塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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次ミッション開始です。
早めの投稿を目指します。期待度低めでお願いします。


mission10:海上プラント奪取
89話:調整


 タコ野郎に海賊どもに売られて一週間ほど経過した。

 

 いや、扱いとしては【八本脚運輸(オクタライン・ロジスティクス)】からの単なる出向出張だ。

 だから別に売られても何でも無いんだが、ひじょーに釈然としない。

 

「話聞いてないのが悪いんやで」と後から言われたが、チクショウそのとおりだよ。

 

 今、俺はハンサムの奴が率いてる【偉大なる航路(グランド・ウェイク)海運】所属の船に搭乗している。

 搭乗した、ホバー型戦闘輸送艦【ラッキー・スター】は快速の船だ。

 おおよそ体感では、【バスティオン・キャリア】の倍以上の速度が出ている気がする。

 ホバー式の艦底は圧縮された空気の層を作り出し、そのお陰で少し浮いた状態の航行出来る。

 振動はほぼ感じず、滑るように景色が流れていくのを堪能できる。

 地面が多少荒れていても振動無く運行出来るし、陸でも水上でも動かせる優れモノだ。

 

 ま、バカ高いんだが。

 

 あの巨大な【バスティオン・キャリア】とあまり値段変わらなかったんじゃないかな。

 設計思想が違いすぎるから仕方ないんだが、搭載能力は比べ物にならないくらい低い。

 そもそもサイズも三つ合わせて【バスティオン・キャリア】と同サイズになるくらいだ。

 踏破能力そのものも低めだから航路も限定されるし、軽さを求めるから防御力もそれなり。

 だから要塞街(アイアンホールド)だと不人気な艦種なので、小型艦が少数しか無いくらいだ。

 

 まあ、搭載能力比で考えると高価だが、水陸両用という圧倒的なメリットが存在する。

 国土の大幅な部分が海沿いと島である海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)で標準とされている理由は納得だろう。

 

 そんな中、AGとダイバーでひしめき合うハンガーで俺は必死で調整を行っていた。

 そこまで狭くは無い【ラッキー・スター】のハンガーには七機もの機体が乗っていた。

 うち、五機ほどは予定の無い搭載だったため、適当なところに着座している。

 そのうちの一機。正式にハンガーを占有することを許されていた機体の調整を俺は行っていた。

 

 【ガトリングヒュドラ】。

 名前からわかるようにガトリング親方謹製のAGだ。

 

 どうやらロールアウトそのものはかなり前の機体らしい。十年くらいは前に作られたのかな。

 だから、各種コンソール部分からコテツが調整した"匂い"がさっぱり感じられない。

 海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)側が独自に搭載したものなのだろう。

 なんだかんだ、こいつを必死に御そうと四苦八苦した後が見られてきて同情を感じてしまった。

 だが、どうあがいても真っ当な知的生命体"一人で"制御しきれるものではない。

 それが一瞬で理解出来るコックピット配置になっているのがわかる。

 メインシートの真後ろに、武装出力調整専用のコンソール群と各種レバー、そして複座シート。

 

【ガトリングヒュドラ】は動かして戦闘するだけで二人が必要になる複座式の機体である。

 

 これだけで気が滅入りそうなトンデモ機体なのが確定している。

 合体機ですら複座シートは省略されがちなのに、複座前提の設計がされているのはヤバい。

 そして、それを作ったのが親方だと言う事実が、全力での調整を強いることになった。

 

 

 だが、今回の作戦内容から【ガトリングヒュドラ】を動かすのは必須だ。

 こんな荒くれものを、俺の意思で操作出来るように入念なセッテイングしなければならない。

 少なくとも通常機動と通常攻撃はある程度の制御を出来るように調整する必要に駆られていた。

 

 

 

 *

 

 

 もうやだ~~!!!

 

 配線がごちゃごちゃ(スパゲッティ)しすぎてる!

 なんだかんだ几帳面な親方がこんな配線するのか? となったが、コンソール周りが危ない。

 コックピット周りを後から改修した奴らが、わからないまま付けたな、これは。

 親方の天才性を理解できず、だが真っ当に使えるようにしなければならず、一時凌ぎの結果か。

 あの美的センスの回答を何も出せないまま、各種コンソールを整えたのは逆に技術力があるな。

 だが親方は意外と"美しさ"を前提に配線関係決めるからアプローチが逆なんだよな。

 こりゃ、配線周りから引っこ抜いて改修しなきゃダメだな~。

 

「おお、カラス、順調かい? あと何日くらい掛かるんだよ。もう海についちまうぜ」

 

 ハンサムがわざわざハンガーまで来て、俺に話かけにきた。

 船長で指揮を取っていて忙しいのにマメなことだ。

 度々来ているスクラップの襲撃も薙ぎ払ってたりして、大変だろうに。

 

 あと2日くれ。なんとか2手2足で動かせる段階まで持ってく。

 

「オーケーだ。ミッションまでには間に合うんなら充分だ。休息取ってねぇが大丈夫か?」

 

 大丈夫、適当に寝てる。飯はハンガーにフィッシュマヨサンド持ってきてくれ~。

 

「おいおい、船長を使いっ走りにするなよ。まぁいいぜ、今日はツナだとさ。期待しとけよ」

 

 やりぃ! ずーっと美味いもの食べれるし移籍しようかな~!

 やる気出てきたぞ。海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)の海の恵みの味は多種多様だ。

 

「おめーが移籍するとか言うなよバカガラスよぉ」

「仮にも副社長だろうが、スジを通せよ筋を」

「海上だと弾薬費ケチるから、俺はいかねぇぞ」

「魚雷には興味ありますんで一度撃ちたいですが、陸地には叶いませんねぇ」

 

 飲んだくれどもが【ガトリングヒュドラ】の各部からひょこひょこ出てきた。

 5機の機体と共に移籍し、機体整備を手伝って貰っているのだ。

 

 "パクった"機体の使い道は要塞街(アイアンホールド)側には無いしな。

 このミッションで暴れて使い潰してから、海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)に売っぱらう算段だ。

 

 ほんと、"飲んだくれ傭兵団"どもが、先刻の戦場で敵側として参戦してたとか笑うわ。

 一歩間違えれば同士討ちしてたじゃねぇか。

 

 ただ、不穏な空気を感じてサボタージュした上に、こちら側に寝返ってくれたらしい。

 まぁ、来たら来たでぶっ飛ばしてたけどな。

 そのため、契約が中途半端なところで終了してしまった。

 法的なあれこれはグラハムとテオドール卿が整えてくれるらしいが、ギリセーフらしい。

 だが時間稼ぎの意味を含めて、ほとぼりが冷めるまでこっちまで逃げる羽目になってきたのだ。

 

 飲んだくれどもは昨日くらいで全機体の整備を終わらせてくれたらしい。

 技術屋としてもやっていける技術力の持ち主を余らせておく意味はない。

 だから、暇を持て余しているこいつらを誘って整備を手伝ってもらうことになった。

 

「しっかしこりゃまたすげぇ出力の機体だな」

「本体動力に二基構成ジェネレータ。武器とは別なんだろ?」

「武装はエネルギー系限定ですが、一基まるまるとは剛毅ですね」

「でも、あいつらしくねぇ作りだな。妥協したんだろうぜ」

 

 飲んだくれどもが整備しながら【ガトリングヒュドラ】を解析していた。

 超大型機である【ガトリングヒュドラ】はそのサイズに見合ったジェネレータを搭載している。

 本体を動かすために二基構成ジェネレータ。そして武装をチャージするため"だけ"の一基。

 合わせて2+1基構成という【クロスガード・ブレイズ】並のバカみたいな出力の機体だ。

 まぁ、こんなバカみたいな武装群を使うこと考えると一基追加ですら足りないんだけどな。

 

「バカみたいな"首"を全部使うならこれでも足りねえけどな」

「どうしても複数ジェネレータは回復力が遅くなりますからねぇ」

「合体機前提なんだけど、普通についてるのはかなり珍しいぜ」

「射撃武装にすればエネルギーを抑えられるのに、残念なこった」

 

 複数ジェネレータの弱点として、他ジェネレータとのエネルギー変換の競合が発生する。

 エネルギー容量と出力そのものは個数に応じたものになるが、回復力は激減することになる。

 AGサイズで複数ジェネレータを積むのは、繊細な調整が必須であり手間が非常にかかる。

 生産コストそのものがバカみたいに上がるため、このような構成は殆ど居ないだろう。

 

 合体機なら通常時は個々で稼働しているからこの問題を解決できたりもする。

 出力がほしいときだけ合体することで、制限時間というネックはあるが消耗を抑えられる。

 だから【クロスガード・ブレイズ】とかは合体形態が三分くらいしか持たないのだ。

 

 しかし、こんな機体を持ち出さなきゃならないほど状況が切羽詰まっていると見るべきか。

 まぁ、どうしようもないもんな。水陸両用(ダイバー)ですら限界はある。

 いくら水中で戦えるとはいえ、水の中は知的生命体が真っ当に耐えれるフィールドではない。

 一基構成機では戦闘の深度は限界があり、二基構成以上を前提とした作戦になっている。 

 しかし、海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)としても抱えている二基構成機は極めて少数だ。

 だから"正規の乗り手である"タコ野郎を連れ戻そうとした程に状況が切迫しているのだろう。

 

 だが、船長であるタコ野郎は要塞街への帰投を優先しなければならない。

 どうしてもひと月以上の時間が掛かってしまう。

 だが、【ガトリングヒュドラ】を"無理やり"動かすのならば可能である人物が居た。

 俺である。過激なバカンスになりそうだ。

 休憩がてら、運ばれてきたツナサンドを食べながら俺は次の戦場に思いをはせた。

  

 

 次の戦場は、深海だ。

 

 




飲んだくれどもは前のミッションのボス枠のつもりだったけど、あまりにもボス格としてはカタルシスゼロだったので野生のボス達に生えてもらいました。
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