塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
短くて申し訳ない。
なんだかよくわからん異型の機体にタコ野郎が乗っていた。
「なんや、ボロボロやん。【エスクワイア】はともかくそっちの機体の修理費は出さへんよ」
いきなりクソ発言を噛ましやがった。ふざけんなよ、こっちは大変だったんだぞ。
「こっちもずーっと野次馬散らししてたんやから堪忍せーや!
なんやねんあの無駄極まりないAGは! 全部売って入れ替えさせて差額を懐に入れさせろや!
しかもこんなしょーもないパーティに出す数やないやろ! 何考えてんのやアホか!」
タコ野郎は経済的不合理による世界の損失に関して怒り狂っていた。
視点は違うが、それそのものには俺もほぼ同じ事思っていた。
なんというか、あまりにも動員数がおかしすぎる。
総議長ミードを確保する名目はあれど、お粗末な計画の割にその規模が尋常ではなかった。
今回の戦いは色々と噛み合ってない要素が多すぎる。
取って付けたような俺の確保の命令。妙な動員規模。
リザードマンの部隊を派遣する本気度。だが実行者本人たちのやる気の差。
破綻している──いや。違うな。
複数人が好き勝手に動いて、誰も権限を持たずに纏めてない状態な気がする。
まぁ考えるのは後回しにしよう。さっさとこのパーティをお開きにしたい。
──しかし、お前さんどんな経緯で
「あー。これには浅い事情があるねん」
浅いのかよ。
「それはやな「私のAGには"兄様"が乗るべきだからです」
タコ野郎の言葉に被せるように少女の声が響いた。
少し舌足らずで穏やかながらよく通る声だった。
一瞬、誰だ? と思ったが、到着時にこの機体に乗っていた人物の姿は見ている。
豊かな白い髪をした少女、
が、そんなことはどうでもいい。
いま、そんなことを吹き飛ばす発言が聞こえてきた気がする。
兄様?
兄様????????
*
呆然としながら俺達は撤退した。
行きに乗った船へ再び乗船し、さっさと
俺達は総出で【エスクワイア】を引きずりながら運び、船になんとか乗せた。
他の機体も搭乗させ、船の積載量を少し越えつつ戦場からの離脱に成功した。
護衛として
湖中からの襲撃はそこまで警戒しなくていいだろう。ハンサムの機体も居るしな。
意外と
湖上とは言え、結構安全な状態でゆっくりと治療したいところだ。
はー。不毛だったな。
テオドール卿も無事であり、ちゃんと護衛をしたアルマもヒルダもちゃんと乗船している。
あいつらは見事に護衛を成し遂げたようだ。なんか余計な面々が増えている気もするが──
──ま、今回失ったものはボロボロのパーツ群くらいだろう。
「改めて挨拶を。
美しい所作でドレスの裾を持ち、俺達に向けて綺麗な一礼をした。
その優雅さから、確かな教育を受けていることがよく分かる知的な少女だ。
「そして、ええっと兄様──今はなんて名乗られて居るんでしたっけ? の妹です」
「"タコ野郎"で通っとるやでセレネ。本名は呼んじゃダメや。傭兵の不文律や」
「──もう少しまともなお名前を名乗られた方が──」
「
困惑している白い髪の美少女と、真っ赤な顔をしたタコ野郎。
本当に血縁関係──? いや、縁戚という可能性──軟体種族に縁戚──?
あまりにも不可思議すぎる血縁関係(?)に一同困惑しながら、話を続けた。
「兄様が船を手に入れたとのことで、王位継承争いに参加出来るのですが──」
「遠慮しとくやで、どうせワイは8人目の子やし、上もみんな優秀や。
血みどろバトルでも始まらん限りワイが座ることは無いやろ。
どうせなら御用商人になってちゅーちゅーするのを目指すやで!」
あまりにも衝撃的かつ意外すぎる内容に、不可思議な混沌とした空間が広がっている。
「これ、僕たちが聞いて良い内容なのか?」
セドリックが思わず呟いた。うん。俺もそう思う。
「別に問題ないよ。僕も
むしろ君たちが知らなかったことが驚きだよ。仲間じゃないのかい?」
テオドール卿が補足してくれた。
どうやら俺達の反応の方が驚きが大きいらしい。
──傭兵の間では過去はそんなに探るなっていう風潮があるからな。
──名前を失う関係上、掘り下げなくても良いだろうと思ってた。
──教育はされていると思ったが、まさか
俺の素直で正直な感想である。
だってこんな銭ゲバがそんな真っ当な血筋を持ってるとか思わないじゃん???
「そうだ! あなた! カラスさんでしたっけ!?」
セレネが少し険しい顔で俺に向いた。
何? なんかやらかした??
「兄様とどのようなお関係なのでしょうか!」
突然何???
セレネは真剣な表情をして聞いてきた。
アルマとヒルダも俺をガン見している。
なんだよ俺を向いてもカワイイ顔しか見れないぞ。
そんなボケた混乱した頭で、その問いのことを考えた。
俺とタコ野郎の関係性か──
それを改めて問われたときに答えられる答えは多分一つしかなさそうだ。
ああ、でも確認しておかなきゃいけないな。
──タコ野郎さ。あの時の契約って生きてんの?
「んあ? あー。そのままやで」
タコ野郎は普通に答えた。
んーならこう答えるしか無いな。
──確か配偶者じゃないか?
違うかも。
互いに不意に死んだときに財産を受け取る契約だったからな。
ちゃんと書類見ずにポンポン押したけど、実はお互いの資産を自由に動かせるんだよな。
そのせいで投資に勝手に使われたけど、最終的にはだいぶプラスになってるし。
今でもタコ野郎は俺の資産をある程度自由に勝手に使ってるはずだ。
だから、まともな財布の中身を実は把握してねえんだよな。勝手に増えるんだもん。
俺の言葉を聞いたセドリックが、何故か呆然と膝を屈した。
うん? どしたん??? なんかあったん??? はなしきこか???
「ちゃうちゃう、それだとワイの嫁さんになっちゃうわ」
あー、俺が言葉を間違えたんだな。
ほうりつむずかしい。専門家雇わないとなぁ──
──でもまぁ、俺はお前なら別にいいけどなぁ。
セドリックは絶望したように、地面に手を付き項垂れた。
ほんとどうしたよ????