが正解だろう。
後続とも他艦の奴らとも連携が取れない状況だし、足を止めての殴り合いを俺は選択した。
いや、一応勝算はあっての行動だ。
俺は海洋のスクラップどもの種別を細かく判別できるほど、海戦の経験は少ない。
だから形状から攻撃方法を判別するしかないが、実弾連射武器を使用する敵機は少数だ。
実は物理法則の影響はAGやダイバーよりスクラップ達の方が制約が大きい。
シャードジェネレータを搭載したギアやダイバーはコアフィールドの恩恵を受ける。
そのため、俺たちは水中だろうが短距離ならば弾丸の速度をなんとか維持できる。
だがフィールド効果を得られないスクラップは、水圧の抵抗をモロに受けることになるのだ。
だから、海上での小経口連射攻撃やレーザー系攻撃は極少数の機体たちに留まっている。
小型機であっても形状を利用した突撃や、純粋質量の重量近接戦を挑んでくるだろう。
その想定だから、足を止めての近接での殴り合いが成立する。そう俺は予測していた。
あとは、まぁ、専用の特殊武器を利用した奴は射撃をしてくるだろうが──
「
うわ。早速来た。
純粋なウォーターカッターとも言える物理的な攻撃だ。
だが、セレネが首四つで構えた、頑丈な甲殻型の装甲を利用した簡易大盾でそれを防御。
元より水竜砲を数秒耐えれる甲殻型の装甲はそれを完璧に防御しきった。
表面を二基構成ジェネレータの強力なコアフィールドに守られ、貫通を許さない。
いや本当にめちゃくちゃ慎重に操作して頑張って運んだんだよな。その甲斐はあった。
移動中は加速力の勢いでぶん投げまくってたが、静止した後だとクソ重くて動けない。
強靭な【ヒュドラ】の顎を二本も使って、純粋な膂力で強引に持ち上げているだけだ。
だが、後続が来るまでここを動かず、暴れることしか出来ないから気にしない方針とする。
「小型機、中型機来ます!」
俺は近接戦闘モードに移行し、足回りの操作は最低限に変更。
六首を操作し、盾の防御の隙間から近接戦を挑んできた小型スクラップ達を迎撃した。
スクラップの群れは多種多様で、その二十を越えた種別が居たように思えた。
だが、【ガトリングヒュドラ】の膂力においては、等しく雑多な障害でしかなかった。
そのあぎとを開き、哀れな獲物に素早く噛みつき、砕いた。
レバーの操作感覚としては長い手で掴むモーションに近い。単純な操作だ。
脚部扱いしている四本、防御で使いセレネに任せている四本。
この八本を除いた、残り六本がそのまま武器かつ手になると思えば簡単な操作だな。
──じゃ。暴れるぞ【ガトリングヒュドラ】。多頭の真価を見せろ。
クルルルルと首を鳴らした後、戦闘の始まりを告げる咆哮を【ヒュドラ】は響かせた。
自由気ままと思っていた多頭竜は、意外にも俺の指先に従順だった。
だから俺は思う存分、鉄屑の波を押し返そうと、その暴威を知らしめた。
飛来してきた矢のような魚型が着弾する直前に掴み取り、噛み砕く。
首を振り回し、這い寄ってきた電気を撒き散らす長魚型を殴打。バラバラに砕き割る。
中型に近い大きさの甲虫型スクラップに両側から噛みつき、引きちぎる。
引きちぎったそれを遠心力で投擲。近寄るサソリのような甲殻型をブチ抜いた。
足を動かし盾の位置を変えて、多彩な射撃攻撃を防御。地面を砕きながら軽々と耐える。
ヌルい射撃武器では
武器破壊目的で、首の一つを狙ってきたノコギリのような蛇型を逆に叩きつけ、粉砕。
盾の守りを崩そうと大鋏が張り付いてきた。【ガトリングクラブ】みたいな大型甲殻型!
親近感を覚えつつ素早く対処。重量も膂力もこちらのほうが上だ。腕関節に噛みつき、破砕。
そのまま大鋏を咥えて、単純質量武器として再利用。殴って殴って殴って弾き飛ばした。
終始優勢を維持したまま、スクラップの怒涛の攻撃を順番に捌いていった。
おお、本当に近接も強いんだなぁ。めちゃくちゃ指が忙しいけど。
「お義姉様、本当に良く操作できますね?? 本当に腕は二本しかないんですか??」
並行したモードでやってないからなんとか間に合うよ。
射撃と移動と近接を同時にってなったら、手足だけじゃ無理だが、首六つなら常識の範囲内だ。
「
セレネが感嘆しながら常識を更新した。
正直他のやつに操作出来るかと言われたら無理だが、ちょっと訂正の暇はそんなに無い。
──第二波、来るぞ! どうやら他艦の奴らはこないまま俺達だけで全部平らげられそうだな!
いや本当は来てほしい。強がりで言ったけど、思ったよりキツイ。
大型機が流れ込んでくると、防御手段は多くとも流石に被弾を許すだろう。困るな。
だが、大型陸戦機である
「戦士カラス。助太刀する。亜竜は"また"オレが対処しよう」
その声とともに爆風が飛来した。
一本の飛翔物が、嵐を引き裂きながら共にスクラップの群れを貫く。
槍だ。
ただの、何の変哲も無い槍。
それが破滅的な威力と共に、直線上に居た群れを屑鉄へと変貌させた。
このバカげた威力。鮮烈なその記憶と、カサついた威圧的な武人の声。
そして深緑の肌をした
俺は歓喜と共に、戦場で再会した友の名前だけを呼んだ。
──ハレー!
一年前、共に塔で戦った【トライヘッド】の姿が、嵐の雨と共に姿を表した。
ハレー参戦!