塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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投稿できそうな時はさっさと投稿する方針にしました。


intermission:八本脚運輸
33話:泥酔


「わはははは! 酒が美味ぇー!」

「おうおうおう! もっと飲め飲め!」

「ガハハハハ! もっと撃ちたかったぜ!」

「戦場を燃やし尽くすことは出来ませんでしたが良しとしましょう!」

 

 

 ──うるせえなバカども。骨とか折れてんだろうが、はよ治療ポッドに入れよ。

 ──あと酒とツマミよこせよ! 俺今回めちゃくちゃ活躍したんだからな!

 

 

「はあ? ふざけんなよこれは俺達の酒だ」

「おこちゃまに渡す酒はあーりませーん」

「悔しかったらヒゲでも生やすんだな若造」

「機体にグレネードを積むのならばお譲りしましょう!」

 

 

 ──あ”ア”? お前らその状態で俺に喧嘩して勝てると思ってんのかァ!?

 

 

「いい度胸だ! 骨なんぞ折れてようがお前になんぞ負けんわガキがよぉ!」

「やっちまえ!」「ぶっとばせ!」「燃やし尽くしましょう!」

 

 ──上等だおらぁ! 束になってかかってこいよクソドワーフども!

 

 

 たのしい喧嘩が始まった。

 

 

 *

 

 

 勝った。

 

 おしゃけおいちー!

 

 

 疲れた身体に染み渡る。あ”あ”~き”く”ぅ”ぅ”ぅ”~

 

 知的生命体はどれだけ世界がボロボロになろうとも──

 どれだけ資材がなくなろうとも──

 たとえ何もかも失っていたとしても──

 

 ──アルコールの製造を止められなかった!

 

 惑星ノスからありとあらゆるものが失われたとされるスクラップの大攻勢の伝説で、世界はすべて焼き尽くされたとされている。

 

 

 だが──知的生命体はアルコールを再び作り出した!

 これは必然だし、そして執念である!

 

 

 神々の叡智、世界の真理に乾杯!

 

 

 杯を馬鹿どもと打ち付けて、一気にグビグビと飲み干す。

 

 う”ぇ”あ”あ”あ”あ”〜染”み”る”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”〜。

 

 俺は、塔の中層あたりで【飲んだくれ傭兵団】のドワーフ達と馬鹿笑いしながら酒盛りをしていた。

 塔中層の植物からトランクで生成した酒は麦酒っぽいものや、蒸留酒っぽいものや、果実酒っぽいものなど多岐に渡る。

 どれも美味(うま)くて美味(おい)しくて美味(びみ)

 

 ぐびぐびぐび。ひ”ょ”え”え”え”え”〜。う"ま"い"〜!

 

 ドワーフどもも、よくもまぁその負傷で飲むもんだ。

 火傷してる奴も居るし、血を流してるやつとかもいる。

 腕とか鎖骨とか足とか肋骨とかも折れているらしい。

 一部、俺が折ったのもある。俺も折れてる。

 だが、それは全て些事だ。

 

 そんな軽傷よりも酒盛りを優先する阿呆どもだ。

 まったく、そんな状態で酒飲むなんて信じらんねぇぜ!

 

 

 おしゃけおいち〜!

 

 

 *

 

 

 まぁこいつらが生存していたのはギアが”爆散”していたことから確定的だった。

 

 コアフィールドに守られているギアは爆発しない。

 

 こいつらは【ドグウ】の先制攻撃を食らった瞬間、機体のダメージ的にダメだと悟り自発的に四肢を切り離し犠牲にしていた。

 四肢へ伝達させるエネルギーを切ることでコックピットの防御力を稼いだのだろう。

 見事な判断だと賞賛するべきか、ギリ耐えられたんじゃないか? と思うべきか定かじゃないが、現に全員生存している。

 だが、機体は“ダメだ”とは思ったが、あの鮮やか過ぎる爆散は”死んではいない”とも俺が判断出来た。

 

 だから、上層での戦いは絶対に勝たなきゃいけなかったんだ。

 こいつらが生き残る可能性を僅かでも稼がなきゃならなかった。

 

 ──お前ら俺に感謝しろよ。時間稼いでやったんだから。

 

「ああ? 【ニードルワーカー】の修理したの誰だと思ってやがる」

「タカメ嬢ちゃんは怪我してたからよ、俺達がやったんだぜ? むしろ感謝して欲しいぜ」

「明らかに狙われてましたからねぇ、まぁ治療もしないでさっさと戻っちゃったんですが」

「それよりも、ノームを捕まえといて酒各種作らせといたからよ、感謝しろよ若造! わはははは!」

 

 ノーム、つまりドワーフの言葉でいうトランクのことだ。

 逃げ足の早いトランクの回収が出来たのは本当にデカかった。

 残骸から工作用のライトフレームを一機”でっちあげて”上層と中層に繋がる通路を復旧して、それから負傷した面々を順番に降ろすことが出来た。

 というか戦闘中にもなんだかんだ退路確保に必死に奔走していたらしい。

 間に合わなかったが、それでも機体を捨てれば全員が下層まで逃げれるように、穴くらいは開けていたという。

 負けて、それでも生き延びていたら、こいつらに再びお世話になっていたところだ。

 

 まぁ、俺達は勝った。そして、まだ中層に残って呑気に酒盛りをしているところなんだが。

 

 

 ま、俺達も降りるとしますか。

 

 

 *

 

 

 足元がふらつく。頭がぐわんぐわんしている。

 胃の中がひっくり返りそうだ。

 

 ──理由が分からない!

 

 これは激しい戦闘の代償だな──!

 間違いない!!!

 

 

 さて。

 自己正当化したところで現実に戻ろう。

 

 

 

 ここからが、地獄だ。

 

 

 たのしい、たのしい戦闘後の後片付けの話をしよう。

 

 

 まず、スナイパーネキことタカメ女史は重症だ。

 カーゴキャリアの治療ポッドに即ぶち込んで、今も治療中だ。

【ニードルワーカー】はほぼジャンクみたいな状態だが、スナイパーライフルは謎の強度を誇り、なんと無傷だ。あの高さから落下して歪みすら無いのは、なんかからくりがあるな。

 

 翼をもがれ、落下したドラゴンはヴァレリアン卿の【ハルバード】がとどめを刺したらしい。

 

 そこにセドリックは落下してきて、受け止めて回収出来たとのことだ。

【エスクワイア】はその役目を果たし、セドリックを守りきって力尽きた。

 ジェネレータだけが生き残っている状態でほぼ全損だから取り外すのだとか。

 セドリック本人は気絶していて、今も意識が戻らない。

 命に別状は無いらしいが、それよりも疲労困憊だったのが間違いないらしい。

 こいつも治療中。

 

 

 ハレーは──なんかぐったりして、食事して、爆睡して、を繰り返している。

 まるで糸が切れた人形のようにぼーっとしているな。まともに会話も出来ない。

 あの超常的な戦闘を繰り出すためにいろんなものを代償にしたらしい。

 相当気が抜けた状態に陥っているが、俺達を信頼してくれているのだろう。

【トライヘッド】は【ドグウ】にやられた以外にもドラゴンのオートキャノンにやられたのか、各所にダメージを受けていた。

 緑色の循環液がほぼ漏れ抜けていて、失血多量状態だ。

 動かすためにはしっかりメンテナンスしないと何も出来ないだろう。

 

 

 脳筋バカ? あいつは──なんかどうでもいいよ。

 なんか頭部から地面に突っ込んで足だけ出してた間抜けなギアが居たって事実だけで良い。

 まぁ、あいつが居なければドラゴンに殺されていた。危ないところではあったから感謝している。

 

 

 コテツは、調整中だった【オンボロ】を持ってきてくれたらしい。

 竜型熱線砲(ドラゴンブレス)撃ったら各部に異常が発生し、また再調整が必要になったとかでガレージに篭もりっきりだ。

 ギア用に改造した手持ち竜型熱線砲(ドラゴンブレス)も試作で作ったものらしく、撃ったら壊れたらしい。よくもまぁそれで撃墜できたもんだ。

 竜型熱線砲(ドラゴンブレス)を利用したギア用砲の製造法は貴族たちの手で門外不出になっている。

 違法では無いが、そう簡単に作れるものでは無い。よく作れたもんだよ。

 

【飲んだくれ傭兵団】どもは全員治療ポッドにぶち込まれた。

 あの程度の傷で済んだだけでもいいと思えよクソドワーフども!

 機体のほうはシャードすら回収できない全損状態だったから実質無一文になっちまったらしい。

 まぁ、あの実力なら適当な機体を借りて、簡単に再起出来るだろうよ。

 

【ガトリングクラブ】は──

 親方にどう説明するかな。

 こんなボロボロにするつもりはなかったんだが。

 本当にこいつは傑作機だった。

 俺が生きているのは間違いなくこいつの堅牢な防御力のお陰だろう。

 親方の手で蘇ってもらう。今回の報酬を存分につぎ込むつもりなくらいだ。

 

 

 無事だった者は誰も居らず、無事な機体も居ない。

 

 総力戦だった。

 

 何が足りなくても誰かが死んでいた。何かが狂えば容易く全滅していただろう。

 

 ああ、増援来て良かった。本当に良かった。

 騎士サマが送ってくれた部下たちに感謝だな。

 状況連絡と戦況状況を逐一伝えてくれ、騎士サマの判断に役立っていた。

 空中走れるヴィーグル使って、塔の内部まで入って連絡し続けたやつも居るらしい。

 流石に上層近くまではたどり着かなかったらしいが、それのほうが良かっただろう。

 

 かなり正確な戦術プランが組まれ、あの位置にコテツを配置して見事予想が当たった。

 とのことだ。騎士サマの配下が優秀過ぎてビビる。

 

 そもそも、あの戦闘は塔の外から見えたらしいからな。

 かなり危機感がある状態で手早く作戦を整えてくれた騎士サマに感謝だ。

 

 

 全員生存。死者ゼロ。奇跡に近い結果だ。

 だが、それの締めが──

 

 

「ってわけで~カーゴキャリアの出張代金はこんなもんやで~」

 

 ──ボッタクリじゃない?

 

「何言うとんねん。世の中タダはないんや〜! 何するにしても銭が動くのが世界の道理やで!」

 

 俺はタコ野郎に詰められていた。

 頭が頭痛で痛いからちょっと声量抑えてくんない?

 ってか、そもそもなんで俺に請求が来るんですかね。

 依頼の発端はヴァレリアン卿では?

 

「ちゃうちゃう。【ガトリングクラブ】の輸送と修理費だけや。スタッフ含めて全部やっておくお値段やで〜」

 

 んんんんん。

 高い。が、この状態だと【ガトリングクラブ】は自走できないんだよな。

 誰かに運んでもらわにゃならん。

 輸送キャリアは使えない。

 あれは自力で動ける前提の設計だし、【ハルバード】と【ハードパンチャー】を外に出して、さっさと運ぶらしい。

 まぁ妥当だ。

 仕方がない。よし、契約成立。今あんまりものを考えたくない。

 

「はい、ここサインして〜、こっちにもサイン必要や。コテツくんのぶんやで」

 

 はいはい、俺はサインした。

 

 

 そう。俺はサインしてしまった。

 酷く疲労して、眠くて、酒を飲んで、酔っ払っていて、頭が痛かった。

 

 

 ──何も考えずに、良く書類を見ずに、サインした。

 

 

 

 

 ──俺はよくわからん会社の副社長に就任した。

 




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