16 第二市街地ノ乱
20分前、11時24分。第二市街地にて導力の巨大結界の構築を確認。
この事件はのちにテネブル・タウンアウト(第二市街地の乱)として知られる。
会長室に2人の隊員が招集された。公認スレイヤーの鶴喰御狩、同じく公認スレイヤーのスレーン。
「第二市街地にて前例のない巨大結界の構築を確認した。カミヅカ観測隊曰く直径は推定800mとのことだ…」
カーフが2人に言った。御狩は白い和服をヒラヒラとさせてその規模に驚いた。
「800mですか…?随分大掛かりな…」
「ああ…これだけの莫大な導力をどこから持ってきたのか不明だが…こんなことをやらかす組織なんて一つしかない」
カーフが真剣な表情でCEで何か連絡を入れながら言った。
「秘密結社がついに動き出したか!ぶっ潰しにいくぜ!」
スレーンが巨大な改造チェーンソーをギャリギャリ言わせている。
「落ち着けスレーン。まずは全隊員に緊急時招集をかける。うち半分は結界の周辺で避難誘導に当たらせる。もう半分はできるだけ早く…この結界を取り除く」
協会本部のエントランスの壁に設置された緊急事態を知らせる赤いランプがチカチカと点滅している。大勢の隊員が戦闘準備をして次々と外へ出ていく。神嵜巴もその1人だった。韋駄丸くん…なんでよりによってこんな時に一緒にいてくれないの…。
巴は少しの心細さを無理に振り切って勢いよく第二市街地へ飛び立った。冷たい空気が顔にあたり、緊張感が走る。心臓が喉元で大きく跳ねている。
「うわ…」
第二市街地上空に差し掛かった巴の目に、その巨大な黒い結界が写った。あまりにも大きい。真っ黒な水晶玉のようなものが、街に覆い被さっているように見える。巴はCEでその様子を撮影し、韋駄丸へ送信した。
「結界内の様子は未だ不明…第二市街地の住人の半数は中に囚われていることかと」
壁のように立っている結界の目の前でケランが報告した。横にはカーフが立っている。強い風が赤髪を揺らすが、対照的に結界は微動だにせず存在している。見上げても半球のようになっているため、頂上は全く見えない。
「会長。出撃可能な隊員が30名ほど揃いました」
ケランの言葉通りすでに多くの隊員が結界の周囲、第二市街地の人口密集区に集まっていた。
「よし…侵入開始」
カーフが宣言した。
「ヴェールぅ!バラバラにしてやるぜ!」
ガタイがよくチェーンソーを持った一級隊員のスレーンが結界の真っ黒な外壁へ真っ先に突撃した。続いて御狩が飛んでいき、螺旋煌がネオンのように光る剣に腰掛けて浮遊していく。
「おらああ!」
スレーンがチェーンソーを結界の壁に叩きつける。スレーンの怪力とチェーンソーの重み、回転に耐えかねた結界の壁の一部がパリンと音を立てて砕け散った。
「なるほど。これだけ巨大な代償として結界の強度は低いわけか」
螺旋煌が呟く。スレーンはすでに結界に空いた穴から中へ侵入(というより突撃)していった。
「おっと…こりゃあ…」
「…ひどいですね」
結界内はまるで夜中のように暗く、電力も絶たれているのか照明の一つも点灯していない。さらには大量の死霊が蔓延っているらしく、君の悪い導力がガスのように充満していた。
「うぅ…体調崩しそうです…」
御狩が思わず呟く。たった今結界に入ったカーフも顔を顰めた。
「個人行動でいいよなぁ?」
スレーンがやかましい声で言った。
「私はそれで構わない。単独の方が動きやすい」
螺旋煌も同意した。カーフは腕を組んで結界内の様子をよく観察している。
「…よし。とにかく中の死霊を手当たり次第狩って閉じ込められた住人を逃すぞ」
カーフが黒い銃で黄色いレーダーを展開しながら言った。