塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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15話:略奪

 化学薬品工場あたりで追加で一機倒した。

 なんだか弱すぎて、誘導弾がもったいなくなってきたな。余裕がありすぎて本当に萎える。完全に死地のつもりだったんだが拍子抜けだ。

 性能は良いがコストが高い誘導弾は、単発ならまあ妥協できる。

 だが、こうもバカスカ撃ち合っていては割に合わん。

 どうすっかな。損耗を気にするくらい余裕がある状態なので、周囲を見回す余裕があった。

 

 ──よし、いいものがあるじゃないか。

 

 今、破壊したギアに飛び移り、そいつが持っていたマシンガンを拝借する。集弾性はゴミみたいに悪いが、近距離なら悪くない瞬間火力を叩き出すマシンガンだ。

 もっと接近して使うのならば選択肢としてはナシじゃない。つまり傭兵どもの使い方が悪い。

 お、コックピットは潰れてないな。コアフィールドは偉大だな。生きてるなら声掛けするか。おーい、借りるぞ! 拒否権はないがな!

 破壊したギアが再度動き出しかけた。ふーん?

 反撃を試みたギアの肩関節を丁寧に踏み砕き、蹴飛ばして、足蹴にして、転がした。

 気骨あるじゃん。こんなゴミみたいな戦いで死んでんじゃねぇぞ新人!

 

 

 マシンガンを奪ったあと、すぐ近くに居た機体を強襲。

 こちらは小型機だ。建物を影にすれば素人同然の新人の背後など容易く取れる。

 背面ブースターを使い【グラスホッパー】の跳躍力と共に、真横から両足を使って蹴り飛ばす。

 操作もおぼつかない新人は、この衝撃を殺せずに無様に転倒した。

 優しく歩み寄った俺は、ギアを踏みつけ押さえつけながら、丁寧にコックピットに繋がる各経路に向けて、拾ったマシンガンを接射した。ゴミみたいな集弾性でも必ず当たる超至近距離から銃弾をたっぷりプレゼントして差し上げた。

 ほら怖いか! 逃げんなよ!

 弱々しくジタバタともがいたところを、踏み潰しなおして、もう一度抑え込む。

 撃ち終わった。丁寧にマガジンを交換して、はいもう1回!

 はい腕、ほら肩、これ首な、脚もだ、はい最後腰!

 ふう、なんて優しい先輩なんだ。ほうらコックピットは無事だろ? コアフィールドとギアの防御力に感謝しろよ。泣いてんじゃねぇぞ。戦いに参加したのはお前の意思だろ。

 おら、ライフル寄越せ! ミサイルの弾もたっぷりあるじゃねぇか! 授業料だ!

 

 次に会う時はもっとマシな動きを見せてみろ!

 そう言い放ち、弾を打ち切ったマシンガンをポイ捨てし、略奪に成功した武装で再度戦場を飛翔した。

 

 あと2回繰り返した。

 

 *

 

 再度、親方のガレージ近くに補給のために戻る。

 エネルギーの回復量が一気に悪くなってきた。機体が不調を示している。

【グラスホッパー】の機動力は脚部の跳躍力と、シャードブースターに依存している。

 コテツは【グラスホッパー】の循環液と【オンボロ】のジェネレータの相性を調整しきれていないと言っていた。

 ジェネレータは快調に動いている。しかし、それが”血液”に伝わらず、細部まで行き渡っていない。

 このままでは戦闘中に限界を迎えるだろう。

 しかし事前情報からすれば、まだ半分。この戦いはまだ中盤でしかない。

 

 できる限り【グラスホッパー】を休ませなければならない。

 しかし、そうして待っていれば街が燃える。

 敵を倒さなければ。今、この街を守っているのは俺しか居ない。俺がやるしかない。

 

 騎士サマは動けない。

 いや、幕引きのために動かしてはいけないのだ。

 

 もう少し無茶を許せよ【グラスホッパー】。

 そうして、次の戦場へ跳ぼうと準備を整えていたら、親方のガレージから大きい音を立てて、なにか異様なものが飛び出してきた。

 あれは、なんだ?

 

 ギアは基本仕様では人型の兵器で、二手二足の構造を持つ。

 だが、例外もある。

 たとえば作業用ライトフレームのような非戦闘機を、シャードジェネレータで強化し、ギアと同等程度の出力を持つ機体が存在する。

 

 これらは正式にはギアとは呼ばれないが、実戦では同格扱いされることも多い。

 特に、人型の構造を外れている場合はアサルトだったか、アーマードだったか忘れたが、まとめてAGと呼ばれることが多い。

 タコ野郎の【キャタピラ脚】なんかも、無限軌道だったからか、AG呼びだったしな。

 一応、ギアと呼べなくもないが、人型じゃないしな。なんか違うらしい。

 

 それに、不思議なことに、性能面でもギアより劣りやすい傾向があるらしい。

 原因は不明だが、整備士の間じゃ"ジンクス"みたいなもんになっているとすら聞く。

 

 ただし、戦闘力に限れば用途特化のAGはギアに劣るわけではない。

 

「ガハハハハ! カラスゥ! 祭りはまだ終わってねぇな!? ワシ参上だ!」

 

 親方のバカ笑いが戦場に響いた。

 なんだあの機体。始めて見たぞ。ガレージの隅でひっそりと布で隠してたやつか? 親方はサプライズ好きだからな。

 親方は、甲殻類を模した多脚型ライトフレームに(俺の)シャードジェネレータを無理やりブチ込んだ挙句、(俺が)持ち込んだドラゴンのオートキャノンを(勝手に)二門、背中──いや上部に搭載していた。

 

 もし、あれを真っ当に運用できているなら、火力はかなりのもんだ。

 そもそも攻撃力だけならライトフレームは充分、ギアと同等の戦力を持っている。

 カーゴキャリアや要塞街外縁部の砲撃機などの例があるように、攻撃するだけならばシャードジェネレータではなく、ソケット接続してエネルギーを供給されれば充分なのだ。

 

 問題は機動力と防御力だ。しかし、親方が乗っている機体は鈍重そうな見た目をしており、かなりの重装甲のようだ。シャードジェネレータを積んでいることからコアフィールドも発生しているはずだ。しかも盾のような形状の手も装備しており、防御能力は充分だろう。

 

 

「ガハハハハ! ワシの【ガトリングクラブ】の"ガトリング"砲を喰らえッ!!」

 

 

 いや、それ、俺のオートキャノンなんだが。

 

 親方は自分の名前をつけるのが好きだ。

 "ガトリング工房"の親方であるガトリングさんは、勝手に搭載したオートキャノンをも"ガトリング"という名前に勝手に変えてしまった。まるでほぼ自分のものだと主張しているかの如く、”命名”しやがった。あとで高額で売っぱらってやる。請求を覚悟しろよ。

 

 親方は高笑いをしながら”ガトリング砲”の砲弾をばらまいた。

 多脚フレームはかなり強いオートキャノンの反動を上手く打ち消している。

 見事なセッティングだ。反面ちょっと狙いが甘いな。

 オートキャノンの集弾性に関しては、俺自身がゴブリンとの戦いで問題ないことを証明している。

 つまり、【ガトリングクラブ】の捕捉性能か、親方の実力だろう。

 親方は傭兵として戦闘実績があると聞いたことはない。それが正しければ、これが初の実践になるだろう。そう考えればやたら気合の入った戦いをしており、好感が持てる。

 

【ガトリングクラブ】は充分な火力を保持しており、傭兵の牽制に成功していた。

 しかし正面からの撃ち合いならば、どんな素人染みた傭兵たちでも反撃をしてくる。

 親方に向けられて、誘導弾が放たれた。横から撃ち落とすかと一瞬考えたが──

 

「ヒャッホォォォォォ!!」

 ガシャガシャガシャガシャ──!

 

 

 ──早っ。

 妙に気持ち悪い動きで【ガトリングクラブ】は、街の建物の影を縫うように駆けた。なんだあの機動性。

 追いつけなかった誘導弾は建物に激突し、爆発。

 法律に従って作られた建物は、異様に頑丈であり少し窓とかが破壊されているが、崩れては居ない。

 

 あの機体、見た目はゴツいが並行移動の速さが尋常じゃないぞ。

 目視できるだけで片側に四脚づつ、つまり八脚の多脚フレームを駆使し、シャードブースターも満足に装備していない機体で機動性を確保していた。多脚とはいえ、あの機動力は相当の重心設計と姿勢制御能力が必要になる。親方の技術力の確かさが伺える。

 

 うん、あれは充分な戦力になるな。

 傭兵たちの量産ギア相手なら、余裕で戦い抜けるだろう。

 

「ガハハハハ! 【ガトリングクラブ】自慢のハサミを喰らえ」

 

 ばしゅ。

 

 盾みたいな大バサミが射出され、傭兵のギアを強打した。

 

 なにそれ。

 

「ガハハハハハハハハハ!」

 

 親方は高笑いをしながら、傭兵のギアをその万力のハサミで掴んだ。なんか”じゃらじゃら”とハサミに接続されているチェーンを上手く利用し、ギアごと振り回し始めた。

 

 うわぁ。

 

「【クラブ! インパクトォ!】」

 

 そのままハサミに付いているギアを武器にして、別のとろい動きをしていたギアに叩きつけた。

 

 うわぁ。

 

 前言撤回。残りの傭兵は一通り倒せるな。うん。

 なんか見てるだけで疲れたな。任せた。ちょっと休む。

 おーいコテツ~補給頼む~普段雑にしてるぶんお前も雑に扱うからな!

 

 

 *

 

 工場地帯を駆ける。

 親方が相手をしている機体を含めてこれで10機。

 少し休ませることは出来たが、急激な機動は避けたい。

 残りの機体は何処だ。出来るのであれば先制攻撃で仕留めたい。

 探していた所、街の建物を突き破り、ひときわ巨大なギアが姿を現した。

 崩れた瓦礫から立ち上る煙が薄くかかり、そのシルエットはまだぼんやりとしている。

 

「ハハハハハハァ! ようやく見つけたぜェ、錆びカラスゥ! てめぇにリベンジマッチといかせてもらうぜェ!」

 

 

 ──―お、お前は! ──

 

 

 

 誰?

 

 えっ、誰???

 

「ジャック・ザ・ハンマー様だ! 列車でお前に突き落とされた傭兵だよ! ほら、機械腕のさァ!」

 

 あー、いたなあ、そんなヤツ。

 列車で妙な襲撃をしてきて、秒で返り討ちにしたクソ雑魚傭兵。筋肉の記憶しかない。

 あの列車襲撃は俺の暗殺のつもりだったんだろうが、ちょっとお粗末過ぎてイベントとして"弱かった"ので記憶の彼方から消してたわ。

 

「今度はギア戦と行こうじゃねえかァ! この"竜狩り"である俺様の最強ギアでぶっ潰してやるよォ!!」

 

 あの体たらくでドラゴンを狩ってるだと!?

 驚愕の事実にちょっと衝撃を隠せない。

 ドラゴンってそんな簡単に倒せるスクラップだったか?

 先週あたりの死闘を思い出す。いやそんなわけないだろ。

 

「見ろォッ! これが俺様の【ハードパンチャー】だッ! 強靭! 頑強! 最強! この拳で砕けねぇもんはねェッ!」

 

 粉塵が晴れ、月明かりと街灯に照らされたそのギアが、ようやく全貌をさらけ出す。

 

 

 極度に重装甲で堅牢な作りをしている重量級のギアだ。

 全身が鉄の鎧のように覆われていて、増設ブースターが肩部から背面にかけて存在している。

 なるほど、直線の突進はかなりの威力を持っているようだ。

 その太腕はまるでハンマーだ。拳そのものが巨大で鉄塊のようであり、「殴る」ことに特化していた。

 竜相手に"殴りあえる"ってことか、なるほどな。

 割と好きな機体だ。

 

 

 だが。

 

 

 うん。

 その。

 なんだ。

 

 

 射撃武器が──無いな──

 

 

「行くぜぇええええええええッ!!」

 

 うお、来た。

 

 跳躍。その突撃を回避しながら、俺は建物にへばりつき、距離を取る。

 そのままスナイパーライフルを構えて、トリガーを弾く。

 

 命中。避けねぇ。

 

 直線突撃力は確かに目を見張るものがあるな。

 だが、その馬鹿みたいな速度を御しきれず、建物に激突し、俺を完全に見失った。

 嘘だろ。バカかよ。バカだったわ。

 

 移動。近くに転がっていたギアの残骸から、ライフルを二丁拝借。

 おお! こんなところに武器が落ちているとは! 天の恵みか! ありがたく使わせてもらうとしよう!

 はい茶番終わり。もとより工場地帯に戻ってきたのはこれを回収するためだ。

 

 

 再度跳躍。建物を足場に飛び跳ねながら移動。高度と距離を確保しながら射撃再開。

【ハードパンチャー】に絶対に接近戦に移行させないように、距離と高さを維持しつつ、横軸にも移動しながら突進を避ける。一発づつ丁寧に、真上か背面から容赦なく全弾ぶち込む。

 

 なんか面白いくらい当たるな。全く回避されない。よし、誘導弾追加。

【ハードパンチャー】は被弾の蓄積に耐えられず、膝を屈した。

 

「うわぁぁあああああ!」

 

 お、隙だ。

 強襲。蹴り飛ばし。転倒。

 

「ぐあああああ! 覚えてろカラスぅぅぅ!」

 

 背中の増設ブースターが爆発した。そして沈黙。

 装甲は厚かったが、中身はやっぱり薄かった。

 

 何しに来たんだこいつ。

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