塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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遅くなりました。
書けない時期続いたので遅れに遅れて申し訳ない……


70話:収支

 荒野。

 

 戦いは終わった。

 

 

 戦況は落ち着き、逃亡したゴブリン達の追撃と周囲警戒は、農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)所属のAG達に任せる方針となった。

 撃破したライトフレーム達の残骸の回収や、防衛網構築もあちらが担当してくれるらしい。

 今回の俺達の依頼は純粋な戦力の提供だからな。このくらいはやってもらわないと困る。

 そのため俺たちは補給を兼ねて【バスティオン・キャリア】に帰投する予定だ。

 

 

 周囲には【八本脚運輸(オクタライン・ロジスティクス)】の機体が勢揃いし、待機していた。

 俺以外の機体は全機健在であるが、無事な機体は一機も居ない。激戦だった。

 暇な人員は誰一人として居なかったと断言できる。

 

 

 その機体群の中心で、俺は──

 

 

 

 

 

 荒野で正座していた。

 

 

 

 

 

「カラスはん。正座崩すなや」

 タコ野郎は触腕を組みながらキレてる。

 

 

 はい。座ってます。

 

 

「作戦覚えてます? 陽動と牽制だけって、僕言いましたよね?」

 コテツは頭痛がするかのように額を押さえ、天を見上げていた。

 

 

 はい。覚えてました。

 

 

「カラス先生、なんでゴブリン王と殴り合ってたの? 待てなかった?」

 ヒルダがなんとか擁護しようとしたが無駄だった。

 

 

 はい。待てませんでした。

 

 

「バカガラス。弁明あるなら聞くぞ」

 セドリックがどうしようもない阿呆を見るかのような目をしながら聞いた。

 

 

 はい。あのぉ──そのぉ──テンション上がっちゃってぇ──

 

 

 

「わはははは! このカラスが止まるわけねぇだろうよ!」

「無理でしょうねぇ。火を見るより明らかですよ」

「ガハハハハ! やっぱり痺れきらしやがったか! 俺もやりたかったぜ!」

「俺等なんぞに制御出来るわけねぇだろうが、とんでもねぇ凶鳥だぞこいつ」

 飲んだくれどもが乾杯しながら適当ほざいた。

 俺にも一杯寄越せよ。

 

 

「ダメだ、許さん。私の【クロスガード】をここまでボロボロにするとは、やってくれたな?」

 グラハムが口元を怒りでぴくぴくとさせていた。

 

 

 はぁー? 一年も使ってりゃ俺の機体ですぅー。

 

 

「貴様! あんな無茶をしてその態度か!」

 

「カラスさん! グラハム様を煽らないでください! グラハム様も抑えて!」

 キレたグラハムをアルマが制した。

 

 

「カラスはんが殴り合った援護するのに連携乱れたんやで! めっちゃ大変やったわ!」

 タコ野郎が憤慨している。もう少し消耗を抑えられたケチ根性の所為で俺にキレていた。

 

 

「間に合わなかったんで、コテツさんを狙撃に向かわせて、中央は社長一人でしたからね」

 アルマが冷静に状況を教えてくれた。

 

 

 俺が作戦ガン無視でゴブリン王と戦ってた所為で連携が崩れて、慌てて援護に行く羽目になって全体被害が広がってしまったらしい。

 

 

 

 てへぺろ。

 

 

 

「反省の色は無いらしいな! 覚悟しろ!」

 グラハムは再びキレた。

 

 

「カラス先生ふざけないで!」

 ヒルダにも怒られた。

 

 

 

 しょぼん。

 

 

 

 *

 

 

 

「何故"王"を討伐した英雄が叱責されているのだ?」

 

 

 農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)所属のAG乗り達が来て、俺への説教は終わった。

 戦場を駆け回っていた四脚AGの【ケンタウロス】に騎乗していた馬耳種族(ホースメン)の隊長がコックピットから降りてきて、俺達に敬礼して話しかけてきた。

 

 

「この度の襲撃防衛の任、見事な活躍だった。

 騎士機を二機も連れてきてくれるとは、【八本脚運輸(オクタライン・ロジスティクス)】に依頼したときには全く思いもしなかったぞ。

 しかも王の討伐まで成し遂げるとは、要塞街(アイアンホールド)の騎士達の実力をまざまざと見せつけられた気持ちだ」

 

 

 あー。まぁ俺も騎士ということになるのか。

八本脚運輸(オクタライン・ロジスティクス)】は、タコ野郎が社長だし実質的にはそこまで要塞街と関係ないんだが、外征騎士が二人も居るから政治的にはそんな扱いになっちゃうな。

 

 

 そっちも戦場かけずりまわってくれてご苦労様だ。仲間が助けられたらしいな。感謝するぜ。

 野戦特化機の【ケンタウロス】の機動力、遠くからだったが見せてもらったぜ。

 あと10機くらい居てくれりゃ、俺達を雇う必要もなかっただろうけどな。

 

 忠告なんだが、犬頭種族(コボルト)たちが乗ってる【バグベア】じゃどうしようもないだろ。

 流石に更新したほうがいいぜ。

 

 

「理解はしているのだが──ままならないな。

 どうしても要塞街(アイアンホールド)のような戦力を用意するのは範囲が広すぎて難しい。

 この地域最大の工場地帯のそちらを頼るしか無いのだ」

 

 

 うん、言ってみただけ。そっちの台所事情が厳しいのは知ってるからな。

 逆に食糧生産だとそちらに頼りっきりだからお互い様だよ。

 まぁ、うちを贔屓にしてくれ。そこそこ高いが、騎士まで居る確かな戦力を約束するぜ。

 

 

「ああ、また頼りにさせてもらうよ」

 

 

 今回みたいな襲撃はそうそう無いだろうがな。

 王の討伐も終わったんだ。そちらの"首都"へ塔でも落ちてこなきゃ大丈夫だろ。

 

 

「ははは。その場合はうちは壊滅だな。小麦とトウモロコシの高騰は覚悟してくれ」

 

 

 やだなー。怖いな。

 

 

 

 *

 

 

 引き継ぎを終えて、【バスティオン・キャリア】の会議室に移動した。

 ボロボロになった【クロスガード】と【ブレイズ・ホイール】の回収も実行し修理を初めている。後で俺とコテツも参加する予定だ。

 今日は戦闘後だから整備班に任せて休ませてもらうが、明日から修理と整備で激務だな。

 

 コテツが携帯端末を操作し、会議室のコンソールに戦闘収支をまとめたリストを映した。

 この会議室のコンソール関連設備は、ある程度資金が入ったあとすぐにコテツが用意して整えた。

 

「はー。予想外の展開になりましたが。いいでしょう。収支報告です。

 防衛は我々担当箇所の被害は2割程度の損耗に収まりました。

 報酬額から引かれるそうですが、あれだけの襲撃でこの程度なら許容範囲です」

 

「11機も動かしたんだ。報酬額は大金だったが、それでもあの防衛範囲は広すぎだ」

 

 作戦指揮担当のグラハムが嘆く。

 いや、本当に広かった。

 結果的には移動農場10面分くらいを同時に防衛しなきゃならなかったもんな。

 

「緊急契約やからな。その分大金せしめたんやけど。もっとぼったくってもえかったやな!」

 

「割に合わん。もう少しと農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)の弱小AGどもがまともに撃退してくれたのならば、このような厳しい防衛をしなければならない理由はなかったのだが」

 

「【ケンタウロス】はだいぶマシだったが、あの【バグベア】は本当に酷かった。

 なんだあの機体たちは。味方を守るために【エスクワイア】へ被弾を許したくらいだ。

 そこのドワーフどもや要塞街の兵士が本当に優秀だとよく理解したよ」

 

 セドリックが疲れたように呟いた。

 農業連合のコボルトたちの指揮を任せて、一番敵が多い所で殴り合って貰ってたからな。

 まぁ、俺とお前しか騎士機を動かせないんだから負担の割合としては仕方がないんだけどさ。

 

 コボルト達が乗る【バグベア】はライトフレームにジェネレータ付けただけ、というレベルの機体だ。防御力は確保出来ているが、本当に弱い。農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)の予算事情と技術力が知れる機体とも言える。

 

 コテツが会議を進行させた。

 

「ですね。仕方がないです。

 むしろ各防衛ポイントを二機以下の配置としてこれは充分な戦果と言えます。

 なんだかんだカラスさんが遊撃で本隊を留めたのと、中央を僕とタコ社長でさっさと制圧出来たのが大きかったです」

 

 

「私とアルマがライダー潰せたの大きかったよね。あそこも多かったし」

 

「嬢ちゃん達強くなったなぁ。若人の成長で酒が美味い」

「格闘だけしか出来ねぇが、それだけなら俺達と並んでも遜色ないぞ」

「俺達の弟子にしては殲滅速度が遅い! もっと撃ちまくろうぜ!」

「やはり火力不足です! 盾なんか捨ててグレネードを詰みましょう!」

 

「師匠達のおかげです。やはり火力──考えてみますね」

 

 メイド二人とドワーフ四人がわちゃわちゃ言っている。

 普段の姿は教育に悪いが、飲んだくれどもは戦闘の上では良い手本になってくれてメイド二人をしっかり教えてくれた。ただし悪影響も酷いが。

 

 

「そして、バカガラスの独断だったが、結果だけで言うと取り逃したゴブリン王の討伐が出来た。

 大戦果だ! これでやっとあの戦いで散った仲間たちに報告が出来る──!」

 

 セドリックが少し興奮しながら語った。

 そういえば王との戦いで部下を失ってたんだったな。

 

「しかもゴブリン王は賞金首や! 要塞街(アイアンホールド)側からも支払いも確約してくれたやで! 報酬もたんまりやー!」

 

「社長的には嬉しいでしょうね。事実、カラスさんが使っていた二機はかなり修理する必要があり、費用がかさみましたが、それでも収益は大幅なプラスです。

 ただ、運用戦略上では【ブレイズ・ホイール】が一時的にほぼ使えない状態になってしまったのが痛いですね。カラスさんを自由に動かせなくなりました」

 

 いや、まぁ。

 俺としては不便だけど気にしないよ。うん。

 

 正直、休暇欲しいんだよ!

 俺が単独で【ブレイズ・ホイール】使って移動出来るようになってからさぁ! 休み無しであっちこっち出ずっぱりじゃん! 酷使し過ぎだろうがよ!

 

「便利なのと書類嫌いなのが悪いんやで」

 

 うーん。それはそう!

 動いてる方が楽だったから単独であっちこっち輸送にかけずり回る羽目になってたんだよね。

 自業自得とも言えるが、今の俺は適度に働いている方が楽な気分だったからそこまで強い気持ちで言ってはいない。じゃれ合いのようなものだ。

 

 

「でもまぁ、カラスさんにやらせたいことがありますし、ちょうど良いですね」

 

 

 コテツが呟いた。

 あん? 次は何やらやらせんのさ。

 

 

 

「ちょっと女装してきてください」

 

 

 

 ──あのさぁ。俺、女なんだけど????

 

 




毎回感想、すごく楽しみにしています。感想って本当にモチベーション上がりますね。
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