ベル・クラネルの父親に転生してしまった!?(本人は無自覚です) 作:カステラ
メーテリア────そう言われたとき、「綺麗な名前だ」と思った。
いつもの自分なら、このような美しい少女がいたなら真っ先にナンパをしていただろう。
しかしこの少女には、そんなことはしたくないと思ってしまった。
それ程までに、この少女は処女雪のように綺麗だった。
「え、ええと、その………なんで助けてくれたんだ?」
アルバスはそう聞く。
恐らくこの館にいるということはヘラ・ファミリアの団員なのだろう、だがこの少女は命令が出ているのにもかかわらず助けてくれた。
それが不可解なのだ。
「だって、あんまりにも追い回されているものだから。心配になって助けてしまったの」
「えっそれだけ?」
「……?ええ、そうだけれど」
それを聞いてアルバスは面食らう。
(まじで?それだけで助けてくれたの?)
普通に驚愕する。
ほんとにそうなのだとしたら、限りなくお人好しと言うことになるのだが。
そんなことを自分を棚に上げ思った。
「それで、大丈夫なの?少しの間ずっと追い回されていたみたいだけど……」
「あ、ああ…大丈夫だ、助けてくれてありがとう」
それを聞いてメーテリアは安心したように言う。
「ふふ、そう、よかった」
花の咲いたような笑顔だった。
思わず見惚れてしまうほどに。
それを誤魔化すために、話題を切り替える。
「そっそれで、なにかしてほしいことはないか?助けてくれたお礼に、今ならなんでもするぞ!」
その言葉に、メーテリアは少しキョトンとして言う。
「大丈夫よ、そんなことしなくてもみんなには言わないわ」
「いやいや、それだと俺の気が収まらないからさ!なにかさせてくれよ!」
「そう?それじゃあ─────」
メーテリアは1泊を置いてから言う。
「話し相手になってくれないかしら?」
その言葉に、少し驚く。
「それだけでいいのか?」
「私、この館にずっといるからみんな以外とあまり話したことがなくって」
「男の人とはほとんど話したことがないわ」とメーテリアは言う。
なるほど、つまり暇だから話し相手になってくれということなのだろう。
「………わかった!存分に話し相手になってやる!俺の話は長いから覚悟しとけよ」
「!ふふ、わかったわ、よろしくね」
──────────────────
それから二人はしばらくの間、他愛もない話をし続けた。
アルバスもゼウス・ファミリアでするような下品な話は控え、メーテリアが知りたいことを答えるようにしていた。
街はどうなっているの?今の名物はなに?あなたはどこから来たの?
そんな取り留めのない話題を話続けた。
「─────ふふ、やっぱり人から話を聞くのって面白いわね」
「そうか?まあそれだったらよかったけど」
そんなふうに、アルバスは言う。
そして、さらに時間がたち。アルバスが帰るときが来た。
「いい?この部屋の窓からから飛び降りて、隣にある雷雲の館まで一直線に走るのよ?」
「わかったわかった、ありがとな、メーテリア」
「ええ、どういたしまして」
そんな話をしながら、メーテリアはアルバスが無事に帰れるように作戦を立てていた。
普通なら窓から飛び降りたところで逃げるのは不可能だが。
メーテリアの部屋の窓から飛び降りるには、メーテリアの部屋に入らないといけないため、よりにもよってその部屋には入ると思っていない眷属たちはそれを想定できないという寸法である。
「早くしないと姉さんが帰って来るから、急いでね」
「ああ、わかった、何から何までありがとうな」
そう言ってアルバスは、窓から飛び降りる準備をする。
だが──────
「じゃあまた─────ッ!げほっげほっ!」
「!?どうしたんだ!??」
急にメーテリアが咳き込み始める。
その咳は明らかに異常で、とても風邪などの咳ではない。
さらに言えば。
「!!これ、血、だよな」
メーテリアは血を吐いていた。
とても尋常なことではなく、まずいことが起きていることは学がないアルバスにもわかった。
「げほっ、げほっ!だっ大丈夫よ、心配ないわ。いつものこと─────がはっ!げほっ!」
彼女はそう言うが、とてもそうは見えなかった。
実際、今の彼女はまずい状態であり一刻も早く医者に見せて落ち着かせなければならなかった。
だが、ここにいるのはヘラの眷属ばかり。
アルバスが出ていけば酷い目に遭うのを分かっていたメーテリアは、早く行くように言う。
「大丈夫、大丈夫よ、私なら大丈夫だから早く───」
その瞬間、誰かとメーテリアが重なる。
『大丈夫よ、■■……』
その人はとても苦しそうで、だが努めて安心させるように優しい言葉をかけてくれた。
とても優しい、人だった。
そう言うメーテリアを見て、アルバスは決めた。
「わかった」
そういったアルバスは窓の方へ足を進めて─────
行かずに、一気に部屋の外に飛び出す。
「────ッ!まって!駄目!げほっ!げほっ!」
メーテリアの静止も虚しく、彼は走り出していく。
部屋の外に出た彼は、まずヘラの眷属を探す。
そして、彼女らはすぐに見つかった。
アルバスを見つけたリュシーは、すぐさまこちらに近づいてくる。
「あなた!見つけたよ!手間をかけさせてまったく─────「メーテリアが大変なんだ!!助けてくれ!!」────!?」
その言葉を聞き、リュシーは驚愕する。
なぜこの子がその名前を知っている?なぜ?そんな思考が頭をよぎる。しかし────
「!わかった!」
さすがはヘラの眷属にして第一級冒険者。
判断も早かった。
「!信じてくれるのか?」
「そんなこと言ってる場合!?みんな!メイを呼んできて!」
そんなやり取りをしながらも、指示を出す。
「言っとくけど、あなたを信じたわけじゃないからね!」
そういいながら。
────────────
その後、メイと呼ばれるヒーラーを呼んできたヘラの眷属たちはアルバスが逃げないか見張っていろとヘラに言われ、しぶしぶ見張りをしていた。
「まったく、なんで私たちが見張りなんて……」
「ほんとよね!なんでこいつなんかを」
そんな不満を口々に言い出す。
自分達では捕まえられなかったため、少し苛立っているようだ。
「──────まあでも、メーテリアのことを知らせたのは見直してもいいかもしれないわね。ちょっとだけだけど……」
そんなふうに思ってもいた。
メーテリアに庇われていたのは業腹だが、異変を感じてすぐさま報告したのには好感が持てる。
そんな評価だった。
その時、ヘラが部屋に入ってくる。
「!!メーテリアは!?」
アルバスが乗り出しヘラに問う。
「ちょっとあんた────」
眷属達が咎めるように言う。
しかし、
「───────問題はない、危機は脱した」
ヘラが答えた。問題ないと。
それを聞き、アルバスは安心したのか力が抜ける。
「─────よかった〜〜!!」
その様子に、先ほどまで苛立っていた眷属たちも、本気で心配していたのかとマジマジとみる。
そしてヘラが言う。
「貴様に助けられたな、業腹だが」
アルバスが調子に乗って言う。
「いや〜それほどでも〜「黙れ」はい!」
その様子にヘラは呆れた。
「貴様はつくづく、わたしを苛立たせるのが上手いな」
「あはは……」
その様子に、アルバスは冷や汗をダラダラ流しながら思う。
(そっか、よかった。メーテリア)
そんなことを。
「そして、貴様の処遇だが────」
そして再び、死神の鎌が添えられる。
今度こそ終わったとアルバスは思った。
(ああ、終わった───────けどまあ、いいか。メーテリアを助けられたし)
彼女が無事ならそれでいい。
そんなことを考えながら、断罪の時を待つ─────
「終わりだ、帰ってよい」
「えっ?」
「なんだ?私の決定に異議があるのか?」
「なっないです……」
そんなやり取りをみていた眷属達が、反発する。
「ヘラ!そんな簡単に解放していいの!?こいつはゼウスを庇っていたんだよ!?」
そんなふうに眷属の一人が言う。
「よい、そいつは私たちに捕まることも厭わずにメーテリアの容態を知らせた。それで今回は良しとする────────まあ、次はないが」
最後に恐ろしいことを言いながら、ヘラは彼を許した。
その言葉に、彼女らは何も言わなかった。
「あの、最後に一つよろしいですか?」
そしてアルバスはどうしても聞きたかったことを聞こうとする。
「なんだ?言ってみろ」
ヘラは特に何も思っていないような口ぶりで言う。
「─────メーテリアって病気、なんですか?」
その言葉にヘラは、
「ああ、そうだ。不治の病だ」
そう答えた。
────────────────
あのあと、ゼウス・ファミリアのホーム、雷雲の館に帰ってきたアルバスは考え続けていた。
ヘラに言われたことを。
『メーテリアの病を治す手立ては経っていない、恐らくはダンジョン深層の更に下にあると考えているが、それも定かではない』
『なぜそんなことを教えてくれるのかだと?なに────』
『────ただの、
(ダンジョン深層、さらにその先……)
気の遠くなるような話である。
深層でもすさまじいのに、さらにその先とは。
だが、
(そこに行けば、メーテリア病気を治してやれる……)
今日恩をもらった、あの心優しい少女を助けられる。
“あの約束”を果たすことができる。
なら─────
「ザルド!」
彼は知っている中で、一番強い男に声をかける。
ザルドは声をかけられ振り返る。
「なんだアルバス、どうした「俺を、鍛えてくれ」───!!」
咄嗟にどうしたんだと聞こうとする言葉を、ザルドは飲み込む。
その目には、
確かな覚悟があったからだ。
「………本気なんだな、お前」
「ああ、冗談でこんなこと言うもんか」
ザルドは視線を厳しくし、声を低くしていう。
「厳しいぞ、お前に逃げ足以外の才能はない」
「わかってる」
「逃げたくもなるかもしれない」
「承知の上だ」
「…………ならばもう、何も言うまい」
「ついてこい」とザルドはそれだけ言って歩き出す。
アルバスもそれに答える。
この後、ザルドにボッコボコにされながらもなんとか食らいつく修行が始まるのだが、ソレは次回で。
いかがでしたか?途中から適当になっていないか心配ですが、取り敢えず投稿です。また編集するかもしれません。