塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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58話:反省

 はーい。被害と残弾報告~。順番にやるぞ。

 俺、コテツ、アルマ、ヒルダの順、報告!

 

 被害は、ちょっと膝が怪しい。ライフル残弾充分。ロケット数発だけ。次!

 

「被害なし。ライフルはほぼ空、レーザー砲も不調。ロケットは未使用です。次どうぞ」

「被害、恐らく軽微です。ライフルの残弾は合計して3割を切ってます。ヒルダどうぞ」

「被害? えーと? 全身焼けちゃったから大きいかな? 盾は多分ダメ! 終わり!」

 

 よしよし。大体の残弾数とダメージ状況を把握しておこうね。

 アルマとヒルダの被害は二人が思ってるよりも低いよ。盾で大部分抑えられたしね。

 関節と内部装備群が無事なら、修復も簡単だし誤差範囲かなー。

 

 

 じゃあそのまま反省会~!

 

 

 まず俺は褒める!

 

 

 アルマいい感じ。あまり射撃を外してないし主火力として活用出来そうだね。

 

「ありがとうございます。もう少し精度を上げていきます」

 

 ヒルダかなり良い。防御専念とはいえよく耐えた。盾での殴りも出来てたし素晴らしい。

 

「ありがとうカラスさん!!」

 

 コテツ、お前よくもまぁあの空中全部処理出来たな。マジでなんで技術屋やってたんだ?

 

「秘密ですが、そこそこ実力を示せたと思います」

 

 

 続いて反省点!

 

 

 アルマは倒した相手に追撃をしすぎたかな。

 悪いことじゃないけど切り替えが遅めだね。注意しよう。

 

「気をつけます」

 

 ヒルダは盾打ちを覚えたあと、ちょっと動きが増えたね。

 狙われ続けてたのはあるから被害がちょっと増えちゃったかもしれない。

 攻撃と防御の切り替えを考えてやってみようか。

 

「うぐっ、わ、分かりました! 気にします!」

 

 

 で、コテツ。

【オンボロ】は空中戦が出来る近接機だ。当然飛んだ相手にも対応できる。

 俺じゃなくて、お前がワイバーン切りに行くべきじゃなかったのか? 見切り早すぎ。

 

「要求厳しいですね。ですが、近接への自信は全然無いんですよ」

 

 射撃の精度の確かさと状況解決能力は見えた。お前は上位傭兵並の実力がある。

 空中戦にも対応出来ていることは【グラスホッパー】の使い方を見て知っている。

 

 だから逆に、なぜ近接戦が出来ないのかが、俺にはわからない。

 

 だが、残ったビーストの処理ですら射撃を使った。

 ライフルの弾数がなくなるほどに弾を使用して、だ。

 安く済ませるのであればレーザーブレードを使う場面だったと思うし、この感じならば見切りは出来たはずだ。

 

 トラウマかなにかある感じ?

 

「無いです。単純な習熟度不足です。踏み込みすら怪しいレベルと思ってください」

 

 そうか。なんだか歪な習熟度な気はするが──理由は聞かないでおく。

 だけど、今後も戦っていくのならば近接は必須だ。明確な改善点として覚えておいてくれ。

 

「肝に銘じます」

 

 

 さて。

 

 

 自分の反省点!

 テンション上がってライフルをぶん投げました!

 あと余計な機動してワイバーンと一緒に落下しました!

 コテツ~、俺の機体の足回りちょっと見て~!

 

「はあ、カラスさんは教官役として最高の部類なんですが、締まらないですね──」

 

 おっ褒められたぞ。いいぞいいぞもっと褒めろ~。

 

「コスプレ似合ってましたよ」「よっ美少女!」

 

 あれは忘れて貰った方が嬉しいかなぁ!?

 

 

 *

 

 戦闘が落ち着き、塔の鼓動が聞こえている。静かなものだ。

 下層から中層へ戻る昇降機の位置を確認し、一通りの下層の残骸群の確認を終えて俺は宣言した。

 コテツを周囲の警戒を任せて、俺はアルマとヒルダに説明を始めた。

 

 

 はーい。方針説明!

 倒した残骸集めて撤退~。

 

 

「撤退するんですか?」「せっかく下層のスクラップ倒したのに?」

 

 

 下層のスクラップを倒したからだよ。

 いいかい新人二人。塔はね。無理に攻略する必要は無いの。

 敵の戦力も無限じゃないし、倒せば倒すだけ数は減るからな。

 こっちは3日も時間貰えたし、強引に攻める理由は今回は無い。

 

 まずは装備の更新だ。

 弾切れは確実だし、最低でもヒルダの盾を再構築しなきゃならん。

 

 だから、外の生産ユニット使って装備を整え直すぞ。

 ワイバーンユニットは結構いい値段で売れるから鋳潰さないつもりだ。

 だが、ビーストとフライアイを中心に、一通りのスクラップを運んで武装に転換させるよ。

 

「確かに。もう弾薬が心許ないです」「盾もだめになっちゃったし、賛成!」

 

 弾薬の直接補給は出来ないから、ライフルから武装変更することになると思う。

 だが、今よりは確実にマシな装備になるだろう。射撃役のコテツとアルマの武器更新は必須だな。

 

 

 あと休息もする。

 少なくとも君ら2人は一旦横になった方がいい。

 

 

「何故です?」「まだやれます!」

 

 

 そう、まだやれる。

 

 

 そう思ってるだろう。

 だが、戦闘の興奮が収まってない今とちょっと後で感じる疲労の具合は違う。

 ヒルダなんて特に防御役なんてキツイポジションを担当したんだ。

 落ち着いたら結構、神経が参っているはずだ。

 

 だから一回寝てリセットする。これはかなり時間を取ってもいい。

 最悪一日くらいの時間を無駄にしても、そちらの方を優先させてもらう。

 それだけ君らを本調子にしたい。その意図でやらせてもらうよ。

 

「分かりました、方針に従います」「カラスさんの言うこと、間違ってないもんね。分かったよ」

 

 OK。理解を得れたようで何よりだ。他に質問は?

 周囲警戒していたコテツから反応があった。

 

「僕から。ワイバーンユニットが出現したことは【バスティオン・キャリア】に報告します?」

 

 ああ、する必要があるな。通信は多分届くと思うけど、ギリギリかなぁ。

 コテツには機体整備をさせたい。アルマ頼めるか?

 

 

「了解です。内容は?」

 

 

 ワイバーンユニット発見。警戒度中の下。ドラゴン発見次第撤退予定。

 ただし装備はグレネードのため、ドラゴン生産無しの想定。

 かな。

 

「ドラゴンは居ないんですか」

 

 オートキャノン装備が基本かなー。あんまりグレネード持ったドラゴンは見たことないかな。

 ほら、ドラゴンブレスなんて特大火力兵装持ってるし。だいたい連射性能を重視してるんだよね。

 

 

 よし、方針。

 

 コテツは機体整備。

 アルマは通信。

 ヒルダはキャンプ準備。

 俺はパーツ作成と装備選定。

 

 それでアルマとヒルダを中心に全員順番に休憩!

 

「いいですよ」「了解しました」「はーい! 任せて―!」

 

 もう一回下層で戦うことになるけど弾切れでグダるより遥かにマシ!

 よし、撤退!

 

 

 

 *

 

 

 スクラップを運び出し、俺達はヒルダが作った野菜スープを飲んで腹を満たした。

 通信も無事成功し、もう片方の塔の攻略状況も聞きつつ、二人を休息させた。

 

 そしてどうせなので、俺とコテツだけで、外を徘徊するビーストどもと殴り合い、生産設備その2を奪取。

 メイド二人を寝かせている途中に再度ハッキングした生産設備を二台体制で稼働。

 盾と武器、装甲補修材を整えて、ある程度までは機体を万全の状態に持っていきたい方針だ。

 

 

 

 今は、生産設備を稼働させ、キャンプに戻ってきて二人でゆっくり茶を飲んで休んでいる。

 

 

 コテツ、本当に近接苦手なんだな。ビースト相手に空振るとは思わなかったわ。

 

 

「すみません。どうもギアを使って殴り合いをするというのが、どうも慣れなくて」

 

 

 慣れ。か。

 コテツ、俺なんか聞いたほうが良い?

 その手の腹の探り合い苦手でさ。どう取り扱ったものかよくわからないんだよね。

 

 

 俺の問いかけに、少しため息と躊躇いが混ざった声の返答が来た。

 

「直球ですね。カラスさんは確かにそういうの苦手そうですね」

 

 

 うるせーばか。

 でも今までただの技術屋だったと思ってたやつが、ここんところ一気に有能さを出してきたからな。

 "俺"に用があるんじゃないかと思ったんだが、自意識過剰か?

 

 

「いえ、自意識過剰なんて、そんなことは無いですよ」

 

 俺、なんとなく悪意というかそういうのには敏感なんだよ。

 だけど、お前からには"悪意"は感じなかった。ただ"観察"するべき、みたいな感じはあったかな。

 

 コテツは手に持った茶の入ったコップを覗き込みながら言った。

 

 

「そうですね。最初はそうでした。貴方を"観察"しに来たんですよ。

 そこまで分かっていて、よくもまぁ僕を近づけましたね」

 

 

 いやぁ。超絶美少女を見たいだけなのかと。

 うんざりした顔でコテツはぼやいた。

 

 

「そのネタそろそろ止めません?」

 

 

 うるせー。気軽にこの軽口言える相手が少ないんだよ。

 俺がタコ野郎と組んでた理由知ってるだろ。

 

 

「傭兵の間でカラスさんの奪い合いが発生したらしいですね。

 いやほんと魔性の女かなんかじゃないんですか?」

 

 

 あれ、本当に、困った。

 ただ超絶強くて可愛くて技術に理解があってノリがいいだけなのに!

 あーいう邪な連中と一緒に戦いたくねぇから、ずっとタコ野郎と組む羽目になったんだぞ。

 

 まぁ、だいたい実力が微妙な連中が、俺頼りに稼ごうとしてただけな気もするけどな。

 半端な連中揃いだったし、戦争に行ってだいたい散ってたのは、不謹慎だが残当かなって。

 

「モテますねぇ」「モテますよね」「絶対モテるよね!」

 

 なんかメイド二人が起きてきてる!?

 正直やめてほしいんだけど!

 

「恋バナかな、と」「起きねばならぬかな! と!」

 

 おかしいな。今日の話のなかで一番集中して聞きに来てるっぽいぞ?

 ええい散れ! この話おしまい! 切り上げ!

 良い子達なんだから寝なさい! 明日も早いんだから!

 

「ちぇー」「わかりましたカラスママ―」

 

 誰がママじゃい!

 口調硬すぎとは言ったけどそこまで砕けとは言ってねぇよ!?

 

「あははははは!」

 

 コテツお前、そこで笑うかぁ!?

 お前ら覚悟しろよ! 明日は一気に塔攻略することに今決めたからな!

 

「「「はーい」」」

 

 軽いなぁ!?

 




カラスさんが現場上司として信じられないくらい優秀なんですけど。
一話近くの孤高の傭兵感はどっかへ行きました。あの時はストレス溜まってたらしいです。
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