ベル・クラネルの父親に転生してしまった!?(本人は無自覚です) 作:カステラ
「何やっとんじゃてめぇは〜〜!??」
そんな絶叫が城のようなホーム───『雷雲の館』に響く。
その声を発したのは筋肉質の男であり、黒い鎧をまとって大剣を背負っている。
「しょ、しょうがないじゃろ“ザルド”!!気が合っちゃったんじゃもん!」
「なにが“じゃもん”だこのクソ馬鹿主神が〜〜〜!??」
「いった〜〜〜!??」
「ザルドがぶった〜〜!??」と泣き喚いているゼウスを観ながら少年は思考する。
(……なんでこんなことになってんだっけ?)
それは先ほど、唐突な暴露をされたあと。
ゼウスを見つけたゼウス・ファミリアの眷属たちが、ゼウスとついでに少年も連れてきて事情聴取を開始したのだ。
少年に対しては簡単な質疑応答であったが、ゼウスの方は思いっ切り詰められていた。
そこで判明した、「浮気をしてヘラから逃げている最中に酔いつぶれたやつに恩恵を刻んだ」ということを知ったザルドと呼ばれる大男は激怒した。
これが浮気だけならまた自分たちともどもヘラの眷属に吹き飛ばされるだけですんだだろう。
しかし、恩恵を刻まれた少年がいればそうはいかない。
確実にふっ飛ばされて致命傷を負うだろう。
そうなればかばいきれない。
命までは奪わないだろうという楽観は、ヘラの眷属には通用しない。
ましてやそれがゼウスを庇ったやつなら当然である。
確実にヘラの逆鱗に触れる。
少なくともヘラ本人は知っているのだから。
「────はあ、仕方ない……こいつは俺たちで隠すことにする、異論はないな?」
そうザルドが言う。
少年の答えは決まっていた。
「あっはい守ってくださいお願いします」
であった。
少年は死にたくないのである。
「────それで、こいつなんて名前なんだ?」
周りを囲んでいた一人の男が言う。
「あったしかに、これからファミリアになるんだし名前知ってなきゃ不便だよね」
少し背の小さい男が言う。
それに対し少年は、
「あっそういえば言ってなかったですよね…」
周りを囲む男たちが怖いのか、敬語で話す。
「えっと、俺の名前は──────
アルバス・クラネルです、よろしくお願いします」
そう少し、怯えながら言った。
────────────────
それから1週間ほどが経った。
あれからゼウスはヘラの折檻を受けたようだが、少年はゼウスの眷属たちの協力もあり、ヘラに見つからずにすんでいる。
代わりにゼウスの眷属数名がヘラの眷属にボコされたが、まあ些細な問題だろう。南無三。
その少年、アルバスはというと──────
「よう!アルバス!今日も手伝いかい?」
「やっほー、“ナルド”。そうそう、ザルドが手伝えってうるさくてさ」
雷雲の館を自由に歩き回っていた。
なんとこの少年、けっこう打ち解けていたりする。
生来の人柄の良さもそうだが、そのふざけた言動で周囲を明るくするため。かなり団員との仲が深まっていたりする。
ちなみにこのナルド、Lv6であり幹部には届かないもののかなりの実力者である。
「あっそうだアルバス、ちょっと俺は用事があるからさ、これをヘラ・ファミリアに持っていってくれよ!」
「ェ゙」
だが、幹部級と幹部の間には大きな差がある。
その一つが情報共有。幹部なら知っている情報も、ナルドは知らなかったりする。
つまり───────
この男、アルバスがヘラ・ファミリアにバレるとまずいということを知らない。
「えっちょっと─────」
「頼んだぞ〜〜!!」
そう言って走り去っていく背中を、アルバスは呆然と見つめていた。
「まじか……どうしよ」
────────────────
「結局来てしまった………はは」
変態ではあるがお人好しでもある彼のこと、世話になっているファミリアの頼みであらば断ることなどできず、自ら死地に赴いてしまった。
「あはは………これが俺の墓場か」
そう軽く絶望しながらも、アルバスはヘラ・ファミリアのホーム
『白き腕の館』の扉をノックする。
「はーい、どなたでしょう?」
出てきたのは、見目麗しきエルフ。
長い金髪に緑の瞳の人物だった。
(うわー、綺麗どころとは聞いていたけどマジだっんだ)
そんな今更なことを認識しながらもアルバスは口を開く。
「あっはい、ゼウス・ファミリアの新人です。ナルドさんから言われてきました」
一応初対面なので敬語も使いながら。
「これはご丁寧にどうも、私はリュシー。よろしくね新人さん」
そんなことをエルフ────リュシーは言う。
しかし、
(言っちゃ悪いけど、あまりゼウスの眷属っぽくないなぁ。弱そうだし)
かなり失礼なことを考えていた。
ゼウスの眷属といえばムキムキマッチョのゴリラが定番であるが、この少年はそうではない。
確かに筋肉はついているようだが、それでも戦うものとしてではなく普通の範疇である。
(あと、なんとなく変態紳士っぽい)
それはあたりである。
なにはともあれ────
「さあ、荷物を届けに来てくれたんでしょ?入って入って!」
そんな内心は表に出さず、リュシーはアルバスを迎え入れた。
館の中に入ると、かなりの大きさのシャンデリアが出迎えてくれる。
「うわっすっごい」
アルバスもつい口に出してしまった。
それほどまでにきれいで、美しい内装だった。
「あはは、ありがと!やっぱり初めてくる人にはそう見えるよね」
そんなことをリュシーは言う。
「じゃあさっそくだけど、荷物を置きに行こうか、置く場所は2階の調合室だよ!」
そう言われるままに、アルバスはリュシーについていく。
階段を登り、少し進んだ先で調合室という札が見えてきた。
話に出ていたのはここだろう、そう思った。
コンコンコンと、リュシーがノックをする。
「ヘラ〜?メイ〜?入るよ〜!」
(ェ゙)
その時、アルバスはその名前を聞き、再度死神の鎌が構えられたような気がした。
(えっまじでまじで!?ここにヘラいるの!??ダメだ死ぬ死ぬ死ぬ!!!)
彼はマジクソテンパっていた。
というかここにいたら確実に死ぬと、そうわかった。
「あ、あの〜、わたくし少しお腹が痛いのでおトイレに行きたいのですが〜」
「えっ、そうなの?大丈夫?」
離れたい一心で、そう嘘をつく。
「ですのでちょっとトイレ行ってきますね────「何の騒ぎだ?」ぁ゙」
そして聞こえて来た声に絶望する。
その声は聞いたことがある。あの路地裏で、死の恐怖をたたきつけられた時に聞いた声だ。
恐る恐るそちらを見る。そこには───────
「リュシー、これは何の騒ぎだと聞いてい─────うん?貴様は…」
───ああ、終わった
白き腕の女神がいた。
「貴様、なぜここにいる?」
そう白き腕の女神─────ヘラが聞いてくる。
アルバスは咄嗟に全力で答える。
「はい!私はゼウス・ファミリアの新人アルバス・クラネル!ナルドさんに言われて荷物を持ってきました!!」
「うるさい」
「はい!すみません!!」
あまりの声量にヘラが鬱陶しく言う。
アルバスとしては自分が生きるか死ぬかの瀬戸際なので、必死にもなるというものである。
なにせ、ここには匿ってくれるゼウスの眷属もいなければ、ここから逃げることもできない。
まさに死の瀬戸際。
「私が聞きたいのはそんなことではない、あの日路地裏で会ったお前がなぜここにいると、ゼウスの眷属になっているのかと聞いている」
「えっとそれに関しましては、気に入られたやら無理やり恩恵を刻まれたやらありまして……」
この説明で納得してもらえるかと戦々恐々しながら待つ。
「─────そうか……嘘は言っていないな」
アルバスがホッと息をつく──────
「だが私の勘が言っている、お前だな?ゼウスを匿ったのは」
その底冷えするような、あの時と同じ感じの言葉。なんでわかるんだよとか、そんな心の声は無視してアルバスは─────
「逃げろ〜〜〜〜〜!!!???」
全力ダッシュで逃げた。
「──ッ!追え!!」
ヘラが号令をかける、リュシーが啞然としていた表情を変えてすぐさま追跡を開始する。
こう見えてリュシーはLv5、それもかなりステイタスを上げている人物である。
恩恵を授かったばかりのアルバスでは抗うなんてできやしない。
抵抗虚しく、アルバスは追いつかれる─────
「とうりゃあ〜〜〜!!」
前に、ナルドから預かっていた荷物をリュシーの方へ投げつける。
「!?」
その荷物を落とすわけにはいかないリュシーは荷物を取るために足を止める。
リュシーはキャッチした荷物を抱きかかえながらアルバスの方を向く。
「まちなさ────ってはや!?」
とてもLv1とは思えない速度で走り去っていくアルバス。
そんなアルバスを見て、リュシーは自分だけでは厳しいと、館全体に指示を出すようにいう。
「ゼウスを匿った大罪人が逃走した!屋敷の中にいるものはすぐさま捕獲せよ!!」
そう号令をだした。
──────────────
「はあ…はあ…、まじでふざけんなよ、ナルドの野郎!!帰ったら一発ぶん殴ってやる!!」
現在かなり理不尽な目に遭っているアルバスは、今はいないナルドに対して毒づく。
しかし、そんな暇をヘラの眷属達が与えてくれるはずがない。
「いたぞ!!やつだ!!」
「逃さないわよ!!」
「クソがふざけんな〜〜!!!」
そう悪態をつき、またもや全力ダッシュをする。
だがしかし、数分しか続けていないにもかかわからず、もう体力の限界が来ていた。
当たり前である、数人とは言え全員が第一級冒険者。そう何度も続くはずがない。
ああ、このまま捕まってしまうのか?そう考えたとき────
「こっちですよ、お客様」
そう、優しい声が聞こえた。
「─────ッ!!」
その声に従い曲がり角から咄嗟に部屋に飛び込む。
そして勢いよく扉を閉める。
「どこにいった!?」
「探せ!まだ近くにいるはずだ!!」
外からのドタドタと足音が遠ざかっていくのが聞こえる。
それを確認し、アルバスはホッと息をつく。
そして、自分を助けてくれた人物を見る。
「ありがとう!君のお陰でたすかっ─────ッ!」
そこには、『白』がいた。
真っ白な髪、真っ白な服装、そして青い瞳。
すべてが白く美しい。
服は光が編み上げたドレスのようで、より一層彼女を際立たせる。
「──────────君は………」
そう呆然として聞く。
その答えはすぐに返ってきた。
「メーテリア」
「メーテリアといいます、よろしくお願いしますね。面白いお客様?」
そう言って、はにかんだ。
どうでしたか?やっぱりこの時代は難しいですね、情報が全然ありません。次回もよろしくお願いします。
ちなみにベルパパの身体に転生したのは、魂の本質がにていたからという裏設定があります。