第二市街地西方。公認スレイヤーの1人で一級隊員のスレーンは単独で死霊を狩りつつ生き残りの住民を探していた。すでに3人の市民を発見して、外へ安全に輸送するために即興で構成されたBLUELINE救出隊へ保護してもらった。しかし逆にいえば20分ほど捜索して、見つかった生き残りの市民は3人だけだった。
市民の心配をする暇もなく、黒い影のような死霊が4体、スレーンに向かって正面から斬りかかってくる。
「おらおら雑魚ばっかりだなぁ!」
スレーンは死霊が攻撃をする前に自慢のチェーンソーで斬り倒していく。というよりも殴り飛ばしている。4体はまとめて殴り飛ばされてビルの外壁に衝突し消滅した。さらに商業施設から2体の槍のような腕の死霊が現れた。
「チッ…生存者がまるで見当たらないじゃねえか。よくもやってくれたなぁ!」
スレーンは歯を剥き出してその2体へ突っ込む。片方が槍のように硬化した腕を素早く振るがスレーンは上体を大きく反らせて攻撃を回避し、死霊の両足にチェーンソーを叩きつけた。チェーンソーの圧倒的な重量と刃の回転によって死霊の脚は即座にかき斬られた。スレーンはその場に倒れ込んだ死霊の頭に強烈な踵落としを叩き込んでその頭部をかち割った。
その時、施設の奥からか細い声が聞こえた。何と言っているのかはわからなかったが、スレーンの耳には確かに届いた。
「生存者だな!」
スレーンはもう一体の槍死霊を目線すら向けずに蹴り倒し、施設の奥へ走っていった。
その様子を隣のデパートの屋上から見ている者がいた。左右で束ねた赤い髪が風になびき、顔は黒く三角形のバイザーで覆われていて全く見えない。そのメガホンのような形の腕に設置されたモニターに連絡が届く。
「こちら『クロスコン』。公認スレイヤーを西3番エリアで確認」
腕のモニターに向けて囁くと、その通信装置を備えたバイザーの内部に声が響いた。
「やれ」
謎の人物は無言でシグナルを送り、屋上から飛び降りた…。
「協会が来たから安心しな!」
スレーンは商業施設の奥で先ほどの声の主を探していた。死霊が暴れた痕跡だろうか、売り物だった衣服が大量に床に散らばっている。第二市街地は現在結界の影響で電気が絶たれているので店内は真っ暗だ。
「こっち…」
か細い少女の声が聞こえた。スレーンはくるりと振り返りそちらを見ると、更衣室から1人の幼女が顔を覗かせていた。疲れたような怯えたような表情だ。
「よく頑張ったな!もう安心していいぞ」
スレーンは彼女に目線を合わせて近づいていく。少女は身を委ねるようにおもむろに両手を前に出した。
その途端、ドキュウウンという衝撃音と共に、辺りが赤い光に照らし出された。
「隠れて」
スレーンが少女に言う。その目線は施設の入り口の方へ釘付けとなった。
「公認スレイヤー、一級隊員スレーン」
入り口付近に佇んだ黒い影が声を発した。機械のような二重に重なった声で、喋るたびにその顔のバイザーに表示された赤い線が波打った。
「抹殺開始。」
彼女の名は機械殺し屋・クロスコン。秘密結社ヴェールが大金と引き換えに雇った冷血のサイボーグだった。