塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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短くて申し訳ないですが遅れるよりマシなので投稿します。


99話:掃除

 塔の真下のスクラップ群の掃討が終わり、落ち着いてきた。

 後続の飲んだくれどもや、海賊略奪同盟(パイレーツアライアンス)の水陸両用機(ダイバー)も合流し、入口までを"掃除"した。

 俺達を含め、多種多様な機体が集まってきており、その数は30機を越えている。

 マジで戦争だな。しかし戦力の中心が外様なのは、1回目の攻略で壊滅したんかな。

 

「海上塔の攻略は一基構成機中心でやるぞ。お前はさっさと休んで補給しろ」

「どうせ俺達は深海じゃ役に立たねえ。気にすんな。なぁに。月の加護がある」

「こんだけ撃てりゃ爽快だったろうなぁ〜。派手だな〜いいな~」

「ハイドロブレスの爆発は少し興味があるんですよね。ま、グレネード一択ですが」

 

 そう言って飲んだくれどもは、他の傭兵たちをまとめ上げて塔へ攻め込んでいった。

 彼らを中心に複数チームあるが、飲んだくれ傭兵団は指揮系統の上位に居て、皆従っていた。

 飲んだくれ傭兵団はちゃらんぽらんだが、この地域全ての国で戦ったことがあるベテランだ。

 その力量も、他の傭兵とは練度が違うな。他傭兵の力量は、アルマとヒルダ程度のやつが多い。

 いや、あの二人は貴族出身だからまだ強い方なんだけどさ。及第点ぎりぎりかな。

 ま、数は多いし、彼らに塔の攻略を任せ、俺達は休息を取ることにする。

 

 本当はプラント制圧と深海に向かう組を、完全に分けるのがベストだったのだはずだ。

 だが、百を容易く越える群れを対処するのには一基組だけだと力不足だっただろう。

 あの量だと、下手すると三日くらい掛かるかな──となると全機総がかりは適切だな。

 

「休憩と補給をしましょう。船まで戻れるか提案してみますね」

 

 セレネは首の一つを操作し、前線まで引かれた有線通信の太いコードを咥えた。

 まだ通信障害は解決してない。だから後衛陣が連絡用の通信網を設置したのだ。

 

「ボクは行ってきますにゃ! どうせ深海に入れないんで!」

 

 あれだけ暴れたミードは休憩なしに【ミンストレル】を跳ねらせ塔の攻略に参加した。

 マジかよ。疲れとか無いのか。どういう体力してるんだ。

 まぁ、農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)の総議長をやってたもんな。体力がなければ務まらない仕事か。

 

 ──塔の中なら飲んだくれどもが経験豊富だ。あいつらに従ってれば間違いないぞ。

 

「りょーかいしましたにゃ! 既に一献交わした身、連携に不足はないですにゃ!」

 

 すげぇコミュニケーション力だな。確かに、こっちに来るまでの間に何度も酒を飲んでたな。

 あいつらを籠絡するなら酒を飲み交わすのが最短だ。少し政治家っぽい片鱗が見えて、怖い。

 

「私は深海攻略組だ。ただ当機は改修済みとはいえ海中の機動に難がある。

 屑鉄の残骸で手持ち機動ユニットを作成できないか後方に掛け合う」

 

 マスクドDが後方に向けて指揮を飛ばしながら残骸を集めている。

 なんだか【ナイト・オブ・シャベル】が残骸集めしてる姿はシュールだな。

 というか他国にこいつがいるのも疑問なんだが、後方の艦も要塞街所有のやつなのかな。

 

 そもそも、あの鈍重な【ナイト・オブ・シャベル】をよく対水中用に改修したな。

 なんで【ガトリングクラブ】のパーツがくっついてるかさっぱり経緯がわからない。

 たぶん親方が関わってるハズなんだが、なーんの連絡も無いんだよな。俺副社長ぞ??

 

 だが、あんまり難しい改修でもなかったかもしれない。

 二基構成以上の機体は気密性の担保が必須だ。

 海中に沈んだところで即座に戦闘不能にはならない。

 実は【サークルザンバー】でも、水没したくらいだったら確定で生き残れた。

 だが、前回の戦闘は対リザードマン戦だったからな。水中戦なんかしてたら確実に負けていた。

 

 リザードマンか。そういえばハレーにその話を聞きたかったんだよな。

 ぽつりと塔の真下に残っていたハレーは、機体の外に出て雨に塗られていた。

 そして、静かに塔の上を見つめ続けていた。

 

「再会を語らうには戦場(いくさば)の空気が濃すぎる。戦士カラスよ。警戒せよ」

 

 そう言って、それ以降俺と言葉を交わさなかった。

 ちょっとストイック過ぎんか? だがハレーの警戒度が高いというのは恐怖でしかない。

 

「同意見だ。君も私を詰める前にやることをやろう。

 明らかな海上専用機である【ミンストレル】以外の二基以上は深海行きだからね」

 

 まぁ、あれは無理だよな。小型過ぎて耐久が足りない。

 気密性の問題だけでなく、二基構成以上で深海の圧力への耐久が可能になるらしい。

 だが、ちょっと小型すぎるとその耐久性が不安になる。

 最悪の場合【エスクワイア】を投入することも考慮に入っていたらしい。

 だけど、湖上都市(ヴァルノール)での戦いで四肢全損したレベルで大破したからな。どうしようもない。

 そうしている間にセレネが通信を接続させた。

 

「お義姉様。後方と通信繋がりました。船長とお繋ぎしますね」

『お疲れさん。大活躍は耳に入ってる。で、早速で悪いんだがお前は早く戻って補給をしてくれ。

 満タンは無理だが、お前らはこれから海中だ。深海で動けなくなりたくないだろ?』

 

 後方の艦で指揮をしているハンサムと連絡し、補給を打ち合わせた。戻るとしよう。

 普通の移動だと【ガトリングヒュドラ】の歩みは遅い。のろのろと移動していった。

 

「最悪徒歩で海上まで上がれるルートは算出済みなので、1週間で陸に上がれますよ。

 遭難用に食料も確保してます。水と酸素は生成出来ますから問題ないですね」

 いやー。勘弁! セレネと2人でコックピットに閉じ込められるのは流石に辛い。

 暇で死にそうになっちゃうぜ。 喋り続けるにしても限度があるだろうよ。

 

「そうなったら同盟自慢のアニメ鑑賞会を始めますよ! お義姉様を布教(洗脳)しきってみせます!」

 

 ──ハンサム。頼む。いや、俺も補給活動手伝うよ。少しでも多く必要だ。

 

「なんでですか!? 1週間程度では足りないのです! 頑張って作り上げたんですよ!?」

 

 いやだよ怖いよやめてよ。

 この複座式コックピットに乗って始めて恐怖を覚えた。

 

 ──そういや、セレネの声。ずっと聞いてたけどなんかどっかで聞いたことあるな。

 

 そうして可愛らしく甘ったるい聞きなれたセレネの声から逃げ、補給作業に参加した。

 




どこかで聞いたことある声&タコ野郎から溺愛されている理由:8話
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