塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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おおきいのと、おもいのと、おおいのは、つよい!


48話:足算

 絶対に接近戦に持ち込まれてはならない。

 俺は割れた大盾を構えつつ【ハルバード】を横に機動。

 割れた盾でどれだけ防御出来るか怪しいが、距離を維持し、砲撃戦に持ち込む。

 

【ナイト・オブ・シャベル】のレールランチャーが煌めく。

 左肩に命中。衝撃。安定性を一瞬失うがすぐに立て直す。回避は難しい。

 

 弾丸は三基構成ジェネレータ機のコアフィールドを安々と貫いた。

【ハルバード】の分厚い装甲を削り、深いダメージを与えてくる。

 まだ出血には至っていないが、受け続けるのは危険だ。

 

 本当なら機動などせず、盾を構えて受け続けるのがベストだとは思う。

 静止することで、コアフィールドの出力を安定させ、最大の防御力で受け止めることが出来るからだ。

 更に、遠距離武装の多さとしては総攻撃力そのものはこちらのほうが上であり、距離を離せるのであれば有利な状況を作ることができる。

 

 しかし、脚を止めた時点で近接戦を強要する機動を仕掛けてくるだろう。

 あの膂力の一撃をもう喰らうわけにはいかない。

 機動力はこちらが勝っている。動き続ければ追いつかれることはないだろう。

 そのため、出来うる限り脚を止めないように機動し続けることを強いられていた。

 

 踏み込みのタイミングを逸らし続けろ。遠距離攻撃で少しでも削る──

 

 

「団長! なぜ、なぜなんですか!」

 

 

 俺の隣でコックピットのシート横に固定しているセドリックが叫んだ。

 お、口撃かい? いくらでもやってくれ。相手の気を削ぐんだ。

 

「セドリック。私は君に本当に謝らなければならないと思っている」

 

 二人の熱い会話の間にも、俺は集中し【ハルバード】を機動させ続け、砲撃を続けた。

 

 相手は回避しない。

【ナイト・オブ・シャベル】は”三枚”の盾で防御を固めている。

 両肩の稼働式の大盾と、手に持つ超大型スコップの三枚だ。

 超大型スコップは、斬撃、打撃、刺突に加え盾の役割を持つマルチウェポンである。

 

 こちらの攻撃を逸らし、払い、受け止めた。

 俺は外さない。しかし、すべて盾で防がれ、機体への有効弾は確認できない。

 

【ハルバード】と【ナイト・オブ・シャベル】の間で合計三門のレールランチャーが、激しい砲火の応酬を交わし続けていた。

 

 互いにダメージが入るが、機動しているこちらと、足を止めて居るあちら。

 コアフィールドの防御力に差が生じてしまい、その差は歴然と言って良い程に機体への被害として表れていた。

 

 ただ、狙いが若干甘いのが救いだ。精密射撃よりも継続的な攻撃を重視している。

 機動と防御を駆使することでダメージを分散させることには成功しており、まだ出血には至ってない。

 

 しかし、残念なことに、出力の差はかなり無視できない状況だ。

【ハルバード】は三基構成機の中でもかなり優秀な機体だが、【ナイト・オブ・シャベル】はそれを遥かに上回る傑作ジェネレータを搭載していた。

 同じ三基構成ジェネレータを搭載している機体同士だが、その出力には差が存在している。

 

 シャードジェネレータは、不完全なパーツである。

 シャード同士の相性と、偶然という問題を未だに解決出来ていない。

 

 一基ならともかく、完全に同一の出力のものを作るのは現代の技術では非常に困難である。

 例えば【エスクワイア】はある程度量産されているが、二基構成機としては最低出力に近い機体であった。

 だが、最低出力と言われるほどの機体であっても一基構成機に比べたら並外れた出力が存在しているし、それですら開発に数年の時間を要するほどの時間がかかってしまう。

 それほどまでに複数基ジェネレータの開発は難しい。

 

 

 この試算の間にも、レールランチャーの断続的な砲撃が【ハルバード】を削っていく。

 コックピットへ被弾の警告がずっと鳴り続け、思考時間をも同時に削られていった。

 

 ひとつでも総火力は以前のゴブリン戦の集団半分を倒せる威力のそれが、二門。

 いや本当にずるい火力だ。しかも同時ではなく交互に撃ち続けているため隙がほとんど無い。

 

 こんな武装が出来る出力を誇る三基構成ジェネレータ機は、要塞街には現存していない。

 俺が知っているのは異常な瞬間出力を持っていた【トライヘッド】くらいだ。

 ハレーが居てくれたらな──すこし現実逃避したくなるが、居ない人物の事を思ったところで問題は解決しない。

 

 

 砲門数と盾の枚数。機動と静止。純粋な出力差。

 攻撃力も防御力も、すべての要素で、単純な足し算による差が発生していた。

 

 

 

 つまり、すごく、つらい。

 

 

 

 デュアルグレネードも一緒にぶち込んでいるが、盾に阻まれ効果は薄い。

 榴弾は対スクラップ用武装だからな。

 盾持ちアームズには衝撃を加えた妨害以上の有効打にはならないだろう。

 

「私は増援を手配していない。だから、私は今回、君を見殺しにした」

 

 騎士団長デュランがそう答えた。

 助けに来て良かったな、本当に。

 来なかったら死んでいた。いや本当に無駄骨じゃなくてよかった。

 

「どうして、どうして嘘をついてまで僕を殺そうと──!」

 

 

「秩序のためだ。だが、これから処するつもりとはいえ君に生き残ってもらえて嬉しくも思う──

 不思議だな。自分でも矛盾していることを言っている」

 

「何を──」

 

 都合のいいこと言ってるな。

 機動に意識を割く必要が無いあちらは会話の余裕があるようだ。

 堅牢すぎて本当に攻略の道筋が立たない。どうすんだこれ。

 

「セドリック。君は助けが来たのだな──心底羨ましいよ」

 

 言葉に熱が籠っていた。はぁー。

 

 

 ふざけんなよ。

 

 

 

 ──誰に何を重ねてるか知らんが、そんな感傷にセドリック巻き込まんで貰えるか? お前がこんなことしなけりゃ、こちとらこんな茶番劇に付き合う必要は無かったんだ。悪いが、何もかもお前のせいだよ。全部な。

 

 

 

「正論だ。耳が痛い。だが、正義なぞ、既に共にある訳でもないだろう」

 

 まぁ、こちらも正義を堂々と騙った身だ。

 それを謗るのは、正直はばかれる。

 

 この戦いに既に正義は無い。

 

 互いの利益と目的のために行われている、悲しい茶番の続きであった。

 

 さて、どうするか。このまま撃ち合い続ければ順当にすり潰されて敗北する。

【ハルバード】が弱い機体な訳では無い。

 ただこの戦いを続ける限り、あちらの有利にしか働かない状況が続いているだけなのだ。

 

【ハルバード】の真価は一撃必殺の突撃力と圧倒的な制圧力にある。

 そもそも出力の高い同格との削り合いに向く機体では無い。機体相性的に不利だ。

 いや、本当にどうしよう。逃げる訳にはいかないしな。

 

 

 ──ん?

 

 

 あれ?

 

 これ、逃げていいんじゃねぇか──?

 今、戦う理由──無いぞ──?

 

 

 もう撤退の準備は整えている。

【バスティオン・キャリア】は出航の準備を整えている状況であり、作戦に成功しようが失敗しようが、俺たちは別の街へ移動する算段を立てていた。

 

 大目的であるセドリックの救出は終えた。

 

 政治的には敗北しているかもしれないが、まぁ、元々アウトローな傭兵である。

 俺たちは戦闘力を担保にして他の街でやり直せばなんとかなるし、タコ野郎の輸送業で落ち着くまで働いていれば正直どうとでもなる。

 

「迷いが見えるな。そろそろ撤退を考えている所とは思うが──

 君達は仲間を見捨てない方針だと信じている」

 

 そうして、騎士団長デュランが、俺に囁いた。

 

「そして、【ハルバード】がそこにあるということは──彼は無防備だな──?」

 

 騎士団長と騎士サマは政治的に敵対している──

 お前、まさか。

 

「君が私を”見逃せば”、このシャベルの矛先が何処に向かうか──分かるな?」

 

 こいつ、”この状況”を作り出すためだけに、この戦いを計画したのか──!

 どういう頭の構造してるんだ──!?

 

 

「何もかも邪魔をされて、行き当たりばったりの状況ではあるが──」

 

 

 あ、そうなんだ。あっちもアドリブでやってるのかぁ。

 くっそ、ちょっと親近感が湧いてきたな。

 

「どうやら、そちらは詰みに近い状況まで追い詰められているらしい。

 一か八かの突撃槍での突進(ランスチャージ)でも試みるか?

 こちらとしてはシャベルで迎撃させてもらうだけだが」

 

 そう、【ハルバード】最大の攻撃であるブーストランサー。

 それによる突撃が唯一あちらに明確にダメージを与えられる手札になる。

 しかし、その言葉通りこちらはその札を切ることが出来ない。

 盾で受け止められ、そのシャベルの反撃でトドメを刺されるだけの結果になるだろう。

 

 

 戦い続けると負ける。

 手札は迂闊に切れない。

 逃げることも許されない。

 

 

 つまり、俺がすることは──

 

 

 ──助けてタコ野郎!

 

 

 友情パワーでなんとかするしか無い。

 

 

 *

 

 

「 無! 理! や! こっちもドチャクソ忙しいんやねんぞ! 」

 

 いや知ってる。でもどうしようもねぇもん。

 タコ野郎側でも戦闘が繰り広げられていた。

 

 最初は談合済みのなぁなぁで済ます予定だった。はずだった。

 しかし、今繰り広げられてるのは──

 

 

「来るぞぉ! 構えろ!」

「っち、なんて技量だ! 信じらんねぇ!」

「あんな使いにくい武器をよくもまぁ」

「俺様のマシンガンをよくも! うおおおお!」

 

 チャクラムスロワーを横薙ぎにして、ドワーフ達を蹂躙している騎士と。

 

「うおおおお! 大量のクレジットが湯水の如く使われとる! やめてくれやぁぁぁ!」

 

 タコ野郎を執拗に追い詰め、大量の誘導弾を降り注ぐ騎士が居た。

 

 

 うわぁ。

 

 

「余所見とは余裕がありそうだ」

 

 

 うぉっ。

 

 接近してきた【ナイト・オブ・シャベル】の一撃を回避し、タコ野郎達と合流した。

 

「さらに厄介なの連れてくんなや!!!」

 

「嘘だろ騎士団長かよ!」

「美しくない」

「楽しそうじゃない」

「クソつまらんけど最強って、塩い機体じゃねぇか!」

 

 ごーめーんー。許して。みんなで楽しく大乱戦しようぜ。

 

「あー! カラスはんヤケになっとる!! 最悪や!」

 

 マジで一人だと手づまりなんだよ!!! どうしようもねぇって!!

 

「ワイらも必死なんやで!?!? 」

 

 

 そうしている間に、爆発。

 次は何!?!?!?

 

 

「ハッハッハッハッハァ!! 騎士も大したことねェなァ!!」

 

「──くそ、無様だ──! この私が接近戦で遅れを取るなんて──!」

 

【ハードパンチャー】と【クロスガード】が俺達が出た所から地上まで登ってきた。

 え、地下で決着付かなかったの?

 

「すまない──敗走だ」

 

 ええー。嘘でしょ? プライド捨てれば勝てる相手じゃん。

 

「あァ? 俺様が簡単に負けるとでも思ッてんのかァ? そいつは軽く見られたもんだなァ!」

 

「そう簡単に捨てれるか馬鹿者! あとこいつに勝つのは至難の業だぞ!?」

 

 最悪だ。混沌としてきた。

 

 ええい! 態勢を立て直すぞ!

「ええやで!」「分かった!」「あいよ!」「へい!」「がってんだ!」「理解!」

 

 

「二機ともこちらへ来い。仕切り直しだ。ジャックさんもこちらへ」

「は~い」「了解」「おうよォ!」

 

 騎士団長側も騎士とバカを集合させた。

 なんかあのバカに下手に出ているの、ちょっと笑うんだが。

 

 

 さて。

 

 

【ハルバード】、【キャタピラ脚】、【クロスガード】、【飲んだくれ】の偽装ギア四機。

【ナイト・オブ・シャベル】、チャクラム機とミサイル機の騎士、【ハードパンチャー】。

 

 合計、十一機。

 

 

「さて。再開しようか」

 

 

 混沌の大乱戦が始まった。

 

 

 




Q.こんな大乱戦書けるんですか?
A.明日とか明後日の自分に期待します。
お仕事が年末進行なんで激務予定で、ちょっと更新が出来ない日が増えてきます。ご容赦ください。

ブクマと評価ありがとうございます!めちゃくちゃモチベーションに繋がってます!
それとどしどし感想お願いしまーす!
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