塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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どシンプルに全然筆が進みませんでした。申し訳ない。


74話:会場

 誰!? 

 

 

 海賊略奪同盟の機体から出てきた人物は、全体的に白い印象を持つ可愛らしい美少女であった。

 長く豊かな白みがかった銀の髪と、透き通るような薄く白い肌。

 着用するドレスは白を基調として薄い水色を差し込んだ手の込んだ代物だ。

 顔立ちは小顔で、切れ長のたれ目をした透明感のある美しい少女である。

 

 

 タコ野郎はそんな美少女に、デレッデレの”茹でダコ”になっていた。

 

 

 面白すぎる。やばい。あんなグデッグデのトロットロになったタコ野郎の顔初めてみた。

 あの顔だけで何かしらの法に触れている気がする。そのくらい品のない顔をしてやがる。

 

 

「ささ、セレネ。行こか?」

「でも──」

「ええんや! あのアホどもに絡まれたら面倒や!」

 

 

 クネクネと気持ち悪い身動ぎをしながら、セレネと呼ばれた美少女の手を取った。

 そしてそのまま、そそくさとパーティ会場へと向かっていった。

 というか今、あの野郎。俺達を見てアホどもって言いやがったな──? 

 

 

 ──セドリック! タコ野郎のゴシップだぁ! 調査するぞ手伝え! 

 

 

「嫌だよひとりでやってろ」

 

 

 セドリックは興味ゼロの呆れ顔で答えた。なんでさ! 

 

 お前こんな面白いこと見逃すのか。だってタコ野郎が"茹でダコ"になってんだぞ!?

 会社の金を横領してドレスや宝石送ったりするような愚かな顔してたぞ!? 

 

 

「偏見がひどすぎる。横領など経営陣に貴族が二人もいる状況で出来ると思ってるのか。

 あと彼女は──まぁいいや。それよりも護衛どうするんだよ。忘れたのか?」

 

 

 む。

 それを言われると苦しいな。

 アルマとヒルダに任せれば正直なんとかなると思うが、任務放棄と思われるのも癪に触るな。

 しゃーない。切り替えよう。

 

 

 どうせ後で喋ってくれるだろ。

 俺を【八本脚運輸(オクタライン・ロジスティクス)】に巻き込んでおいて他の女にうつつを抜かすとはいい度胸だ。

 

 

「どういう感情で言ってるんだそれ」

 

 

 自分でもよくわからん。

 まぁいい、行くぞ。ほれ、セドリック、エスコート頼んだ。

 

 

 複雑そうな表情をしたセドリックの腕を取ってエスコート(強制)させた。

 動きがぎこちない。脇腹を指でツンツンしながら会場まで歩かせた。

 

 

 さっさと歩け~。

 

 

 *

 

 

 今回のパーティはそこまで形式張ったものではない。

 その事実は、会場がリング外縁部分にある倉庫の真隣にあることからもよくわかる。

 

 ここは外の窓口として商人を招き入れる、実利を重視した場なのだろう。

 倉庫としても流用出来そうだ。農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)全体としてはそこまで”見栄”を張る風土は無い。

 湖上都市(ヴァルノール)は芸術家も数多く、パーティは過度な装飾を施すか実質剛健にやるかは主催者次第である。今回は”実”を取っているな。

 

 宴会場の中の顔ぶれを見回す。

 各街から来たような正装の外交官。恰幅の良い商人と、ドレスで着飾った商会の令嬢。

 一見粗野だが、この場に呼ばれるだけの品性と実力を持った傭兵団の頭目。

 先日も顔を合わせた騎兵隊長。交易船団を率いているであろう大柄な船長。

 そして我々要塞街の騎士。多様だが、街一つから出ない人物は居らず、荒野を行き来する人物ばかりを集めたようだった。

 

 うちの一団はどこに居るだろう。

 そう探すと会場の中心点から少し離れた位置にテオドール卿は居た。

 

 テオドール卿は、各街の外交官か有力者達とにこやかに”戦闘中”だ。

 みんな朗らかで穏やかな笑顔で、しかし高速で話が切り替わり続けていた。

 穀物価格の変動幅、交易航路の本数、水利権の調整、それらの話がさらっと聞こえたな。

 この一瞬の会話で何かが決まり続けているのだろう。怖い。

 

 卿の斜め後ろの位置を確保したヒルダは、無言で”護衛”として静かに控えている。

 手にはトレイを持ち、その上にアルコールと軽食を載せて、テオドール卿の交渉を円満に進めるための道具として利用されていた。

 

 

 タコ野郎はセレネと呼ばれた美少女とともに、複数人とべちゃくちゃと喋っていた。

 恰幅の良い商人や気が荒そうな傭兵を中心にして大笑いしながら歓談している。

 声がデカいタコ野郎は「じゃその価格で商品扱わせてもらうんで!」とか言ってる。

 傭兵の仕事斡旋、人員と物資の輸送、解体業者割り振り、船同士の連絡と連携体制構築。

 そのように話題があっちこっちへと飛び回りながら、そのすべてが順番に着陸していく。

 なんかタコ野郎も会場入りして数分で色々仕事しまくってるな。恐ろしい。

 

 タコ野郎の隣でセレネは上品に笑いながら聞いていた。

 邪魔をせず、合いの手をはさみながら聞き役に徹している。

 上流階級の所作を叩き込まれているのがよく分かり品のない箇所は一切無い。

 ぽわぽわとした雰囲気ながら、すごく嬉しそうにタコ野郎の話を聞いていた。

 おー。本当に後で話を聞かせてくれ。

 

 

 アルマも会場入りした俺達に自然と合流し、サポートを始めた。

 この二人、本当に貴族出身のメイドだったんだなぁ────

 

 

「僕もちょっと話してくる。食事を楽しみにしてたんだろ。行ってこいよヴァレリア卿」

 

 

 セドリックに粗雑に放り出された。

 どうやら外征騎士としての権威を示しに行くつもりらしい。

 アルマもセドリックのサポートをするために連れて行かれた。

 

 

 うん。俺はこの戦いについていけそうにない。あとはまかせた。

 ちょっとあそこの修羅達の間に乱入するのは難しい。大人しく壁の花になっておこう。

 

 

 ということで俺は──食事を堪能する方針に一気に切り替えた。

 

 

 *

 

 

 長卓には農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)自慢の料理の数々が揃えられていた。

 多様な穀物のパン。豆類の煮込み。燻製した湖魚。チーズ。

 分厚く切り分けられた穀物牛のロースト。更に新鮮な果実も置いてある。

 

 発酵果実酒もそこら辺の給仕から受け取り、これらの料理に舌鼓を打った。

 

 まずは肉! おいちー! 

 暴力的な肉の旨味が口内を支配する。

 味だけを追求した脂が乗ったその身は、家畜の効率など投げ捨てたと言って良い代物だ。

 

 農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)のこだわりが追求された外交用の強力な”武器”。

 これだけのためにこのパーティに参加したと言っても過言ではない。

 

 少し上品に偽装するため、小口で少しずつ食べる。

 小さい果実も食し、塩気と甘さを交互に味わいつつ、ゆっくりひたすらに食べ続けた。

 

 

 そうしていたら、大柄な男に声をかけられることになった。

 

 

「おや可愛らしいお嬢さん(マドモアゼル)。パーティを楽しんでいるかな」

 

 

 風貌からして、海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)の”船長”かな。

 

 なんというか、顔つきが濃い。

 

 割れた顎に整えたヒゲにでかい顔。

 主張が強い眉毛に、尖ったモミアゲにリーゼントの伊達男だ。

 

「おおっと自己紹介が遅れたな。レディに先に名乗らせるなんて不作法はしない。

 俺の名はダンディ・ハンサム! 海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)で船を率いさせて貰っている」

 

 

 なんだろうな。あのバカ(ジャック)とほんのり同類の匂いを感じるぞ。

 だが、口ぶりからカラッとした快活さを感じる。印象は悪くない。

 

 

 ──ヴァレリアよ。覚えなくて良いわ。

 

 

 普段なら煽って酒のんで馬鹿騒ぎするところだが、今は偽装系お嬢様モードだ。

 喋れば喋るほどボロが出まくるので、悪いが袖にさせてもらうぜ。

 

 

「おいおい、釣れないねぇ。噂の外征騎士サマとやらがどんなものか話にきたんだぜ。

 まずは乾杯といこうじゃない。それだけ食べれれば多少のアルコールも問題ないだろ?」

 

 

 おっと観察されていたか。なら少しくらいは付き合ってやってもいいかな。

 給仕から追加の酒を受け取り、ハンサム君へと会話を促した。

 

 

 ──仕方がないわね。一方的に喋ることくらいなら許すわ。

 

 

「おいおい、可愛らしいのに威勢がいいね。気に入ったぜ」

 

 自分に全く臆さない面白い女を見つけたと言わんばかりの反応だな。

 まぁいいや。暇つぶしするにはちょうどいい。

 

 からん、とグラスを互いに当てて酒を飲み干した。

 

 

 *

 

 

 ハンサム君は陽気でなかなか話が上手い男だった。

 親しみやすく、言葉選びもうまく、話題の幅も豊富。

 クール系美少女モドキの皮を被ってなければ一日中話してられそうだ。

 

 

「俺は今回、セレネ姫さんの用心棒扱いでここに呼び出されたようなもんさ。

 必要ないと思うが、農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)の食事と酒は楽しみだったもんでね。”これから”の事を考えるとあまり酒が飲めないのは惜しいところだが」

 

 これから? よくわからない言い回しをしているな。

 主催も目的も未だによくわからないが、何事も問題なく進行していると思うのだけど。

 

 

 ──何か起きるような口ぶりね。

 

 

「んん? お嬢さん知らないのか? だってこのパーティは──」

 

 

 そうして、言葉を最後まで聞く前に、パーティ会場の奥の方から背の低い影が歩いてきた。

 質の良い衣服を纏い、ステッキを持った”猫頭”の紳士が登場し、会場の視線を集めていた。

 

 

「にゃはははは! 楽しんでおりますかな紳士淑女の皆様方! 

 農業協働連合(アグラリアン・コンパクト)の総議長のミードですにゃ! 

 

 まずは、この”現政権転覆革命前夜お疲れ様でしたパーティ”! 

 

 参加して誠にありがたい幸せを感じてますにゃ! 

 たぶん明日くらいには何の肩書も持たない一匹の猫人(ケットシー)になる予定の私のために集まって頂き大変感謝してますにゃ! 

 

 

 が! そろそろお開きの時間! 

 

 事前のお話の通り──

 パーティ会場に血気盛んな暴漢がなだれ込んで来る予想ですにゃ!」

 

 

 ──は? 

 

 

 あまりにも意味不明すぎる主催者の発言。しかし俺以外の誰も驚かなかった。

 緩い笑い声と弱い拍手が響く中、参加者は移動したり銃器を取り出したりと準備を始めた。

 

 

 そうしていた時、どこからか爆発音が響いた。

 

 

「各々方、お持ち込みの武器をお取りくださいにゃ! パーティ第二幕始まりですにゃ!」

 

 

 




あまりも自然な戦闘の導入です。
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