既知に未知満ちている。   作:ぬどん

3 / 4
聖職者

SCP-████ - 『神に最も近く、最も嫌われたもの』

 

オブジェクトクラス: Euclid → Neutralized(記録上)

レベル: 4/████

担当研究員: Dr. ██・補佐神学部門

最終更新: 20██/██/██

 

特別収容プロトコル

 

SCP-████の実体は確認されていない。

過去に存在したと思われる記録・映像・音声はすべて断片的であり、完全な実在性は証明されていない。

 

当該記録群は、財団アーカイブ・セクター██の「理解災害観測群」内に封入。

再生・解析・宗教的解釈の試みはすべて凍結状態にある。

 

説明

 

SCP-████はかつて「聖職者」と呼称されていたヒト型存在。

外見的には中年男性、宗教的装束を常時着用。

しかし、内部構造は不明であり、生物学的検査の全てが「検体の存在を確認できず」と記録している。

 

SCP-████は人間社会において一貫して嫌悪され、排除され続けていた。

その理由は明確ではないが、接触した人間は全員、SCP-████への“説明不能な不快感”を訴えている。

暴力・迫害・信仰の否定などの行為が繰り返される中、SCP-████は抵抗することなく観察を続けた。

 

「私は人を知るために、人として在る。

だから、嫌われるのもまた一つの観測だ。」

 

SCP-████は、人間という存在を理解するための器であった可能性が高い。

それは「神」でも「悪魔」でもなく、ただ観測と理解の構造そのものだった。

 

行動記録抜粋

 

毎朝、同じ祈りの言葉を発する(言語不明・構文不定)。

 

周囲の人間に対して一切の敵意を示さない。

 

動物・植物・機械に対しては好意的反応を示す。

 

他者から向けられる嫌悪・暴力を静かに受け止め、記録する。

 

「嫌悪は愛の欠片。

それを知らぬ私は、人を知らぬことになる。」

 

終末記録:20██/██/██

 

財団はSCP-████の観測中、“返礼”と呼称される現象を確認。

同時刻、██名の人間が意識停止、生命活動のみ継続。

非人間的存在には影響なし。

現象後、SCP-████は完全に消失。

遺された音声記録は以下の通り。

 

[音声記録████-Ω]

私はもう十分に見た。

どの土地も、どの言葉も、どの肌も関係なかった。

そこにあった嫌悪が、人間的で、美しかった。

 

始まる理由は、ただの興味。

理解する理由は、ただの事実。

別れる理由は、ただの終わり。

 

きっと何もなかった。

何も——。

 

それでいい。

[記録終了]

 

以降、SCP-████の痕跡は一切検出されていない。

「Neutralized」として分類されているが、観測班の一部は**「終了」ではなく「整理」**と呼称している。

 

補遺██-後報

 

Dr. ██ 記録抜粋:

彼は世界を救ったわけではない。

ただ、理解し、整理した。

 

そして残ったのは、形だけだ。

動く肉体、止まった思考。

中身は、すべてどこかへ渡っていった。

 

それが終わりであり、最も正しい“祈り”だったのかもしれない。

 

O5評定結語

 

SCP-████は「災害」でも「奇跡」でもない。

それは観測の終了報告である。

 

“何もなかった”。

それは恐らく、最も完全な理解の形だ。

 

──報告書閉鎖。

すべての観測データは保存済み。

再調査の必要なし。

 

“終わり”は完了した。




ただの理解は事実を認知すること。
人であるが故にそこに感情を移入する。

タイトル:SCP-████ - 『神に最も近く、最も嫌われたもの』
作者: ぬどん
ソース: http://www.scp-wiki.wikidot.com/
ライセンス: CC BY-SA 3.0
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。