塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる 作:梅酒わいん
「
【バスティオン・キャリア】から出る前にハンガーにいたコテツ先生が解説してくれた。
コテツの講義の話を聞いた他の技術屋たちが、ホワイトボードや椅子を持ってきて配置した。
元技術士官であるコテツの知識は他整備士達からしても叡智の塊であり尊敬を集めていた。
そしてアルマとヒルダ、ドワーフ等の他面々も集まり、ちょっとした講習会をしてくれたのだ。
ホワイトボードに各種原理を書き込みながら、コテツは説明をしてくれたのだが──
「集めた水を、コアフィールドで超高密度で圧縮、同時に拘束。
一部を液体レンズとして形成、熱線を収束させながら
──―なんだって??
「これにより発生した熱量をフィールドで形成した投射用水流へ重ね合わせて閉じ込めます。
水流というよりは、バカみたいに長い"水の柱"だと思ってください。
フィールド効果で形状の維持は出来るので、投射し標的に当たった瞬間に解放します。
現代のフィールド制御技術なら多少の障害物程度では崩壊しませんので安心してください。
そして命中と同時にフィールド拘束が崩壊。水の柱が筒の役割を担って相手に放流されます。
つまり、発生させた全エネルギーが、標的の表面上に直接解放されることになりますね」
ホワイトボードにペンを大きく走らせながらコテツは語っている。
技術屋たちは理解してるらしいが、俺達傭兵のチンプンカンプンの反応はみてないようだ。
「理論上はウォーターカッターに似た
液体レンズにより収束された
そして
以上の三つの物理現象を同時に叩き込む複合兵器です」
ホワイトボードで描いた要点を丸く纏めて、ペンの蓋を閉めながら、結論を言った。
「つまり──」
「どういうことです?」
アルマとヒルダが、疑問符を浮かべた顔で問いただした。
コテツの専門用語をなるたけ省いた説明すらよく分からなかったらしい。
二人とも貴族出身とは言え、メイドやってた身分だし、学力的には俺とトントンだろう。
多分、これも正確じゃないんだろうなぁ。俺向け講義だからざっくりのはずだ。
「あー。簡単に説明しましょう。
コテツは呆れた顔で、こう断言した。
「相手は死にます」
*
反動で船体を掴んだ四つの顎が、その鋭い甲板の床を大きく引き裂きながら後退っていく。
簡易
ウォーターカッターだとか、水がレンズ代わりになるとか、爆発叩き込むとか──
原理はちょっとよくわからないが、ともかくバカげた威力だ。
大型の
これで
だが、正直過剰に近い威力だ。10門もの砲門数を考えれば破格の威力だろう。
そんなふうに一瞬楽観視したところで、ピピピピピという音と共にモニターが輝いた。
マルチロックオン通知。
倒した
そして、その代わりに、目に映るったスクラップどもの情報を次々と更新し設定した。
空、海上、海中。【ガトリングヒュドラ】は、次の
暴走。
──マズッ。セレネ! 首のエネルギーを切れ!
反射的に三つの首の制御権を奪う。味方が展開しているこの状況で動き回られるのはマズイ。
しかし残りの七本の首は空と海上と海の底を狙いグネグネと動き出した。
青白い光条が縦横無尽に嵐を切り刻み、空に浮かぶスクラップが次々に爆発していった。
波を断つかのように横薙ぎにした衝撃は高波に大穴を開け、そこに居た中型機を蒸発させた。
海中を縦に貫いた熱線は、海を切り裂き、魚型スクラップどもをバラバラに砕いていった。
「あぶねぇ! 俺達が居るんだぞ!!」
「どうしたカラス! 制御出来てねぇぞ!」
「おいコラノーコン!!! ちゃんとスクラップに当てろバカ野郎!!!」
「海を焼くのは私にやらせてくださいよ!!!」
「初陣なのに後ろから撃たれてますにゃぁぁぁぁ!?」
飲んだくれどもとミードの悲鳴が聞こえた。まずいまずいまずい!!
『放出を止めろカラス!!! 味方機に当たる!!』
ハンサムの慌てた声が聞こえた。やれるんだったらやってるよ!!
「お義姉様!! まず二本切りました! あとの五本制御してください!」
セレネが叫んだ。二首は大人しく放出をやめ、地面に齧りつき、機体を安定させている。
──分かってる! 言うことを聞けこの【クソヒュドラ】!
俺は残りの五首を操作しようと、レバーを操作し──
しかし明確な拒絶を感じ、【ガトリングヒュドラ】は、その瞳で俺を見て。嗤った。
い や だ ね
最初に制御を奪った三つ首の顎がケタケタと嘲笑う。
五ッ首は未だに暴れまわり、そしてその吐息を無差別に放っている。
その暴走に俺は──
──あ"?
──いい度胸だクソAG。
──お前がそのつもりならこちらにも考えがある。
──セレネ! 今放射してる首にエネルギー回せ!
──いや、全エネルギーを首に回せ! 撃ち尽くしてやる!
俺も【ガトリングヒュドラ】に対して、ブチ切れた。
「え? ええええ!? は、はい! 回します!」
セレネは慌てて、しかし俺の言葉に即座に対応した。
素早い出力調整により、まだ放出中の首の、
ケラケラと嘲笑っていた竜のあぎとが、口を閉じる。
目を細め、クルルルルと喉を鳴らしながら、俺を静かに見定めていた。
移動モードは既に切ってある。俺の両足ペダルを首の制御に割り振る。
ひとつの首は大型の
両手は操作しやすいよう内側の首に割り振り、微細な操作で逸らし続ける。
味方機への流れ弾を抑止しなきゃならん。目標は上空か海中の群れ狙いだ。
両足に割り振った首は両翼から回り込む中型機を狙う。数秒耐えてくれるだろ。
脳を高速で回転させ、全て情報処理と判断と操作に回す。
上空と海上と海中の敵機へ向けて全神経を集中させた。
モニターに映る敵機と、指先と足先の操作に全神経を集中させた。
──俺に従え多頭竜。好き勝手思う存分に暴れさせてやるよ。覚悟しろよ。
【ガトリングヒュドラ】はカカカカカと笑い、そして暴れ回りながら俺に身を任せた。
以降、一分間にも満たない間で俺は頭を高速で回転させ、目と指と足を動かし続けた。
中央の首一つは、最初の狙い通り
左手で海上を跳ね飛ぶ"跳ね玉"を撃つ。上下にぶれまくるので偏差射撃。爆発。次。
左足で海中の中型魚群を狙う。ロックが外れるまで好きに撃たせる。次。
右手で海上を飛ぶ槍弾魚を打ち払う。飲んだくれどもの上だ。右上に逸れるルートを形成。次。
右足で海面を滑る甲殻類型を貫く。硬い。照射時間が必要だ、時間を稼ぐ。次。
左手処理。踊るミードの近くの海上の虫型群を吹き飛ばす。処理を自動化し連射。次。
右手操作に意識を戻す。空を切り裂きながら海上の甲殻類にぶち込んだ。次。
左足。海中の敵を見失うと海が荒れて狙える敵が減る。中型機を狙って確実に潰す。次。
右足で狙った甲殻類が爆散した。右上に逸らしながら空を溶かす。飛行型どもを薙ぐ。次。
次、次、次!
俺は【ヒュドラ】が飽きるまで必死に戦場を照らし、暴れさせ続けた。
『すげぇ。バケモンかよ』
ハンサムが何か言ってる。何か指示か? 何も耳に入らない。
俺の脳は超高速の判断と処理で音を外界から遮断していた。
──4+1本で限界なんだけど10本行けるって豪語したタコ野郎バケモンかよ!?
「お兄様でも無理ですぅぅぅ!?」
セレネが叫んだ。出来てねぇの!? 大ボラ拭いてんじゃねえぞタコ野郎!!!
そう愚痴ったあたりで、中央の
中央の首の制御が効かなくなり、俺の手が足りなくなった。
ついに制御が効かずに俺にコントロールができなくなった時が来たか──
そう思ったその瞬間。ついに【ガトリングヒュドラ】の口からの放出が止まり──
満足したかのように、【ガトリングヒュドラ】は力尽きた。
なんか想定してないレベルで暴れまわってら。
ハイドロブレスの評価:強いには強いけどコアフィールド制御が前提だから艦で使うとエネルギー消費が激しすぎる。その上、水が必須だから地上機には持てない。連装で持てば強いけど、そこまでやるならドラゴンブレスの方がコストが安い。
強いけどさぁ……
※チャージ中が危険に見えるけど、宇宙世紀のザクに搭載されてるジェネレータをビームでぶち抜かれた時の方が遥かに危険。
ガトリングヒュドラの評価:ごめん、ぼくたちには手が二つしかないんだ。強いけどゴミ。