塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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最終決戦的なノリです


50話:再来

 戦場を少し離れ、【ハルバード】を坑道の一つへと走らせた。

 ここに鉱夫達がギアを一機運び込んでくれているはずだ。

 カバーをかけて横たわった機体が俺達の目の前に置いてあった。

 おお、あったあった。

 

 

 うーん。どうするかな。

 

 

「どうした?」

 

 いやね。多分、使ってた感じさ。

 俺そんなに【ハルバード】と相性が良くないんだよね。

 

「そんなこと言われても困るんだが。

 そもそも、今さらなんだけど、なんで動かせるんだ。

 お前、ヴァレリアン卿の縁者だったのか?」

 

 みんなに言われてるんだけど、違うよ。

 育ちは別の都市だし、ここには数年程度しか滞在してない。

 

「ならばどうやって”生体ロック”を回避したんだよ。僕でも操作権限は無いぞ」

 

 うーんと。そうだなぁ。

 

 やって見せるから頼み事していいか?

 

「なんだ?」

 

 

 

 セドリック。お前が【ハルバード】を動かせ。

 

 

 

「は? なにを言ってんだこのバカガラスは。 無理に決まってるじゃないか」

 

 いやー。ちょっとお願いするわ。

 よいせ。

 

 ちょっと【ハルバード】さぁ。

 頼み事あるんだけど聞いてくれよ。

 

「何を──なんだこの光──?」

 

 なんだ。セドリックに操作させたいんだけどいいかな、悪い提案じゃないと思うんだけど。事情は承知している、構わん。ありがとさん。ただし、貴様の影響が無ければ短い時間しか保てんぞ。いいよ、どうせ最終的には置いていくんだ。ふん、短い間だったが、悪くなかったぞ。おう、ありがとうな。

 

 

「おまえ──何を独り言を喋ってるんだ──?」

 

 

 気にすんな。ほれ、操作出来るぞ。

 時間はよく分からんけど短いってさ。

 操作は見てたから分かるな?

 一般的な騎士機と同じ仕様だから。

 

 あとは任せたぜ〜。

 

「おい! 勝手に話を進めるな! ああもう分かったよ! やりゃいいんだろ!」

 

 おうよ任せた。

 

 そうして俺は【ハルバード】と別れを告げて、坑道に置いてあったギアへと走っていった。

 

 

 *

 

 

 よう。久しぶり。元気してた?

 しかし、余った武装搭載したって、なんだよ。

 半分くらいは俺が外したもの取り付け直しただけじゃん。

 他も、ロクなもの持ってないな。コテツもなんかアホだなー。

 

 まぁ、いいや。

 

 祭りに遅れるのはよくねぇよなぁ。

 

 心臓暖める時間もねえから、”繋ぐ”ぜ。

 

 

 俺は神経を集中させ、循環液を繋ぎ、潜り込んで行った。

 

 

 よう、ガキンチョ。よくもまぁ、おれを売っぱらいやがったな! わるいわるい。あのときはもうダメだと思ったんだよ、サーセン。うおこいつ謝るつもりさらさらないじゃねぇか。あたりまえだろ、俺とお前の仲だぜ。それもそうだな、で、祭りなんだって? 遅れてるじゃねえか。お色直しだよ。馬子にも衣装だな。なんだそりゃ。

 まぁ、いいや。行けるな? おうよ、任せるぜ。おーけー、任せろ。

 

 

 

 俺は、慣れた手つきで操縦レバーを操作した。

 こいつの操作に誤ることは有り得ない無い。なぜならば──

 

 

 

 ──行くぞ、【オンボロ】。

 

 

 

 長年連れ添った機体だからだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 俺達はすぐさまに戦場へと戻った。

 

 

「もうダメ~流石にグレネードの直撃はむ~り~。弾切れしたんじゃなかったの~」

 

「へそくりや! でも本気で弾切れや! うぉ! ぐあああ!」

 

 残弾に関する嘘をついていたタコ野郎のグレネードランチャーが【サークル・ザンバー】を吹き飛ばしたのが見えた。

 そして、その隙をつかれて【キャタピラ脚】の履帯をレールランチャーが撃ち抜き、転がした。

 

 

「君も脱落してくれ。あと残るのは、三機か。多いな。不利だ」

 

 三機。【グラスホッパー】の姿はまだ見えていた。遠距離からの攻撃に徹している。

 団長機とのレールランチャーとの打ち合いに興じているな。

 何が機動が苦手だよ嘘つき。避けれてるじゃねぇか。お前本当にギア戦初めて?

 

「まぁ、僕も弾切れです。二機だと思っていいですよ団長さん」

 

 弾数少ないからな。抑えられただけでも良しとしよう。

 

「くっ、グラハム兄さん──」

 

【クロスガード】は大きく切り裂かれており、既に撃破されていた。

 あの傷、シャベルにやられたか。中身は無事っぽい断面だが、騎士機を一撃か。

 気絶してるな。

 

「騎士団長デュラン! 貴様ああああ!」

 

 ブーストランサーを点火した【ハルバード】は、躊躇いなく突っ込んでいった。

 うぉ、無謀すぎるだろ──だが、俺にはそれは出来なかった行動だ。

 そう、その思い切りは俺にはなかった。どうやらセドリックに任せて良かったようだ。

 肩の稼働式の大盾でその突撃を防御、しかしいなしきれず、そのまま離脱を許した。

 

 

「──セドリック? なぜ【ハルバード】に乗ったまま──? あの傭兵は──?」

 

 

 一瞬の動揺。騎士団長の、理解と状況把握の思考の隙間が存在した。

 その瞬間を、俺は見切った。

 

 

 よお、騎士団長殿。

【ハルバード】のすぐ後ろに追従させてもらってるぜ。

 

 

「そこか──!」

 

 

 一瞬の困惑、しかしすぐさま反射的に超大型スコップを振り下ろした。

 だが、俺は左腕甲に装備された光鎖剣(レーザーチェーンソー)を起動していた。

 ギャリギャリと唸る音とともに、光の刃が振動させ、振り下ろされるスコップを”撫でる”。

 

 展開している脚部の小型ローラーを、自ら生み出した斥力にわざと弾き飛ばされて、スコップの一撃を逸らし、そのまま後方に旋回する。

 

 

【ナイト・オブ・シャベル】は強力なアームズだ。

 まともに戦えば簡単にこちらが鉄くずになってしまう。

 遠距離戦ではレールランチャーの砲撃力と、大盾での防御力に敗北する。

 近距離戦ではその圧倒的な膂力と、硬質な超大型シャベルの一撃で容易く切り裂かれる。

 

 

 しかし、どれだけ出力の差があろうが、どれだけ膂力があろうが──

 ギアも、アームズも、ヒトの形をしている。

 

 

 機械としての合理性は無いそれは、未だに理由不明なシャードジェネレータから出力を捻り出すために必要なカタチなのだ。

 だから、人の関節部分以外の箇所で動作をさせることは不可能。

 

【ナイト・オブ・シャベル】は出力のために、特殊な機構をすべて廃した”つまらない”機体である。そのため、人体とほぼ同じ動作しか出来ない。

 

 即ち、最も俺が有利に戦える場所とは──

 

 

「張り付かれた──! いや、後ろ!? 違う、前──速すぎる!」

 

 

【オンボロ】の光鎖剣(レーザーチェーンソー)と小型ローラーを用いた超近接戦に他ならない。

 

 ──切り刻まさせてもらうぜ!

 

 光鎖剣(レーザーチェーンソー)で“撫でる”。

 ぎゃりぎゃりぎゃりと連鎖したレーザー照射装置を回転させることで装甲を削る。

 そして力場を利用し、相手へのダメージを与えながら、弾き飛ばす。

 小型ローラーを駆使し、それを推進力としていきながら、更に加速する。

 

 

「クソっ、消えろ──!」

 

 

 横薙ぎの攻撃。コックピットを狙った良い位置だ。

 

 つまり、回避は容易い──!

 

【オンボロ】をアクロバティックに思いっきり逸らした。シャベルがコックピットの真上を通過し、風圧が機体を揺らす。

 他のギアならば確実に転倒するような体勢だが、小型ローラーを展開している【オンボロ】はその姿のまま前進。

 出力を抑えた光鎖剣(レーザーチェーンソー)を地面に当て、反発力を腕に受け取る。

 更に背面シャードブースター使用。斥力と噴射の両方を利用し、即座に起き上がった。

 その勢いのまま、再度”撫でる”。装甲を削り、また弾き飛ばされ、移動、旋回、加速。

 

 

 悪いが、俺とのダンスに付き合ってもらう。

 いいだろ、超絶美少女が相手してやるよ。

 

 

「傭兵──! 貴様──!」

 

 

 光鎖剣(レーザーチェーンソー)を振るい、撫でた。

 

 

 撫でた。火花が散る。踏み込み。加速。

 撫でた。反撃。遅い。軌道変更。回避。

 撫でた。装甲を削り金属片が舞う。旋回。

 撫でた。光鎖の斥力で体勢を崩した。追撃。

 

 

 撫でて、撫でて、撫でて──

 

 

 切り裂いた。

 

 

 肩部増設アームを破壊。稼働式盾の一枚を剥がした。

 レールランチャーは無理だったが──

 

「──今!」

 

 そこをセドリックがブーストランサーの突撃に入ってくる。

 

「っあああ! させない──!」

 

 そして、【ハルバード】のランスチャージへの迎撃にショベルを振るおうと──

 

 

 今。

 

 

 両肩に増設した小型ロケットを発射した。

 以前使用していたものを連動させただけの武装だ。

 ロックできず、射程も短く、牽制にも使えない武器だが、威力は高い。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 ドラゴンですら単発で悶えるその威力。

 それが同時に発射され【ナイト・オブ・シャベル】へとぶち込まれ──

 

 

「落ちろぉぉぉ──!」

 

 

 体勢を崩し、防御に失敗。

 そこに【ハルバード】のランスチャージが直撃した。

 




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