ベル・クラネルの父親に転生してしまった!?(本人は無自覚です) 作:カステラ
遅くなってすみません。
2日後、ようやくメーテリアに言い渡された謹慎が明けてからすぐ。
アルバスは雷雲の館の中庭にいた。
ついこの間発現した魔法を試すためである。
「────よし、ここらへんでいいか」
彼が運んできたのは的人形。
魔法の標的にするため運んできたのである。
ちょうどいい位置におき、腕を的人形に向ける。
そして、唱える。
「【
その瞬間、紅き稲妻が走る。
その稲妻は真っ直ぐに標的に向かっていき、人形を木っ端微塵に砕く。
「……何度見ても、やべえ……」
実のところ、魔法を試すのはこれが初めてではない。
メーテリアの目を盗み、ちょこちょこ試したいたためこの反応である。
その結果、かなりやばい魔法であることはよくわかった。
速攻魔法なのに加えて、第二段階の全癒魔法。
一つだけでもヤバいのにそれが二つ。
反則級どころか反則そのものである。
「しっかし、かなり燃費悪いなぁ……」
この反則魔法の欠点として、燃費の悪さが挙げられる。
速攻魔法の方は撃てて六回、全癒魔法に至っては発動すらできない。
した瞬間に気絶である。
「ゼウスのジッさんに言われたけど、強力な分燃費が悪すぎる」
「こりゃここぞという時にしか使えんな」とぼやき、粉微塵になった人形を片付ける。
「………さて、行くか」
迷宮へと。
───────────────
「ふっ!!」
剣を振るう。
白銀の線が走る。
黒いモヤのようなものを払い、霧散させる。
ウォーシャドーがバラバラに切り裂かれる。
それを見ながらアルバスは言う。
「──やっぱり、ここの階層はもう適性じゃなさそうだな」
一息で数体をバラバラにしたあと、アルバスは歩いて行く。
もっと奥へ行かなければ、ステイタスの向上は見込めない。
もはやここの敵は格上どころか格下であった。
強さを求めるなら、もっと下へだなと思いながら進んでいく。
その途中で思う。
「そういえば、俺ひょっとしてベル君より早く成長してるんじゃ!?───────なわけないか」
「ベル君より早くなんてムリムリ」と呟き否定する。
だけど───
「いつかは超える、そしてアルフィアを見返してやるさ」
そう決意を固め、再び歩き出す。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
「うわあああぁぁぁぁ!!!」
「!?」
突如、悲鳴が聞こえてくる。
その悲鳴は事件性を帯びたものであり、とても尋常の状態には思えなかった。
(まさか、誰かが襲われてる?)
そう考えたアルバスは悲鳴の方向へ向かって走り出した。
運良く同じ階層で悲鳴を聞いたアルバスは、その悲鳴の主を助けようと走る。
そして、見えてきたのは凄まじい光景だった。
「なっ!?これは───」
それは、白フードの人物が冒険者の男性に剣を突きつけているところだった。
よくよく見ると、冒険者の男性は手足に怪我をしており痛みに呻きながら苦しんでいた。
「や、やめてくれ!」
そして、白フードの人物は男性に剣を突き刺そうとする。
それを見たアルバスは咄嗟に動く。
「やめろおおおお!!」
剣を抜剣し、説教する。
相手の剣をもつ手を狙い、斬撃を繰り出す。
しかし、それは簡単に弾かれた。
「!?」
「弱いね」
そう白フードの人物は呟くと、こちらに剣を振るってくる。
それはとても、今のアルバスが追えるスピードではなかった。
そのまま攻撃がアルバスに命中した。
「がはっ!?」
アルバスは壁まで飛んでいき、激突する。
どう考えてもまともに食らってしまった。
「……その勇気は褒めてあげるけど、蛮勇だったね」
その人物が呟く。
今にも刺されそうだった男性は、目の前で起きたことが分からず呆然としていた。
しかし、それで何かが変わるわけではない。
「じゃあ、遅くなったけど……さようなら」
「ひっ!?」
そう悲鳴を出すことしか、今の彼には出来なかった。
その人物が剣を振りかぶり、その男性は生を終える。
「【
「なっ」
その詠唱が響くと共に、紅き稲妻が走る。
油断していたのかは分からないが、その人物は驚いたような声を出し、稲妻に直撃してしまう。
「早く逃げろ!!」
そうアルバスが叫ぶ。
それに対し男性は脇目も振らず逃げ出そうとする。
しかし、それを許すほど、白フードの人物は甘くない。
「逃さないよ」
怪我を負っている男性の動きは遅く、このままでは殺される。
しかし、
「【
それはこの場にアルバスがいなければの話だ。
彼の魔法が剣に当たる。
少し仰け反る。
それと同時に感電した剣から身体に稲妻が走り、少し動きが鈍る。
それによって、男性は逃げ出すことに成功した。
「……やってくれたね」
不機嫌を隠そうともしない声色で、白フードの人物は言う。
邪魔されたのがよほど気に障ったようだ。
「こっちのセリフだクソ野郎、寝覚めの悪いもん見せようとしやがって」
それに負けじとアルバスも言う。
不機嫌なのはこちらもだと。
「こんなダンジョンの中で人殺しなんて、まともなやつじゃないな」
それに対しその人物はさらに不機嫌になったのか、怒気を強くしながら言う。
「君こそ、何者?なんでさっきので死んでないの?」
「はっ!生憎、格上の相手は慣れてるからな」
主に鍛錬でボコボコにされているため、格上の攻撃に辛うじて対応できたのだ。
(と言っても、骨の一本二本は折れたかもだが……)
まあ、無傷ではない。
とても流しきれる攻撃ではなかった。
おそらくは───
(Lv4か5だろうな……)
圧倒的に格上だ。
とても今のアルバスが勝てるような相手ではない。
無惨に殺されて終わりだろう。
「それで?君どうするの?このままだと確実に死ぬけど」
そうフードの人物が聞いてくる。
こちらを明らかに格下だと確信しているようだ。
まあ当たり前だろう。
先ほどのやり取りであれば当たり前だ。
「それはどうかな…?分からないぞ……」
それでも、虚勢を張る。
俺が負けて殺されれば、こいつはあの男を狙いに行くだろう。
それはダメだ。
殺されたら目覚めが悪いどころの話じゃないと、アルバスは思う。
「そう……まあいいや、君を殺して───
あの男を追うとするよ」
そして、悪意が牙を向く。