塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
垂直に飛び込んだ【ナイト・オブ・クラブ】は俺達を無視し、爆速で潜航していった。
全く迷わない強烈な速度で、水圧による圧壊も厭わないような強引さだ。
【ナイト・オブ・クラブ】は物理的にロケットと巨大な円錐上のドリルを合体させた武装を、機体の両腕を覆い隠すように装備していた。
あれが先ほど用意すると言っていた深海用の機動装備か?
ちょっとやんちゃしすぎな形状だな。急造したとはいえなんだよあのセンス。親方みてぇだ。
その噴射口は凄まじい勢いで吹き出し続け、莫大な推進力を産み出しながら【バハムート】と呼ばれた巨大魚型スクラップへ一直線へ突き進んでいった。
──んん? どこへ行くんだ? いやあいつの妨害しなきゃいけないのは分かってるが。
──セレネ、通信つなげてくれ。海上の状況を聞き出したい。
「はい! 今すぐ! 海中同士なのでなんとか!」
海中に入ったおかげか、先ほど通信が微量に復活していた。
だからセレネにマスクドDへと通信を試すことを要求した。
ノイズ混じりだがギリギリ通信が届くようだ。そして相変わらずの若い声が聞こえてきた。
「傭兵。当方、推進系が制御不能だ。よって外装への対処は不可能。そちらは任せる」
「は?」
セレネが呆けた声で反応した。思考停止してる。
通信を変わって俺が沈んでくバカへの聞き出しを代行した。
──なんか呑気なこと喋ってんな!? 制御不能ってどういうことだよ!? 状況教えろ!
俺と正対しながら、どちらに対処するか【ベル】は迷っている。攻撃の手が明らかに鈍い。
だから俺は思考と手を緩めマスクドDとの通信に意識を割くことが出来た。
「推進力任せに空を駆けて、空で暴れている【モアイ】のうち一機を貫き、撃破した。
だが、衝撃に耐えきれず、同時に下から粒子砲で焼かれてね。高度維持が不可能になった」
──それは墜落というんだ阿呆。なんだよ、増援じゃねぇのか。
「最もだ。やはり即席武装はダメだな。出力は良かったが不安定が過ぎる」
不安定な未完成な武装に機体制御を預けるとか、リスク承知にしても豪胆過ぎる。
機体の出力と頑丈さを信頼しきった故の決断だな。
即席の装備にしては完成度が高いし、雑な設計の装備で空を飛べるのも驚愕だ。
さらっと外装のうち一機落としてやがるし、だいぶ成功の部類だな。
すげえな。【ナイト・オブ・クラブ】は相当の重さだろ。飛ぶだけでも凄い。
「なんとか下のデカブツには当てる。戦線離脱したらすまない」
制御しきれぬままマスクドDは爆進していった。もしかすると止めれなくなってる?
推進力を止めれぬまま突っ込んで行った。ありとあらゆる意味で放置するしかないな。
──死ぬなよ〜。上手くぶち当てて死に花咲かせてみせてくれ。
「一息で矛盾するのは止めてくれ。特攻に近いのは自覚している。
だが【ナルワール】たちが潜れない以上、私が対処するしかあるまい」
そういえば一緒に潜るつもりだったハンサムのやつが来ないな。
遅刻にしては悠長だな。
「艦に張り付いた【モアイ】どもの対処に当たっている。既に二艦焼かれた」
っち、犠牲が出てるのか。ならハンサムどもを批難し難いな。
──逆にそちらは任せる。最低でも妨害してくれ!
「上空は"四機"で対処している。あのリザードマンを頼るしかない。あとは頼んだ」
四機?? さっぱり状況がわからない。上の状況が気になりすぎる。
だがしかし、もう通信がぶつ切りになり、状況は聞けずに終わってしまった。
通信は切れた。もう声は聞こえない。
遅れて【ベル】がやっと動き出した。
爆速で沈んでいった【ナイト・オブ・クラブ】に【ベル】へ移動を開始しようと機動した。
完全に俺との戦いよりも、【バハムート】の防衛を優先したのだろう。
俺から離れ、【スーツ】を向かわせようとし──
──相変わらず
眼前の敵を無視したバカに対し
そして、
*
攻撃の反動で【ベル】に引き剥がされ、俺達との間に少しの距離が空いた。
今の一撃で装甲をかなり削った。なだらかな表面装甲はかなりボロボロだ。
簡易
指向性でも持たせているのだろうか、自壊する気配はない。連射は出来ないが充分な攻撃力だ。
だからこの類の戦場での咄嗟の判断はかなり間違える傾向が強い。
目の前におもちゃぶら下げられた赤ちゃん、ってくらい迷うからな。仕方がねえんだけどさ。
だが、この一連の攻撃で【ベル】が俺を"絶対に倒さなければならない敵"と認識したらしい。
機動力と攻撃力が高い俺達を放置しても良いことはない。それは正しいが、判断が遅いし鈍い。
デカいが中身は若いな。稼働年数はそれほどでもないらしいな。
そうしているうちに【ナイト・オブ・クラブ】は【バハムート】に着弾し、爆発した。
遥か海の深いところで、島の如き巨大な魚影がのたうち回っている。
──まさか本当に爆発するとは。さらばマスクドD。お前の死は無駄にしない。
「あの硬さなら生き残ってると思いますけど。だってあれ
──それは公然の秘密だから気にしないであげて。というか正体分かってるのね。
「外交中に見たことありますし、本人に会ったこともありますので──」
そう言えば、そうだな。俺の補佐をしてるけどこの人
そりゃ当然知ってるよ。あまりにもバレバレ過ぎる偽装でよくもまぁ通るもんだ。
ま、あちらさんも本気になってくれたな。俺は広域通信を一時的に
──行くぜ。これから殺し合いだ。覚悟しろよマイシスター。
「はい! お義姉様!」
セレネが変わりに答えてくれた。君の義姉になったことはないんだけどなぁ──
生活がぐちゃってめっちゃ遅れてしまいました。