塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
俺達と【ベル】の間で、奇妙な硬直があった。
お互いに致命傷を与えられる攻撃力を備えていることが、今までの応酬で理解できたからだ。
先程の一瞬の隙に叩き込んだ連撃だけで堅牢極まりない外装を大きく砕いたんだ。内部へのダメージがあってもおかしくはない。これで【ベル】は、外装を砕き切る攻撃力と、一瞬で距離を詰める機動力がある【ガトリングヒュドラ】を無視することはできなくなった。
だが互いに攻撃することは難しい。
先ほどの一合のやりとりで【ヒュドラ】の
つまり互いに近接攻撃を得手としつつ、しかし相手の距離で戦うことが危険過ぎて手出しが出来ていない。どちらから先に仕掛けたとしても
だが悠長にこの水域で睨み合いをしているわけにもいかない。
なぜなら【ベル】本体から発せられる音響兵器は【ヒュドラ】のコアフィールドを削り続け、俺達の稼働時間を奪っていった。コックピットに伝わる感覚としては弱い鐘の音が延々響き続けているだけで、ダメージが入っている感覚はない。だが事実として、【ヒュドラ】の総エネルギー量は全く回復していない。攻撃は今も継続されており、それを防御出来ているが機動や攻撃のたびに稼働時間が減っていっている。
しかし、あちらも俺に構い続けている余裕はない。
想像するに任務は防衛のはずだ。【ナイト・オブ・クラブ】の突撃が成功した時に、俺達を放置して向かいかけたからな。
だが、咄嗟の機動力はこちらの方が上だったのは誤算だったようだ。瞬間速度を完全に見誤ったな。【ベル】は外装としてはかなり異質な速度重視と言い切れるほどの機動力を持っている。
エネルギー効率はバカ悪いが、最大速度は【ヒュドラ】の方が早いのは確定だな。
──作戦目的上はこっちが圧倒的優位! お前さえ止めればみんなが逃げられる!
──セレネ! ダメージ覚悟でフィールドのエネルギーを首に回せ! ぶち込む火力を確保する!
「は、はい! 調整します!」
危険な
だから俺達の目的は最初っから妨害と囮と時間稼ぎだ。
【バハムート】とか呼ばれた巨大魚スクラップ──未だにあれの正体がスクラップかわからん──にはマスクドDこと【ナイト・オブ・クラブ】が特攻してくれた。もう完全に任せっきりだ。少なくとも【ベル】をどうにかしないと攻めるも守るも逃げるも寝るも出来ねぇ。
総合するとこちらが有利。だが何かの均衡が崩れれば容易く崩れ去る状況だ。
鐘の音が大きくなってきた。
フィールドの効果が弱まったのか、コックピットへとビリビリと響いてきた。
俺達の身体への影響は少ない。まだ指がぴりぴりする程度だ。
だが、モニターには装甲が少しづつ剥げていく報告が表示され初めてきた。
来る。
フィールドが弱まったと認識したのか、【ベル】が再び機動し、【スーツ】が散開した。
機動し多角的な角度で攻めてくる【スーツ】は、こちらの装甲を簡単に削る攻撃力を持っているが、だがしかしこれをいくら対処したところで【ベル】本体へのダメージはない。
そのため、【ヒュドラ】の首と【スーツ】で相打ちさせることは俺達にとって益がない行動だ。
狙うは、接続されている管。だが、まずは攻撃そのものへの対処。
迫りくる【スーツ】は微妙に接近タイミングをズラして迫ってきていたが、それはつまり順番に対処すればいいだけのこと。掌から発生し、海を歪ませ万物を破壊する
「──! 凄い──!」
多少触れられて削られたから完璧じゃないけどな。
それよりもセレネのエネルギー管理も充分凄い。なにせ必要なエネルギーが常に必要な分だけ届いていおかげで、無茶な戦闘をしてもエネルギー不足になっていない。
後ろでずっと髪から出ている触腕で操作しているが、実はめちゃくちゃ忙しいだろ。本気でフルスペックで戦い続けるなら三基構成機ですらエネルギー不足になりえると思えるほどに消耗が激しい【ヒュドラ】だが、セレネが細かいエネルギーの配分を続けてくれてるお陰でこの歪なジェネレータで戦えていると実感できる。一人でやってたら確実にガス欠してるぞ。
──それだけサポートしてくれてるなら、任された身としては、こんくらいやらにゃあな!
弾き飛ばした【スーツ】の軌道から隙間を縫うように突進し、別々の首で薄暗い深海に漂う管のうち三本程に喰らいついた。これを噛み切れば【スーツ】の機能は停止するはずだ。
だが、噛みついたところで柔軟で弾力があるその管を噛み切ることは出来なかった。
──っち、"柔らかい"! 対刃防御特化か! なら吹きとばせ【ガトリングヒュドラ】!
噛みついたまま、その顎から
管の接続を失った【スーツ】は、溺れ苦しむるかのようにもがき、その場で力なく浮かんだ。
三機の【スーツ】を失ったベルは、しかし俺との距離を詰めない。
離れずに一定の距離を保ち続けた。冷静だ。
だが優位に立ったこの状況で詰めないと、俺達の
此処で決める! そう判断して【ガトリングヒュドラ】を【ベル】に突進させ──
後ろ。待て。死んでない。避けれない。無理か。痛いだろうな。嫌だな。耐えろよ。失敗だね。 笑ってやる。謗ってやる。嘲笑ってやる。ばーかばーか。覚悟しろよ。
虚ろな顔をした幽鬼が俺達に並走していた。
管を失った【スーツ】三機が、最後の力を振り絞ったかのように捨て身の機動を仕掛け、俺達に張り付き、そして
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ。
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン。
「きゃあああああ!」
しがみついた【スーツ】たちを引き剥がすことは出来ず、その振動による破砕を喰らい衝撃がコックピットへと響いた。レバーを操作していた指が引き剥がされ身体全体が揺らされていく。
そしてその音は、共鳴し、爆音となり、超高音により俺達を傷つけた。
俺の操作が離れた【ガトリングヒュドラ】の機動は止まった。
そして残りの【スーツ】四機が、接敵することも認識できず、接触を許し──
合計14個の
速度特化に近い機動力で距離を離しながら音響兵器で継続ダメージを与えコアフィールドの出力を削り、耐えきれなくて沈ませて水圧で圧壊。射撃武器は水中で制限されたため直接武器に限った防御力を備えれば良くて外装の硬度だけでほぼシャットアウト。機動力が落ちた後にまともな知的生命体では対処不可能な数で押し寄せて振動破砕機でコアフィールドを無効化しながら内部へ直接攻撃。
クソボスでは???