塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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極めて珍しい無双回です。


66話:疾駆

 まずは経緯を話そう。

 俺たちは【八本脚運輸】の動かせる機体を全機投入し、ゴブリン共の大規模攻撃から移動牧場を防衛する羽目になった。

 駐屯させていた【飲んだくれ傭兵団】たちと現地のAGではまるで手が足りず、しかし都市間同盟の盟約上、支援しなければならない状況に陥っていた。

 

 大軍勢が相手だ。

 敵の首魁は、ゴブリンの王である。

 

 一年前、討ち取ることが出来なかった王が戦力を集め再起した。

 要塞街周辺地域から逃れ、戦力を集めて食料を奪うために農連を襲い始めていた。

 王を逃していた事実を要塞街上層部のエルフどもは秘匿しており、発見が大きく遅れることとなったのだ。

 

 

 マジで、ふざけんなよ。

 

 

 あの戦争、本当に不毛だったな──

 関係ないのに謝ってた騎士サマが本当に可哀想だった。

 そう思いつつ、逆にこれだけの短期間で戦力を再び揃えた王の采配を敵ながら賞賛したい。

 ほんと敵ばっかり有能で嫌だなぁ。俺はいっそのこと吹っ切れた気持ちで決意していた。

 

 

 

 絶対に潰す。

 

 

 

 そう思いつつ俺は戦場を駆ける。

【クロスガード】は”騎乗”しながら爆速でゴブリンの王が居る本陣に向けて疾駆していた。

 

 グラハムからパクってから、かれこれこの一年間ずっと乗り回していた。

 悪いが、もう愛機と言ってもいいくらい使わせてもらっている。

 これだけ使えば、挙動のクセも知り尽くしており、目を瞑ってでも操作出来るくらいだ。

 当分返さねーぞとは言ったがこんなに乗ることになるとは思わなかった。

 反乱なんかしたグラハムが悪い。処刑されてないだけ良いと思えよ。

 

【クロスガード】は、フレームのバランスからして長所と短所がはっきりした機体だった。

 ガンガン乗り回したし、機体の隅々まで熟知したくらいだから好き勝手言わせて貰うぞ。

 

 

 

 欠陥鎧機(アームズ)だよコイツは!! 

 

 

 

 短所──いや、欠点を挙げさせてもらおう。

 装甲が脆い。膂力が弱い。移動が遅い。武器がほぼ持てない! 

 

 殴っただけで破損を気にしなければならない繊細さは本当にどうかと思うぞ。

 本当にシャードジェネレータ二基構成機か? やる気あんの? 

 

 

 だがそれを踏まえた上で──

 それでも極まった長所が俺を惹き付けてやまない。

 

 効率のいいエネルギーの瞬間出力。

 関節部の柔軟でしなやかな挙動。

 優れた応答性と機敏な瞬発力。

 そして軽快で圧倒的な速度! 

 

 

 具体的な速度の話をすると──

 ライフルマンの砲撃程度の弾速なら、視認した後から容易に回避できる。

 コックピットへの負荷もコアフィールドで守られており、少ない。

 その機動力がほぼ常に維持できているという点では、通常ギアでは無理な挙動だろう。

 凄まじい加速性能、まさに剣戟に特化した機体であると言えるだろう。

 

 

 そのようなピーキーな機体を使い続けた結果。

 俺達は、ある結論に至った。

 

 

 

 

 

 ──弱点は足し算で補強しよう──

 

 

 

 

 

 爆音と共に、"車輪"が回転し地面を砕き割りながらゴブリン王の本隊へと急速に接近した。

 ゴブリン王の本隊は、半壊し上部が削れ割れた小型のカーゴキャリアを本陣としていた。

 

 まるで玉座だ。引きずり下ろしてやるよ。

 

 その周囲に居た、小鬼型(グレムリン)が騒ぎ、けたましい叫び声をあげた。

 拡張した”王”の怒声が響く。本能で動くゴブリンどもをよくもまぁ統率するものだ。

 ゴブリンたちは急速に接近する俺を妨害しようと、従っているスクラップどもの尻を棒で叩き、そのやる気を促した。残る小鬼型(グレムリン)どもはキーキーと騒がしく跳躍しながら、思い思いに、粗雑な武器による雑多な射撃を繰り出してきた。

 

 が、そんな荒い攻撃は回避は不要だ。

 避ける必要を感じない。

 "跨っている機体"に取り付けられた稼働盾を操作。

 バズーカやグレネードによる攻撃を斜めに弾き、本体である【クロスガード】の身体を守る。

 爆発の衝撃が伝わるが、まるでびくともしない。やはりやる気がある時の親方は最高の仕事をするな。

 

 

 その加速を維持したまま、ゴブリンの集団に突進した。

 

 

 “玉座”から離れていた小鬼型(グレムリン)の群れを狙い、巻き込み、"轢き潰す"。

 前後に分けて取り付けられた大車輪は【クロスガード】の半身を越えるサイズであり、相当の重量と硬度を持つ。

 小鬼型(グレムリン)の脆いフレームなど容易く砕き、ばりばりと割りながら赤い染みを大地にペイントした。

 

 そのまま速度を全く落とさず、集団を弾き飛ばしながら後方へと一気に駆け抜ける。

 グレネードやバズーカによる反撃が繰り出されるが、弾速が俺たちよりも遥かに遅い。

 速度を維持したまま振り切り、雑多な攻撃はすべて通り抜けた地点へと着弾し、爆発した。かすりもしない。

 

 だが、反撃はさせてもらう。

 武装として取り付けた中距離制圧用武装の大型ショットキャノンを【クロスガード】の片手で操作し、連射する。

 これはカーゴキャリアに備え付けられるような大型火器であり、ギアならば大型機が両手で持つか、肩へマウントして装備する大きさの砲だ。

 それは1発がライフル程度の大きさの散弾となり、玉座周辺にたむろしていた小鬼型(グレムリン)どもに降り注いだ。

 次々とその脆い鋼を貫通し、中身を挽肉へと変え、動かぬ骸を量産していった。

 狙いを付けなくても当たるボーナスタイムだ。ひたすら玉座の外側から削らせてもらうぞ。

 

 

 

 こんな平坦な荒野を戦場に選んだ自分を恨め。ゴブリンの王よ。

 

 

 

 

【ブレイズ・ホイール】

 

 これは【クロスガード】の腕を通じて外部から操作するバイク型特殊AGだ。

 シャードジェネレータを積んだ立派なAGであるが、コックピットは外付け式となっており、現在無人で稼働している。

 本来無人だとなぜか動かないAGであるが、機動を前後のみに限定し、外部からギアやアームズが搭乗し、操作することで稼働を成し遂げた。

 重武装、稼働盾による防御、二輪車軸の踏破力、そして圧倒的重量。

 これら【クロスガード】に不足しているものをすべて詰め込んだこれを扱うことで、真の意味で騎兵となった俺達は次々に小型スクラップと小鬼型(グレムリン)をコナゴナに潰していった。

 

 

 ゴブリンは守勢に非常に弱い。

 主戦力がライトフレームと、付き従っている小型〜中型のスクラップの群れなのだから、当然と言えるだろう。

 攻めはともかく防御に関してはまるで考えられていない戦力だ。そもそも野外のゴブリンに守りという概念はほぼ存在しない。

 そのような戦術的概念を理解しているのはゴブリンの王のみだ。

 

 だが、付き従っているスクラップの戦力を見ると、意外と性能が良いスクラップが従っているな、と戦力を外から見て思う。

 

 中型の猿人(エイプ)。なかなか悪くない機体だ。

 そのうち一機が俺の元へ強襲するため跳躍してきたが──

 

 剣戟特化機の【クロスガード】に接近戦挑むとはなぁ! 

 跳躍してきた猿人(エイプ)に向け【ブレイズ・ホイール】を疾駆し【クロスガード】の左腕に取り付けられた、自慢のレーザーブレードを起動。

 接近に合わせて振り抜いた。

 

 両断。

 

 高熱の刃は斥力を纏いながら、まるで抵抗が無かったかのように猿人(エイプ)の身体を綺麗にすり抜け、胴体を上下に”分割”した。

 瞬間的なエネルギー出力をひたすら重視した熱線刃は、これほどの威力を実現出来る。

 

 中型とはいえ、大きめの戦力が一閃で倒された混乱がゴブリン達の間に響く。さすがに生命の危機を実感したらしく、小鬼型(グレムリン)どもがわたわたと分散した。

 王に従うか、逃げるかを考えているようだ。

 

 隙だな。

 

 オート挙動を設定。【ブレイズ・ホイール】を突撃機動。群れの中へと激突させる。

 そして、その瞬間【クロスガード】は、その車体を踏みながら上空へと高く跳躍。空中へと離脱した。

 一瞬で腰部にマウントしたハンドガンを引き抜き、真上から次々に射撃を繰り出した。

 “上”を取られることが少ないゴブリンどもは、一切の対処が出来ずに弾丸が次々と命中していった。

 ゴブリンどもの血で、荒野の砂と岩の地面を赤く染めあげながら、骸しか無い着地点を作成。

 

 そのタイミングで機動していた【ブレイズ・ホイール】が群れの一団に激突。その場を暴れ回らせて集団を轢殺しながら通り抜ける車体にゴブリンたちは阿鼻叫喚し、しかし気がそちらに向かった瞬間に、着地した。

 

 

 

 レーザーダガー。起動。

 

 

 

 ゴブリンどもは大混乱に陥り思考が停止しているのか、足を止めてしまっていた。

 脚部とシャードブースターを細かく使い、ダンスのようにステップしつつ滑るように駆け抜ける。

 敵のすべてが静止する中、【クロスガード】だけがその隙間を縫うように踊り、次々と右手のダガーによる舞踏を披露した。

 

 光の軌跡がひとつの線となって軌道を描き、移動とともに通過点のすべてを切り刻んだ。

 

 血を払うように右腕を振り、レーザーダガーを停止。

 光の刃が消えると共に、移動経路に居た小鬼型(グレムリン)どもが全て崩れ落ちた。

 

 

 正気に戻ったゴブリン達が衝動のまま射撃を繰り出してきたが、即座に再跳躍。

 中心点に居た俺達を狙ったその射撃は同士討ちを誘い、爆発。互いに互いを傷つけるだけの結果になり悲鳴が轟いた。

 そのまま上空で翻りながら、狼狽えるばかりのゴブリンどもに追撃のハンドガンを連射。生存者を減らしていく。

 そして、大きく迂回し、再度突撃して戻ってきた【ブレイズ・ホイール】に着地。そのままハンドルを操作し一気に離脱。オマケとして離脱の隙に備え付けのショットキャノンをぶっぱなし、大勢を巻き込み、生命を散らしていった。

 

 今の一瞬で”玉座”を守る雑魚子鬼どもを半分削った、そろそろ大型機が出てくるな。

 

 そう思ってた最中、予想通りに、カーゴキャリアの後方部から各部が空洞になった巨大な手が現れ、のっそりと大型スクラップのその姿を表に晒した。

 

 

 虚巨人(ギガース)か! これまた大型機だ。一年ぶりだな。

 

 出陣した巨人は欠けた顔から、通り抜けるような低い唸り声を轟かせ、戦場にその存在感を示す。

 虚巨人(ギガース)なんかどうやって用意したんだよ。

 巨人は首や手足に鎖を巻き付けられており、まるで囚人か奴隷のように傅き、その上に鎖を持ったグレムリンが騎乗し支配していた。がら空きのコックピットから嫌らしい笑みが浮かぶのが見える。

 

 そして、更に半壊したカーゴキャリアから三機の中型と、大型のAGが跳躍し、荒野を砕きながらそれぞれ着地した。

 

 盾を構えた大鬼(ホブゴブリン)。三機ともに守るように大型AGを囲み防御の姿勢を取っている。

 

 そして大型AG──戦鬼(トロール)! 

 

 戦鬼(トロール)は見事な装飾が飾り付けられた”二基構成”のAGだ。荒々しい大根棒を振り回す膂力に特化した暴力の化身。

 

 ゴブリンの王の乗機だ。

 

 温存していた戦力を切った王は、なりふり構っていられなくなったのだろう。

 見せ札の【ブレイズ・ホイール】の機動力から判断してくれたか。足を止めて戦わなければ逃げられないと確信したらしい。

 好都合だ。

 

 俺は【クロスガード】のハンドガンの銃口を王に向け、宣言した。

 

 

 ここがお前の墓場だ──! くたばれゴブリン王! 

 

 

 




1年後〜はバイクに乗るのは既定路線だったんですが、論理的に考えるとチャリオット型の方が適してる気がします。
でも、かっこいいんで、バイクにします。

めちゃくちゃ無双してますが、騎士サマと【ハルバード】も同じこと出来ます。
えっ、そんな戦力をハブいて負けた戦争があるんですか!?!?
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