塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
101話:統率
『オレは上に行く。他は海の対処をするか退却の準備をしろ。竜血槽を二つ貰うぞ』
ハレーの声が戦場に響き、血濡れたドラグーンは空を駆けていった。
相変わらず、原理はさっぱりわからない。だが、この状況では唯一無二の存在である。
空に浮かんでいる巨大なオブジェクトの対処は、ハレーに任せるしかなかった。
そしてそれを契機と言わんばかりに全てが動き出した。
空中の巨大な逆三角錐と目玉の化け物から、敵機が展開されていく。
その姿は10を越えており、全て同じ"顔"が宙に浮かんでいた。
顔面を模したはずのその肌は硬質で滑らか。そして巨大で歪な"顎"をした"外装"だった。
──
そして下を悠々と泳いでいた艦を超える大きさの魚からも背が光り、展開していった。
同じく10を越える光は、海中にて姿を揺らした。まだ視認することは出来ない。
空中と海中。上下両方向からの挟撃。
しかもハレーしか見たこともないような、超巨大なスクラップが両方に存在している。
この事態に、この場に居る全ての知的生命体達は混乱の真っ只中にいた。
『【ラッキースター】から進言! プラント奪取を断念! 目標を撤退に指定する!!』
だがハンサムの声が、艦内放送から響いた。口ぶりからして他艦への連絡が目的か。
元々、海洋や島を中心として
そして動脈である艦を移動する集落として捉え、それらの"点"の集合体を国家としていた。
つまり
だから、船長の権力は大きく、その判断は強力な権限を持っていた。
そして、それを他艦まで強制することは著しく難しく、各艦の船長が自己判断するしかない。
『優先順位は生存者の救助、逃亡ルート確保、海中巨大戦力の打倒! 仲間を見捨てるな!
最低でも当艦【ラッキースター】はそのように行動する! 同意は不要だ!』
ハンサムの声が響く。俺もその内容を聞いてハンサムに完全に従うことを決めた。
攻略は諦めたが、仲間を見捨てるつもりはない。
その声に呼応して他の艦から『了解』や『同意』等の短い声が届いた。
今の一瞬だけで、全体の意思統一が成し遂げられた。
ハンサムの手腕を評価しなおさなきゃならないな。見事な統率力だ。
最初に出会ったパーティでの軽薄さはどこへ行ったのか、船上ではひたすらまともだ。
『元の対深海戦力を海中のバカでかい大型スクラップの"艦"にブチ当てるぞ!
下のバカでかいのを振り切るか、倒さないと、誰かの艦が沈む!
【ラッキースター】からは、【ナルワール】と【ヒュドラ】の二機を出す!』
──いいね。わかりやすい。俺達は海中のデカブツをぶっ叩く。
──セレネ。深海域用じゃなくて、海中での戦闘用に配分し直してくれ。
「了解です! "機動"に割り振ります! 海中の【ヒュドラ】の威力を見せてやりましょう!
短期決戦仕様なので最悪は沈みますが、一週間程度で帰れますんで!!」
陸に上がった時には
『空中は無視! 俺達に空中戦力なんてもんはない! 飛んでいる
そうして空中に浮かんでいる巨大なオブジェクトは、無視することが決定した。
ハレー曰く【ピラミッド】とか呼ばれた逆三角錐の、その下部にはまだ塔が突き刺さっている。
突入していった三十機全員が脱出出来たとは全く思えない。状況が不明確過ぎる。
だが、最低でも【飲んだくれ傭兵団】達は殿として戦っていたハズで、脱出できてないだろう。
そのため、塔の下部から潜入し、プラントへ墜落させてでも連れ出さねばならない。
だが、ギアも、AGも、
空は古来より知的生命体の活動領域ではない。俺達は翼をもがれている。
飛んでいるハレーがおかしい。マジでどういう原理だよあれ。
相変わらず【トライヘッド】の外部に推進機は見当たらない。
だが、事実としてハレーが駆る
現状構造物への対処は、ハレー以外に不可能だ。
だから、たった一人を増援として向かわせねばならないのだ。
だが、俺達にもは思いもよらぬ戦力が存在していたらしい。
『当艦より提案。当方
こちらには空中の対応可能な機体と装備の用意がある。救助活動は可能だ』
空中用機体──エミリア嬢が使用していた【ミサイル・パレード】が脳裏をよぎった。
だが、あれは無理やりシャードブースターで飛ばしているだけの機体だ。
扱いとしては【グラスホッパー】と同コンセプトに近い親戚みたいな設計をしていたはずだ。
だから、塔の頂上を超える高さを浮遊している【ピラミッド】の高度には届かないハズ──
『ハァッハッハッハッ!! 【ハード・パンチャーⅡ】参上!! 砕いてやるぜぇ!! 』
何か、バカが、嵐の空を切り裂き、圧倒的推力から産み出された爆風と共に、飛んでいった。
なんか空中戦力大丈夫だな。うん。
何もかもツッコミどころが多いし、聞きたいことがありすぎる。
突入組の安否も気になるし、状況が混沌としすぎているが、海面より上は任せる他ない。
どのみち【ガトリングヒュドラ】に空中の対処は無理だ。
あの位置まで浮けるわけがないし、砲撃したところで傷をつけるくらいしかできないだろう。
だから、俺は自分に出来ることをするまでだ。
『カラス! 海上は艦で対処できる!
だが深海に潜られて、追跡でもされたら俺達しか対抗できない! 潜るぞ!!』
──分かった! ハンサム! 準備は出来ている! 潜るぞ!
そうして俺達は、荒れた混沌とする嵐の海へ、不安を抱えながら飛び込んでいった。
ハードパンチャーを名乗ってるけど、ジェネレータ二基の別物機体。でもコンセプト同じ。