塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる   作:梅酒わいん

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94話:揚陸

「弁明はあるか?」

 呆れたように腕を組みながら、見下ろすハンサムは俺を咎めた。

 

 

 ──あの、その、テンション上がっちゃってぇ──

 

 

「その謝罪今月だけで二回目なんだが?」

「今回は巻き込まれたからな。看過出来ねぇぞ」

「結果的には半分潰したが、途中のノーコンは許さねぇ」

「いい焼きっぷりでした。僕はそんなに怒ってないですよ」

「途中でテンション上がったので結果オーライですにゃ!」

 

 飲んだくれドワーフどもとミードが好き勝手に喋る。

 

「えへへ、もうどうにでもなれ〜ってなりまして~?」

 

 戦闘は一段落した。【ラッキー・スター】のブリッジに今回の戦闘の主要な面々が集められた。

 その中心で俺とセレネ姫は正座していた。

 

 

 ──ごめんよぅ~。

 

 *

 

 あの後の戦闘の推移に関して話す。

 あれだけ撃破したにも関わらず、激戦が繰り広げられた。

 

 というより、あれだけ撃破したため、俺が危険度の高い対象と認識されたのだろう。

 明らかに他海域からスクラップが流れ込んできており、増援の対処で延々戦う羽目になった。

 

 しかし全てを撃ち尽くした【ガトリングヒュドラ】は完全に沈黙。

 機動どころかコックピット内部へのエネルギー供給すらカットされ、甲板の上で眠りこけた。

 モニターに何も映らなくなり、操作を全く受け付けずうんともすんとも反応しない状態だった。

 

 以降、海域制圧に"飲んだくれ傭兵団"の【サハギン】4機、ミードの【ミンストレル】一機。

 長射程の長槍砲(ジャベリン・スロウワー)をなんとか持ち出して支援機に専念した【ナルワール】。

 そして【ラッキー・スター】の砲門と大型アンカーだけで──

 

 大型中型小型全部まとめて合計50機程を相手にする羽目になったのだ。

 

 

 ──マジで、ごめんて。

 

 *

 

「ま、超大型の大海蛇(シーサーペント)が2機沈んでましたからね。残りは僕が爆散させました」

「統率が取れなくなった魚型なんぞ敵じゃねぇ。バラバラに撃ち尽くしたぜ」

「【サハギン】が固くて良かった。甲殻型と殴りあってもビクともしねぇ」

「流石に多すぎて前衛二人はボロボロだな。だがまだ、プラント攻めは行けるハズだ」

「空中戦力が溶けたんで、海上は楽させて貰いましたにゃ」

 

 ベテランども+ミードが最高に頼りになる~。本当に助かった。

 

「ま、正直アンカーで止める予定の大海蛇(シーサーペント)が爆散したのはデカかった。

 対空に専念出来たからミード氏が自由に動けたし、残りを"飲んだくれ"達だけで対処出来た。

 あとは、まぁ咄嗟に【ナルワール】を動かしたのは結果的に良かったな。結果的に、だぞ」

 

 ──分かってるよ。二機は温存予定だったからな。

 

 俺は動かない【ガトリングヒュドラ】にさっさと見切りを付けた。

 この状態ではなんの役にも立てないため、後始末をセレネにまかせて俺はさっさと離脱。

 海底の塔を攻略するため温存していた【ナルワール】を勝手に強奪して支援戦闘に終始した。

 

『カラス! 本当に傷つけたら承知しねぇぞ!』

 

 いつもの紳士的な言動はドコへ言ったのかさっぱりわからないが、緊急事態に陥ったからな。

【ナルワール】は完全に前衛機ではあるため、射撃は不得手だが砲撃装備は用意されていた。

 それで前衛の【サハギン】を囲む中型機を狙い撃って、手数を増やすことには成功した。

 

 

 いやー。咄嗟に動かしたけど動かせるもんだな。

 勝手が違ってめっちゃ疲れたけど【ガトリングヒュドラ】よりは遥かにマシだった。

 機動はまだ無理だが、艦に近づいた相手を射撃するだけの簡単な仕事だったしな。楽勝。

 ということで一旦敵の攻撃を乗り切ったあと、ハンサムが指示を下して離脱したのだった。

 

 

「他艦との連携は上手く取れている。スクラップどもの勢力を大きく減らせたのはデカい。

 が、変わりに【ガトリングヒュドラ】がほぼ潰れちまった。正直、完全に想定外だ。

 だから、一時戦域から離脱して、当分補給と休息に専念するぞ。前衛機も修復したい」

 

 ハンサムは他艦との連携にひたすら部下に指示を下していた。

 乱れぬ連携から他艦とのやり取りも頻繁に行っており、判断力と統率力は相当なものだった。

 そうした後、あまりにも普通に戦場に参加していた総議長ミードが発言した。

 

「私は他艦にひとっ走り行ってきますにゃ。単独で海くらいは移動できますからにゃ」

 

 すげぇ。気軽に言ってるけど、ミードはバカげた戦果を残していた。

 残った海上戦力の七割程度を、マジで次々とたたっ斬って行ったからな。

 さっきの戦闘を見ていたが、コイツが単独行動をすることを誰も不安視することはなかった。

 

「こいつやべぇぞ。あの乱戦で無傷とか、機体制御のレベルがおかしすぎる」

「総議長ってそんな戦闘能力求められる職だったか? いやまぁ、猫人(ケットシー)も戦闘種族だしな」

「二機も大海蛇(シーサーペント)を爆散させた僕の活躍が霞みますねぇ!」

「撃ちまくった俺も、爆散させたお前も、普通は勲章レベルの活躍なんだがなぁ」

 

 ぐだぐだ言ってるけどお前ら全員ベテラン級だからな。

 六機程度で十倍近い敵を相手にして普通に勝ちました、ってのは多分この海域でも少数だろう。

 味方機が強くて本当に助かる。

 

 そう纏めたあたりで、ハンサムが放送装置を起動させ、艦全体に通達した。

 

「先程の戦闘で戦果は充分! 我が艦は後方に移動し、戦線は他艦に任せた!

 今は攻撃をまかせて休息! AG乗りどもは全員酒飲んで寝ろ!

 ミード氏は他艦に送り込んで自由戦闘させる、ハンガーは出撃準備をしておけ!

 整備班は前衛機の修理と【ガトリングヒュドラ】の補給を最優先!

 寝転がってる【ヒュドラ】はなんとしても一日で起こせ! 砲は撃てない状態でも良い!

 他艦との連携と通信は欠かすな! 今日の波を乗り切るぞ!」

 

 艦の各所から威勢の良い声が上がり、そして艦の動脈と言うばかりに人々が動き出した。

 本当に活力が溢れた良い船だ。安心して身を預けられる。

 俺達は食堂に移動した。そして。

 

 

 *

 

 

 酒飲んでバカどもと一緒に転がってぐーすか寝た。

 

 

 *

 

 

 あたまいたい。

 うそ。嘘です。体調万全!

 

「遅ぇ。あの程度の量でくたばるたぁ鍛え方が足りてねぇんじゃねぇか?」

「アルコールに弱ぇんだから量飲むなよ。じゃばじゃば飲みやがって」

「酒量が足りてないんじゃねぇ? 迎え酒飲むか?」

「体重が軽いからアルコール許容量が少ないんですね。それでも弱めだと思いますが」

 

 くっそ煽りよる。ぐぬぬぬぬ。

 ハンサム!! 状況説明欲しぃーなー!

 

 ハンサムはハンガーに来ており、整備員とかの話を聞きながら状況説明してくれた。

 

「酒はさっさと抜かせろ。まずは修理と補給状態から説明するぞ。

 前衛【サハギン】の修理は七割程度だ。プラント上陸戦には間に合う。

 弾薬補給は完全だ。後衛機は今すぐにでも投入できるぞ。

 エネルギー損耗が激しい【ヒュドラ】は──まぁあんな感じだ」

 

【ガトリングヒュドラ】は──なんかすごい光景になっているな。

 広げられた首のその全ての口に、一口につき四つくらいパイプが接続されている。

 セレネが端末を操作してエネルギー状況を説明してくれた。

 

「私の【ヒュドラ】のエネルギー回復は武装側増設一基の関係で遅いですからね。

 外部から循環液パイプを接続し、直接流し込むことで急速給水させています。

 満タンにするなら明日までかかりますが、動かすだけならすぐにでもいけますよ」

 

 全部の首の喉元にエネルギーパイプが接続され、循環液を通じて艦から供給されている。

 相当の量注入しているが、それでも全く供給が足りていないらしい。おおぐらいなことで。

 

「俺達より呑んでるなぁ」

「14個も首がありゃ、そりゃ豪快な飲み方にならぁな」

「あの回数連続で呑んだことはねぇなぁ。今度チャレンジしてみるか」

「我々は胃腸の長さが足りませんね。羨ましい」

 

 確かにまるで横たわりながら酒をストローでがぶ飲みしてるような光景だ。

 めちゃくちゃ身体に悪そう。俺なら絶対に吐く。

 

「あと、ミード氏はひたすら駆け回って水上戦力をたたっ斬っている。アレ本当に初陣か?」

 

 ミード及び乗機の【ミンストレル】は大活躍しているらしい。

 先ほど見た戦いだと、レイピア型のレーザーブレードだけで全て切り抜けていた。

 強烈な出力を出しており、装甲が厚く水竜砲(ハイドロブレス)に数秒耐える甲殻型も容易く切り裂いていた。

 機体運用方針としては小型になった【クロスガード】に近い機体なのだろう。

 反面、射撃武装は特殊な音響系装置しか詰んでいないはずだ。

 だから、接近しなければ何も出来ないタイプと分析している。

 この状況ならば海上の敵を切るだけで充分な戦果を叩き出せるのが強力だな。

 

「接岸までの道中は他艦に任せられるし、反対側はもう機体投入の準備が出来ているらしい。

 だから俺達の次の戦いは上陸後の掃討戦だな。他艦も同時に揚陸するが、その連携は任せろ」

 

 ミードとは上陸後に合流かな。

 俺達だけではなく他艦からの増援も居るらしいし、戦力的には充分か。

 

「あー、【ヒュドラ】にも活躍してもらう。反対側からも三基構成機を二機投入するらしい。

 どうやら海底攻めを想定して温存するより、一気に制圧して上の塔は潰す方針になった。

 ま、砲は撃てないが近接戦なら十全だろう。上陸戦は前衛機として戦ってもらうぞ」

 

 へえ、三基構成機が二機も参加するのか。こりゃ相当本気で落としに行く判断を下したな。

 

「俺も【ナルワール】で出る。対海底に挑む機体もほぼ全投入の算段だ。

 ただやることは、初手で他艦と連携して四方から流体加速器(ビームスクリュー)で薙ぎ払うだけだ」

 

 うわ。エゲツねぇ。倉庫街を薙ぎ払ったアレだろ。プラントの上はズタズタになるな。

 追加で塔が落ちてきたプラントはもう再利用は出来ないという算段なのだろう。まぁ当然か。

 しかし、二基構成機の【ナルワール】と同レベルの出力の機体が四機も参戦しているのか。

 

海賊略奪同盟(パイレーツ・アライアンス)における【ナルワール】は要塞街(アイアンホールド)の【エスクワイア】みたいな機体だからな。

 海中で運用するジェネレータ二基構成機の大半は、俺の機体に似たり寄ったりの機体だぜ。

 ま、流石に要塞街(アイアンホールド)のソレに比べて遥かに数は少ねぇんだが」

 

 ハンサムはリーゼントを整えながら語った。この尖った機体が標準機か。しかし思想はわかる。

 ジェネレータ二基構成なら万能を目指すより特化した機体を作ったほうがいいからな。

 海中を高速で移動しながら一撃ブチかます。動きに制限がある水中なら最高の機体だろう。

 

「よし、【サハギン】連中は船の縁に移動して即応準備をしてくれ。修理はこれで打ち切り。

 俺は【ナルワール】を甲板に上げて待機だ。指示もそこから出す。

 揚陸ギリギリまで【ヒュドラ】のパイプは外さねえが、一分で出撃できる準備してくれ。

 他艦との連携が戦闘のカギだ。遅れるなよ!」

 

「あいよー」「へーい」「がってーん」「理解しました」「わかりました~」

 ほーい。

 

「緩いなぁ――まぁ優秀な戦士の証拠かね」

 

 ハンサムの激に、俺達は緩く答え、その時をリラックスしながら待った。

 

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