塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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決着の流れに悩んで時間が掛かってしまった。これで決着です。


85話:演舞

 適合調整(アジャスト)はこっちでやっておくからさ~、さっさとパーツ集めな~。なんだよ、急かすじゃねぇか、やる気あるな。そりゃ~久々に"踊れる"ってなればね~、みんな情けなくて仕方がなかったよ。うるせーじゃじゃ馬、お前が悪いんだろうが。ぼく悪くないし~、作った人と使いこなせないみんなが悪いんです~。姉御でダメなのは要求ラインが高すぎだろうよ、お前も悪いよ。そ~も~そ~も~僕は"そっち"が本領~、理解してない人が多すぎたね~。はいはい、わかったわかった。じゃ、任せるよ主演女優(プリマドンナ)、お色直しは迅速に、ね。

 

 

【サークル・ザンバー】は、言うことは全部言ったと言わんばかりに沈黙した。

 

 

 俺も急がねぇとな。シュラが立ち上がる前に全部終わらせなきゃ行けない。

 シャードブースターと脚部を駆使して、ステップを踏むように俺達は飛んだ。

 

 

 *

 

 

 先ほど、接続した際に【サークル・ザンバー】から聞きとった、本当の設計思想。

 それは狂人の思想であり、知的生命体ではまともに扱うことができない代物だった。

 なにせ機体本人は、前回の使い手であるスナイパーネキの評価が──

 

 "妥協の上でギリ及第点"

 

 程度にしか思ってない。ちょっと判定が厳しすぎる。

 しかし、本来の仕様を聞いたらば、確かにそうだろうと納得できる真実ではあった。

 

【サークル・ザンバー】は意図的に性能低下(デチューン)した機体である。

 

 この扱いづらさですら、知的生命体がまともに運用できるレベルに調整したものらしい。

 そんなものだから、元来の仕様は狂気の沙汰だと思うしかない。

 

 タカメ女史は武器の扱いだけで全てをねじ伏せる技巧派の傭兵だ。

 武装運用的には超一流の乗り手と言えるだろう。

 だから、機体運用においては絶対にアクロバティックな行動をしない。

 そんな必要は無いし、体勢が崩れるような行動をして行動成功率を下げることを嫌うからだ。

 そのため、機動、回避、操縦技術においては高水準ではあるが、一流傭兵では普通の方だ。

 

【サークル・ザンバー】としてはそれがお気に召さないらしい。要求が厳しすぎる。

 

 まぁ、本気で元の仕様のままぶん回したら、常に繊細なエネルギー分配調整が必要になる。

 そんなことを忙しく熟しながら機体を動かせる人物はそういないだろう。

 だから、"普通に戦えるレベルまで落とし込む"という判断での調整は妥当だと、俺は思う。

 

 しかし、腕が丸々取り外されてしまい、戦えない状態に陥ってしまった。

 ならばもはや是非もない。"足"を本来の姿に戻す必要がある。

 

 片方は踏み砕いた腕から"回収"し、簡単に接続できた。

 適合調整(アジャスト)は【サークル・ザンバー】が実行してくれている。

 まだ起動は出来ないが、シュラの復帰には間に合ってくれるだろう。

 元より接続を想定されていた装備だから、この程度の高速の武装変更は容易い。

 

 

 しかし、シュラの復帰が想定より遅い。

 あの流血だ。そのままくたばってくれたらとは思うが、まぁしぶとそうだし戻ってくるだろう。

 

 もう片方の切り落とされた腕を回収しなければならない。

 だが、跳躍するたびに、体勢が崩れ思うような速度での移動が出来ていない。

 

 ええい、腕を切り落とされたから重心がブレる。安定しねぇ。

 

 肩部への接続されているコネクタ部は破壊されていないため、再接続そのものは可能だろう。

 だが、切り落とされた腕は肩部から破壊されてるのもあり、即時接続は不可能な状態だった。

 しかし、これからの"酷使"を考えると、どうしても腕部(バランサー)が必要になるだろう。

 自由に振り回すことで、重心位置を自由に調整出来るバランサー役割としての腕が欲しい。

 

 

 どうするか。そう悩み。そしてすぐに解決した。

 

 

 そういや俺達は元々【バグベア】と戦ってたんだったな──

 

 

 ダサいからやめない?

 そう抗議した【サークル・ザンバー】の声を無視してパーツを漁る。

 使えりゃ良いんだよ、使えりゃ!

 

 

 

 *

 

 

「全然動けなくなってよ。治療に時間掛かっちまったぜガハハハハ!」

 

【イチモンジ】の腹部は、何か結晶のようなもので覆われ盛り付けられている。

 少し動きづらそうだがあれほどの出血はだいぶ収まっているようだ。

 

 ──もしかすると、無理やり追撃してれば勝ってた?

 

 シュラは自信ありげに答えた。

 

「おう! 多分何も出来ずに負けてたぜ!」

 

 カラッとしたハキハキした解答だった。

 うわぁ、マジで損した。

 でもあの瞬間に追撃するなんて選択肢は無かったからな。

 

「どうやらそっちも"お色直し"は終わったみてぇだな、無念だぜ」

 

 俺たちは応急処置としては充分な準備期間を確保できた。

 だから、想定していた"武装"の調整はなんとか間に合った。

 

 

「腕、短くねぇ?」

 

 

 ──お前がぶった切ったんだろうがよぉ!

 

 

 俺はキレた。

 好き好んで【バグベア】の短く脆い腕とかつけねぇから!

 しかも両方とも右腕なんだぞこれ! 本当に不細工で仕方がない!

 

 そこら辺に転がってた【バグベア】のパーツだが、流石に満足に使えるものは少なかった。

 規格的にはAG用のサイズだが【サークル・ザンバー】も小型機だ。

 なんとか無理やり装備することは可能だった。ギリギリだったけど。

 専用の調整も出来ておらず、本当にくっついているだけのような状態だ。

 エネルギー配分も最低で調整は放棄しているくらいだ。

 荷重耐性はともかく、殴りかかったら逆に崩壊するだろう。

 

 だが、これで充分。

 

 元よりバランサーとしての機構しか要求していないからな。

 本命は、何度も言うが、"足"についている──

 

 

「それ、脚にも接続できんのか、腕切って終わりだと思ったんだけどなぁ!」

 

 

 光輪(ビームチャクラム)

 

 

 両足の側面部に取り付けられたそれは、弱く光の刃を展開させていた。

 何時でも地面を引き裂けるように、設置せずに回転している。

 

 

【サークル・ザンバー】は光輪(ビームチャクラム)特化機である。

 しかし本来は、両腕"両脚"の合計4枚取り付けられているのが本当の姿だった。

 

 こいつを作ったやつ、バカなんじゃねぇの?

 繊細なエネルギー調整を要求する光輪を倍にして、まともに使えるわけないだろうが!!

 むしろ全開で使えるやつが3人も居たことに驚きだよ!!!

 

 まぁ、遥か過去の設計者に文句を言う気はあまりない。

 俺はこれからこいつの設計思想に伴った"機動戦"を繰り広げるからだ。

 

 ──じゃあ行くぜ、シュラ。瞬きするんじゃねえぞ、一瞬で終わるからな。

 

「っち、言わせておきゃあひでえ皮肉だ! 来いよカラス! 俺は迎撃しか出来ねぇぞ!」

 

 あら、満身創痍か。そりゃ腹を掻っ捌けばそうなるわな。

 じゃあ、終わらせに行くぜ。

 

 

 足に取り付けてある、光輪(ビームチャクラム)の位置を調整して、接地。

 光輪にエネルギーを回し、出力を調整。

 回転率は低速。斥力とのバランスとしては俺は"感覚"として理解できる。

 地面を削りながら、俺たちは滑るように駆けた。

 

「ッ! 速え!」

 

 回転する光輪は足に固定され、機体を浮かばせながら滑るように疾駆する。

 両脚の位置を前後に振り分け、軸を合わせ機体を傾け、弧を描きながら急速に接近。

 上半身のバランス取りは腕を振り回し、位置を調整するだけでなんとかなる。

 

 なんたって俺は機動近接機の【オンボロ】の乗り手だぜ。

 この手の機動はローラー移動と、光鎖剣(レーザーチェーンソー)移動の応用で全部やったことあるんだよ!!

 

 そのまま加速し、速度を乗せたまま、滑るように蹴りを繰り出した。

 

「うおっとぉ!?」

 

 シュラは咄嗟に、しかし鋭い刀の防御で弾いた。

 だがこちらを吹き飛ばすほどの威力はなく、距離を離すに至らない。

 

「威力が、上がってやがる!」

 

 当たり前だろ、機体重量と速度を上乗せしてるんだぞ。

 腰の入ってない腕での撫で斬りと一緒にしてもらっちゃ、困るな!

 

 

「う、うぉぉぉぉ!!!」

 

 

 滑るようにその場を回転。回し蹴り切り。刀で弾かれる。

 

 弾かれた反発を利用し、コマのように逆回転。再び弾かれる。

 

 少し後ずさり、しかし即座にチャクラムを逆回転。

 ひっくり返るように上からかかと落としのように切る。刀で完全に受け止められた。

 

 

 決めるタイミングは、今!

 

 

 シャードブースター起動。浮かびあがれる程度に推力調整。

 身体を反り、受け止められている足とは逆の足を、駆け上るように切り上げた。

 以前"重量機"でやった時とは違い、機体重量は軽く、脚部の重心比率が高い。

 だから、すんなりと俺の操作に答えてくれた。

 

 

 サマーソルトキック。光輪(ビームチャクラム)付きだぜ。

 

 

「ぐあああああ!」

 

 

 それは、足元から真上へと切り抜けていった。

 刀を持っていた【イチモンジ】の腕を切り裂き、刀がカラリと落ちる。

 

 

 腕を振り回し、着地。そのまま滑るように地面を切り裂き後退。

 

 

 ──決着、だな。

 

 

 だが、雷光が【イチモンジ】を纏った。

「まだ、だ!!! 答えてくれ【イチモンジ】!! あと、一撃──!!!」

 

 刀は無い。既に落ちている。

 だから斬撃は無いが、重量機であるその体格による突撃だけで相応のダメージがあるはずだ。

 先程の現象の原理がどのようなものか分からないが、最低でも視認不可能な機動が来る──!

 

 

「おお、おおおお、おおおおおおお!!」

 

 

 シュラは叫び、弾ける電光を纏う【イチモンジ】は──

 

「おお? おおおおお? おおおおおおお?」

 

 ゆっくりと、その火花を散らす量が落ち──

 

 

「あ、ダメじゃん。血が足りねぇや──頭が──クラクラと──うへぇ──」

 

 

 膝を付いて、動きを止め、眼から力が失われ、そして沈黙した。

 

 

 

 ──あのさぁ。

 

 

 

 

 ──ほんっっっっとうに締まらないなお前!!!!

 

 

 

 

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