塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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遅くなりました。申し訳ないですが短めです。


104話:墜落

 垂直に飛び込んだ【ナイト・オブ・クラブ】は俺達を無視し、爆速で潜航していった。

 全く迷わない強烈な速度で、水圧による圧壊も厭わないような強引さだ。

 

【ナイト・オブ・クラブ】は物理的にロケットと巨大な円錐上のドリルを合体させた武装を、機体の両腕を覆い隠すように装備していた。

 あれが先ほど用意すると言っていた深海用の機動装備か?

 ちょっとやんちゃしすぎな形状だな。急造したとはいえなんだよあのセンス。親方みてぇだ。

 

 その噴射口は凄まじい勢いで吹き出し続け、莫大な推進力を産み出しながら【バハムート】と呼ばれた巨大魚型スクラップへ一直線へ突き進んでいった。

 

 ──んん? どこへ行くんだ? いやあいつの妨害しなきゃいけないのは分かってるが。

 ──セレネ、通信つなげてくれ。海上の状況を聞き出したい。

 

「はい! 今すぐ! 海中同士なのでなんとか!」

 

 海中に入ったおかげか、先ほど通信が微量に復活していた。

 だからセレネにマスクドDへと通信を試すことを要求した。

 ノイズ混じりだがギリギリ通信が届くようだ。そして相変わらずの若い声が聞こえてきた。

 

「傭兵。当方、推進系が制御不能だ。よって外装への対処は不可能。そちらは任せる」

 

「は?」

 

 セレネが呆けた声で反応した。思考停止してる。

 通信を変わって俺が沈んでくバカへの聞き出しを代行した。

 

 ──なんか呑気なこと喋ってんな!? 制御不能ってどういうことだよ!? 状況教えろ!

 

 俺と正対しながら、どちらに対処するか【ベル】は迷っている。攻撃の手が明らかに鈍い。

 だから俺は思考と手を緩めマスクドDとの通信に意識を割くことが出来た。

 

「推進力任せに空を駆けて、空で暴れている【モアイ】のうち一機を貫き、撃破した。

 だが、衝撃に耐えきれず、同時に下から粒子砲で焼かれてね。高度維持が不可能になった」

 

 ──それは墜落というんだ阿呆。なんだよ、増援じゃねぇのか。

 

「最もだ。やはり即席武装はダメだな。出力は良かったが不安定が過ぎる」

 

 不安定な未完成な武装に機体制御を預けるとか、リスク承知にしても豪胆過ぎる。

 機体の出力と頑丈さを信頼しきった故の決断だな。

 即席の装備にしては完成度が高いし、雑な設計の装備で空を飛べるのも驚愕だ。

 さらっと外装のうち一機落としてやがるし、だいぶ成功の部類だな。

 すげえな。【ナイト・オブ・クラブ】は相当の重さだろ。飛ぶだけでも凄い。

 

「なんとか下のデカブツには当てる。戦線離脱したらすまない」

 

 制御しきれぬままマスクドDは爆進していった。もしかすると止めれなくなってる?

 推進力を止めれぬまま突っ込んで行った。ありとあらゆる意味で放置するしかないな。

 

 ──死ぬなよ〜。上手くぶち当てて死に花咲かせてみせてくれ。

 

「一息で矛盾するのは止めてくれ。特攻に近いのは自覚している。

 だが【ナルワール】たちが潜れない以上、私が対処するしかあるまい」

 

 そういえば一緒に潜るつもりだったハンサムのやつが来ないな。

 遅刻にしては悠長だな。

 

「艦に張り付いた【モアイ】どもの対処に当たっている。既に二艦焼かれた」

 

 っち、犠牲が出てるのか。ならハンサムどもを批難し難いな。

 ──逆にそちらは任せる。最低でも妨害してくれ! 

 

「上空は"四機"で対処している。あのリザードマンを頼るしかない。あとは頼んだ」

 

 四機??  さっぱり状況がわからない。上の状況が気になりすぎる。

 だがしかし、もう通信がぶつ切りになり、状況は聞けずに終わってしまった。

 

 通信は切れた。もう声は聞こえない。

 

 遅れて【ベル】がやっと動き出した。

 爆速で沈んでいった【ナイト・オブ・クラブ】に【ベル】へ移動を開始しようと機動した。

 完全に俺との戦いよりも、【バハムート】の防衛を優先したのだろう。

 俺から離れ、【スーツ】を向かわせようとし──

 

 

 ──相変わらず指揮官(コマンダー)は頭悪ィな。追わせねぇぞバケモン。

 

 

 眼前の敵を無視したバカに対し水流砲(ハイドロジェット)を噴射し、即座に組み付いた。

 そして、多頭竜(ヒュドラ)の口から放たれた水流砲(ハイドロジェット)の爆発を連続で叩き込んだ。

 

 

 *

 

 

 攻撃の反動で【ベル】に引き剥がされ、俺達との間に少しの距離が空いた。

 今の一撃で装甲をかなり削った。なだらかな表面装甲はかなりボロボロだ。

 簡易水竜砲(ハイドロブレス)とも呼べるこの口元の爆発は相当の威力を持つ。

 指向性でも持たせているのだろうか、自壊する気配はない。連射は出来ないが充分な攻撃力だ。

 

 指揮官(コマンダー)は戦士ではない。

 だからこの類の戦場での咄嗟の判断はかなり間違える傾向が強い。

 目の前におもちゃぶら下げられた赤ちゃん、ってくらい迷うからな。仕方がねえんだけどさ。

 

 だが、この一連の攻撃で【ベル】が俺を"絶対に倒さなければならない敵"と認識したらしい。

 機動力と攻撃力が高い俺達を放置しても良いことはない。それは正しいが、判断が遅いし鈍い。

 デカいが中身は若いな。稼働年数はそれほどでもないらしいな。

 

 そうしているうちに【ナイト・オブ・クラブ】は【バハムート】に着弾し、爆発した。

 遥か海の深いところで、島の如き巨大な魚影がのたうち回っている。

 

 ──まさか本当に爆発するとは。さらばマスクドD。お前の死は無駄にしない。

 

「あの硬さなら生き残ってると思いますけど。だってあれ要塞街(アイアンホールド)の騎士団長機ですよね?」

 

 ──それは公然の秘密だから気にしないであげて。というか正体分かってるのね。

 

「外交中に見たことありますし、本人に会ったこともありますので──」

 

 そう言えば、そうだな。俺の補佐をしてるけどこの人海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)のお姫様なんだもんな。

 そりゃ当然知ってるよ。あまりにもバレバレ過ぎる偽装でよくもまぁ通るもんだ。

 ま、あちらさんも本気になってくれたな。俺は広域通信を一時的に指揮官(コマンダー)へと向けた。

 

 ──行くぜ。これから殺し合いだ。覚悟しろよマイシスター。

 

「はい! お義姉様!」

 

 セレネが変わりに答えてくれた。君の義姉になったことはないんだけどなぁ──




生活がぐちゃってめっちゃ遅れてしまいました。
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